「なんだって!? 魔物化したレッドグリズリーを二人が瞬殺した!?」
シンとセインが眠った後、マーリンはメリダ、そして二人に武術の手ほどきをしている茶髪に緑の目をした男性ミッシェルに魔物との戦闘の様子を話していた。話し終わるとメリダは「ふぅ……」とため息をつくとゆっくりとソファに腰を下ろす。
「一体何者なんだろうね、あの子たちは……」
魔法の習得スピード、武術鍛錬、誰も見たこと無いようなオリジナル言語による付与魔法。10歳と言う若さでシンとセインは大人の魔法使いに迫る実力を備え始めている。
「実は二人は別の世界から来たって言われても信じられるよ」
メリダの冗談混じりに言った言葉は当らずとも遠からずだ。シンもセインも紛れもなくこの世界の人間。この世界で生きていた名も知らぬ夫婦の間に生まれた子供だ、ただその記憶の中に別世界での自分の記憶もあるというだけの。
「まぁ、何者でも構わんよ。元は拾い子じゃが今ではシンの事もセインの事も本物の孫じゃと思っておる。ワシはあの子たちが可愛ゆうてしょうがない。強くなるのはあの子たち自身を守る事になる。何も問題はありゃせんよ」
「まさか、あの『破壊神』やら『業火の魔術師』やら言われたアンタがそんな事を言うなんてねぇ……」
「あの……その呼び方やめてくれんか? 若かりし日の黒歴史が蘇って身悶えしそうなんじゃが」
気まずそうに視線を逸らすマーリンだが、ふと思いついたように「そう言えば」と呟いた。おそらくは話題逸らしも兼ねているのだろう……。
「セインのあの槍は一体なんなのじゃ? 水と風、二つの魔法が付与されてるみたいじゃが」
刃に水や風を纏わせるだけでなくそれらが螺旋や流れを生み出す別の効果も付与されている。初めてそれを見た時は付与の内容を変えたのかと思ったが、槍に二種類の効果が付与されていると考えるのが普通。しかし、それでも説明できない部分がある。
「あれだけの付与。たとえ二人の使ってるオリジナルの言語でも文字数が足りるとは思えないのじゃが」
付与魔法とは魔法のイメージの定着に『術者が理解できる文字』を使用している。そして素材ごとに付与できる魔法のキャパシティには差があり、それは書き込める文字数の違いと言う形で現れる。シンとセインはその制限に対して一文字で意味を確立させる事も出来る文字、『漢字』を用いる事で幅広い付与を可能としている。
「魔法が付与されてるのは槍ではなくて宝玉の方さ」
「宝玉?」
確かにセインは戦闘時に槍に宝玉をはめ込んでいたし付与の属性が変わる直前にも付け替えを行っている。
「ある魔法具に付与された効果を魔法具本体ではなく別の対象に対して発揮させてるんだ」
「なんと!?」
「セインは『付与魔法の効果が発揮されるのはなにも魔法具本体だけじゃない』そう考えて付与自体は文字数の多い素材に刻み、けれどその効果は別の道具に発揮させる事が出来るのではと考えたわけさね。つまりセインが行ったのは『付与魔法の付け替え』実際の槍のほうにはなんの魔法も付与されないんだからね」
「付与魔法の効果は道具本体以外の対象にも現れる、これは新たな発見と言う事ですな」
「いいや」
ミッシェルの言葉にメリダは首を横に振った。
「新たな発見でも何でもないよ。治癒促進の効果を付与した包帯が良い例さね。あれだって付与自体は包帯に施されてるが、効果が現れてるのは包帯を巻いた生き物のほうだろ?」
その言葉にマーリンとミッシェルはハッとなる。
「あまりにも当たり前で普通すぎる事だから気づかなかった。それにあの子は気付いた、それだけの事だよ」
飽くなき研究の末か、ちょっとしたきっかけか地球の人間は『火が燃える』と言う当たり前の現象をより深く理解しようとした。そして火は何故燃えるのかを理解し、その理解の下でどうすればより強く燃えるかを追い求めた結果、人は木と木を擦り合わせるなんて手間をかけずともボタン一つで火を点けて、火力の調節も簡単に行える様になった。
前世の知識や技術もそうだが、何よりセインが一番感心を持ったのは物事をより深く理解しようとする地球の人間の探究心。イメージさえ出来れば『理解』が浅くとも大抵の『結果』は引き寄せることが出来る魔法が実在しない世界の人間だからこそ持ちえた考え方。
「あの子は常に理解しようとする。たとえそれがどれだけ当たり前でどれだけ常識的な『結果』の事であってもね」
――それから5年後、物語は大きく動き出す。二人が15歳となり成人となった日に賢者の口より衝撃の事実が発覚する事によって。
セインの付与魔法、タグから予想できるかもしれませんがマテリアみたいなもんです。
次の話でやっと成人編、衝撃の事実とは『賢者の孫』最初の迷セリフ(うp主の中で)のあれですwww