Fate/lost imagine   作:ぽっとでの急須屋

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アーチャーの視察

 士郎が教会にて嫌な信託を綺麗からさずかっているとき、アーチャーは遠坂邸にいながら千里眼によって凛たちの動向を見守っていた。魔術師の家というものはすなわち工房だ。迫りくる外敵から身を守るためにあるもの。それを打ち破ってくる者も偶にはいるが、それでも足止め程度にはなるし、たとえ効果をなさないとしてもあるというだけで攻めたいとはあまり思わなくなるものだ。その守りに頼ることでアーチャーは自分の回復をも行っていた。

 

 アーチャーは家屋の屋根の上に立っていた。眼下には遠坂邸の鬱蒼とした庭から、新都内のビル群にわたり、隣町の家々までが広がっている。アーチャーの千里眼であれば、隣町と言わずこの市から出たところまで見渡せるのだが、それはやめていた。凛から聞いた話によると、マスターというのはここ冬木の地に集まるのが常識だからだ。何も凛から聞いた話を鵜呑みにしているわけではなく、アーチャーも聖杯戦争が始まったというのに冬木の地以外の場所にいるような下策をとる者はいないだろう、と考えていた。

 

 サーヴァントの召喚に神話の戦闘。非日常的でかつ危険な行いが起きているというのに、町はやけに静かだった。その静けさはそのまま遠さとして心に現れる。今となっては神話の時代。かつてのペルシャには似ても似つかない光景が広がっているが、どこか妙な親しみを覚えていた。それはいつの時代にも人の住まう場所には守るべき民がいるからだろう。

 

 この戦いでも民を犠牲にはしない。アーチャーにとっては当たり前のそれだが、聖杯戦争というのは酷なものだ。最たる例が魂食いだ。英霊は人間霊に性質が近いため、生きた人間の精神や魂を食うことで自身の魔力の強化・補充が可能なのだ。そんなことをやってはならない、とアーチャーは考えている。運のいいことにそれはマスターである凛も同じであった。

 

 それ以外にもただサーヴァントが戦うというだけで、その余波に巻き込まれ人が死ぬこともある。宝具なんてものを使えば尚更だ。

 

 アーチャーは自身の宝具について思いを巡らす。自身の宝具も恐ろしい威力を秘めている。かつて世界に神秘が満ちていた頃は国境を作ったほどだ。そののちに自分の五体は四散してしまったが……。

 

 ふと、アーチャーは埠頭の方に魔力の高まりを見た。究極の魔力の集結、迸る光。あれはまさしく宝具の輝きだろう。宙に闘気を放ちながら飛ぶ戦車が、野花あふれる理想郷を駆けている。その中央に立つ塔の頂には腰元まで垂らした白い髪が特徴的なキャスターと思わしき人物がいる。そこに疾風迅雷のごとく加速したライダーが突っ込んだ。

 

 しかし、衝撃はあたりに轟かず、驚いたことにキャスターは無傷のようであった。

 

 アーチャーの目はその近くに銃を持った人が二人、中国服を着たサーヴァントと思わしきものが一人、そして魔術師が一人いることにも気づいた。

 

(狙うか)

 

 アーチャーは考える。この距離であればサーヴァントらしき中国服を正確に射貫くことは可能だ。しかし、この人物が本当にサーヴァントなのかは分からない。ただの一般人ということはないだろうが、もしかしたら何かのマスターかもしれない。できれば、無益な殺生をしたくない、という点でマスターを撃ち殺すのは避けたかった。

 

 サーヴァントの気配、それに考えを巡らせたとき、アーチャーは気付いた。今までに気配を感じていなかったところからサーヴァントの気配を感じ取っていることに。それも足元だ。なぜ、今? 疑問を抱くと同時にアーチャーは屋根から飛びのき、隣の家へと移った。

 

 アサシンだろうか。気配遮断のスキルをもつアサシンであればここまで接近を許したのも分かる。だが、気配遮断のスキルが途切れるのは攻撃に移る瞬間だ。姿も現していないのに気配だけを現す意味が分からない。

 

 混乱の渦中にあったアーチャーを更なる混乱が襲った。

 

 緑色の長髪が特徴的な立ち姿の美しい人がそこには立っていた。

 

 ――ランサーだ。

 

 激戦の末、なんとか撒いたランサーが遠坂邸の玄関の内側に立っている。扉があいた音がしなかったことから、飛び越えたのだろう。ランサーはアーチャーと戦ったときとは違い、なぜか微笑んでいる。

 

 弓を構えるアーチャーだが、ランサーの視線が遠坂邸に向かっていることに気付き、その手を止める。どうやら、自分が正体の分からない謎のサーヴァントに対してランサーは目星がついているようだった。

 

「出てきなよ、ギル。隠れ潜むなんてことは君の性にあわない」

 

 鈴の音が鳴るような涼し気な声を発したランサーは燻る闘気を静かに立ち昇らせていた。

 

(ギルガメシュだと……!?)

 

 人類最古の英雄にして王。 あらゆる英雄の原点にして頂点。その存在が突如として遠坂邸に現れたというのか。

 

「ふむ。そう焦るな、我が友エルキドゥよ」

 

 遠坂邸から現れた金色の鎧に身を包みし男はそう言った。その言葉にまたもやアーチャーは耳を疑った。

 

(――エルキドゥ!?)

 

 そのギルガメッシュと同等に渡り合ったとされる神々に作らし兵器。その英雄と自分が戦っていたことにアーチャーは驚いた。

 

 両者は微笑みながら闘気を昂らせていく。戦闘がおこるのは必至と言えた。

 

 災厄が起きそうな予感を抱きながらアーチャーはその場から静かに離れることを決意した。

 




千里眼Aの未来予知と直感Aの未来予知は大体一緒のものと考えていいんでしょうか。
ちょっとした先しか見れない、ということでいいんでしょうか。
蒼銀のフラグメンツを読めばはっきりするんだろうけどなぁ。
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