一夏と本音が無人ヘリに乗り込み旅館から飛びだった後の指揮所。
其処には千冬とMr.Kが作戦を練るべく案を出し合っていた。だがこれと言った有効策が無くどうすべきかと悩んでいた。
その訳は勝手に旅館から飛び出したオルコットたちの事である。
勝手に出撃した彼女達だけでは恐らく倒せない。だから応援を出そうと考えた物の、下手に応援を送ったところで勝てる見込みはあるのかと多くの懸念が湧いてきたのだ。
「全くあの馬鹿共め」
「致し方ありませんよ、織斑先生。なってしまった事にぐちぐち言って現状は変わりません」
「貴方の言う通りですが、口に出さずにはいられません」
すると指揮所の襖が開き廊下から一輝が中へと入って来た。
「社長、ただいま戻りました」
「あぁ、お帰り」
そう言い声を掛けるMr.K。するとモニターを見ていた真耶が頭に疑問符を浮かべながら口を開く。
「あれ、鬼崎さんじゃないんですか?」
「はい? 何がですか?」
「えっと、少し前に旅館から御社の無人ヘリが飛び発って行ったのでてっきり鬼崎さんが乗って発たれたのばかりに」
「あぁ。それは私ではありません。」
「
「「「「‥‥えぇ!???!!!!」」」」」
一輝の言葉にその場にいたMr.K以外の者達全員が一瞬唖然と表情を浮かべた後、大きな声を上げる。
その中で千冬が先に我に返る。
「ど、どう言う事ですか!?」
「目を覚ました織斑君が布仏さんから現状を聞き、銀の福音を助けたいという一心で本音さんと共に向かわれたのです」
「束は!? 束いるんだろ!?」
「いるよぉ」
千冬の叫びに答えるように襖が開き、顔だけひょっこりと出す束。
「お前、部屋で一夏の容態を診ていただろ! 何故止めなかった!」
「ごめんねぇ。その時束さん席を外してたからさぁ」
「それにたとえ束さんが止めに入っても、恐らくいっくんは止まらないよ。いっくんは誰よりも人が傷つく姿を恐れる。それは人だけじゃないISもそうだよ」
そう言い、先程までへらへらとした表情から真剣な表情へと変える束。
「どういう事だ?」
「そのままの意味だよ。他人が傷つくのは見たくない。だから自分一人で解決しようとするの。昔から変わらないいっくんの悪い癖だよ。でも今回は違う。のほほんちゃんが一緒に付いて行ってるし、それにアンタらの武器も渡しているんでしょ?」
束が一輝に向かってそう言うと、お見通しですか。と苦笑いを浮かべる一輝とMr.K。
「部屋に戻ったらいなくなっていたからISの現在地でいっくんの居場所を調べて行ったら、新しい武器を渡しているのが見えたからね」
「そうでしたか。織斑先生、貴女に何の相談も無く新武装を弟さんにお渡しして申し訳ない」
「……Mr.K、その新武装で一夏達は無事に戻ってくるのでしょうか?」
「正直なところ、私にも分かりません。しかし、私は彼等が無事に戻ってくると信じております」
「その訳は?」
千冬の問いにMr.Kは自身に満ち溢れた顔つきを浮かべる。
「彼等は何よりも強い絆で結ばれているからですよ」
その頃旅館から無人ヘリに乗り込んで飛び発った一夏達はというと
「イッチー、もうすぐ現場だよぉ」
「はい。……本音さん」
「なにぃ?」
「あの、一緒に来てくれて、ありがとうございます」
「ふぇ?」
「その、旅館では一人で行こうとしたんですが、此処に来て怖くなってきたんです。それで本音さんが一緒に行くと言った時、嬉しかったんです。あと、こんな事に付いて来てもらって申し訳ないって気持ちがあるんです」
「…そんなの気にしなくても良いよぉ、イッチー。私は、私の意思で付いてきたんだから」
「そう、ですか」
本音の言葉に幾ばくか顔から緊張が和らぐ一夏。
そしてレーダーに銀の福音を表す光点が現れる。一夏と本音は気合を、そして決心を抱きしめそれぞれISとパワードスーツを身に纏う。
ヘリから出てヘリと並走するように飛ぶ一夏。するとモニターに望遠拡大された銀の福音が表示された。其処には以前と同じ手が鉤爪状となり、禍々しい雰囲気を纏った銀の福音が映っていた。すでに戦闘状態になっていることに一夏と本音は疑問に抱きつつも今はそんな事を考えている余裕はないと思いと考えを切り捨て武器を手にする。
一夏はギャレンラウザーを持ち、本音はカリスに変身しカリスアローを準備し腰にダガーモードにしたレンゲルラウザーを下げる。
準備を終えた本音はカリスアローにハートの4をスラッシュする。
《フロート》
そう音声がなると、カリスの体が浮遊し本音はその状態でヘリから出てる。一夏達が出撃したのを見たのか銀の福音は
『ugyaaa!!!』
と奇声を上げながら一夏達の方へと迫る。
バレットホークのアイラは接近してきた銀の福音に対し先制攻撃とばかりにサブアームに装備されている銃器を全て狙いを定め引き金を引く。
迫る弾幕に銀の福音はランダムに回避行動をとりながら避けつつ、一夏へと迫る。
カリスも同じくカリスアローからエネルギー弾を飛ばす。流石に弾幕に続いてエネルギー弾も飛んでくるとなると速度は下がるものの、それでも一夏達の方へと接近する事だけは止めなかった。
[一夏、アンタが持っているギャレンラウザーのカードを使うのよ!]
「う、うん!」
一夏はギャレンラウザーのカードホルダーからダイヤの2を取り出し、カードリーダーに通す。
《バレット》
そう鳴り一夏は避ける方向を予測して引き金を引く。放たれたエネルギー弾数発はずれるも何発かは銀の福音に命中し仰け反らせた。しかしすぐに体勢を立て直し迫る。
今度は本音がハートの6と書かれたカードを通す。
《トルネード》
そしてカリスアローを構えエネルギー弾を放つ。放たれたエネルギー弾は激しい風を纏った状態で飛んで行き銀の福音に命中する。風圧などが加わった為か一夏の攻撃以上に大きく仰け反らせた。
だが仰け反った銀の福音は追撃とばかりに迫る攻撃にスラスターを吹かしてその場から回避し、一夏達から距離をとった。
「イッチー、大丈夫?」
「はい」
そう言いながら一夏はサブアームの武器を交換していく。一瞬の沈黙が流れた後、銀の福音がまた奇声を上げながら鉤爪を構えながらスラスター全開で襲い掛かってくる。
一夏はギャレンラウザーを仕舞いブレイラウザーを取り出しスペードの2を通す。
《スラッシュ》
その音声がなったと同時に接近してきた銀の福音が勢いよく鉤爪で一夏に攻撃を仕掛けるも、一夏は対抗するように思いっ切りブレイラウザーを振るう。
すると
バキンッ!
と音が鳴り響く。その音は一夏が振ったブレイラウザーが銀の福音の鉤爪を破壊した音だった。その事に一夏も本音も驚き、銀の福音は破壊された鉤爪に一瞬動きが鈍くなるも、再度一夏に攻撃しようともう片方の手を振り下ろしてくるも
「させない!」
そう叫びながら本音が腰に付けているレンゲルラウザーを取り出し、腰のカードホルダーからクラブの2を取り出しカードを通す。
《スタッブ》
その音声がなった後、本音はレンゲルラウザーを突く様な体制になって振り下ろされようとしていた鉤爪を突く。
鉤爪は手の平毎吹き飛び、周囲に破損したパーツを飛び散らす。
本音と一夏は追撃とばかりに攻撃しようとしたが、銀の福音は二人の持っている武器は危険と判断し一旦距離をとる。
そして距離をとった銀の福音と一夏と本音。
「よぉし、鉤爪を破壊したから後はSEか肩のあれを破壊するだけだね」
「そうですね。あと、少し…ん?」
あとはSE切れか肩に付いているガイアメモリを破壊するだけと思っていた2人。すると突如銀の福音がの様子が変な事に気付く一夏。
それは金属の大きく軋む音だった。その音を発信しているのは銀の福音であった。一体何がと思う二人をよそに音は少しずつ大きくなりそして
『GYAAAAAA?!!!!???』
と奇声を上げたと同時に、銀の福音の破壊された鉤爪から新しい鉤爪が現れたのだ。
「ど、どうして!? 破壊したはずなのに!」
「何でぇ!?」
2人が驚いている中、アイラは冷静に新しく現れた鉤爪を分析する。拡大してその鉤爪を見た瞬間アイラは戦慄した。
[一夏、あれはただの鉤爪じゃないわ!]
[え? どういうこと?]
[あれを拡大してみたら、
[そ、それじゃああれは…]
[えぇ、自分の体の中にあるパーツとかを無理矢理引きちぎったりして鉤爪にしたのよ。戦闘に支障をきたさない部分なら問題無いと判断したんでしょうね]
[そ、そんな。ISがそんな事を!?]
[彼女の意思じゃないわ。恐らくガイアメモリって言う奴が無理矢理そうさせているのよ! あれを破壊しないと、銀の福音が完全にガラクタになるまで戦わせるわよ!]
そう言われ一夏は戦慄するも、ブレイラウザーを握る手に力が入る。
そして修復が終わったのか、配線などむき出し状態の鉤爪で襲い掛かる銀の福音。一夏や本音は何とか応戦するべくライフルやカリスアローで攻撃する。回避しながら攻撃する一夏は一か八かとある賭けをする事に。
「ほ、本音さん!」
『なぁに、イッチー』
「銀の福音の視界を防ぐ事は出来ませんか?」
『……やってみる!』
そう言い本音はレンゲルラウザーを取り出しクラブの9を通す。
《スモッグ》
音声が鳴るとレンゲルラウザーから煙幕が出現し、銀の福音の視界を塞いだ。周囲に対しセンサーで動きを見守る銀の福音。すると突如自身の背後から現れたバレットホーク。バレットホークはバタリングラムで銀の福音に殴りかった。センサーを張り巡らせていた銀の福音は背後から襲い掛かったバレットホークに対し鉤爪で応戦。防がれるも、もう片方の鉤爪を振り下ろしバレットホークを攻撃する。
片方の鉤爪を防いでいた為、もう片方の鉤爪には対処できなかったバレットホークは右腕を大きく破損し動きが鈍くなる。
鈍くなったことを見逃すはずなく、銀の福音はそのままバレットホークの頭を掴み握り潰そうとする。
ミシミシと音が鳴り響く。
だが、突如横から
《スラッシュ》
《サンダー》
《ライトニングスラッシュ》
その音声が鳴り響き、煙幕の名から突如
そのまま一夏は一気に銀の福音との間合いを詰め、肩に付いたガイアメモリに向かって振り下ろした。
バチバチと大きな音を立てながら、振り終える一夏。
一夏は顔を上げるとガイアメモリがバキンと音を立てながら真っ二つに折れた。
ガイアメモリが折れたと同時に、銀の福音のバイザーから光が消えシュンとエネルギー切れを起こしたように力尽き、一夏はそっとそれを支えた。
銀の福音が力尽きたと同時に捕まれてたバレットホークもスゥーと消え去った。
一夏が取った作戦、それは視界を遮り、囮を使って隙を作り油断している時にガイアメモリを切ろうとという物だった。
本音に煙幕を張ってもらった後、一夏はギャレンラウザーを取り出し、ダイヤの9を通したのだ。
ダイヤの9の能力は自身と同じ分身を作りだす事が出来る物だった。
その為銀の福音の狙いは自分という事を逆手に取り、分身に銀の福音の背後から強襲させ隙を作ってもらい、銀の福音が油断した隙にブレイラウザーのカードコンボを使ってガイアメモリを斬ったのだ。
「イッチー、上手くいったね!」
本音がそう言い笑顔で一夏の傍に近寄る。
「は、はい。なんとかうまくいって良かったです」
「そうだね。それじゃあ早く帰ろぉ」
そう言われ一夏ははい。と返事を返し近寄って来た無人ヘリに銀の福音を吊るし、2人はヘリに乗り込むとそのまま旅館へと向かって飛んで行った。
次回予告
無事に銀の福音を止めることが出来た一夏達。
千冬達からのお叱りもしっかりと受けて。
旅館でそんな事が起きている中、とある場所ではある事が起きていた。
次回
平穏を取り戻した旅館