深読みなし、複線なんて貼らない。
のんびりゆっくり、ほのぼのと書いていくのみ。
ノープランの上にプロットなし。
だから途中で放り投げてもご容赦を。
すっごい笑顔で出迎えにきた大和と、ニコニコ笑顔の武蔵。
左右を女性に挟まれて送られる車の中。
うん、なんというか二人とも脅威だ。戦艦だぜ、戦艦。普通に相手と殴り合うような艦娘が左右にいるっていうのにさ、いい匂いしかしないんだぜ。
香水でも使ってるの? あ、艦娘は化粧をしないって本当? え、今日は気合入れてきた。
赤い顔で二人が言うもんだから、『そうか』としか答えられなかったけど。
なにこの可愛い子たち。え、本当に艦娘。あの映像で見たことがある、大和型の二人なの?
だって戦艦棲姫を殴り飛ばしていたじゃないの。本当に殺気しかないって顔で。何がどうして、そんな年頃の女性って顔で笑っているのさ。
あれ、運転手に見覚えがあるんだけど。
マジか。運転手と助手席に座っているの一航戦だ。なんで赤城と加賀までいるわけ。どういうこと。
「提督は、演習で駆逐艦一隻で戦艦三隻を撃沈した、というのは本当なのか?」
うわ、懐かしい話題だね、武蔵さん。
「あれは駆逐艦の子が練度が高かったから、勝てただけさ。俺は適当に声をかけただけ」
「そうか。なるほど、自分の功績を誇らない、素晴らしい人だな」
「いや、待ってどうしてそうなる?」
「謙遜しなくていい。あの時の資料は貰っている」
深く頷く武蔵に、誰もが同意したように頷いている。
あれ、ひょっとして俺のこと違う評価になっている? これが世間で言うところの勘違い系か。うわ、ならどうしよう。まともな指揮なんてその一回だけ、図上演習とかボロ負けのほうが多いくらいなのに。
鎮守府についたら、すぐに電話して配属先を変えてもらおう。
あれ、提督の上官って何処になるんだ。防衛省は深海棲艦が出てからすぐに名称変更で、防衛軍になったから、防衛大臣に人事権があるんだっけ?
く、授業を寝ていたことがここで裏目に出るとは。
いやちゃんと聞こうよ、俺。
「つきました、提督」
「え、もう?」
気がついたら鎮守府にいました。うわ、嘘だろう。そんなに時間経ってないでしょうが。
「提督が着任された!」
武蔵の大声にちょっとビクッとしていると、盛大な歓声が聞こえてきて。
あ~~もうどうしてそうなっているのかな。
なんだか鎮守府の周りを艦娘達が一列に並んで出迎えていた。
マジで、どうしてこんな評価になっているのかな、誰か教えてくれ。
頭を抱えたくなったが、笑顔で迎えてくれる以上は立ち止まるなんてことはできなくて、そのまま手を振りながら鎮守府に入っていくしかなく。
鎮守府の建物は、とにかく素晴らしい。なんてこと言わないからな。細かいところまで綺麗に掃除されているけど、そんなことはどうでもいい。
提督室に案内されて、イスに座るように促されたことも、まあ当たり前のことかもしれないが。
「では、提督、最初の任務をお願いします」
大淀が持ってきてくれた資料に目を通そうとして、ビシッと固まってしまう。
「え、マジで? 何かの冗談?」
「冗談ではありません。提督、『お傍付き』の艦娘を選んでください」
「はい?! いやいや、何それ、どういう意味?」
「提督の身の回りの世話を『心身ともに行う』艦娘のことです」
「おう」
何たることか。まさか、鎮守府が綺麗だったから気がつかなかったが、もう洗脳されているとは。
前任者め、見た目に現れないように念入りに洗脳して調教していたな。
く、油断した。まさか本当にブラック鎮守府だったなんて。どうする、まずは何をすればいい。
「いや、大淀、必要ない。俺は自分のことは自分で出来る・・・」
からと言いかけて、視界に妙なものが入ってきた。
なんか、この世の終わりみたいな顔をした大淀と、ここまで付き添ってきた大和、武蔵、赤城、加賀の絶望した顔だった。
「から、だが。まあ、秘書艦は必要だな、うん」
「提督! ありがとうございます」
ふ、笑えば笑え。あんな悲しい顔した美人さん相手に、『いらない』なんて言えるほど俺は強くないんだよ。
クッソ、転生して二十年は立っているし、前世だってあるんだ。突っぱねるくらいできるだろうが、俺。未だ思春期ですか、この野郎。
『発情期ですね、この野郎』とか返ってきた気がしたが、気のせいだろう。
「じゃぁ」
無難に選べ。無難だぞ。この状況下で、状況説明ができる艦娘、洗脳を受けていなさそうな、新人の。
ダメだ、解らん。練度で判断すればいい? 残念でした、全員が九十越えです。おい、なんだよ、この鎮守府。本当に新人が配属されていい場所か。ブラックだからか、ブラックだったからか。
「提督?」
ちょっと大淀さんや、そんな不安そうな顔しないでくれますかね。俺が悪いみたいじゃないですか。
「吹雪にしよう」
「はい、他はどうなさいますか?」
秘書艦って一人じゃないの?! あ、この大所帯じゃ、一人じゃ回らないか。大淀は、外そう。事務処理はできるかもしれないが、洗脳されている子を近くにおいたら何が起きるか解らない。
朝、起きたら隣に裸で寝ていたなんてことない、と言い切れない。
「そうだな。ならば」
考えろ、考えるんだ、朝倉・雄一!
比較的まともそうな、正常な思考を保っていられる艦娘。洗脳を受けていなさそうな子はどの子だ。
「では叢雲にしよう」
「承りました」
どうだ、この選択は?!
さてと、では改めて。
「二人とも、話を聞かせてほしい」
「なんでしょう、司令官」
「なんなりと質問しなさいよ」
吹雪と叢雲だけの提督室の中で、俺は周りの目を気にしつつ小さく声を出した。
「誰に言われた? 何がこの鎮守府にあった?」
「はい?」
「何の話?」
ク、まさか二人は外れか。無難に初期艦の中から選んだのが間違いか。
だが判断材料がない以上はここから始めるしかない。
「最初に言っておくが、俺は提督としてここにいる。それ以上を望むつもりはないからな」
「はい、もちろんです、司令官」
「何を言っているの? 私達はそう思っているわよ」
「ならば、この『お傍付き』制度はどういう意味だ?」
突きつけるように話を振ると、二人はきょとんとした後に、『ああ、そうか』と納得した様子だった。
「実は、前任者が」
「まさか、艦娘に色々と酷いことをしたのか? 性的虐待でも有ったか?」
ついに真相に辿り着いたのか。逸る気持ちからそう告げたが、二人は顔色一つ変えずに首を振った。
「性的って、まあ、あんたが望むならいいけど」
「待とうか、叢雲さん!」
「何よ?」
「いや、俺が望んだら『してあげる』って聞こえるから、今の発言はかなり不味い」
「え? そういうつもりなのだけど?」
何を言っているんだ、という顔をしている叢雲に、やはり洗脳されていると解った。
「あ、ああ! あのですね、司令官。そういう意味じゃないんです」
「何が違うんだ、吹雪。君たちは前の提督にそういった洗脳を・・・」
「ばっかじゃないの。洗脳されていたのは、前の提督よ」
「は?」
叢雲が言い放った言葉に、俺は思わず間抜けな顔を晒してしまった。
彼女が言うところによると、前任者は『超』がつくほどの社畜だった。二十四時間戦えますか、ではなく三百六十五日働けますかだった。
艦娘の指揮、資材の調達、鎮守府内の整備・整頓、在庫確認、艦娘達の生活環境の向上・維持。
色々と手を出して頑張り続けた末に、倒れて入院。以後、防衛軍管理下において療養中。
あ、そう言うこと。で、そんな場所の後任ってなると縁起が悪いと誰もがやりたがらない。
いくら四大鎮守府の一つであっても、前任者が過労で倒れましたなんてところに行きたがる酔狂者はいない、と。
「そっか、そっか。なるほど・・・・・・ってじゃ俺に対して盛大に歓迎してくれたのは?」
「そっちは、その」
「まあ、それはね」
なんで赤い顔して二人とも見つめあっているわけ。え、女の子同士で色々とあったの?
「違うから」
とても冷たい顔で告げる叢雲に、思わず両手を上げて降参してしまう。
「それはその、司令官が『妖精さん達に好かれる王様』だから、私たちにも影響が出ているんですよ」
「へぇ~~~え?」
何それ? え、『王の力』ってそういう種類の転生特典だったの。
「おかげで私たちも体調がよくなって実力以上の力を発揮できるわけ」
「え? え? マジで?」
「マジよ。正確に調査したわけじゃないけど、練度1の艦娘が練度40の艦娘の艦隊を単艦で撃破できるくらいには、力が上がるみたい」
「そこにプラスして妖精さん達の効果も上がるみたいですよ」
叢雲と吹雪が交互に説明してくれたことに、俺は『うわぁ』と内心で声を出した。
つまり、俺は提督じゃなくて効果的なアイテムか補助魔法のようなもの、というわけか。
「まあ、それを知った『上』が横須賀に丁度いいからで配属したんじゃないの?」
「なるほど。ああ、良かった。俺自身の不当な評価じゃなくて」
心底良かったよ。これなら俺は普通に取り繕うことなく、鎮守府での提督生活を送れるってわけか。
「しかしなぁ」
王の力って、そういうものかな。
「違うよ。そっち副産物的なもの」
定位置といわんばかりに俺の肩に乗っている妖精さんが言った。
え、じゃあ何?
「今ならできるんじゃないの?」
何が?
疑問を感じて横を向いたとき、提督室の窓から入ってきた光が遮られて、室内が暗くなった。
「日が沈んだかな?」
あれ、吹雪と叢雲が蒼白な顔になって壁際に寄っているけど、どうしたのさ?
「あんた、それ何よ?」
「何って」
「司令官、『そちらの方』は知り合いですか?」
「そちらの方?」
二人が震える指先で示すのは窓の外、俺も顔を向けた先にいたのは。
「はい、『王の力』。人には入らなかったから、そのものを上げたよ」
「おう、ジーザス」
鎮守府の外には、こちらを見下ろす巨大な生物の顔が。
「初めまして、『ゴジラ』様」
彼はこちらをチラリとみた後、あの有名な泣き声を放ったのでした。
映画で、『キング・オブ・モンスターズ』やっていた。
モンスターの定義って、『人間以外』ってことなら妖精とか艦娘も範疇でしょう、的な無理やりの暴論。
で、人間以外の王様ならば、どういうことでしょうねぇ。