生まれ変わる先は女尊男卑   作:灰TS

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【ゼウスについて②】
ゼウスにおける軍事的なIS運用では機体の総数や部隊長の階級によって、括りが異なる。
50機では【大隊】(大隊長)。そこから10機になると【中隊】(中隊長)。最小の編成数に当たる5機になると【小隊】に変化する(小隊長)。
つまり、1つの大隊の中には10の小隊と5の中隊で構成されている計算となる。
ゼウスでも、特筆した性能を持つGフレームは主に大隊長と一部の中隊長に受領される。
ゼウス傘下の軍需産業を経由して、Gフレームの性能を非ゼウス傘下である他の企業に対して喧伝している為、開発競争が激化している。



第四話 篠ノ之箒、理解者(兼相談相手)を手に入れ良いスタートを迎える

-----IS学園1ーA教室-----

 

『(ハア…誰かこの状況を助けてくれ…)』

 

そう心の中で助けを求めつつ、溜息をついているのは原作主人公。

作品を知っている読者なら時に『ワンサマー』と略される事が多いハーレム系主人公『織斑一夏(おりむらいちか)』である。

この小説の作者は変換する際に”いちか”ではなく”ひとなつ”と打って変換するのが癖なのである。

 

『(高校受験の会場を間違えて、この学園が管理している試験用IS[打鉄]に触れて起動出来たら、エスカレーター形式で話がトントン拍子で進んで気付いたら此処にいる…取り敢えず成るように頑張るしかないってことしかわからないぜ)』

 

心を決めた一夏は鞄の中から教科書を取り出し、次の授業に向けて内容を少しでも読み込んでおく事にした。

原作では【電話帳と間違えて捨てた】という珍事により、一週間で覚えなければならなくなるがこの物語は2次創作。原作と同じ展開になるとは限らないのが現実である

 

『(うわぁ…ISってこんなにパーツが多いのか。ゲームで色々出鱈目な挙動があるけど、現実で再現するにはこれだけ複雑に造らないと出来ないって寸法か…その割にスーツはどれも露出度が高くないか?競泳水着とかスクール水着に近いぞ。率直に言って男の下半身の健康に悪いな。)』

 

 

授業で出題される可能性が高い内容はしっかり読み通し、それ以外の部分は斜め読みにして勉強を続行する。

当然だが、一夏はこの学園の誰よりも弱い。最弱といっても差し支えないだろう。これも当然だが、一夏はISの基礎知識については一般男性とほぼ同等であると断言してもよい。ISに死ぬまで触れる事は無い男性が突然使える様になったのだから予習など出来るはずもない。

 

……しかしIS適性のある女性は早くも中学からISの専門的知識について勉学を始める。優秀な素質を持つパイロット候補ならば量産型ISか開発中の試作ISを充てがわれ操縦技術の修練作業に突入するだろう。

イギリスの代表候補生『セシリア・オルコット』やフランスの代表候補生『シャルロット・デュノア』の様に豊富な財源を持っていたり既にコア以外のIS関連のパーツを自社製造出来る機関を持っている人間以外に優秀な素質を持つ金の卵は様々なサービスやサポートを提供する代わりにスカウトを積極的に行う。

 

……であるが、世界最強のIS乗りである千冬の弟であるにも関わらず平凡な能力しか持たずこれといったコネも無い一夏は”一般的に“スカウトする側からすれば路傍の石ころに等しい、見向きもされないど素人なのだ。話題性だけでスカウトしてくれる程世界は甘くなく、ちゃんと冷静に出来ているのだ。

 

 

『(装甲をある程度薄くして機動力や加速力を重点に置きつつ汎用性が高い《ラファール・リヴァイブ》。逆に速度系統の性能を下げた代わりに再生能力を付属した鎧甲冑を装備し、近接武装が多く近距離での戦闘を得意とする《打鉄》…)』

『一夏!』

 

教科書を熱心に黙読している一夏に声をかけたのは一夏と同じく今年入学した新入生の一人であり、一夏の”ファースト”幼馴染『篠ノ之箒(しのののほうき)』である。

 

『箒!久しぶりだな!』

『ああ、何年振りだ?』

『6年位かな?箒もこの学園に?』

『一夏には伝えていなかったが、私にも素質が有ったのでな。荷物を纏めて此処に入学したという訳さ。IS学園には通常の体育館の他に、トレーニングジムや道場も置いている。未だ1時限目まで時間がある。屋上でゆっくり話でもしないか?…』

『ヘイ!今回の新入生に篠ノ之姓の方が一人いると聞いたんだけど…』

 

一夏と箒の会話に割って入ったのは警備員➖➖エイジである。

丁度機体のセッティングが終わり、警備員として学園内を巡回する為に仕事に戻ってきたエイジは劾からデータ転送された新入生の名前リストに篠ノ之姓を名乗っている女性がいた為捜しているところであった。

急いでいたので顔写真を見ていなかったのはうっかりミスである。(アルトリアは自身の専用機受領の為、既にIS学園を出て量産型IS〈ジンクスⅣ〉を呼出して本部に帰投している)

 

『篠ノ之は私ですが、何か御用でも?それに貴方はもしかして…』

『はじめまして。本日から此処でしがない警備員をやる事になりました。八神輝刃と申します。』

『一夏はともかく他にも2人の男性警備員がいるとHRで言っていましたが、どちらに?』

『私は貴女達には迷惑がかからない範囲で自由に動き回るスタイルですが、ガイとカナードは職務には忠実なタイプでしてね。今頃人気の少ないアリーナにでも向かっていると思いますよ。』

 

友好の証として握手をした後、二人の所在をスムーズに伝えたエイジ。年上である事は確実と分かっているとはいえ、かなり大人な対応をしたエイジを多少信用した箒は単刀直入に伺う事にした。

 

『姉に何か所用があるのですか?』

『いや。寧ろ君に用がある。』

『私に、ですか?』

『個人的な期待という奴さ。あの兎の妹がどれ程の素質を秘めているのかってね。』

『余り期待はしない方が良いですよ?私と家族は姉のせいで人生を滅茶苦茶にされたのですから。恨んでいると思っても構いません。』

 

 ”恨んでいる“―――その言葉を聞いたエイジは彼女の顔を窺ったが―――

 

『嘘だな。』

『え……』

『どういう事なんだ?箒?』

『君はお姉さんの事を恨んでなんかいない。寧ろ心配しているんだ。』

 

 心配している?いつも飄々としてて掴み処のない姉が血縁者とはいえ自分以外を本心から心配する事があったのか?

混乱している箒を余所に一夏は聞いた。

 

『そうなんですか?』

『ええ。私の父は箒さんのお姉さんとは昔、親密な関係がありましてね。父は昔話を話してくれていたんですよ。』

『姉さんに気に入られて且つ、波長を合わせてコミュニケーションが取れる男性がいたなんて……』

『《新しいアイデアを思いついた時の彼女の顔は向日葵のようで朗らかで明るく、日々の疲労を癒してくれていた》や《過労で倒れた時にベッドまで担いで寝かせた時に”ほーちゃん、かあさん、とうさん、ごめんね…ごめんね…“と涙を流しながら寝言を呟いていた》という話を聞きました。』

 

 箒は姉の思わぬ一面に驚きを隠せないでいる様子だ。罪悪感など塵のように捨てたと思っていた姉が、実は自分の行いで大切や人たちが傷ついている事を悔やんでいたなんて全く知らなかったのだ。

 

『有難うございます!』

『ほえ?俺何か礼を言われるような事した?』

『私に姉の事を伝えてくれたじゃないですか!確かに貴方の仰る通り、私は姉さんの事を恨んでいませんでした。掴み処のない姉でしたが、それでも大切な家族で尊敬できる人に変わりはありませんでした。戸惑いましたが、私が恨んでいたのは……』

『自分自身、だろ?大切な家族を恨み続ける苦しみに苛まれた君は、姉を恨んだ自分自身を恨む、というより責めるかな?そうする事によって精神を安定させてきた。違うかな?』

『……たった数分で私の事を理解してしまうなんて、凄いですね。』

『戦友から相談を受けている内に、プロファイラー何て呼ばれ始めてしまいましてね。こんなのは、ほんの人助けみたいなものです。』

 

 胸のつかえを取り除いてくれたエイジに感謝した箒は、深々と感謝の礼を送った後握手を行った。

 

『(いやー、人助けは本心でやったとはいえこんな美少女に感謝されるなんて思わぬ役得!勤務初日から幸運を拾えたぜ!)』

『(凄い…)あの、すいません。年齢を伺っても宜しいでしょうか?』

『二十歳ですけど、何か聞きたい事でも?』

『いいえ…(マジか!二十歳でここまで打ち解けるなんて一種の才能だぞ!俺もこの人みたいに頼りがいのある立派な男になりたいなぁ…)』

 

 興奮冷めやらぬ状況下でエイジは本題を切り出そうとしていた。

 

『箒さん。話変わるけどいいかな?』

『はい。何でしょうか?』

『IS学園では入学式のシーズンに、クラス代表決定戦という行事が開催されるという話を聞いたのですが…』

『はい、HPを見たのですがちょうどこの時期だと思います。今週中に担任から通達があるのではないでしょうか?』

『なるほど、有難うございます。』

『え!?箒、今の話本当なのか!?』

 

 一夏が驚くのは当然の事である。ついこの間まで一生関わる事が無かったISが急に使えるようになり、突然女の園に入学することが決まったのだから、不足している知識を少しでも埋めようとさっきまで勉学に集中していたので学園行事までは気にする余裕が無かったのだ。

 

『HPに掲載されているぞ?このIS学園は学生寮が敷地内に建設されていて、自室にはデスクトップパソコンがあるそうだ。今日の授業が終わったら、一夏にも自室が割り当てられる筈だから、後で確認しておけよ?』

『お、おぉ…(俺だけ置いてけぼりだな…)』

『でさでさ、クラス代表戦では自薦他薦問わずに立候補が行われると私は思っている訳ですよ。そこで現時点で選ばれる可能性がある生徒は、箒さんと一夏君と…其処の美少女金髪ドリルちゃんだと考えたんですよ。』

 

 【そこの美少女金髪ドリルちゃん】?奇妙なあだ名をつけたなと感じた一夏と箒。そう呼びながらエイジが指さしたのは、廊下側二列目の6席の後方席で他の生徒達と椅子に座った状態で話しているベリーロングの女性だった。

 

『あの女の子が、ですか?』

『おいおいおいおい、仕方ないとは思っていたがやっぱりそうか…彼女こそイギリス代表候補性のセシリア・オルコットなんだぜ?』

『え!?そうなんですか!?』

『本当さ。専用機だって持っている。稼働時間は軽く二百時間越えは確定していると思うよ?』

『さっき教科書を読んでいた時に、ISには稼働時間が長くなるほど性能が向上して、最終的には形状が変化してパワーアップする事もあるって書いてありましたが…』

『第二形態移行《セカンドシフト》の事だな。あれを出来る連中は将来的に頭一つ抜きんでた能力を持っているが、セシリア嬢はまだまだこれからだな。

《ブルー・ティアーズ》自体がイギリスにとっての《イグニッション・プラン》のファーストマシンだから、今の段階でそれが見たいって思うのは酷なもんよ。』

『《イグニッション・プラン》?』

『これから学ぶ事になる箒さんと勉強不足の一夏君の予習の為に、簡単に教えてあげよう。イグニッション・プランとは…』

『欧州連合が主導して行っている、次期主力ISの開発を主軸とする統合防衛計画の事ですわ。』

『そーそー代わりに教えてくれてありがと…て、え?』

 

 ちょっとした教師気分になり有頂天になっていたエイジは、後ろから説明してくれた女性に気づかなかったようだ。

黄金《こがね》色に輝く頭髪を手で流しながら語った女性生徒は、しかし長身のエイジに隠れて一夏と箒からは自分の体が見えなかった為、エイジの隣に移動する事にした。

 

『すまないね。家族が丹精込めて作ってくれた料理を食べ続けていたら、鰻登りに伸びちゃってね。』

『それを咎める積もりはありませんわ。それだけ八神さんがご両親に愛されていた証拠なのですから、謝る事ではなくってよ?』

『俺たちの話、ちゃんと聞いてるじゃないですか。談笑しながら盗み聞きするなんて淑女の嗜みじゃないぜ?』

『私の髪の事を【金髪ドリル】と評した貴方への細やかな意趣返しですわ。』

『俺が名前を言ったのは、髪の件より前なんだが…どこまで聞いてた?』

 

 箒と一夏はさっきまで年上の割には馴れ馴れしくも、不快感が湧かない柔和な口調で話していたエイジが詰問するような冷徹な口調になっていた

事に気づいた。まるで今迄が作為的で自分達から何かを聞き出す為に、近づいたんじゃないかと疑う程で―――

 

『私が聞いたのは貴方の名前だけですわ。私と同じクラスの同級生の方がエイジさんに何か話をしていたようですが、興味があったのはエイジさんと他の新任の警備員でありましたので…』

『そうか…すまないね。きつく聞いたりして。』

『いえ、箒さんに褒められた所を見た時に妙に女々しくヘラヘラしているように感じたので…寧ろ男らしい顔を見れて少し見直したところですわ。』

『お前…私の名前も聞いていたのか…』

『これから一年間同じクラスで勉学に励むのですから、他人行儀な呼び方では寂しいですわ。』

『すまない!えっと…セシリア…さん…!』

『無理をしなくてもよろしくてよ。』

『そうか!セシリアでよいだろうか!』

『改めてよろしくお願いします。箒さん。』

『ああ!』

 

 箒は新任警備員からカウンセラーを受け姉と真面目に話し合う機会を貰い、クラスメイトと友達になった。ISの生みの親ということで、質問が殺到し鬱屈としたストレスが溜まる一日目がスタートすると予想されると考えていたが、本来の史実(メメタァッ!)とは異なり相談相手に足る人物と関係を持ち意外な好スタートを切る事が出来た。

 そんなこんなでスムーズに好感度アップイベントが進行する中―――

 

キィーンコォーンカァーンコォーン♪

 

 休み時間が終わり、1時限目のチャイムが鳴った。

 

『お?そろそろ時間ですな。俺は職務に戻って不貞を働く不審者がいたらアームロックをかけに行きますかね。箒さんと一夏さんはIS初心者なんで、セシリアさんの様な先輩のアドバイスは積極的に取り入れておく事を勧めておきます。無論言葉通りに受け取るだけではなく、メモとか取っておいた方が良い事も付け加えておきます。』

『色々とアドバイス有難うございます!今後の学生生活の参考にしようと思います。』

『姉の件では大切な話をお聞かせ頂き、大変感謝しております。偶に時間が空いていれば相談相手になって頂いても宜しいでしょうか?』

『いいよいいよ。人生の先輩として、ドンと聞いて来て下さいな。』

『俺もエイジさんみたいに余裕があって懐が深く頼もしい大人になってみたいです!』

『HAHAHA!道のりは険しいぞ?まあ、ここで一つアドバイスだ。《これでもかってぐらい冷静さを保てている奴こそ人生の勝者》ってな?』

『????どういう意味ですか?』

『其処は自分で考えたまえ。』

 

 自己流アドバイスを残してエイジは去って行った。

 

 

信頼できない創作家は最初から見限った方が良いというのはよく言った言葉なのだ……

本来のストーリーとは異なるスタートを迎えた本作。

戦闘したかったけど期待してた方々の期待を裏切るようでほんとすまない…

だって個人的にハーレム作るのは構わないけど、もっと納得できる形で惚れるように設定したいのです!(メタに次ぐメタの連続)

だから、チョロインと言われているセシリアですが直ぐにデレる事は絶対にしません!

トップクラスの朴念仁でホモ疑惑すらある一夏には身体・精神・IS技能共に納得出来る強さに到達してから、各ヒロインと本心から恋仲になるように話を進めていきます。

 

 

主要人物とさっそく関係を結ぶことに成功したエイジ。

好戦的な気質と一夏に対して一種の執着心がある箒も、これを機に相手の立場に立って物事を考える切っ掛けになるでしょう。

ISに深く携わる世界において常識知らずな一夏もアドバイスの意味を考え続けることは、今後の活動において大きく役立ち女性と適切なコミュニケーションを取る機会により多く遭遇する事になるでしょう。

次回もちらっと見てくれる方がいらっしゃるとただただ嬉しい限りであります。




【ゼウスに所属している人々について】
①イアン・ヴァスティー
「機動戦士ガンダムOO」にて登場。
本作でもとても優秀なメカニックとして、また整備班のベテランとして実戦配備されている各ISの修理・改良・改修等と幅広く活躍している。
②アストナージ・メドッソ
「機動戦士Zガンダム、機動戦士ガンダムZZ、機動戦士ガンダム逆襲のシャア」等に登場。
逆シャアでは不幸な結末を迎えてしまったが、本作ではケーラ・スゥと幸せに暮らしており、既に結婚して夫婦の仲である。

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