バカな!?
(あれ、ここは……?)
衛宮士郎は混乱していた。寝た記憶がないのに、目を覚ますとなぜか自分は見覚えのある和室に横たわっていたからだ。
(……眩しいな)
天井を見上げる顔を蛍光灯の光がじかに照らす。頭は未だ靄がかかったようではっきりしない。漠然とした判断だが、ここは自分の家だろう。
士郎は重たい体を起こした。
(痛っ!)
士郎は胸を押さえた。内側からくる痛みに抗うすべはないものの何かせずにはいられなかった。心臓が血を押し上げる音が聞こえる。どろどろと滞っていた物が一気になだれ込んでくる。
(吐き気がする)
士郎は視界が青くなるのを見た。血が頭まで巡っていないのかもしれない。手足に力が入らず、自分の居場所さえ覚束ない。辛い。意識が朦朧として、どこかに飛んで行きそうだ。
(耐えろ……)
時間が流れる。時計の音が聞こえてきた。カチッカチッカチッカチッ。途切れそうだった神経が何とか手繰り寄せられた気がした。
「気がついたみたいね」
「えっ」
目を覚ましたと思っていた自分は間違いで、まだ夢を見ているのかもしれない。ついそう思ってしまうぐらい、その声が聞こえることはありえないことだった。
振り返ると、そこには学年のアイドル、遠坂凛がたっていた。
(な、なんで遠坂が!?)
士郎の心臓が飛び跳ねる。嬉しい、いや嬉しいのか? 状況が分からな過ぎて困惑する。学校で目にする制服姿のまま、遠坂は縁側の柱に体をもたせかけていた。薄桃色の肌に艶やかな黒髪がよく映える。士郎は今にも自分の体を置いて空へとのぼっていきそうだった。
「なんて顔してるのよ」
はぁ、と呆れた様子で遠坂は言う。
「いや、なんで遠坂がここに? ていうか俺は……?」
「死んだはずじゃ」そう言おうとすると、遠坂が待ったをかける。
「そう、衛宮くんは死んだわ。心臓を貫かれてね。でも、いやぁ良かったわよ。たまたま私が通りかかって。」
少し眉を吊り上げて、遠坂は言った。
「遠坂が助けてくれたのか? ……でも、どうやって」
「そりゃ簡単なことじゃなかったわよ。私の取り返しのつかないものを使っちゃったんだからね」
(遠坂、なんか怖いな……)
遠坂の髪はゆらゆらと沸き立っているように見えた。遠坂からビリビリとどす黒い波動が空気を伝わって、士郎の肌を震わしている。
(ああ、なんだろ。怒髪天っていうのはこういうのを言うのかもな?)
遠坂は笑っていた。いや、笑顔だった。ただ、笑顔なのにどこまでも怖かった。
「衛宮くん、実は私魔法使いなの」
「……」
士郎はある男に言われたことを思い出していた。士郎はその男に命を救われ、育てられた。そして、士郎はその男の夢を受け継いだ。
(爺さん)
「信じられないかもしれないけど、これが証拠よ」
バリン。
遠坂は自分の近くにあったガラスを割った。
「遠坂!?」
遠坂が一言二言呟くと、地面に散らばったガラスの破片が動き出し、元の場所に戻っていった。
士郎は唖然としていた。『魔法使い』と遠坂は言ったけれど、これは士郎が知っている物だった。
「魔術……!」
「……。衛宮くん、今なんて言った?」
人のキャラ動かすの、ムッズ。
でも、完結はさせたいよなぁ~。