Fate/lost imagine   作:ぽっとでの急須屋

4 / 20
いやぁ、不定期更新のタグをつけよう。


ランサーの襲来

 割れたガラスが元に戻るなんて、こんな不思議な現象は魔術じゃないとありえないだろう。でも、俺はこんな魔術を知らない。遠坂はすごい魔術師なのか……?

 

「衛宮くん。教えて、あなたは魔術師なの?」

 

「ああ」

 

「……ふーん、そうなんだ。じゃあ、話は早いじゃない」

 

 遠坂はしかめていた顔を少し和らげた。

 

「目撃者は一般人じゃなくて関係者だったってことでしょ。じゃあ、私が衛宮くんを守る必要もないわけね……」

 

 うんうん、と一人で頷く遠坂。

 何がどうなってるっていうんだ? できれば説明してほしいんだけどな。

 

「何が何だがさっぱりだ。遠坂は何を知っているんだ」

 

「何を、ねぇ……。まぁ、いいわよ。衛宮くんは聖杯戦争って知ってる?」

 

 遠坂はようやく肩の荷が下りたのか、ほっと一息つくと聖杯戦争について説明しだした。

 いわく、聖杯戦争とは七人のマスターと七体のサーヴァントが殺し合い、最後の一人になったものが聖杯を得られる。

 いわく、マスターに選ばれた者には令呪と呼ばれる三画の刻印が現れる。

 いわく、サーヴァントとは過去の英霊だ。

 いわく、聖杯戦争は秘匿されており、目撃したものは口封じに殺される。

 

 つまり、俺が校庭で見かけた戦闘はサーヴァントという使い魔によるもので、俺がそのうちの一体に殺されたのは口封じのためだったわけだ。なんだか、ムカついてきたぞ。完全なとばっちりってことじゃないか。

 

「ところで、衛宮くん。あなたは何の魔術が使えるの?」

 

 聖杯戦争についての説明にひと段落ついたところで、遠坂が切り出してきた。

 

「強化ぐらいだな」

 

「またなんとも半端なものを使うのね」

 

「遠坂の魔術はすごいよな。窓ガラスを即座に直せるなんて」

 

 ん、遠坂の表情が翳ったぞ。俺はなんだかまずいことを言ったみたいだ。

 

 それから遠坂が魔術について話し、俺がそれに答えると、遠坂は困惑し終いには呆れてしまった。どうやら俺は魔術師として素人同然らしい。

 

 遠坂は何かに気付いた様子で窓の外を見た。

 

「どうしたんだ、遠坂」

 

「もうすぐランサーがここにやってくるわ」

 

「え、それは大丈夫なのか!?」

 

「ええ、外にはアーチャーもいるし、危険はないでしょ」

 

 突然のことだった。

 ドゴォオオオン。

 地面に何かが衝突する音、それと共に伝わる振動。

 庭に何かが墜落したのは間違いなかった。

 遠坂が勢いよく窓と障子を開ける。

 砂煙の合間から見るに、その衝撃の中心にいるのは校庭で見かけた褐色肌の男だ。男は即座に立ち上がり、弓を上に上げ迎撃の姿勢を取る。その視線の先には校庭で見かけたもう一人の男、緑色の長髪が特徴的な人だった。

 

 俺の心臓はまた力強く動き出していた。

 

(また、始まる…)

 

 そう、始まるのだ。あの光景が。

 互いに研鑽しつくされた圧倒的な暴力がぶつかり合う、神話の時代の闘争が。

 俺はごくりと喉を鳴らすと、その光景を逃さないよう目を凝らした。

 




〇独自解釈ポイント
 アーチャーの目は、途中の物体を透過して遠くのものを見ることができ、目の前にいる対象の心を読むことができ、一度見た相手の未来を予測することができる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。