Emerald First Love (本編完結) 作:Shige_puni
いやホンマ何ヶ月かかっとんねん……
また駆け足気味ですが、どうぞ!
~東京都内・とあるスタジアム~
今日はこの会場で、関東の大学アメフトのオールスター戦が行われる
選出された選手のチームメイトやOB、フットボールのファンなどでそこそこに賑わっている。隼人や4年生の雄姿を見るために、江井を始めとしたM大学アメフト部も例外ではない
「やっぱ隼人はすげぇなぁ。先輩と一緒にオールスターか」
「ホントですよね。俺も来年、江井さんや隼人さんと出たいです!」
「ハハッ。それは良いな。じゃあますます頑張らねぇと」
真面目で向上心のある後輩のためにも来シーズンこそ!と思っている処に、"華やかな存在感を放つ黒髪の美女"が現れた
「みなさん、おはようございます」
「「おはようございます!」」
「お~、ダイヤさんおはよう!来てくれたか」
ダイヤと果南は、もはやこのチームの常連となっているため驚く者はいない。大学入学したての頃はちょっとした騒ぎになりかけたものだが、今ではもう懐かしい
「さて、キックオフだな。っておぉ、キックカバーも出るのか!」
いつもと違うオールスター戦特製のユニフォームだが、キッカーの横に金色の字で"69"が見える
……
(しかしまぁ、ホントにオールスター戦に出られるとはねぇ……。さて、気合い入れて行くか!!)
キッカーが両端の選手に合図を出し、隼人の掛け声で全員が走り出す
「ハードタックル、レディーゴー!!」
その声に合わせて勢いよくボールが蹴り出され、グラウンド上を舞い上がる
……
「試合終了。ナイスゲーム!」
「「ありがとうございましたッ!」」
隼人は主にパントやフィールドゴールのロングスナッパーとして出場した。試合は無事に終了し、勝利を収めることができた。流石に普段よりは出番は少なかったものの、オールスターに選ばれただけでも嬉しい。自チームの先輩や、リーグでも有名な他チームの選手たちに混ざってプレーするのは緊張したが、尊敬する人たちと一緒にいられるのはとても光栄なことだ
……
解散後
「お~い隼人!お疲れさん!」
「お疲れ様です♪」
「お~江井ちゃんにダイヤさん。ありがとう♪」
「しかし思ったより出場したな!」
「全くだ。アイランドも念のため練習してたんだけど、ホントにやるとは思ってなくてな」
「ふふっ、素晴らしいパフォーマンスでしたわ♪」
「あぁ、ありがとう」
「果南さんに、届いたかな?」
「あぁ、何かそんなこと言ってたな。忘れてた」
「おい!ってまぁ試合に集中してたのは良いことか」
「心配しなくても、きっと届いていますわ」
「だと良いな。ビデオは撮ってあるんだろ?帰ってきたらめっちゃ見せよう!」
「あぁ、見せつけてやれ!」
(まぁ、果南がいればもっと良いパフォーマンスができたかも?なんてな)
「どうなさいました?」
「ん?あぁ。流石に疲れたし、タンパク質と甘味を摂ってから帰ろうと思うんだが如何?」
「お供するぜ!」
「えぇ、是非♪」
「よっしゃ!」
そういって、近くのファミリーレストランに向かう一行だった
(帰ったら、果南にLINEしてみようかな……)
("果南さんに来て欲しかった"って顔に書いてあるぜ相棒)
(ふふっ、相変わらず分かりやすい方ですわ♪)
━━━━
~一方、その頃のオーストラリア~
「じゃあマム、みんなおやすみ~」
「「おやすみ~」」
ファミリーとの団欒を終え、こちらでの自室に戻る果南。「おやすみ」とは言ったがまだ早いので寝る訳ではなく、部屋で軽く予習や復習するのが日課となっている。元々勉強は好きでも得意でもないが、留学が進むにつれて講義と実技が段々とハイレベルになってきている。自分の夢のためにも、ここからが踏ん張り処だ
「ふぅ~。こんなもんかな♪……ん?」
隼人からLINEが来ていた
(あ♪)
『果南おっす! 今日無事にオールスター戦終わったぜ!何とか勝てた~!』
『ふふっ、それは良かった♪ 試合は出られたの?』
『おう。まぁロングスナッパーがメインだったけど、職人冥利に尽きるぜ!』
『う~!見たかったな~!』
『ホント、俺も見て欲しかったわ。まぁビデオ撮ってあるから帰って来たら一緒に見ようぜ! 果南の方はどう?順調?』
『うん。実技は順調。座学はまぁ……とりあえず何とかなってるかな?』
『ハハッ。実技は心配してないけど、座学が何とかなってるなら安心だわ』
『隼人やダイヤに鍛えてもらったおかげでね』
『お役に立てたなら何よりだ』
『うん、ありがとう♪ それじゃあまたね!』
『おう!』
……
翌朝
「みんなおはよう~!」
「「おはよう~!」」
「おや?カナンなんだか嬉しそうだね」
「あぁ、うん!昨日隼人からちょっと連絡が来てね」
「それは良かったじゃないか!なんだって?」
「アメフトの試合があって、無事に勝てたんだって♪」
「ふふっ、ハヤトも頑張ってるみたいだね!」
「うん♪」
「でもカナン……最近ちょっとだけ、寂しそうな顔をしているね」
この留学が終われば、晴れてダイビングの上級資格を取得して日本に帰れる。そうすれば隼人やダイヤ、みんなに会える
しかし……
「うん……やっぱりちょっと寂しいな」
「ふふふ、それは私も一緒さ……。でも今は、そんなこと考えずに頑張りなよ!」
「……うん!」
ここオーストラリアも、既に第二の故郷と言って差し支えない。マムたちファミリーと離れるのは、やはり寂しい
(ふふっ、ウチにホームステイに来る子は、ホントに良い子ばっかりだねぇ……。さぁ、この子も無事に送り出さないとね!)
━━━━
~翌春・日本~
隼人たちは4年生になり、大学生活も大詰めを迎えている
卒論とアメフトを両立するのは忙しいが、その分充実した毎日を送っている。因みに卒業に必要な他の単位は全て取得したので、その辺りの心配はない
研究室では、ゼミの資料を先輩にボロクソ言われたり、溶液を作るため結晶を砕くのに苦労したり、女子学生がメロン栽培の研究で使う土や肥料を運ぶのを手伝ったり。時には大学内の圃場で採れた野菜をもらったり。そのジャガイモやタマネギを、実験の合間にレンジで温めて塩コショウで食べるのがささやかな楽しみになっている
またゼミが終わった後に、仲の良いメンバーで突発的に飲み&カラオケに行くこともしばしば
「もう聞いてよ!ウチの彼氏がさぁ……」
「ホントホント!私の処も……」
「ふんふむ……」
彼女らの愚痴を肴に、飲み放題のお酒を色々試すのが常である
「あっ、でもゴメンね。隼人君は……」
「果南ちゃん留学中なんだよね?寂しくないの?」
「ん~まぁ寂しいのは寂しいな」
「やっぱそうだよね~」
実は、未だに黒髪ポニーテールを見掛けると目で追ってしまうことがあるのだが、それは彼女らには内緒だ
「ハハッ。まぁ、色々忙しいから、逆に気が紛れて良いかもな」
「浮気とかしないの?」
「うわ!ぶっちゃけた!」
「ん~、それはないな~。果南を裏切りたくないし。何より、あんなパーフェクト彼女、他にいない」
「そっか~。そんなに想われてるなら、果南ちゃん幸せだね」
「うん。正直羨ましい」
「お、おう」
「そういえば、馴れ初めを聞いてなかった!」
「そうだよ!今日こそ聞かせて!」
「ちょっ!?」
……
ある日の部活中
「次、1 on 1!」
「「はい!」」
「よ~し一年生共、俺が相手だ!」
「え!?マジですか!?」
「あわわわ!!」
「ハハハ!隼人、疲れたら代わるぜ」
「おう!まぁ何とかなるだろ」
1 on 1。簡単に言うと一対一でぶつかり合う練習だ。それを一年生全員を順番に相手しようとする隼人。もちろん、入部間もない彼らに全力は出さない
「行きますDown。Set、Hut!」
教えられた通りに構え、隼人に向かって行った新入部員。それを横綱のように正面から受ける隼人
「おらよっ、と……。ふんふむ、筋は悪くねぇ」
「うぅ……やっぱ強すぎ……」
その様子を見守っていた江井と後輩
(江井さん江井さん。隼人さん、なんとなく雰囲気が変わりました?なんか更にストイックになったというか……)
(あ、やっぱり? 俺も薄々思ってたんだよな)
煩悩を捨て去った修行僧のように……とまでは言わないが、以前に増して練習やトレーニングに集中するようになった隼人である
それは純粋な向上心からか、寂しさを紛らわせるためか。或いはその両方か
だが、もうすぐ再会だ……
━━━━
~オーストラリア~
無事にダイビング留学を修了した果南。長いようで短かった半年の留学期間が、今日終わりを告げる
空港でホストファミリーと別れの挨拶を交わす
「みんな、本当に今までありがとう!」
「こちらこそ。楽しかったよ♪」
「いつか日本に、内浦に来て欲しいな。私が育った海をみんなに見て欲しい!」
「ふふっ、それは良いね♪」
「でも本当に帰っちゃうなんて信じられない。寂しいね……」
「今度来る時は、ハヤトも一緒にね!」
「新婚旅行でいらっしゃい!」
「ちょ、ちょっとマム!?」
果南が驚いているのを気にせず、優しくマムが包み込む
「ふふっ、何処にいても、例えそれが地球の裏側でも、カナンはウチのファミリーさ。いつでも帰っておいで」
「うん、うん……!」
当然日本に"帰る"訳だが、マムは"帰っておいで"と言ってくれた。それがとても嬉しい
そんなマムのハグは、とても優しく暖かかった
━━━━
~日本~
国際空港の到着ロビーに、恋人を待つ青年が1人佇んでいる。かなり……いや、非常に落ち着かない様子で何度も空を見上げ、何度も時計を確認している。
やがて幾度となく見た時計が予定の時刻を指した時、一機の飛行機が降り立った。ハッとしてゲートを凝視しているうちに、次々と乗客の姿が見え始めた
そしてその中に……
「……!」
半年間待ち続けた
彼女もまた、恋人を探すように辺りを見回している
するとその時、太いバリトンが響いた
「果南っ!!」
「!!」
その声に反応し、弾かれたように彼女は振り向く
「隼人っ!!」
2人は吸い寄せられるように駆け寄り、人目も憚らず熱く抱き合う。込み上げる様々な思いが、雫となって瞳から溢れ出る
「おかえり、果南……」
「ただいま、隼人……」
半年振りの
……
隼人宅
果南が隼人の左腕に抱き着き、空いた手を繋いで座っている
話したいこと、伝えたいことは山ほどあるが、また会えたことが嬉しくて上手く言葉にできない。それよりも今は、一緒にいられることが嬉しい
「……♪」
「……♡」
今は、見つめ合う2人がそっと、そっと寄り添うだけ……
━━━━
それから2人は、隼人宅で一緒に暮らし始めた。2人で住むには少々狭いが、そこは何とかなるだろう。
因みに、果南の荷物の一部はダイヤ宅に置かせてもらっていたりする
実は果南の留学前、こんなやり取りがあった
……
「ねぇ、私が留学から戻ったら、一緒に暮らさない?」
「何と!?」
「ダメかな……?」
「全然!……待ってるな!」
「うん……♪」
やっぱり、いつも2人でいたい
……
家賃や光熱費・食費等の分担を粗方定め、家事は流れで分担し、概ねスムーズに同棲生活を送っている
もちろん一緒に住むのは良いことばかりではなく、偶にはケンカもする。概ね、生活習慣の違いや食べ物の嗜好などが原因だろう
だが、相手の良い処を好きになり、悪い処を許せるようになれればこそ絆が深まる
━━━━
そして時は過ぎ、大学生活も最終盤
隼人は2年連続でのオールスター。今年は江井も一緒だ。2人ともスタメン出場な上に、学生最後の試合とあって気合いが迸る
「ハードタックル、レディーゴー!!」
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「凄い気迫だね……」
「えぇ。去年の比ではありませんわね……」
観客席には去年に続きダイヤと、念願の観戦となった果南。もちろん隼人たちのチームメイトも一緒である
……
試合が終盤に差し掛かった時、会場からどよめきが起きた
オフェンスラインである背番号69の選手が1人、離れた位置に構えている
「果南さん、あのフォーメーションはまさか……?」
「うん!アイランドだ!」
アイランドフォーメーション。かつて
(まさかアイランドまでさせてもらえるとは、
「行きますDown。Set、Hut!」
「おらぁっ!!」
「やった!タッチダウンだよ!!」
「ふふっ、流石ですわ♪」
……
「試合終了。ナイスゲーム!」
「「ありがとうございましたッ!」」
最後の最後の試合が、無事に終了した
盟友たちと一緒に出場できたこと、自分の技で会場を沸かせられたことなど、全てが良い経験になった。しかも果南の目の前でとなれば、その喜びも一入だ
━━━━
~3月~
卒業式の朝
「う~……就活でもそうだったけどスーツやだ。首が苦しい」
パワー系アスリートは堅苦しい服装が苦手な人が多い。首・肩周り・腕・大腿、全てがキツい。因みにサイズ合わせでは、大腿に合わせるとウエストと丈をかなり詰めることになる
「もう、わがまま言わないの!ほら、ネクタイも曲がってるし……」
「お、おう。ありがとう……」
「……はい。折角似合ってるんだから、もっとビシッとして♪」
「はいよ」
(果南にネクタイ直してもらえるなら、スーツも悪くないかも……?いややっぱり苦しい)
「……どうしたの?」
「あぁいや、果南は時間大丈夫なの?」
「うん、私の学部は遅いから。一緒に出て美容院行けば大丈夫だよ」
「了解だ。でも果南の晴れ着が見られないのが残念だな」
「もう/// 早く準備するよ!」
「はいよ~」
(ホントは、隼人に一番見せたかったんだから……///)
━━━
~数年後~
大学を卒業後、晴れて果南はダイビングのインストラクターになり、隼人は実業団のアメフトチームでプレーしている
めでたく結婚し、なんとか休暇を合わせた2人は、新婚旅行でオーストラリアに訪れている
「ふんふむ、ここが例の!」
「うん、そうだよ♪ こんにちは~!」
「お~、カナン!久し振りじゃないか!っと違ったね。お帰り、カナン」
「マム、ただいま♪」
「それで、君がハヤトだね?写真で見るより良い男じゃないか」
「初めまして!いつぞやは果南がお世話になったということで……」
「ハッハッハ、何だいその挨拶は!」
「!?」
「カナンは私の娘なんだから、アンタはもう私の息子だよ」
「!!」
「だから、堅苦しいのはナシさ」
「わかりm……わかったマム。よろしく!」
「はい。こちらこそ♪」
「ふふっ♪ 2人が打ち解けてくれて嬉しいな♪」
「そうだ、大切なことを言ってなかった! 結婚、おめでとう」
「「ありがとう!」」
「さて、まぁ大したものはないけれど、ゆっくりしてお行き!」
「「うん!」」
マムの豪快さに些か驚いた隼人だったが、とても包容力のある人なのはすぐにわかった
この新婚旅行もまた、かけがえのない人生の1ページになった
おしまい
━━━━
これにて大学生編終了です
お付き合いありがとうございました!
と言いつつ書きたいネタはまだあるので、この作品自体は続く予定です
よろしくお願いします!