貴方の欲望はなんですか?『完結』   作:サルスベリ

3 / 6
 
 抽象的なもの言いって世の中にあるよね。

 空気読めって、空気を読める人ってすごいと思う。

 的な話です。




話は最後までちゃんとしましょう

 

 突然のゴジラ襲来に揺れる鎮守府、ついでに近隣の町とかも大騒動になる最中で、当人の俺はというと。

 

「え? どういうこと?」

 

「王の力を望んだから」

 

「は? え?」

 

 妖精さんに詰問中。叢雲と吹雪は退室してもらった。

 

 確かに王の力を望んだ、望んだけど何処がどうしてゴジラなのか。怪獣王だからか、王様ってそっちじゃないって。

 

 妖精さんの説明によると、だ。

 

 俺が王の力を望んだ、それだけしか言わなかったのが原因らしい。

 

 言われた方は悩んだ、『王の力』と一口に言っても色々ある。

 

 英雄王から始まって、騎士王、征服王、暗殺王に、精霊王に、霊王とか、勇者王、鬼眼王、機神王とか。これに『キング』なんて読み方も王様ってなったらさらに色々ある。

 

 普通なら、ギアスだろうって思うのだが、あいつはそんなこと考えていなかったらしい。

 

 せっかくだから全部で。あ、入らないって爆笑していたって言われた時は、軽く殺意湧いた。

 

 そりゃ、そんだけ色々と『王様の力』入れたら、人間に入りきるわけがないじゃん。普通に考えれば解ることなのに、そいつは考えなかったって話だ。

 

 結論として、人の身に入らないなら人以外の何かに入れて追従かければいいやって投げたとさ。

 

 投げんなよ。人にあげるもんだぞ。

 

 何かいいのないかと探していたら、いるじゃないかと閃いたのが『怪獣王』。

 

 ゴジラに全部ぶちこんだから、さすがの『超生命体』。不死身の『怪獣王』は見事に全部の王様の力を取り込んだ、と。

 

「え? じゃ、あれが俺の転生特典」

 

「イエス」

 

「え、艦娘への影響とか妖精さんへの影響力は?」

 

「王様なら皆から愛される、忠誠を向けられるは必須」

 

 うわぁ、チートや。なんだ、それ。

 

「消して」

 

「死んで」

 

 即答だった。間髪入れずってきっとこういうことなんだろうな、と思うくらいにすぐに答えが来た。

 

 追従かけてはいるが、あれも俺の一部なので消すってことは俺の存在すべてを消すってことになるらしく。

 

「平凡が恋しい」

 

「転生者に平凡は不要、平穏もなし、いざ、覇道を歩まれよ」

 

 何処の軍師だ、この野郎。思わず妖精さんを握りつぶしそうになったのだが、何が面白いのか『キャッキャ』と大笑い。

 

 ク、潰してやりて・・・・・っと待った。ふっと気がついた、先ほどから窓の外が神々しいまでの光に溢れていることを。

 

「戦艦王ってのもいるらしいぞ」

 

「余計なこと言ってんじゃねぇ!!」

 

 ゴジラ様の口が光を放っているけど、あれって『波動砲』のチャージ音じゃないのか?

 

 戦艦王ってのがいるとして、戦艦すべてってことか。いっそのこと軍艦王ってのもいるかもしれないな。

 

「いるな」

 

「現実逃避してんだよ、察しろよ」

 

「空気を読めなんて、我ら妖精には無理、我らの創造主はもっと無理」

 

「てめぇの主の話なんてしてないんだよ!」

 

「チャージ終わるみたい」

 

 ちょっと待てよ! ここ鎮守府、そんな波動砲なんてもんぶっ放したら何が起きるか解らないって!

 

「あっちに撃て!」

 

 咄嗟にゴジラに指示した方向は、海の向こうだって思っていたのに。

 

「あ」

 

「おお」

 

 何故か、ゴジラの口は内陸部に向いていて。

 

「対空戦闘!!」

 

 まずい、あれって富士山のほうじゃね?! と思った俺は咄嗟に上空を示したんだけど。

 

 ゴジラの背びれから一斉に幾筋もの光線が昇って行った、と。

 

「え? なんだそりゃ?!」

 

「拡散波動砲背びれバージョンだな」

 

「シン・ゴジラも交じっているのか?」

 

「ゴジラは全にして個。すべてのゴジラは同一の存在であるべし」

 

 ちょっと待って、何その超理論。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を取り直そう。とりあえず、波動砲も撃てるゴジラってことだな。

 

「提督、ではあれは?」

 

「私の友人だ」

 

 もうこれで押し通すしかねぇぇぇぇぇぇ!

 

「随分と奇抜な友人ですね」

 

 奇抜で理解を示してくれるなんて、吹雪は優しいな。これが世間で言うところの『マジ天使』か。

 

 違う違う、現実逃避したいんだ。俺が察してやれ。

 

 とりあえず、ゴジラは鎮守府の建物の横にいる。海に面した場所に半ば体を埋めるように、そこから一歩も動かない。

 

 妖精さん曰く、『追従かけているから百メートル以内にいないと暴れる』らしい。暴れるんかい、あんな『王様てんこもりの超生物』が。

 

「竜王ってどれのことだと思う?」

 

 妖精さんがそっと耳打ちしてきたことに、寒気を感じた。

 

 まさか、ド●クエもありなのか?

 

 ニンマリと笑う妖精さんに、『あ、あの時の神様と同じ笑顔だ』と思ってしまった俺は、決して負けたわけじゃない。

 

 今なら俺はこいつを殺せる、と思っちゃダメだ。思った結果の拡散波動砲だ。あれのために衛星が何個が潰れたらしく、『何か知らないか』と鎮守府に電話が来たばかりじゃないか。

 

 知りませんと答えたはいいが、『本当か?』とかなり怖い口調で訊かれたので確実にバレている。

 

 よし、このまま知らないで押し通そう。世の中、逃げるが勝ちだ。

 

「では提督。業務を進めてもよろしいですか?」

 

「すまない、大淀、頼めるか?」

 

 できるだけ尊大に言ってみるが、彼女は嫌な顔せずに書類を差し出してくれた。輸送計画か。まずは鎮守府の資材を溜めないと、かな?

 

「前任の提督のおかげで鎮守府の資材は潤っていますが、新人提督がやるべきことといえば、まずは資材集めです。提督は実務経験があまりないご様子なので、まずは基本からやっていきましょう」

 

「ありがとう、大淀。では、輸送任務だが」

 

「はい、第一から第八艦隊まですべて準備済みです」

 

「え? あの」

 

「この大淀がいるかぎり、提督の手を煩わせることはありません」

 

 眼鏡を少し持ち上げて自信満々に告げる彼女に、頼もしいなんて言葉は浮かばなかった。

 

 貴方、最初に俺に経験積ませる的な話をしていませんでしたか。聞き間違いですか、それとも俺には計画書さえ作成させないつもりですか。

 

「すでに作戦案は防衛軍司令部に送信済みです」

 

 それ、俺の許可が必要じゃないの。サインがいるんじゃないの。なんで大淀の名前とサインで許可が下りるの。

 

 馬鹿なの司令部。何考えてるの、司令部。

 

「じゃ、号令をかけるか」

 

「すでに全員、出撃済みです」

 

「あ、そう」

 

 なんだろう、とてつもなく虚しく感じる。提督って、こういう仕事だったっけ? いや違うんじゃないかな。

 

 あれ、目から汗が。熱くないのにな。

 

「というわけで、提督には今日はのんびりと過ごしていただきます」

 

「え、あ、はい」

 

 なんか、無言の圧力を感じました。これって、やっぱり艦娘、洗脳されてんじゃないの。前任者が過労で倒れたから、『今度は仕事させない』って考えにとりつかれてませんか。

 

「じゃ、鎮守府内を見てくるか」

 

「いけません、提督。いくら提督とはいえ、一人で鎮守府内を歩くなどと」

 

 え、なんで止められるの。え、吹雪と叢雲も頷いているし、どうして?

 

「理由を聞かせてくれ、大淀。俺はここの提督じゃないのか?」

 

「はい、提督です。ですが、艦娘の中には提督のことを・・」

 

 やっぱりブラックだったんじゃないの?! いや、待て、早まるな。先ほどの会話から、その可能性は極めて低いと考える。

 

 それに、だ。もし艦娘の中に提督のことを嫌っていて、攻撃してくる輩がいたとしても、今の俺にはゴジラっていう頼もしい味方がいる。何があってもゴジラの中の『王様の力達』がどうにかしてくれる。

 

 はず!!

 

「提督のことを囲って外に出さないように飼うと願う者もいますので」

 

 予想の斜め上でしたよ、こんちきしょう!

 

「今、飼うって言いましたか?!」

 

「はい、二度と倒れないように、一室に監禁してすべてのお世話をすればいい、という『提督ニート化計画』派閥が」

 

「なにその派閥?! 俺に仕事するなっていうのか?!」

 

「申し訳ありません、提督。しかし、彼女達の気持もわかります。目の前で提督が倒れて、か細い息をしている時の恐怖は! 私たち艦娘にとっては自分が死ぬよりも恐怖なのです!」

 

 涙を堪えて必死に訴える大淀と、すでに泣いている吹雪と叢雲。ああ、三人の気持ちはよく解る。艦娘達の気持もよく解る。

 

 けれど、何故だろう。感動する場面だというのに、俺の心に吹き込むのは虚しい気持ちだけだった。

 

「大淀、ありがとう」

 

 お礼は言っておこう、一応だけど。

 

「その、派閥があるというならば、他にもあるのか?」

 

「あります」

 

 涙を拭い大淀が真面目に話す。真面目、だよな。真顔で真剣な口調で話すから大真面目な話だよな。

 

 なんだよ、その『提督玩具化』とか、『提督ペット推奨』って! 俺をどうしたのさ、お前ら!

 

「わ、解った。俺はここにいよう」

 

「はい、お願いします」

 

 一礼して大淀が執務室を出ていく。

 

「ちなみに、二人はどの派閥だ」

 

「私は提督はそのままご自由にです」

 

「ええ、仕事しないなんてありえないわ」

 

「派閥の名前は?」

 

 何故か言葉を濁す二人に対して嫌な予感がして、さらに強い口調で問いかけると。

 

「提督『象徴化』です」

 

「俺に何させたいの?!」

 

 それ不味い! 色々な意味で不味いから! 今の日本でそれをやったら国家反逆罪じゃ済まないから! 国家の転覆をもくろんだって言われても否定できないから!

 

 お、恐ろしい。今まで聞いた派閥の中で、最も恐ろしい派閥の艦娘を、傍に置いてしまった。

 

 不味い、ここは本気で不味い場所だ。ブラック鎮守府なんて目じゃない、もっと怖い場所に来てしまった。

 

 思い返すと、俺が逃げ出したいと思ったのは、それが最初の瞬間だった。

 

 

 

 

 





 常識を投げ捨てる、後に残ったのは何かと考える。

 理性、欲望、それだけかと考える。常識があるから理性も欲望もできるのだから、投げ捨てたものに付随したものが残るのはあり得ない。

 となると、残るのは『周りの環境による圧迫』じゃないかぁって話。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。