ゆっくりと意識が浮上し、目の前には見慣れない天井が映る。
「おや、目が覚めたかい?」
そんな自分の顔を覗き込んでるのは薄い桃色の髪をしたお婆さん。ゆっくりと上半身を起こし辺りを見渡す。やっぱり見慣れない場所、少なくても自分の家じゃない。
「まったくびっくりしたよ。家の前に知らない子供が傷だらけで倒れてて、おまけに何日も目を覚まさないままなんだからね。一体何があったんだい?」
と、お婆さんが尋ねてきたから、それに返事をするべく自分の記憶を振り返る
「確か……故郷の村に魔物がやってきて――」
(確か……大学のサークル活動で遅くなって――)
「……え?」
(友達も村の人達もみんな殺されて――)
(それで眠気でボーっとしながら駅のホール電車を待ってて――)
「あ……う……」
「ど、どうしたんだい?」
おかしい、変だ。記憶を掘り起こすと2つの記憶が浮かんでくる
「お父さんのおかげで、僕……だけが、逃げる事が……出来てっ」
(その時、誰と体がぶつかって、バランスを崩して――)
振り払うように少し大きな声で記憶を口にしたのに、もう一つの記憶も止まる事無く思い出される。
(何処行けば良いか分からないまま歩き続けたら、ここの家を見つけて)
「線路に落ちると同時に電車が来て……違うっ! 違う違うっ!」
自分じゃない筈の誰かの記憶、なのに自分の感情と頭では自分のモノだと認識してるそれが口から発せられ、思わず頭を抱えて首を横に振る。
「しっかりおしっ!……仕方ないね」
そう言うとお婆さんは自分の目の前に手のひらを翳し――
「辛い事を訊いて悪かったね。もう大丈夫だから今は何も考えず、ゆっくりお休み」
そして、手のひらがぼんやりと光ったかと思うと、急激に眠気が襲ってきて僕の意識は再び途切れた――
※
「故郷の村に魔物、か。そのショックで記憶が混乱してたってところかね」
そして、父親が命からがらこの子だけをなんとか逃がした。自分だけ、と言う事は村は全滅したのだろう、と言う事は群れか、もしくは災害級か……。どっちにせよ問題はこの子をどうするかだ。こうして拾った以上放って置く訳にも行かないし、追い出したとしても身寄りも何もない状態では生きていく事は困難だろう。
(そう言えば――)
そんな時、ふと知り合いの爺さんが数年前に拾った赤ん坊の事を思い出す。あの子は今年で5歳。この子も見た感じ歳は近そうだ。そしてあの爺さんは世俗を離れ森で隠居してる身なのもあって、あの子にも同い年の友人なんて居ない。ならば――
「……丁度良い、と言うのは流石にこの子に失礼だろうね」