Fate/lost imagine   作:ぽっとでの急須屋

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この話からしばらく、zero視点が続きます。


一方その頃
キャスターの来訪


 昼間の飛行場にはたくさんの飛行機があった。ここを出発点とするものもあれば、ここを終着点とするものもある。そのことを考えればこんなに感動的な場所もない。空は十分に晴れ、これから送り出される者たちも安全に空の旅を味わうことができるだろう。

 

「ここが切嗣の生まれた国」

 

 アイリスフィール・フォン・アインツベルンもまた、空の旅を味わった者の一人であった。寒い国から来たのか厚手の服を着ており、頭にはロシア帽をかぶっている。銀髪は風に靡いており、赤い目はこれから目にする光景に期待がこめられていた。

 

「どう、キャスター? 空の旅の感想は」

 

 アイリは自分の後に続いて降りてきた一人の男に言葉を振った。

 

「うん、中々に快適だったよ。少し寝てしまうぐらいにね。」

 

 ふぁ~、と大きなあくびをするキャスター。そういう彼の髪は白く、黒い服に身を包んでいる。完全にアイリの趣味だ。

 

「英霊ともなれば、空を飛ぶことぐらい驚くことでもないかしら?」

 

「いや、そんなこともないさ。私は驚いたよ。人間の科学の発展というのは目覚ましいものがあるね」

 

 そういうものかしら、とアイリは首を傾げた。

 

 二人は長旅を終え、ようやく日本に着いたのであった。

 

 

 

 

 

「それにしても、私の趣味につき合わせちゃって悪いわ」

 

「いいや、そんなことはない。私もこの身で現世を楽しめるからいいものさ」

 

 本来であれば、マスターとともに歩くときは、霊体化することで身を潜めるのがサーヴァントの通例だ。それは実体化をしている際、魔力を消費するという理由もある。しかし、キャスターの場合であれば、魔力を消費するという問題は関係なかった。キャスターは単独顕現というスキルをAランクで取得しており、魔力供給がなくとも現世に存在することができるからだ。

 それを知ったアイリは名案を思い付いたとばかりに、切嗣に頼み込み何とかキャスターのパスポートを用意してもらったのだった。

 

 空港の中へ移動したキャスターとアイリ、それに付き人が二人。空港には様々な人がいるものの、アイリの美貌に勝るものはいないのか、それとも単に一行が珍しいのか、行き交う人々は思わず見ずにはいられないようだった。

 

 アイリはその様子を気にすることもなく話す。

 

「そうだったら嬉しいわ。私もあなたの服を選ぶ楽しみが増えたもの」

 

「そのことなんだが、本当に私のこの格好はこの時代になじむものなのかい?」

 

「私との釣り合いをとって選んだ服なのだけど、……気に入らない?」

 

「いや、それなりに動きやすいし。それに格好いい。私は気に入ったよ」

 

「そう言ってくれると嬉しいわ。私も選んだかいがあったわね」

 

 二人が話しながら歩いていると外に出た。目の前には手配していた黒塗りのタクシーがあった。

 

 

 

 

 

「すごい活気ねぇ」

 

 走る車の窓から、アイリは外を眺めていた。流れていく景色の中にある、建物、人、車、人工物。それらは全てアイリにとって知っていた情報ではあっても、そのどれもが真新しく輝いて見えた。

 

「もう切嗣もこの地についているんだっけ?」

 

「ええ、半日早くね。でも、向こうから見つけてくれるから大丈夫よ」

 

 アイリは外に夢中になり振り向かずにそう言った。キャスターは微笑ましいものを見るようにその姿を眺めていた。

 

「当面は状況の変化を見極めながら、柔軟に臨機応変に。せっかくの日本だもの戦いが始まる前に満喫しておかないと」

 

「ああ、その意見に賛成だ。しかし、何処かに拠点を構える必要はないのかい?

切嗣と相談することもないのかい?」

 

「それはそうなんだけど……。勿体ないじゃない。せっかくこんな遠い国に来たんだし。それに……」

 

 少し言い淀んでからアイリは言葉を口にした。

 

「私ね、初めてなの……。外の世界を出歩くのはこれが初めてなの」

 

「えっ、それじゃあ生まれてからずっとあの城にいたのかい!?」

 

 アイリは視線を落とす。その顔には悲しみの色が浮かんでいるようだった。

 

「私は聖杯戦争のために造られた人形だったから……。もちろん、何も知らないわけじゃないのよ。切嗣が映画とか写真とか、外の世界の出来事をいっぱい教えてくれたもの。でもこの目で本当に世界を見るのは、これが初めて……。だから、ごめんなさい。はしゃぎすぎちゃった」

 

 キャスターは沈黙する。自分が願うのは聖杯戦争での勝利だ。それはマスターにとっても切嗣にとっても最優先にするべきことだろう。しかし、今はいいのではないか。幸い、聖杯戦争は夜に開始されるものだ。昼間の今なら、幾分か時間はある。このマスターを楽しませる時間も十分に……。

 

「止めてくれ」

 

 急に車を止めるよう頼んだキャスターにアイリは驚いた。

 

「私とてこの町を歩くのは初めてだが、私でよければエスコートさせてくれ」

 

 キャスターから差し出された手を、アイリは取った。

 




なんか、私がアイリスフィールを書くとババ臭くなっているような気がするのは、気のせいだろうか。
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