Mr.Kこと陽太郎がアリーナに到着するほんの数十分前のこと
観客席では生徒達が外へとつながるシャッターを必死に叩き、助けを求めていた。入り口前は押し合い等が起きており、誰かに転ばされ手足等を踏まれる生徒などが続出していた。
「開けてぇ! 死にたく『おい、聞こえるかっ?』えっ!? だ、誰かいるの? た、助けてぇ!」
一人の生徒が外に居る誰かの声が聞こえ声を荒げながら助けを求める。同じく声を聴いた生徒達もシャッターを叩きながら助けを求める。
『シャッターがロックされていて開かない。だから叩き壊して此処を開けるから、全員シャッターの前から下がるんだ!』
そう声が聞こえると扉の前に立っていた生徒達は大声をあげながら、救助が来たから下がってと叫び続け距離をとった。
シャッターの前に居た人物、それは鬼崎一輝だった。彼は鞘に納めていた刀、【サソードヤイバー】を手に取り構える。
彼の構える刀の強度と切れ味はISの近接用武器でさえも凌駕する物である。
「はぁっ!!!」
一輝は降りているシャッターに向かってサソードヤイバーを振る。バキンと音が鳴り響き、シャッターは真っ二つに両断された。
バタンとシャッターが観客席側に向かって倒れ、道が切り開かれた。観客席の生徒達は驚きの余り固まっていたが
「何をしている! 早く避難しないか!」
一輝の一喝に生徒達は我に返り、避難を開始していく。先ほどとは打って変わり落ち着きながら足早に避難していく生徒達。一輝は生徒達の避難を見守っていると、2人程の生徒が避難していく生徒達から出て行き何処かに向かっていく。その後姿を見た一輝はすぐさまその後を追った。
しばし追いかけた後廊下の曲がり角で言い合いが起こっていた。一輝はそぉと覗き込むと
「えぇい、何で付いてくる! さっさと避難すればいいだろ! 私は一夏に喝を入れに行かねばならんのだ!」
「それは貴女ですわ! わたくしが一夏さんをお救いに行きますから、貴女が避難すればいいじゃありませんか!」
と箒とセシリアがいがみ合いを起こしていた。一輝は呆れた様な表情を浮かべながら二人の前に姿を現す。
「おい、其処で何をしている?」
「っ!? だ、誰ですの!」
「企業席で観戦していた者だ。訳あって避難の手伝いをしている。それで、一体何をしてる? 避難指示が出ているだろ」
一輝は2人の目的は察しているが、確認の為2人に問いただした。
「私は一夏に喝を入れに行かねばならんのだ、邪魔するな!」
「私も一夏さんをお救いに行かねばなりませんの。邪魔しないでください!」
2人の言葉に一輝はまた呆れた様な表情でため息を吐く。
「君達の目的は分かった。だがそれで行けとは言えない。大人しく避難しろ」
一輝は目を鋭くさせながら今来た道を戻れと言う。だが二人は動こうとしない。仕方がないと思い一輝は無理にでも避難させようと一歩踏み出した瞬間
「邪魔を、するなぁぁぁ!!」
そう叫びながら箒は一輝に殴り掛かってくるが、一輝は冷静に攻撃を避け手刀で箒の首裏を叩き意識を刈り取った。意識を失った箒はそのまま倒れ込むと、一輝は箒からセシリアの方に顔を向ける。セシリアは突然の事に驚き固まっていたが、一輝に顔を向けられヒッ。と悲鳴を上げる。
「もう一度言う。さっさと避難しろ」
若干ドスの入った声で告げられたセシリアはガタガタと震えながら首を何度も振り走って、来た道を戻って行った。
残った一輝はネクタイを解き、箒の両腕を背に回しネクタイで拘束し避難所へと連行していった。
その頃一夏は救助に来るというMr.Kが来るまで現状を持たせようと、アヴァロンやサブアームなどの銃火器で牽制射撃を続けていた。
無論バレットホークの拡張領域には無限に弾がある訳では無い。その為アイラが効果的な牽制射撃方法を一夏に遂次指示し、弾の消費を出来るだけ抑えつつ、敵を近づけない様にしていた。
〈一夏、ウイングの左サブアームのライフルの弾が切れそうよ!〉
〈わ、分かった。最後の一丁出すよ!〉
アイラの言葉に一夏は直ぐに最後の一丁を出せるようしていると、ウイングの左のサブアームが弾切れを起こしライフルを放り捨てた。一夏はすぐさま次のライフルを拡張領域から出しサブアームに持たせ、すぐさま牽制射撃を再開させた。
一夏の背後に居た鈴は悔しそうな表情で佇んでいた。
管制室の千冬から大人しくして居ろと怒鳴られたからだ。そして最も腹ただしいのは自分だった。
何も出来ず、ただ立って救助を待つだけしかできないという自分に腹立っていたのだ。
だが千冬に指摘された通り自身の甲龍は既にSEも少なく、龍砲も黒色のISに攻撃を受けたせいか片方は動作が可笑しく、もう片方は完全に沈黙してしまっていた。
(何も出来ずに、私はずっと此処で佇んでるだけ? ……なんでよ。何で私がアンタに守られる立場に居るのよ。アタシがアンタを守るって決めたのに、何でよ……)
そう思いながら拳を震わせる。
鈴は昔から気弱ながらも周りに慕われる一夏を初めて見たときに感じたのが
【守ってあげたい】
【アタシがどんなことからも守る】
そんな思いを抱きどんな事からも一夏を守ろうと強くなろうとした。そして今に至る。だが現実はどうだ。試合でも一夏の方が優勢で、そして現在も自分の前に立って戦っている。
気弱なのに一生懸命立ち向かおうとする姿。
鈴はその姿に自分の今までの努力が全て無駄だった。そのような思いを感じずにはいられなかった。
(…何でよ。何で、アンタが前に出て戦ってるのよ。アタシがアンタの前に戦っているはずなのに…。……何でよ!)
苛立ち、悔しさ、悲しみ。色々な感情が鈴を襲い掛かり、そして
「ああぁぁぁぁ!!!」
突然の叫び声にアイラは目を見開きセンサーで確認しようとした瞬間、機体の真横を通り過ぎる甲龍。
〈あの馬鹿、何考えてんのよ!〉
〈と、止めないと!〉
敵に向かって突撃していった鈴は双天牙月を力一杯振るう。だが黒色のISはサッと避け、アックスを振り下ろしてくる。
鈴は振り下ろしてくるアックスを弾き飛ばそうとするが、数体がパイルバンカーを構えながら懐に潜り込もうとしていた。
(避けれない!?)
激情状態で敵に突っ込んでしまい、目の前の事しか見えていなかった為接近してくるパイルバンカーに対処しようにも体が硬直してしまい動かない。
このままではやられる。そう思っていた瞬間突然背後からタックルを受けそのまま押し飛ばされる。
残り少ないSEが尽き、鈴は地面を勢いよく転ぶ。
鈴は押し飛ばされた際に見えたのは、一夏のバレットホークだった。
一夏は鈴を押し飛ばした後すぐに回避に移るが、アックスの攻撃、更にパイルバンカーの攻撃を受け吹き飛ばされる。
壁に激突し凭れる様に倒れ込む一夏。ISのSEが尽きたのかISが強制解除され、体が現れると額からは血が流れ出ていた。
(あぁ、やばい。体に、力が……)
壁に突き飛ばされた一夏は体に力が入らず目の前の光景しか見る事しか出来なかった。
〈一夏、しっかりしなさい! 早く逃げるのよ!〉
(アイラが、叫んでる。…逃げないと。でも、体が…)
薄れゆく意識の中、一夏は逃げようと体を動かそうとするが全く言う事を聞かない。
此処で死ぬ。一夏はそう思い始めた瞬間、突然アリーナとピットを繋ぐ扉が吹き飛んだ。其処から現れたのは自分と同じフルスキンのISだった。
(……だ、誰だろう?)
そう思っていると一機のISが自身に向かってアックスをもって迫ってくるのが見えた。もう間近まで迫ってくるISに、もう駄目だ。と直感した瞬間、黒色のISの胸から腕が突き出た。
そして勢いよく腕が引き抜かれ、ISが倒れるとその背後に居たのはフルスキンのISだった。
「間に合って良かった。此処までよく耐え抜いたね、後は私に任せてくれ」
フルスキンのISから男性の声で、安心させる声が聞こえると一夏はコクリと頷くと同時に意識を手放した。
一夏に差し迫っていたISを倒したMr.Kこと陽太郎が変身した仮面ライダー隷汽は背後に居る残りの9機に目を向ける。
「さて、悪いが一瞬で片付けさせてもらう」
そう言い右手にナックルの様な装備、ガシャコンバグヴァイザーを装備する隷汽。黒色のISはアックスを構えながら散開しながら隷汽に迫る。隷汽は接近してくるISにガシャコンバグヴァイザーを変形させる。
『ギュ・イーン!』
機械音声が鳴り響き、ガシャコンバグヴァイザーの先についているチェーンソーが激しい音を鳴り響かせる。
隷汽は迫ってくるISの懐に潜り込んで次々に切り裂いていく。一機のISがパイルバンカーを撃ってくるが、隷汽の纏っている青紫色の何かに阻まれるどころか、攻撃したISは勢いよく吹き飛んで行く。
次々に斬り伏せていくと4機程が一斉に隷汽を囲んでアックスで叩き切ろうと迫る。
隷汽は焦ることなくガシャコンバグヴァイザーを回転させる。
『チュ・ドーン!』
機械音声が鳴り響き、ガシャコンバグヴァイザーがビームガンモードへと変形させ囲んできたISに向けビーム弾を放つ。
ビーム弾は真っ直ぐに機体に命中し、ブスブスと黒煙を上げながら撃ち倒される。
すると一機が逃げようと背を向ける。隷汽は逃がすまいと、ベルトにパスを重ねる。すると隷汽の体全体に青黒い鬼火の様な物が現れ纏まっていく。
そして鬼火は隷汽の右足に集まっていく。
隷汽はISに向かって飛び上がり後ろ回し蹴りを繰り出した。
ISは青黒い炎に包まれ、そして爆散した。
「ふぅ、あれで最後の様ですね。ん?」
隷汽は何かを感じ取り倒したIS達の方に顔を向けると続々と爆発していった。
「なるほど良い判断ですね。情報を一切渡さない為に貴重なコアも犠牲にするとは」
そう言いながら陽太郎は隷汽を解除しスーツ姿へと戻る。
こうしてアリーナ襲撃事件は終息となった。
次回予告
事件は終息し陽太郎と一輝は学園長室で報告を行ってから退室して行く。
廊下を歩く2人は今回の一件がまだ序章だと話し合う。
そしてある決断を下した。
次回
守る為の力~彼一人では辛い。もう一人必要だ~