女性恐怖症の一夏君 IFルート   作:のんびり日和

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最終話

銀の福音事件から数日が経った。

あれからの出来事をまず説明しよう。

 

まず暴走した銀の福音は束の手で隅々まで調べられ安全が確認された。そして停止させた翌日にアメリカ政府から派遣された役人と軍人、そして銀の福音のパイロットが銀の福音を回収しにやって来た。

来た際銀の福音のパイロットであるナターシャは腕や体の装甲がボロボロの状態になった銀の福音に涙を浮かべながら

 

「ごめんね、守ってあげられなくて」

 

と零しながらそっと手を添えていた。

そして銀の福音をトラックに載せた後、アメリカ政府の役人やナターシャ達は千冬達に感謝の言葉を送り去っていった。

 

そして一夏達専用機持ちと本音はと言うと学園に戻ったと同時に学園上層部が罰則をどうするかで話し合いが行われた。

一夏と本音は無許可とはいえ暴走した銀の福音を停止させ任務を達成させたという偉業があった。更に銀の福音のパイロットであるナターシャも政府を通じて2人の罰則の免除、もしくは軽減をと願い出た。

その事から免除とまではいかなかったが、夏休み中の数日間学園の奉仕活動と反省文作成が罰則として決まった。

 

それに対してセシリア達はと言うと、無許可の出撃の上にISをオーバーホールが必要なまで破損させたとして学園及び政府から厳しい罰則が下ることが決定した。

それぞれの政府は無許可の出撃の上に大事なISを破損させた4人を代表候補生から外そうと考えていた。

そんな時に待ったをかけたのはなんとPEC社の社長、Mr.Kであった。

彼は

 

『夏休み一杯までうちの会社の新人として仮入社してもらい常識やら道徳について学んでもらうのはどうだろうか? それで夏休み終了後、彼女達がしっかりと反省しているかどうか見極めてからでもいいと思いますが?』

 

と提案してきたのだ。各国の政府はMr.Kの提案に暫し頭を悩ませた後、その提案を受け入れることにしたのだった。

学園側もIS学園に残すよりも社会という荒波で揉み解されれば少しはましな性格になると思い、監視と道徳などの授業を行う教師を派遣する事を決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

そしてそれから数日が経ったある日、一夏と本音はと言うと

 

「それでは、今日も宜しくお願いしますね」

 

「はい」

 

「はぁ~い」

 

作業着に麦わら帽子を被った轡木とジャージ姿に麦わら帽子を被った一夏と本音はそれぞれクワや剪定鋏などを持って雑草取りだとか伸びすぎた枝などを剪定していた。

 

「それにしても学園長先生、何時もこの学園の植物とか手入れしているんですか?」

 

「いやいや、私でも出来る所は限られているからね。出来るだけ人の目につくところは自分でやって、他は業者に頼んだりしているよ」

 

「へぇ~」

 

そう言いながら一夏は小さな剪定鋏で飛び出ている枝をパチン、パチンと切って行く。

 

すると

 

【轡木殿、この木はどう言いた感じで剪定しましょうか?(´・ω・`)】

 

「そうですねぇ、実は私少し夢がありまして」

 

【ほうほう、どう言った夢でしょうか?('ω')】

 

「実はこんな感じの――」

 

【ほうほう、これはこれは(・∀・)】

 

そして2人は街路樹をどうするのか話し合いを始めた。さて何故メサが居るかと言うと、まぁ単純に一夏が心配だった為であった。

 

「何かあの2人楽しそうに話し合ってるねぇ」

 

「う、うん」

 

2人が楽しそうに街路樹をどうするのか話し合っているなか一夏と本音は談笑を交えながら雑草取りを続けていく。

その後2人の様子を見に千冬がやって来ると、泥が付いた顔で休憩する一夏達に真面目にやっているなと感心していたが、

 

「な、なんだこれは…」

 

と学園のメイン道路にある街路樹が何故か動物の形に切られており、まるでテーマパークの正面玄関の通路の様な感じであった。

 

「い、一夏。これは、一体…」

 

「えっと、学園長先生とメサさんがなんか嬉しそうにやってたよ」

 

「はい。なんか学園長先生の夢って言ってましたぁ」

 

本音と一夏の説明に千冬は茫然と言った表情を浮かべていると、メサとタオルで汗を拭う轡木がやって来た。

 

「おや、織斑先生。見回りですか?」

 

「…が、学園長! 何故街路樹を動物の様に切ったのですか! これじゃあテーマパークですよ!」

 

「良いじゃないですか。気難しい学園と言う訳では無く、健やかにのびのびと学ぶ学園と捉えてもらえると思いますし」

 

「いや、だからといって動物風に切る必要ないじゃないですか!」

 

まぁまぁ。と轡木は笑顔を浮かべる轡木に、千冬は貴方という人はぁ。と頭を抱えるのであった。

 

「――それでは本日もお疲れ様でした」

 

「はい、お疲れ様でした」

 

「お疲れ様でしたぁ」

 

お昼に作業が終わり一夏と本音は轡木に挨拶したと部屋へと戻りそれぞれシャワーをした後食堂へとやって来た。

夏休みとは言え学園内には教師や自習に励む為に残った生徒達が居る為、食堂は少数の人数で運営されていた。一夏と本音はそれぞれお弁当を持って食堂の隅の席に着く。

 

「いただきます」

 

「いただきまぁす」

 

と言いそれぞれご飯を食べ始めた。普段ならワイワイと賑やかな食堂も今は殆んど人は居らず、本を片手にご飯を食べる上級生や、教師達が少数いるくらいだった。

ご飯を食べていると本音が口を開く。

 

「ねぇねぇ、イッチー」

 

「はい、なんですか?」

 

「お昼ご飯食べた後って、暇ぁ?」

 

「えっと、はい」

 

「それじゃあデート行かない?」

 

「ふぇ、で、デートですかぁ?」

 

一夏はデートと言う言葉に顔を真っ赤にさせながら口をパクパクさせる。

 

「あ、あにょ、で、デートは、その、好きになった、人同士がその、する者で、あの、ぼ、僕なんかと一緒に、その、デートはぁ…」

 

「…フフフ。イッチー、冗談だよ」

 

「ふぇ?」

 

「デートと言う名の買い物だよ」

 

「( ゚д゚)ポカーン」

 

冗談と言いクスクスと笑う本音に一夏は未だに顔を赤くした状態で茫然と言った表情を浮かべていた。

 

「ごめんごめん、えへへ。それで買い物一緒に来てくれるぅ?」

 

「えぇと、はい。買い物…でしたら」

 

まだ先程のデートと言う単語に驚いているのか、若干あうあうと漏らす一夏。

 

(今はまだ友達として買い物に行くくらいだけど、何時かは本当に買い物をしにデートに行こうねイッチー)

 

 

 

さてその頃専用機持ち達はと言うと

 

「うぅうぅ~、大変じゃないこれぇ」

 

「ど、どうして貴族である私が掃除なんて…」

 

「喋ってないで手を動かせ。何時まで経っても終わらんぞ」

 

「そうだよ。昨日だって定時で終われると思ったのにやり残しが結構残ってるってカスミさんに怒られたんだよぉ」

 

それぞれ雑巾だったり、モップを持って掃除をしていた。彼女達はPEC社の下っ端として入社、そして最初に任されたのは社の掃除であった。Mr.Kは

 

「新入社員には研修としてまず掃除を学びます。そうすることで会社の事をよく知ることが出来るし、小さな違和感にも気付きやすくなるからね」

 

といい4人を掃除部門へと送ったのだ。無論、掃除が終われば会社のミーティングルームの一つをお借りして道徳や常識の授業も行われている。因みに寝泊まりは会社横にある寮にて1部屋に一緒に暮らしている。

 

「ちゃんとやっているようだな、お前達」

 

「あ、織斑先生」

 

「しっかりとPEC社を綺麗にするんだぞ。特にオルコット、お前は以前にPEC社の社長護衛の方に迷惑を掛けているんだからしっかりとやれよ」

 

「「「「……はい」」」」

 

そう言い4人元を去る千冬。その後4人は隅々まで綺麗にしようと何か頑張って掃除をするのであった。

 

 

 

 

 

さて、学園からPEC社に来た千冬だがただあの4人を見に来たのではない。ある目的があって来たのだ。

それは旅館から帰って来て数日が経ったある日の事であった。

 

千冬はその時職員室にて書類整理をしていた。するとポケットに入れていた仕事用の携帯が震え、それを取り出し画面を見ると『学園警備部隊』と表示されていた。何かあったのかと思い千冬は通話ボタンを押し耳元に当てる。

 

「もしもし、織斑だがどうした?」

 

『戸室です。織斑先生、篠ノ之さんを如何にかしてください』

 

「また何か叫んでいるのか?」

 

『はい。また大声で自分は悪くない。篠ノ之束の妹だぞと叫びまくっているんですよ。おまけ独居房内で暴れまくったりするんで手に負えませんよ』

 

「全くアイツは…。分かりました、此方でも対処を考えておきます」

 

『お願いします』

 

そう言い通話が切れた。千冬ははぁ。と重いため息を吐く。

箒が独居房に放り込まれたのは旅館にて部屋からの無断退出、更に無許可でISに乗り込み暴れまわったからだ。

学園に戻った後、千冬は箒を反省させるために独居房に放り込み頭を冷やさせようとしましたが、全くといっていい程効果は無かった。

当初は専用機持ち達と同様にPEC社に行かせようとも考えたが、また癇癪を起して暴れられれば迷惑を掛けると思い却下されたのだ。

 

(さて、あの馬鹿をどうやって反省させようか…)

 

大きな悩みの種が残っている事に千冬は頭を悩ませていると、今度は学園の固定電話が鳴り響く。誰かがそれに応答すると

 

「織斑先生」

 

「はい、なんですか?」

 

「PEC社の社長様からお電話です」

 

「Mr.Kから? 分かりました、替わります」

 

そう言い千冬は何故私に?と疑問を浮かべながらも受話器を取り応答ボタンを押す。

 

「はい、お電話替わりました、織斑です」

 

『お久しぶりです、織斑先生。PEC社のMr.Kです』

 

「お久しぶりです。それで、どう言ったご用件でしょうか?」

 

『実はとある筋から聞いた話ですが、篠ノ之博士の妹さんに手を焼いているそうですね』

 

「……リソースについてお聞きしたいところですが、今は我慢します。それが何か?」

 

『一度我が社に連れて来て貰えませんか?』

 

「どうしてまた?」

 

『彼女が暴れるのは、恐らく過去の記憶に縋り付いているからだと思います。恐らく要人保護プログラムが行われ実質的に孤独となった彼女が縋ったのだが過去の記憶でしょう。その結果、過去に縋りつき過ぎた為に体は成長しても、心は成長できなかったのだと考えられます』

 

「…つまり今までアイツが暴れたのは、子供の癇癪みたいなものですか?」

 

『そうです。ですが彼女の場合はもっと質の悪い物です。余りにも過去に固執し続けた余りに今を受け入れられない程になっているのです。だから今を受け入れられないから、自分の手で無理矢理戻そうとするのです』

 

「なるほど。それで、そちらに連れて行くのとどう関係するのですか?」

 

『身近な人物が幾ら言っても受け入れられません。なら第3者である私が彼女に今を見る様に諭します』

 

「……上手く行く保障は無いと思いますが」

 

『えぇ、分かっています。ですが、このまま放っておいてももっとひどい状態になる恐れがあると思います。使える手段は使って行くのが良いと思います』

 

「……分かりました。学園長には私が説明して何とか許可を貰って来ます」

 

『では、お待ちしております』

 

そう言い電話が切れた。

そして千冬は学園長に事情を話し箒を連れ出す許可を貰い、そして今日PEC社へと連れてきたのだ。

箒は他の武装した教師部隊に囲まれながらPEC社の地下にある訓練所へと連れて来られていた。千冬は専用機持ち達の様子を見た後追い付き訓練部屋へと入って来た。

箒の前にはMr.Kが立っておりその傍には一輝がいた。

 

「すいませんが、彼女の手錠を外してください。その後この部屋からも退出を」

 

「し、しかし」

 

そう言い教師部隊は千冬へと顔を向ける。千冬はその真意を聞こうと口を開く。

 

「どうして手錠を解除するようにと?」

 

「口で言っても聞かない子には、少々手荒い事をしてでも言い聞かせないといけませんから」

 

「……分かりました。ですが、監視として私だけ部屋に残させてください」

 

「分かりました」

 

了承の言葉が貰えると千冬は教師部隊に手錠を外すように指示する。教師部隊は指示に従い手錠を解除した後部屋から出て行った。

残ったMr.Kと一輝、そして箒と千冬。

 

「一輝、織斑先生に椅子のご用意を。後手は出さなくていいからね」

 

「畏まりました」

 

そう言い一輝は千冬と共に部屋の隅へと向かい、椅子の準備をする。

部屋の中央に残った箒とMr.K。

 

「さて、お久しぶりですね篠ノ之さん」

 

「私に一体何の用だ?」

 

「単刀直入に言うならば、貴女にはそろそろ過去ではなく今を見て貰おう思ってね」

 

「過去だと?」

 

「そう。何時までも過去の思い出に縋り付いて、昔と違うからと癇癪を起して暴れる子供でいるなと言っているんです」

 

Mr.Kがそう言うと、箒は目くじらを立てて拳を握りしめる。

 

「五月蠅い! お前に何が分かるっているんだぁ!」

 

そう叫びながら殴り掛かる箒。だがMr.Kはそれを容易く拳を受け止めそのまま箒を放り投げた。

投げられた箒は床を転がった後、また殴り掛かるも受け止められ投げられた。

それが何度も繰り返された。

 

「いい加減にしたらどうです? そうやって今が受け入れられないからって暴力で解決しようなんて、幼稚過ぎますよ」

 

「うるさいうるさい、うるさぁい!」

 

そう叫びながら箒は近くにあった木刀を掴みMr.Kに振りかぶる。千冬は流石に不味いと思い立ち上がろうとしたが、傍に居た一輝がそれを手で制した。

そうこうしている間に木刀がMr.Kに振り下ろされた。

 

バキッ!

 

と鈍い音が鳴り響いた。そして

 

カランカラン

 

と床を転がる木刀の先。

 

「「……」」

 

千冬や箒は目の前で起きた事に信じられず目を見張っていた。何が起きたかと言うと、振り下ろされた木刀に対しMr.Kは拳を振って振り下ろされた木刀をへし折ったのだ。

Mr.Kは拳に着いた木片を振り払うかのように手をグッパッと繰り返す。

 

「危ないですね、突然そんな武器を使って来るなんて」

 

何事も無かったように振舞うMr.K。

 

「さて、武器を使って来た以上こちらも少し本気でやらせてもらいますね」

 

そう言い雰囲気を少しばかり変えるMr.K。部屋の端に居た千冬でさえもその変わり様に気付けた。その雰囲気に千冬は頬に冷たく汗が流れるのを感じた。

千冬でさえ冷や汗を流すほどであるならば目の前に立っている箒は尋常ではない物を感じていた。

 

「あぁあぁあ…」

 

「では、行きますよ」

 

そう言い構えた瞬間、Mr.Kは一気に間合いを詰め箒の喉元に拳を当てる。拳を当てられた箒は一瞬息が出来なくなり動きが鈍る。

その瞬間に箒は自身の体に何度も拳や蹴りが入れられていく。腕はへし折られ足は変な方向に曲がろうともMr.Kは止めることは無かった。そして箒の意識がもう無くなりそうと思った瞬間

 

パチン!

 

と音が鳴り響いた。ハッとなった箒の前にはMr.Kが自身の顔の前で指パッチンをしていた。そして箒は自身の腕や脚を確認するが、何処も折れたり曲がっていなかった。

箒が震えた様子で自身の体を調べる姿に千冬は一体何が起きたんだと疑問に満ちた顔を浮かべていた。

その様子に傍に居た一輝が口を開く。

 

「不思議がられていますね」

 

「え、えぇ。一体アイツに何があったんですか? ただ立っていただけなのに、Mr.Kが指パッチンをした瞬間怯えた感じになって自分の体を調べるなんて」

 

そう、千冬は傍で見ていたがMr.Kが箒に対し殴ったり蹴ったり更に腕をへし折ったりなどはしていなかった。むしろただ立っていただけだった。

 

「彼女は幻を見ていたんですよ」

 

「幻、ですか?」

 

「えぇ。社長が先程構えた時に彼女に催眠術を掛けたのです。その結果彼女は現実ではない光景を現実だと思い込みあぁ言った状態になったんだと思います。流石に何を見せられたのかは私には分かりませんが」

 

一輝の説明に何とも言えない表情となる千冬。

 

「さて、箒さん」

 

Mr.Kがそう呼ぶと、目の前の人物に怯える箒はヒッ!と声を上げ尻もちをつく。

 

「先程貴女が見たのはただの幻です。貴女には何もしていません。ですが――」

 

そう言い見下ろしながら黒笑を浮かべるMr.K。

 

「これは警告です。貴女が過去に縋り続け、そして織斑君達に迷惑を掛ける様であればその幻が本当になるかもしれませんよ?」

 

そう言った瞬間、箒は白目をむいてドサッと倒れてしまった。

倒れた箒に対しMr.Kはそっと近づき、そして体を持ち上げ千冬達の近くにあるベンチへと寝かせる。

白目をむいて倒れた箒に千冬はMr.Kに問う。

 

「あの、コイツは大丈夫でしょうか?」

 

「すこしばかり脅しをしましたからね。恐らく大丈夫だと思います。目を覚ますまで此処で寝かせておいてあげて下さい。私は少々席を外します」

 

「わ、分かりました」

 

そう言いMr.Kは一輝と共に訓練室から退室して行った。残った千冬は箒が目を覚ますまで椅子に座って目を瞑って暫く待つことにした。

訓練室から退室したMr.K事陽太郎と一輝は無人の廊下を歩いていた。

 

「それで義兄さん。どうしてまた部屋から退出を?」

 

「ん? あぁ、箒さんの入社準備をね」

 

「入社を? でも大丈夫なの?」

 

「大丈夫。もう彼女が暴れることは無いよ」

 

そう言い陽太郎はポケットから黒い野球ボールほどの球体を出す。

 

「それは?」

 

「彼女の中にあったどす黒く染まった心だよ」

 

「心? 大丈夫なの、心なんて切り取って」

 

「大丈夫。黒い部分しか切り取らなかったからね。白い部分もあったからそれから少しずつ戻っていくよ」

 

「白い部分? それって…」

 

一輝の言葉に陽太郎はフッと笑みを浮かべる。

 

「彼女の心は全部黒くなったわけじゃない。まだ良心が残っていたようだよ」

 

「なるほど。なら、もう大丈夫かもしれないね」

 

そう言いながら安心したような顔で社長室へと向かった。

 

 

それから数分後

 

「……ぅんん……」

 

「気が付いたか、箒」

 

気が付いた箒に気付いた千冬がそう声を掛ける。気が付いた箒はゆっくりと体を起き上がらせ辺りを見渡す。

 

「あの、千冬さん」

 

「何があったのか憶えているか?」

 

「……はい」

 

そう答える箒に千冬は違和感を覚えた。

 

(気絶する前と違って物腰が柔らかくなった?)

 

怪訝そうな顔を浮かべながら持っていたミネラルウォーターを差し出す。箒はありがとうございます。と綺麗にお辞儀をしてそれを口に含む。すると訓練室の扉が開きMr.Kと一輝が中へと入って来た。

 

「気が付いたんですね、篠ノ之さん」

 

「は、はい」

 

そう返事をした後、箒はミネラルウォーターを置くと突然

 

「千冬さん、そして社長様。これまで多大なご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした」

 

と綺麗に土下座をしたのだ。その行動に千冬は目を大きく見開き驚きの表情を浮かべていた。

 

「……ご自分が今まで何をしてきたのか、自覚はあるのですね?」

 

「はい、私は到底許されない様な事を数多くしてきました」

 

「ご自身はどうしたいですか?」

 

「許されるのでしたら、どのような所業でもいたす所存です」

 

そう答える箒にMr.Kはチラッと千冬に目を向ける。視線に気付いた千冬はそっと口を開く。

 

「箒、その言葉に嘘は無いんだな?」

 

千冬の問いに土下座を止め正座の状態で千冬の目をしっかりと見て

 

「はい」

 

と答えた。箒の目をジッと見つめる千冬は、箒が本当に反省していると感じ取った。

 

「分かった。なら学園に戻り次第、お前の処罰を「織斑先生そのことでしたら問題ありませんよ」と言いますと?」

 

「もう処罰の方は私の方で用意しておきました。勿論学園長には許可を頂いております」

 

千冬の言葉を遮りMr.Kは笑顔でそう告げた。

 

 

 

 

 

「―――お疲れ様です」

 

そう言いながら箒は清掃姿でPEC社の入り口を掃除しつつ、ロビーに行きかう一人一人にそう挨拶を交わしていた。

 

「驚きました。まさか、あんなにも変わるとは思いませんでした」

 

「えぇ。これで過去ではなく未来を見ることで彼女も少しは前へと進めるでしょう。その意気込みの為に自らの伸ばしていた髪を切られたのですからね」

 

そう言い千冬とMr.Kは箒を見つめる。

そう、彼女は今ポニーテール出来る程長い髪だったのが、今はショートヘアへと変わっているのだ。そうなったのは訓練室に居る時の事だった。

箒は千冬に頼み伸ばした髪を切って欲しいと頼んだのだ。戒めとして、そしてもう過去ではなく未来を見据えて生きていくと意志を固めるためと。

 

「本当に貴方には多くの借りが出来ました。本当ありがとうございます」

 

「いえいえ。私は未来ある若者が足踏みしているのを少し手助けしただけですよ。これから先は織斑先生に頼みます」

 

「貴方にそう言われたのであれば、しっかりと成し遂げなければなりませんね」

 

「フッ。期待しております、織斑先生。では、これで」

 

そう言いMr.Kと一輝は去っていき、千冬はその姿が見えなくなるまで腰を曲げてお礼するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談

※織斑一夏

夏休み中、学園長と本音、そしてメサとで学園の清掃と整備を手伝いを続けた。

その後2学期でも本音と一緒に行動し続け色々なトラブルに巻き込まれそうになりながらも、本音や1組の生徒達ともに解決し楽しい学園生活を送り続けている。

 

※布仏本音

一夏同様楽しい学園生活を送り続けており、今は一夏に友達としてではなく一歩先の関係になれるように日々精進している。

因みに姉である虚曰く、「本音があんなにも頑張るなんて…。まぁ、可愛い義弟ができるのは楽しみですが」との事

 

 

※篠ノ之箒

訓練所での出来事以降、癇癪を起したりすることなく夏休み期間中真面目に会社の清掃や授業に受けていた。

そして2学期が始まった後、教室にて1組の生徒達全員に今までの非礼を詫びた。特に一夏に対しては土下座までして謝罪をした。

それ以降物腰が柔らかくなった箒に対して、生徒達は少しずつ打ち解けて仲良く出来た。

 

※専用機持ち達

彼女達は何とか政府からお許しを頂き代表候補生としては何とか留まる事が出来た。だが、専用機はそれぞれ剥奪された。

シャルロットは企業代表の為、専用機を取り上げられた為企業代表ではなくなったが、温情として卒業まで学園在学を許された。

夏休み終了後学園へと戻って来たが、彼女達は問題児として学園上層部にも目を付けられてしまった為、学園の隅に設けられた特別教室という名の隔離教室へと移され、卒業までそこにいることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かの暗いオフィス。其処では一人の人物がデスクで何か作業をしていた。その傍には赤い刃の刀が掛かっていた。するとその人物は突如口を開く。

 

「お帰り、トリガー」

 

そう声を掛けると、暗闇からトリガードーパントが現れ片膝をつき右手を胸に当てながら首を垂れる。

 

「ただいま戻りました、(マスター)

 

「ずいぶん遅かったじゃん、道草?」

 

「いえ、例の女を始末する際に少々妙な連中が居り、女と一緒に始末しようと考えたのですが自分では到底敵わない連中だと察し、女を始末して姿をくらますのに少々時間がかかりました」

 

「妙な連中? どんな奴らだった?」

 

「1人は白髪のセミロングで深紅のような眼をした男、もう1人が黒短髪の深紫色の眼をした男でした」

 

「……なるほど、恐らく煉獄の兄弟だろう。転生者を狩るっていう噂の連中で、俺が持っているコイツと同じような物を持っている奴らだ」

 

「なるほど。交戦しなくて良かった思います」

 

「そうだな。大事な部下がいなくなるのは俺が困る」

 

「…有難きお言葉」

 

「それじゃあゆっくり休んでくれ。また任務があったら呼ぶわ」

 

「はっ。失礼します」

 

そう言いトリガードーパントは立ち上がって暗闇の中へと消えて行った。一人残った人物は組んだ両手を机の上に置き笑みを浮かべる。

 

「やっぱりこの世界にもいたのか。まぁ、いいさ。俺の邪魔さえしなければ此方から手を出すつもりはないからな」

 

そう言いってその人物も立ち上がって暗闇の中へと消えて行った。




これにて女性恐怖症の一夏君IFルートの終了です。
長い事投稿期間が空いたり、誤字脱字に元の女性恐怖症の一夏君から分離させたりと皆さんにご迷惑を掛けて申し訳ありませんでいた。

次回作や今書いている作品もまた皆様に楽しんで頂けるよう頑張って執筆していきます。

それでは本当にありがとうございました!



え? 最後の人物? その正体はいずれまた…
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