Fate/lost imagine   作:ぽっとでの急須屋

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今回の話を見た人は「ありえねぇだろ」と思うかもしれません。


男の闘い

 波打ち際の海岸に立つと銀色に輝く月が海の波間に反射して、まるでこの世界を幻想へと誘っているかのようだった。

 

「素敵、まるで夜空の合わせ鏡みたい」

 

 夜風は冷たく、辺りには人影もない。この海岸はまさにキャスターとアイリだけの物であった。

 

 アイリは裸足になり波のところまで駆けていった。初めての海の感触が楽しいのだろう。そのまま少し歩き出した。

 

「殿方に付き添われて見知らぬ町を歩くのはとても楽しいわね」

 

「それは結構、夢魔の私としても君が喜んでくれるのは好ましい」

 

 さざ波は静かに浜へと打ち寄せている。

 

「キャスター、海は好き?」

 

「好きか、と問われると少し返答に困るね。どうだろう、嫌いではないかな」

 

 アイリは、本当は切嗣とここに来たかったのではないのかい。

 そう、キャスターが問うと、アイリは言葉を捻り出すようにして話した。

 

「……あの人は駄目よ。辛い思いをさせてしまうわ」

 

「もったいない。切嗣は君と過ごす時間を楽しまないのかい」

 

「あの人は幸福であることに苦痛を感じてしまう人だから……」

 

 波の音が辺りを包み込む。静寂の帳が降りたようだ。

 

 キャスターは気付いた。

 

「敵のサーヴァント?」

 

 その様子が分かったのか、アイリはキャスターに尋ねた。

 

「ああ、百メートル先から気配を漂わせているね。どうやら我々を誘っているらしい」

 

「律儀ね。戦う場所を選ぼうってわけ。お招きに与るとする?」

 

「少し骨が折れそうだけどね。望むところさ」

 

 

 

 

 

 埠頭に行くと、何処からか声が聞こえてきた。

 

「よく来たな、今日一日この町を練り歩いて過ごしてみたが、どいつもこいつも穴熊を決め込んでやがる。俺の誘いに乗ったのはお前だけだ」

 

 現れたのは一人の男、銀の軽装を纏った美丈夫だった。緑の短髪に、鋭い眼光。手に持つ青銅の槍を見るからに、クラスはランサーか、若しくはライダーと言ったところだろう。

 

「その杖を見るにキャスターか? しかし、剣なんぞ持って何の真似だ」

 

「それは今に分かることだろう。私がどうして強いのかもね」

 

 ほざけ、と言って男は槍を構える。距離は十数メートルあるというのに、放たれた殺気が鋭く刺さる。どうやら敵に距離が遠いということはないらしい。

 

 ピンと緊張の糸が張られる。アイリの手は汗がにじみ、呼吸は浅くなる。傍から見ていてそうなるのだから、対峙している二人はどれだけのプレッシャーを感じ取っているというのだろう。

 

 瞬間が一生に感じる空間。空気が粘着し、今か今かと体が震える。

 

 動いたのは両者同時だった。

 

 杖を掲げ魔術を行使するキャスター。それを読んでいたのか、男は地面を低く走り、飛んできた光弾を槍で弾き飛ばした。振り落とされる槍。その先端には無防備に構えるキャスターが……。

 

 ゴィィィイインッ。

 

 堅いもの同士がぶつかりあって弾かれる音。

 

「ああ、言わなかったけ。流石に無防備で来るのは危ないから、事前に魔術で対策を打たせてもらったよ」

 

「この魔術師がぁあ!」

 

 決闘を汚されたと感じたのだろう。男は切れた。振り回す槍の速度がどんどん上昇していく、どうやら力業でキャスターの障壁を破るつもりらしい。そんな男を前にして、キャスターは全く臆することなく片手に持った剣を振るう。

 

 ドゴォオ。

 

 衝撃波がアスファルトを砕き、埠頭に積まれたコンテナ群へぶつかる。ランサーは紙一重でその剣をかわし、身を引いていた。

 

「……どうやら、その剣は飾りじゃないみたいだな」

 

「言っただろう。見ての通りさ」

 

 チッ、と舌打ちするランサー。キャスターなら白兵戦は苦手と踏んで距離を詰めたが、どうやら相手にはあまり意味がないらしい。なんといっても、障壁が邪魔くさい。あれほどの防御力を持つものは余程の時間をかけたか、余程の実力があるかだ。キャスターの剣を受けたところで傷一つ負わない自信はあるが、なんだかきな臭い。あのキャスターは何か、まだ奥の手がありそうだ。

 

 距離を取りつつ、攻撃を繰り返そうと決めた男は先ほどと同じように構えた。

 

「距離をとっていいのかい」

 

 男の下へと幾つもの光弾が雨あられと降り注ぐ、そのどれもが意味がないことを感じ取った男は光弾を体で受けることにする。向かうは一直線に、キャスターのもとへ。稲妻のごとき疾駆する男の突進は音を超え、光に迫った。

 

 ギィイイイイン。

 

 障壁にぶつかり、鈍い音が響き渡る。男は障壁が破れぬものではないことを知っている。魔術師は彼の時代にも居た。いくら技が優れていようとこの世に壊せぬ魔術はない。彼はそれを信じ、突き進んだ。それに対応してキャスターは剣を振るう。

 

 ズパッ。

 

 張り詰めた水風船を裂いたかのような音。空虚が支配する埠頭の中に突如その音はなった。

 

 ズパズパッ。

 

 続けて二度。男は自らの体を見ると、血が滴っているのを感じ取った。なぜ? 疑問を口にする前に男はその場を飛びのく。

 

 男は見た。キャスターの剣に血がついていることを。それは誰の血だ。間違いなく自分の血だ。何をした。まさか、こいつは神性を……。

 

「ああ、やはり神性だったか……。魔術を発動するのに時間がかかったよ」

 

 何、こいつは何を。武器に神性を付与したのか? そんなことがありえるのか。

 

「まあ、噛まなくてよかった。噛んだら台無しだからね」

 

 依然変わらずのほほんとした空気を纏うキャスターに、男は警戒心をあげた。

 




〇独自解釈ポイント
キャスターはこれぐらいできると思いました。
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