魔人サイドはオリバーは帝国滅ぼしただけで終了だし、ゼストやミリアと言った主要キャラはほぼ顔見せ程度の出番だし、暫く魔人との戦いがメインな状況が続く原作を考えるとやっと本筋に入り始める段階でアニメは終了って感じですね・・・
第1話『英雄の孫、二人』
「まぁ、こんな所かな……」
そう言いながら、手に持った羽ペンを置き、机の上に乗ってるピンポン玉サイズの宝石を摘み上げる。
(今日は魔物討伐の実践。こいつを試すにはうってつけの相手だ)
今から5年前、俺の村は魔物と呼ばれる魔力の暴走により狂暴化した動物、その中でも一際強力な『災害級』と呼ばれるそれに滅ぼされた。命からがら俺を村から脱出させてくれたお父さんも追撃してきた魔物から俺を守る為に囮となった。身寄りも何もない5歳の少年が一人放りだされた所でどうする事も出来ず、飲まず喰わずのまま何日も彷徨い続けて行き倒れてた所、一人の老婆に保護された。
「セイン、そろそろ出かけるよ。準備は済んだのかい?」
「うん、今行くよ。お婆ちゃん」
セイン・ボーウェン。俺を保護し育ててくれる女性、メリダ・ボーウェンより『ボーウェン』の姓を貰い、立場上は彼女の孫となった、それが今の俺。
※
「で、この間から作ってたものは完成したのかい?」
「とりあえずは、ね。今日は魔物と戦うみたいだからその時に試してみるつもり」
「全く、何処の世界に10歳で魔物と戦おうとする子供が居るんだい……」
「と言ってもね、ただの動物だともう殆ど相手にならないし。まぁ、流石に今回はおじいちゃんが手助けしてくれるみたいだけどね」
「当たり前さね。そもそもセインの歳で動物相手じゃ物足りないと感じる事自体おかしいんだからね」
と言われても、事実なのだから仕方ない。お婆ちゃんは魔法を付与した道具、魔法具の扱いに造詣があり、その孫である自分も魔道具製作の手ほどきを受けている。魔道具と言うのは魔法の力が付与された特殊な道具の事。つまり魔道具を作成する以上、自身も魔法の力を扱える必要がある。
「おーい! 婆ちゃん、セインー!」
やがて一件の家が見えてきた。家の前には一人の少年と男性の老人が立っており、少年の方は大きく手を振っている。
「おはようシン、お爺ちゃんも」
「ほっほっほ。今日も元気そうじゃの、セインよ」
そんな俺、と言うか俺達に魔法を教えてくれているのが彼、マーリン・ウォルフォード。姓こそ違うが、おばあちゃんと一緒にかなりの頻度で彼の家にお邪魔したり泊まったりしており、俺にとってはお爺ちゃんと呼んでも差し支えない程だ。そして――
「なぁ、セイン。この間言ってた奴完成したのか?」
「ああ。ほら、この通り」
そう言って、何も無い空間に手を突っ込み、宝石を取り出して見せた。俺と同い年の少年はシン・ウォルフォード。彼は赤ん坊の頃にお爺ちゃんに拾われたらしい。以降はウォルフォードの姓を貰い、おじいちゃんの孫として暮している。お互い英雄と言われた二人に拾われて更にある共通点を持ってるもの同士と言う事もあり、今では兄弟同然の中だ。
「マーリン、分かってると思うけどくれぐれも二人に無茶させるんじゃないよ!」
「わ、分かっておるわい。じゃから今回はワシも同行するんじゃし……」
「そもそも、二人ともまだ子供なんだ! 魔物討伐をさせる事自体――」
そんな中おばあちゃんが少し険しい顔でおじいちゃんと話している。若干押されぎみなおじいちゃんの様子に俺達は顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。
※
「付与なんだけど、靴の方は同じのを作れたけど武器の方は俺のじゃ無理だったんだ」
「そうなの?」
「付与自体は出来たんだけどね」
そう言って何もない空間に手を入れて、そこから白色の宝玉を取り出す。これは『異空間収納』と呼ばれる魔法で荷物を自由に出し入れできる。
「シンの剣と違って刃と柄がしっかり接続されてる所為で持ち手ごとぶれるんだ。まぁ、代わりの付与もちゃんと考えてきてるから問題ないよ」
「二人ともおしゃべりはその辺りにしておきなさい。もうすぐ魔物の居る領域に入るぞ」
「魔物が居るって分かるの?」
頻繁にこの森で狩りをしてきた事もあり動物の気配とかは何となく判るが、どれが魔物かはさっぱりだ。
「ほっほ、それじゃあどうやって魔物の探すか教えてやろうかのう」
そう言ってお爺ちゃんが教えてくれたのが『索敵魔法』。自身の魔力を薄く広げることにより、それに触れた別の魔力の反応を感知できると言う事。索敵範囲はどれだけ大量の魔力を広げられるかで変わって来る。
(薄く広げる、か)
そう言われてもピンとこない。このピンとこない、と言うのは魔法を使う上で致命的な要素だ。何せ魔法を行使するに必要なのは『術者が自身の内に取り込み制御した魔力』と『イメージ』だ。“あの世界”で一般的に概念づけられている魔法みたいに決まった呪文や魔方陣といった類は存在せず、魔法の形はイメージで決まるのだ。
(なんか参考に出来るものは無いかな……)
そう考え、自分の記憶を掘り起こす。ただ、掘り起こしてるのはセインの記憶ではない。此処とは異なる世界“地球”と呼ばれる世界で生きていたもう一人の自分の記憶だ。お婆ちゃんに保護された日を境に自分の中にはセインとしての記憶とは別の自分の記憶がある。最初はその事実に戸惑い、恐怖し、魔物襲われたショックも合わさり、かなり精神的に不安定になっていたが、それらが落ち着いて冷静にもう一つの記憶と向き合ってみるとそれは知識の宝庫ともいえた。ちなみに、シンとのもう一つの共通点がこれであり、シンも地球での自分の記憶を持っている。
(うん、これなんか良さそうだな……)
クレープと言う食べ物がありその皮の作り方が鉄板の上にたらした生地を薄く広げて焼いていくものだ。いきなり広げていくのではなく、まずは自分を中心に魔力を集める、そしてそれを目に見えないヘラで薄く延ばしていくイメージ。自分の魔力が広がっていくのを感じ、その中でポツポツと何か別の魔力を感じる。途中一際大きめな魔力を感じたが位置的にはここはおじいちゃんとシンの家、と言う事はおばあちゃんか。
(っ!?)
そして、もう一つ大きな魔力を感じた。しかし、それはとてもどす黒く禍々しい。
「……この黒い魔力」
「それが魔物の魔力じゃよ」
魔物の恐ろしさはよく知っている、つもりだったが実際に魔力を感じる事であの時どれだけヤバイ存在が村を襲ったのかを改めて実感する。
「じいちゃん、セイン早く行こう! あんなもん放っておいたら大変な事になる」
「うん」
「そうじゃのう、ちとこれは不味いかもしれんの」
※
魔力の反応があった場所に到着するとそこに居たのは一匹の熊。全体が真っ赤に染まった眼球、視認できるほどの黒いオーラ。動物の種類こそ違うが5年前に村を襲った奴と同じ特徴を備えたそいつが、一匹の猪を貪り喰っている。
(あの時は……)
逃げる事しか、誰かに守られる事しか出来なかった……けれど、今の俺ならっ!!
「シンッ!」
「うんっ!」
異空間収納から一振りの槍と水色の宝玉を取り出す。そして、刃の根元に空けた窪みに宝玉をはめ込む。シンも腰の鞘からを剣を抜いて構える。
「待つんじゃっ! 二人とも」
「先手はもらった!」
もう片方の手で風を集め、熊にめがけて撃ち出す、狙いは左目だ、風のの弾丸は熊の目に着弾。普通ならば熊の目玉を潰して終わりだ。しかし俺が放ったそれはそのまま目玉を貫通し、頭部に小さな風穴を空ける。ただ風を圧縮して放つのではなく螺旋状にして放ったのだ。これもドリルと言う地球の記憶にある採掘道具がイメージの元となっている。
「すっげぇ」
「油断しないで、来るよっ!」
魔物化した事で生命力も強化されてるのか、熊は一瞬だけ怯むもそのままこちらに突っ込んでくる。
俺とシンはそれを左右に飛び退いて避ける。そして着地する前に靴に魔力を通すと靴底から空気が噴出した。これがシンの考えた魔道具ジェットブーツだ。流石に完全に空を飛ぶ事は出来ないが、それでも機動力はかなり増す。因みに自分とシンは魔物のところへ向かってる間もコレを使っていたが、お爺ちゃんは身体強化魔法を掛けこそしたが、生身で普通に俺達に着いてきた、年老いても流石は英雄と言った所だ。俺とシンで熊を前後で挟む形で陣取る。俺達がそれぞれの武器に魔力を通すとシンの剣は振動し、俺の槍の刃は水を纏う。
「たぁっ!」
シンが距離を詰め、熊に斬りかかるが熊もそれを避ける。そして、お返しとばかりに二本足で立ち、前足の爪をシンに向かって振り下ろそうとする。
「させないっ!」
熊が二本足で立った瞬間、自分も距離を詰めて後ろ足めがけて槍を振るう。殆ど手ごたえを感じる事無く槍は熊の足を一本斬り飛ばした。
(なんと言う斬れ味じゃ!? しかしセインの槍は単に水を纏っているだけの筈……いや、あれは)
マーリンはセインの槍に纏わり付いてる水を凝視した。そして――
(ただ纏っておるだけじゃない。物凄い勢いの水流が発生しておるのか)
火や水を纏った剣や槍と言うのは魔法の武器としては定番中の定番。この世界でもそう言う武器は存在していたが今では完全に廃れている。何せこの世界には異形の生物と言う意味合いでの魔物は存在しない、この世界の魔物は魔力が暴走しているだけで元はただの動物だ。つまり地球の物語り出てくる様な、特定の属性の攻撃に弱いと言った特徴はない。火を纏っただけの剣で攻撃しても『斬る』と『叩く』の違いはあるが少し頑丈な松明で殴るのと大して変わらないし、火で焼くのが目的ならそれこそ火の魔法をぶち込んだ方が手っ取り早い。剣や槍を使った方がより正確に狙った場所を焼く事が出来る、と言う利点はあるが。
「よし、狙い通りっ!」
けれど、水の力と言うのは案外バカにできない。水の流れは勢いが強ければ強い程、威力は増し、それは金属すら切断する。事実、地球にも水を使いモノを切断する道具は実在している。
「セインは心臓をっ!」
「了解っ!」
熊は二本足で立つ事が出来るが実際は4本足の動物だ。そんな熊が二本足で立っている状態でいきなり片足を斬り飛ばされればとどうなるか、とっさに前足も地についてバランスを取ろうとするだろう。その瞬間、熊は無防備となる。俺は付与を解除すると宝玉を外して異空間に収納、そのまま今度は緑色の宝玉を取り出し装着、すぐさま魔力を通す。
(今度は風、付与の内容を書き換えたのか!?)
槍に纏っている風は最初に放った風魔法と同じ様にドリル状になっている。その槍で俺は熊の心臓を貫き、シンは剣を振り上げ首を撥ねる。幾ら魔物でも首を撥ねられ、心臓も貫かれれば確実に死ぬだろう。初めての魔物討伐、オーバーキルぐらいが丁度良い。首が地面に落ちると同時に胴体もゆっくりと横に倒れる。
「「やったーっ!!」」
武器を仕舞い、ハイタッチ。二人でおじいちゃんの所に駆け寄る。
(まさかこれ程とは……)
マーリンが着いてきたのは二人が少しでも危なくなった時に手助けをする為。今回は二人に魔物との戦闘を経験してもらうのが主な目的で、実際に討伐できるとまでは思ってなかった。けれども、二人はマーリンの予想を上回り、危なげなく魔物を討伐してみた。
(これは、楽しみじゃのう……)
10歳という幼さでこの強さだ、これからも鍛錬を重ねればどれ程までになるのか。マーリンは密かに口元を釣り上げ笑みを浮かべるのだった。
今後、後書きでは本文中に書くタイミングが無かった部分や補足説明を必要に合わせて行っていきます。と言う訳で最初の補足はオリ主の容姿について
・海色の瞳に栗毛色のミドルヘアー。左目の辺りの前髪を一房長めに伸ばして白のメッシュにしてます。これは本文中に書いた精神的に不安定な時期にストレスから髪の一部が白くなり、まばらだとかっこ悪いということで周りの髪も白く染めてメッシュにした(裏設定)
・服装は紺色のズボンに白のワイシャツ、その上からベストを羽織っている(シンのプロテクトスーツと同じ内様の付与を施してる)
成人後の容姿については服装は同じですが目付きが若干鋭くなった姿を考えて下さい。