絶体絶命のピンチにおいてアーチャーが繰り出したのはやはり弓の一撃だった。いや、一撃とは言えないか。その弓からは同時に二十の矢が放たれたのだ。風を裂くようにして進む矢は全てランサーの体へと当たる。
ズドドドドドドッ。
その衝撃に何度も痙攣するかのように震えるランサーだが、全く動けないというわけではないらしく、体を武器へと変容させていた。
「……そういうことか」
やむことなく、放たれつづける矢の中で、ボソリとランサーはつぶやいた。ランサーは未だにその場から動けていない。
「マスター、こいつはここで足止めをしておく。その間にマスターはここから離れてくれ」
「ええ、分かったわ。じゃあ、衛宮くんとはさよならね」
別れを告げ去ろうとする遠坂の手を衛宮はつかんだ。
「待てよ、遠坂。送っていく」
「ああもう。言うと思ったわよ。でも駄目。私行くから」
ついてこないで、と手を振りほどく遠坂に衛宮は、それでも、と後を追った。
去っていく二人の後ろ姿は戦場から離れていった。
ズドドドドドドッ。
二人が去った後も放たれ続ける矢。その猛威の中でランサーは徐々に大地を武器へと変えつつあった。
「そうくるよな」
手数で負ける相手に対して、アーチャーが取れる手段は単純だった。
その手数が放たれる前に、手を封じればいいのである。
ランサーの大地から武器を射出する力には、それをするまでのタメの時間が必要なのだ。そこをアーチャーは見抜いていた。
つまり、武器を射出する準備が整うまではランサーの身体だけを狙えばいいというわけだ。そこでアーチャーの目だ。アーチャーの目による未来予知は、ランサーの動かそうという部位を全て事前に察知し、その部位を正確に射貫くことに成功させた。
あとは、武器を射出するまでの間はとりあえず時間を稼げる。その隙に凛を逃がせばいいのである。
しかし、胸中でアーチャーは焦っていた。
(まいったな、こりゃ)
その時間稼ぎもランサーの準備が整うまでの間だけ。整ってしまえば、やはりランサーの一方的な蹂躙が始まってしまう。
そこで距離を置く、という一般的な弓兵の戦法もこのランサーが相手ではしづらい。なにせ、姿を変え、魔力を弄り、行方を眩ませるのである。その技をされてはランサーがマスターの元まで追いついてしまう可能性すらある。いくら、アーチャーの目がよくともこの場をおさめるのは至難の業と言えた。
(マスター、逃げてくれよ……)
「どうしてついてくるのよ、衛宮くんは!」
二人は走り続けていた。そのおかげであと半分もすれば遠坂の屋敷につく。
「考えたんだ。どうすればあのランサーとかいうやつを倒せるか」
息が苦しい中、それでも二人は喋り続けた。
「それで」
「ああ、俺もサーヴァントを召喚すればいい」
「えっ」
思わず立ち止まってしまう遠坂。なんだ、そんなに変なことを言ったつもりはないぞ。
「だから、俺もサーヴァントを召喚して、二人でランサーを倒せばいいんだ」
〇独自解釈ポイント
ランサーの「大地から武器を射出」にはタメが必要。
これは嘘。書いてから絶対魔獣戦線見たけど絶対そんなことない。
まぁ、でも攻撃食らっている間は打ちづらいだろうし、ね。