この美しい世界で   作:リョー

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テスト前だというのにsao:ifにハマっちゃった。そして勢いで書いちゃった。


ベータテスト

 自分が本来見ている世界と何ら変わりない質感の石畳の上に、獰猛な怪物。この異質な組み合わせは最早見慣れてなにかあついものを感じるようになってきた。

 第二世代フルダイブ型VRマシン、ナーヴギアが販売され日本は沸いた。そしてその数ヶ月後、世界初のVRMMORPG、ソードアート・オンラインが発表されさらに日本は沸いたのは言うまでもない。

 当初はVRMMOに対して、というよりゲームに対して大した興味は持っていなかった自分だがここまでの熱狂具合をみると気になってしまうもので結局発売日当日に購入し、そして運よくベータテスターに選ばれ、ベータテスト最終日の今日に至るというわけだ。

 今までゲームはしたことが無かった自分だが、現実では出来ないことができるという初めての感覚に興奮を覚えて結果かなり上の階層まで攻略していた。しかし今日はベータテストの最終日ということも有ってか下の階層が名残惜しくなって自分はレベルの低いモンスターをほふっていた。そんなときのことだった。

 

「あ、あの、、えっと、、こんにちは!お話ししてもいいですか?」

 

声が聞こえ、振り返った自分の目の前に居たのは緑色の瞳に真っ直ぐな黒髪の少女だった。自分と同年代だろうか。少女の目は自分に合わせられていて、何より周りに自分達以外だれも居なかったから自分を指していわれていると直ぐに気付いた。

 気付いた自分は少女に首をかしげながらうなずいた。

 

「はじめまして。私、コハルっていいます」

 

名乗られたら名乗り返すのが礼儀ってものだろう。

 

「こちらこそはじめまして。俺はクロノ」

 

名乗るとコハルは話出した。

 

「クロノさん。こんなこというのは恥ずかしいんですが、実は私、ゲームが下手なんです。それもものすごく駄目なんです。

 VRMMOどころかゲームも初めてで、始める前にネットとかでいろいろしらべていたんだけどもう思っていたのと全然違っててね?

 攻撃は当たらないし、逃げ足ばっかり早くなって周りのみんなはどんどん強くなっていくのにちっともついていけなかったの」

 

「それでもちょっとだけうまくなったからこれから頑張ろうって思っていたらもう最終日。だから、、思いきってここにきたんだけど、、迷子にまでなっちゃって」

 

もう一度首を傾げた。

 

「大丈夫か?」

 

できるコメントはこれくらいだろう。コハルは顔を伏せて言った。

 

「一人でしゃべりすぎだよね。ごめんなさい。いままで心細かったからつい」

 

 クロノにコハルの気持ちはよくわかった。当のクロノもゲームは初めてで最初は何回でも死んだし、一人で進めていたから心細さも有った。

 

「今日で最後だけど私、このまま終わりたくないの。戦い方を、教えてくれませんか?」

 

 コハルに言われて少し考える。このあとはここら辺を彷徨きながらベータの最終日を終えるつもりだったが、ここでコハルを見捨てるのは、一人で戦って何度も死んだ自分を見捨て、笑った他のベータプレイヤーと同じことだった。

 

「わかった。教えるよ」

 

そう答えるとコハルは伏せていた顔を上げて笑った。

 

「ありがとう!よろしくお願いします!」

 

 そして自分は両手剣を鞘から抜いて握った。目の前にいるのは猪型のモンスター。この程度ならコハルでも倒せるだろう。最初に手本を見せるために先ず自分がモンスターに向き合う。

 

「先ず倒すモンスターを見つけたら武器を構えて警戒する。そして間合いを詰めて攻撃」

 

倒しきらないために力加減を調節した攻撃は猪のHPの半分を削った。そして怒った猪は地面を二、三度蹴った。

 

「予備動作が見えたら防ぐか避ける準備をする。今回はコハルの武器が短剣だから合わせて逃げるよ」

 

狙いを定めた猪は真っ直ぐ飛び込んでくる。クロノはそれを見切って横に逸れた。大きく的を外した猪はこちらに尻を向けて隙だらけだ。

 

「避けたり防いだりすると攻撃が当たらないだけじゃなくて隙ができる。そしたらすかさず攻撃」

 

ステップで一気に間合いを詰めて後ろから猪を切る。猪のHPは0になり結晶と化した。

 

「大きくまとめると、構える、近付く、切る、逃げる、もしくは防ぐ、か。この五つを上手に組み合わせて戦うときっと倒せる。こんどはコハルの番だよ。やってみて」

 

コハルがリポップした猪を相手に構える。覚えは速いようで猪を相手にコハルは上手に立ち回れていた。そしてコハルの短剣が猪を結晶へと変えた。

 

「すごい、、すごいよ!こんなにちゃんと戦えたの初めて!」

 

「嬉しいなぁ。ありがとうクロノ。本当に、、、ありがとね」

 

喜んでいるコハルをみると何故だか自分までも嬉しくなってくる。

 

「あの、、、クロノさえよければ私と、友達になってほしいな」

 

そうコハルが言った瞬間だった。先程とは違うモンスターがポップし、瞬く間に自分達は囲まれてしまった。そして自分が両手剣を構えた時だった。

 

「下がって」

 

どこか聞き覚えのある青年の声。彼は瞬時にモンスターを切り刻み、あっという間に倒した。

 

「強い、、、あっという間にやっつけちゃった、、、」

 

コハルがそんなことを呟いたが全くの同感だった。

そして青年はクロノ達に向かって言う。

 

「ここでは決まった時間で強ザコがポップするんだ。自分の実力に合った場所でレベリングした方がいいよ」

 

「あ、ありがとうございます!助かりました!」

 

コハルに続いてクロノも頭を下げた。

 

「別に、通りかかっただけだから。それじゃあ」

 

「待って下さい。せめてお名前を!私はコハル、こっちはクロノです」

 

リアルでそんなセリフを言うとは思っていなかった。いや、ここはVRの中だけど。そんなことを思ったが言われた本人も同じだったらしい。

 

「リアルでそんなセリフを聞くとは、、、いやここはVRの中だけど、、、。まぁいいか。俺はキリト、よろしく」

 

キリトと名乗った青年はコハルと自分の感謝を聞くと、最後まで楽しもうぜという言葉を残して颯爽と立ち去った。

 

「今の人、強くてかっこよかったね。、、、私ももっと頑張ればあんな風に強くなれるのかな」

 

どこか不安げにいうコハルにクロノは励ます。

 

「きっとなれるさ」

 

「そう、、だよね。最初はみんな初心者だもんね!正式版でも頑張ってみる!」

 

「だからクロノにはまた一緒に戦ってほしいな。強くなったところ見せたいから」

 

自分も同じくまたコハルに会いたいと思っていた。それが何故だかは分からないが。

 

「また会おうよ」

 

 意識せずにクロノの口から出た言葉にコハルは微笑んだ。

 

「ふふ。楽しみにしてる!」

 

そしてベータテスト終了のアナウンスが流れた。ベータで手に入れた装備やアイテム等のデータは全て消されるらしく少し寂しくなる。しかし正式版ではもっと頑張ろうと思うことが出来てるのは再開を約束したコハルがいるからだろうか。

 

「もう終わりかぁ。最後にクロノに会えて本当によかった」

 

「クロノ、、、またね!」

 

目の前が光に包まれた。


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