Mr.Kが来園した次の日。
学生が寮から教室へと向かおうと出てくる時間となり、寮部屋の前には大勢の生徒達がぞろぞろと出て来て教室へと向かう。
そんな中、デュノアも教室へと向かおうと部屋で準備をしていた。
(昨日は無理だったけど、今日こそは何とかしよう。と言っても、方法がなぁ…)
そう思いながらカバンに手を掛け部屋を出ようと扉に向かった瞬間、突如扉が開きぞろぞろと武装した教師達が入って来て、持っていた銃をデュノアに向ける。
そしてその後に続く様に腕を組んだ千冬が入ってくる。
「な、何ですかいきなり!?」
「デュノア。貴様には産業スパイの容疑が掛けられている。大人しく我々の指示に従え。従えない場合は武力行使で拘束する」
鋭い視線をデュノアに向ける千冬。その視線にデュノアは怯えながらも、千冬の伝えた産業スパイに関して反論する。
「ぼ、僕が産業スパイだなんて、そんな証拠何処に『「織斑君からISデータを盗めっていきなり命令されても、そんなの無茶に決まってるのに。』っ!?」
突如自身の声が響き驚きの表情を浮かべるデュノア。
ボイスレコーダーを握っていた千冬は停止ボタンを押す。
「これが証拠だ。それと、貴様にはもう一つ偽造文章でも容疑が掛けられている。何が偽造か、お前自身よぉく分かっているよな?」
嘘をついても、分かっているぞと言わんばかりの鋭い視線に、デュノアはブルブルと震える。
「行け」
ブルブルと震えるデュノアに、千冬は教師達に短くそう指示を出すと数人の教師がデュノアを取り囲み腕に手錠をかけ、更に所持していたISの待機形態を取り上げる。
そして教師に取り囲まれながら連行されるデュノア。廊下に出ると、教室へと向かおうとしていた生徒達が何事だと思いながら見ていた。
デュノアが連行される姿に生徒達は一体何がと隣にいた生徒とヒソヒソと話し合ったりする。デュノアは向けられる視線を少しでも避けようと顔を俯かせる。すると
「イッチー、教室行こ」
「う、うん」
そう声が聞こえ、そっと顔を上げると何時もよりも若干怯えた表情を浮かべた後背を向ける一夏と、冷めた目で自身を見た後一夏の後に続く本音の姿がいた。
二人の姿が見えなくなった後、デュノアはまた下に顔を向けるのであった。
『‥‥‥‥』
そんな中、連行されていくデュノアに興味心で向ける視線とは違い、明らかに侮蔑したような視線を向ける数人の生徒が居た事に周りにいた生徒、そして連行する教師達や千冬は気付く事は無かった。
~IS学園地下取調室~
教師達に連行され、手錠等をされ椅子に座らされたデュノアは目の前に座っている千冬に対し、視線をそらす。
「では、これより取り調べを行う。先に言っておくが、お前には黙秘権がある。だが、其処に置いてあるカメラで此処での会話等は全て記録されている。つまりお前の出方にによってはお前に不利となる証拠になる可能性もある為、その辺は重々考える様に」
そう言い千冬は十数枚ほどの紙の束を取り出し、それを見ながらデュノアに質問を投げる。
「お前の名前は?」
「しゃ、シャルル「本名を聞いている。偽名など聞いておらん」…シャルロット・デュノアです」
「では、この学園にはどういう理由で来た?」
「…知っているのに、聞くんですか?」
「何事も本人の口から確認するのが、一番良い。で、どう言う理由だ?」
「……織斑君から、ISデータを盗む為に、此処に来ました」
「では、何故性別を偽ってまで此処に来ようとした?」
「男性の方が、警戒される事なく近づけると言われたから、そうしました」
「誰の指示だ?」
「デュノア社の、社長です」
デュノアの口から、デュノア社の名前が出た瞬間千冬は鋭い眼光を更に鋭くさせる。
「たかだか一企業のみで出来るとは思えんが、本当に社長からか?」
「は、はい。ぼ、僕は社長からそう指示を受けました。無論政府にも協力者が居るとは思いますが、誰かまでは分かりません」
「そうか。それで、織斑からISデータを盗むよう指示を受けたのは貴様だけか?」
「え? ど、どういう意味ですか?」
突然お前以外にもそう指示を受けた者が居るんじゃないのか?と疑いを掛けられるデュノア。
「そのままの意味だ。素人のスパイを送ったところで失敗するのは明白だ。だが、他にも何人か送り込めばデータ位手に入る可能性は幾分か、上がるだろう。そして、お前が失敗してもバックアップがきく。で、どうなんだ?」
「そ、そんな事言われても、分かりませんよ! ぼ、僕はIS学園に入学して、織斑君からISデータを盗んでこれば、自由にすると脅されただけです! ほ、他にスパイをするよう言われた人なんて僕知りません! 知っていたら今此処で喋っていますよ!」
そう大声で叫ぶデュノア。千冬はその様子をジッと見つめながら、その腹の内を探ろうとする。しばしの沈黙が流れた後千冬が口を開く。
「理由は?」
「はい?」
「理由だ。何故知っていたら喋ると言った? 仮にもデュノア社社長の娘だろ?」
そう言われデュノアは社長の娘と聞いた瞬間、暗い面持ちとなり俯く。
「…僕の出生は、詳しく知らなかったんですね」
「なに?」
「僕は、社長の愛人の娘なんです」
そう言うと千冬の眉が若干上がる。そしてデュノアはぽつりぽつりと自身の出生を話し始めた。
現社長とデュノアの母親は元から付き合っていたが、会社を大きくする為に当時の政府高官の娘と結婚する為、社長は手切れ金とフランスの田舎に建てられたウッドハウスを渡し一方的に捨てたのだ。
暫くして母親が不治の病を患い、それから数日後息を引き取った。一人残ったシャルロットは一人何とか生活をしていた時に、社長に呼び出されスパイまがいの事をするよう脅迫されたのだ。
自身の出生を話し終えたデュノアは視線を下に落したまま黙り込む。そして千冬はと言うと
「話は分かった。だが、それで情状酌量される訳では無い」
そう言われ、はい。と小さく答えるデュノア。
「ではお前の今後だが、お前はデュノア社及びフランス政府が行った違法行為を知っている重要な証人だ。その為暫くは学園でお前の身柄を保護する」
「は、はぁ」
千冬の説明にデュノアは逮捕されない事に若干安堵しつつも、ある疑問が頭に浮かぶ。
「あ、あの、も、もし政府から身柄引き渡しの要求があった場合は?」
「ん? ……お前まさか、学生手帳の規則等読んでいないのか?」
「えっと、…はい」
デュノアの返答に、千冬は呆れたと言わんばかりにため息を吐く。
「お前なぁ。読んでいたら、お前は今此処に座らずに普通の女子生徒として通えていたんだぞ」
「えっ!? ど、どう言う事ですか?」
「はぁ~。学園は日本政府が運営しているが、実際此処は治外法権だ。その為他国の政府及び企業が生徒の身柄引き渡し等は特例を除き行っていない。この規則を知ったうえでスパイをしていると思っていたが、とんだマヌケだなお前」
千冬の説明にデュノアは絶句した表情となり、その後ガックシと肩を落とすのであった。
学園の一角にある薄暗く人が寄りつく気配もない倉庫。そんな倉庫に数人の生徒達が集まっていた。
「まさか夫人の言っていた通りになったね」
「そうね。まぁ、夫人も
「えぇ。これも全ては女性の為。神聖なISを穢す男など排除する」
そう言うと其処に集まっていた生徒達、そして数人の教師が頷く。
次回予告
デュノアが捕まり、騒然となるクラス。それから放課後となり一夏はメサと共に千冬に頼まれた書類を届けに行く。
そしてそれと同時に動く悪意。
次回
騒乱