姫に恋した一人の侍   作:賢者

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遅くなってごめんちゃい

んじゃま張り切っていきましょか


天霧九寿vs遠山キンジ

潮風が彼らの間を通り抜ける。

 

武偵校の防弾制服を身にまとった男ー遠山キンジーは目の前の大柄な赤紙の男の挙動に注意し

いつでも反撃できるよう準備していた。

 

「すまないが」

 

男が口を開くしかし、男が発した言葉は自分にとってとても予想外の一言だった。

 

「出来れば身を引いてくれないか?無駄な戦闘はしたくない」

 

「俺と相手じゃ不満ってか?そりゃあ悪かったな」

 

「いやそうではない、出来れば俺はお前とその隣にいた男とも戦いたくないんだ」

 

キンジは驚いて目の前の男を見るが嘘をついているようには見えなかった。

 

目の前の男……天霧九寿は元来戦闘を好まない優しい男である。

 

昔新撰組と相対し八番組組長藤堂平助にケガを負わせた時でさえ謝ったほどのお人好しなのだ。

 

今回も自分の主の命とはいえ若い者たちとの戦闘は心苦しいのだろう。

 

「すまないな……俺にも引けない理由はあるんだよ」

 

「申し訳ないが、その理由を聞いてもいいか?」

 

「アンタ……俺がここでのこのこと身を引いたら井吹を狙うんだろ?」

 

「そうだ」

 

「それが分かっててここを通すほど俺は腐っちゃいない‼」

 

「そうか……残念だ……」

 

彼はそう言うと拳を引き腰を落として構える。

 

キンジは自身の獲物であるベレッタをフルオートに設定、そしてバタフライナイフを取り出した。

 

その刀身は何よりも赤く爛々と輝いていた。

 

「ゆくぞ」

 

この言葉を引き金に両者は動いた。

 

キンジはベレッタの全弾を天霧の各関節を狙って発砲する。

 

しかしその弾はすべて当たることなく天霧の体のわきを通り抜けていった。

 

その体勢のまま彼は腰をひねり力を溜める。

 

天霧の拳撃を避けることは不可能と判断したキンジは体を後ろに引いた。

 

「良い判断だ……だが今回ばかりは相手が悪かったな」

 

タイミングを合わせ後ろへ飛び威力を減衰させた天霧の拳だったが

 

(んだコイツ!?なんつうバカ力だよ‼)

 

そんな小細工をものともせずキンジの体を確実に打ち貫いた。

 

彼は徒手空拳で戦うもののその拳の破壊力は鋼でできた鉢金をも破壊することが出来る。

 

そんな彼の力の前では後ろに飛ぶというような小細工はほとんど無意味に近いのだ。

 

キンジは吹っ飛ばされながらも空中で体勢を立て直し着地する。

 

そこに天霧の脚が命を刈り取る鎌のごとく迫ってきたが余裕をもってそれをかわし追撃に備えた。

 

天霧はキンジの体勢を見て無理な追撃を諦め一度距離を取る。

 

キンジはそれを見てホッと息を吐いた。

 

(危なかった……これをやる前に突っ込まれてたら完全に終わってた)

 

そう心の中で呟くと目を閉じ意識を体の中に集中させる。

 

天霧は突然目を閉じたキンジに驚いたがすぐに平静を取り戻し肉薄する。

 

体をひねり渾身の力を拳に込める。

 

キンジはまだ目を開けない。

 

天霧の拳が届くまであと10歩を切った。

 

しかしキンジはまだ目を開けない。

 

天霧が絶大な破壊力を込めた拳をキンジへ振り下ろそうとする瞬間彼の目が開いた。

 

キンジは拳をバタフライナイフでいなすとそのまま空砲のベレッタを天霧の耳元で引き金を引く。

 

勿論設定は変わらず『フルオート』である。

 

爆音が天霧の耳の中を縦横無尽に駆け巡った。

 

天霧は耳元で暴れまわる爆音に顔をしかめながら距離を取った。

 

「遠山キンジだったか……申し訳ない君を少し見くびっていたようだ」

 

「……そんな事どうだっていいだろう」

 

「そうか……君はあの目を閉じていた間に何をしていた?」

 

「……そう簡単に手札をさらすわけがないだろう?」

 

それもそうだなと言って天霧は微笑する。

 

彼はキンジのあからさまな変わりように何をしたのかと彼を観察したが一部を除いてどこも

変わっている様子はなかった。

 

断定するのは早いがキンジはあの目を閉じていた間に戦闘に不必要な思考や感覚を全てカット

したのだろう。

 

それを行うには途方もない時間と労力が必要となる。

 

彼は自分の肉体の限界を知っているからこそこんな大博打に出たのだろう。

 

彼はやはり侮れない男だと再認識した天霧はさっきよりも開き気味に構えた。

 

この構えは防御にはあまり役には立たないものの攻撃に関してはその効果は絶大である。

 

対してキンジは自然体で天霧を待ち構えている。

 

会話中に装填しなおしたベレッタが不気味に光っている。

 

(うかつには攻めることなど出来そうにもないな……)

 

天霧はこの不気味な膠着状態をどうにか自分の流れへと変えるべく腰を落とし大地を蹴った。

 

ベコン‼という音ともに凹んだアスファルトの破片が飛び散った。

 

そんなものになど気にも留めず天霧は腰をひねり拳を打ち出した。

 

予想通りキンジは半身になって避ける、ソコが天霧の狙いだった。

 

無理矢理体勢を立て直しそのまま脚をキンジに向かって振りぬく。

 

そのまま拳への連撃へと続け2撃、3撃と打ち込んでいると妙な違和感が天霧を襲った。

 

(なんだこの違和感は……もしかして‼)

 

異変に気づいたときには遅かった。

 

4撃目深く懐に入り込みすぎた天霧の横腹には3点バーストへと設定を変更されたベレッタの

銃口が怪しく光っていた。

 

ズドン、ズドンと連続して爆音が響き渡る。

 

防弾の服を着ているとはいえその衝撃をまともに喰らえば骨の4本や5本軽くへし折ることが

可能だろう。

 

天霧もその例にもれずわき腹の骨が何本か折れてしまう。

 

キンジはそのわき腹に向かってバタフライナイフの柄を叩き込んだ。

 

声を上げてうずくまる天霧、そんな隙を見逃すようなキンジではない。

 

天霧の手のひらをバタフライナイフで貫き固定、両手を手錠で拘束した。

 

「……今回は俺の勝ちだ」

 

そう言うとキンジの腕は糸が切れたマリオネットの様にだらしなく垂れ下がった。

 

キンジだって天霧の拳の連撃を喰らって無事では済まなかったのである。

 

多分2週間はまともに物を握ることすら不可能だろう。

 

「フ……私の負けだ、行けここからは動かない。約束しよう、加勢に行け」

 

「心配ないさ、アイツは強い」

 

元の調子に戻ったキンジが断言する。

 

「誰かを守ろうとした時のアイツは誰だって負けはしねぇよ」




久しぶりの戦闘シーン
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