互いに戦うにしては妙に変な空気になってしまったので、骨男こと、モモンガに事情を聞く事にしたダンジョーとムラサキ。
彼の話からこの世界の事について詳しく知ろうというのが狙いだったのが、それとは別にとても興味深い内容も含まれていた。
「つまりお前は、かつてはアインズ・ウール・ゴウン、という沢山の強力な魔物が集う組織の長を務めていた、が、突如、力を失ってしまうという異変が立ちどころに起こってしまい、組織の維持が出来なくなってしまったと」
ダンジョーは彼から聞いた話を上手く簡潔にまとめてみると、モモンガは全て本当の事だと力なく頷く。
「はいそうです、全部私の力不足です……」
「見た目思いきり魔王のクセに、正座しながら普通に話してるのがシュールだなぁ……」
「いやホント、私が悪いんですよ……」
とても強い魔物達を纏めていた組織のトップとは思えない言動と態度に、胡坐を掻きながらムラサキが首を傾げていると、そこへバッとモモンガをフォローするかのように
「御父上! 御父上はなにも悪くありません! 悪いのはそう! あなたの息子でありながら、御父上がお心を痛めて密かに悩み苦しんでいた事に気付けずにいた私! パンドラズ・アクターであります!」
「ああうん、とりあえず私の事を御父上って呼ぶの止めろ」
「……」
唯一座らずに立ち続け、周りで大袈裟に手を振って喋り続けるのはパンドラズ・アクターというこれまたムラサキ達が見た事もない奇妙な魔物。
そんな彼に父上呼ばわりされるのが嫌なのか、モモンガがボソリと窘めると、彼はしばし首を傾げて、しばらく考える行動をすると、突如閃いたかのように両手を高々と掲げて
「パパ!」
「パパも止めろ!」
「ダディ!!」
「それも駄目!」
「ファーター!!!」
「ドイツ語でもだ! とりあえず私の事を父と呼ぶな! 恥ずかしい!」
執拗に自分の事を父と呼びたがるパンドラズ・アクターに勘弁してくれと心から願うモモンガ
そして彼等のそんな姿を見て、ムラサキも気になったのかアインズに向かって目を細め
「え、もしかしてお前達って親子なの?」
「まあ……一応コイツを作ったのは私自身だし、親子と言えばそうかも……けど流石にお父さんって呼ばれるのはちょっと……」
「え? もしかして複雑な家庭をお持ち?」
「いや複雑って訳じゃ……まあでも深くは聞かないで欲しいかなと、なんか恥ずかしいんで……」
「あらまあ~」
なんかいけない事聞いちゃったのかなと口を手で押さえるムラサキ、それを見て「なんか誤解されてる様な……」とモモンガは呟きつつ、再び話を始める。
「なんというかまあ……情けない話、もう夜逃げ同然で飛びして来たんですよ、これ以上アインズ・ウール・ゴウンが崩壊していく様を見る事が辛くて……」
「いやそれ普通にダメじゃね、だってお前そこで一番偉かったんだろ? なんでそいつが他の奴等置いて逃げてんだよ、そこはお前がしっかりしないとダメだろ」
「元々あそこはかつていた仲間達と共に築き上げたギルドであり、私なんかが皆を率いて上に立つ資格なんて無かったのだ……確かに異変が起きる前の私であれば、それなりに何かできる事があったであろう、だが……」
ムラサキに辛口な非難を素直に受け止めながら、モモンガは手で頭を押さえながらため息をついて見せる。
「私の前から去って行った仲間達が所持していた神器やワールドアイテム、思い出の詰まった物が目の前から何もかも消え去ったその瞬間、私の中で確かに強い虚無感と喪失感が生まれたのはハッキリと覚えている」
「なるほど、それでお前は組織が崩壊したのは自分に責任があると恥を感じて、夜逃げしてこんな洞窟の中に潜んでいたのか」
「責任? フ、そんな理由だったらもっとマシだったかもしれませんね」
ダンジョーの推測にモモンガ自虐的に少し笑った。
「私のこの禍々しい見た目はただの仮初の姿、中身はただのしんどい現実から逃げたかった小心者なんですよ、アインズ・ウール・ゴウンから逃げたのは己の非を恥じて逃げたのではなく、ただ目の前で起こった現実から目を背けようとしただけです」
「ったく、とことんダメダメだなお前」
「ハハハ、はい、ダメダメなんです私」
「まあでもさ」
結局のところ、組織から抜け出したのは誰かの為や責任を取るという形などではなく、唯々現実から逃げたかった為。
その恐ろしい見た目とは思えない程に力ない声でそれをはっきりと告白して渇いた笑い声を上げるモモンガに
呆れた様子でムラサキはしかめっ面を浮かべながらもそんな彼にフンと鼻を鳴らして
「自分が弱いって事をちゃんと自覚して、それをなんの誤魔化しもせずに正直に告白できるっつうのは、私は嫌いじゃないぜ」
「……そういえばこんなにもあっさりと自分の本音を話せたのは久しぶりですね……しかしどうしてナザリックの面々にはこんな事絶対に話そうとはしなかったのに、初対面のあなた達にはこんなあっさりと言えたんでしょう」
「普段距離が近過ぎる関係だからこそ逆に言い辛かったんじゃねぇの? 私等みたいな会ったばかりの縁のゆかりもない相手ならなにぶっちゃけても問題ないだろうと思ったんだろ」
「な、なるほど……」
肩をすくめながら適当かつどこか的を射ている発言をするムラサキに、モモンガは納得したかのように頷いた。
この人、最初会った時はヤンキーっぽくて怖かったけど、話してみると結構優しくて良い人だなーと内心思いながら
「そういやここにある装備品はなんの為に置いてあんの? しかもやたらと綺麗に並べられてるけど」
「ああ、それは……」
「それはナザリックの宝物庫を管理する事を生業とする! パンドラズ・アクターがお答えしましょう!!!」
「おい……」
そんな彼女がふと周りにあるボロボロの装備品を機になった様子だったのでモモンガはすぐに答えようとするが
そこへ無理矢理間に入って来たパンドラズ・アクターがまたもや大袈裟に叫びながら突然語り出した。
「ここに置かれているのは何を隠そう! 例の異変によって大量消失してしまった数々のアイテムの中で唯一残って下さった! 至高の御方達が過去に所持していた思い出の品々なんです!!」
「どれもこれも最初にログインしたばかりに持っていた初期装備ばかりだし、今となっては持ち主もいないので完全にただの置物なんだけどな……」
「そしてこれをこの場に置いて毎日綺麗に並べ整えているのは! このわたくし、パンドラズ・アクターの日課となっております!!」
「別に私は頼んだ覚えは無いんだがな……まあ残ってくれたモンだから大切にはしたいんだけど」
隙あらば自分を全面的にアピールする彼に少々疲れた様子を見せながらもモモンガ相槌を打って答えていると
ムラサキはパンドラズ・アクターの方をうっとおしそうな反応しながら彼に目を細め
「てかさっきから聞きたかったんだけど……なんでお前、コイツも一緒に連れて来たの? さっきからマジうるさいんだけど……」
「仕方ないじゃないですか! 私だって誰にも気づかれないよう細心の注意を払って逃げ出したのに! いつの間にかコイツ! 残ったアイテムかき集めて私の後をテクテクついて来てたんですよ!」
「わたくしめは御父上が創り上げて下さった唯一無二の息子! 組織が崩壊しようと親子という絆は決して崩れ去らないのです!」
「他のナザリックの面々からは上手く逃げれたのに……認めたくはないがやはりコイツは、親である私の心境を誰よりも早く気付く事が出来る様だな……」
親子の縁というのは上司と部下の関係とは別の繋がりを持っているらしい。
自分が逃げ出した事にもすぐに気付いて独断で動き、息子として追いかけて来てくれたというのは
なんとまあ微笑ましくもあり面倒臭くもある
「それに私には御父を助ける力があります! 無論忘れてはおりませんよねダディ!!」
パンドラズ・アクターは自信たっぷりに胸に手を当てて突然自分が持つ能力を語り出す。
「私の種族はドッベルゲンガー! つまりずば抜けた変身能力があるのですよパパ!!」
「ええい! せめて私に対する呼称を統一しろ!」
「なんかこのハニワ野郎見てるとさ……私あのキノコ頭の役立たず魔法使い思い出すんだけど」
「……俺もだ、おんなじ臭いがプンプンする」
ウザイぐらいに無駄にテンション高く叫び続ける彼に、ムラサキとダンジョーが共に旅をしてきた一人の男が脳裏に浮かんでいるのをよそに、モモンガは疑った様子で
「ていうかお前、私や他の者と同じくほとんどの力を失ってしまっただろう、その、今でも変身出来んの?」
「ダー! 実は私! 一から己を鍛え上げ! 新しい変身術を会得しましたのでございまっす!」
「いつの間にそんな事やってたのお前……私と違って前向きだなぁ……」
「そして遂に私は一つだけですが変身する事が可能となりましたぁん!!」
モモンガがますます何もせずに引き篭もってた事を恥じる中、バッと両手を上げながらパンドラズ・アクターは宣言する。
「これがわたくしのファ~ンタスティックな変身術! 名付けて! 『ミヤノマモシャス』!!」
「ミ、ミヤノマモシャス!?」
「ミヤノマモシャス! なんか頭に天啓的なアレな感じで浮かんだので採用しました!」
「な、なんか……人の名前とか入ってないかそれ?」
「なにをおっしゃってるのか全然わかりません!」
変身という事もあって「モシャス」が付いているのはヨシヒコの世界関連の呪文だという事であろう。
しかしモモンガはそのモシャスの頭に付いてる妙な人名っぽい響きに違和感を覚えていた。
それを無理矢理遮るかのように叫ぶと、パンドラズ・アクターは周りをキョロキョロと見渡し
「それではお披露目タイムと行きましょう! 皆さん! 私の華麗なる変身術を見て驚く準備は出来てますか!? ようござんすか!?」
「ござんすってお前……シャルティアのロールだろそれ……」
「ああはいはい、やりたいなら好きにすれば?」
「もしかしたらなにか役に立つかもしれんな、よしやれ」
「ん~~~~~!! 声援がイマイチ物足りないのが不満ですが! いいでしょう! それでは!」
あまり期待されていない事に若干の文句はあるものの、改めて会得した変身術を披露しようとするパンドラズ・アクター。
彼を両手を天に掲げたまま一層やかましい声量で
「これぞ選ばれし私のみが使える究極の変身!! ミヤノマモシャス!!!」
そして力強くそう叫んだ瞬間、彼の背後からヌッと二人の黒子が大きなカーテンを持ったまま現れ
変身すると叫んだ張本人をバッと手に持ったカーテンで覆い隠して、モモンガの視界から一旦消す。
「はい今私! 変身してます! 変身してますよー!」
「あの、この黒い人達……誰?」
「いいから、ツッコまなくていいから」
「ああいい! 来てます! これもうかなり変身出来てます!! パンドラズ・アクター! トランスフォォォォォォム!!!!」
カーテンの裏で明らか一人でゴソゴソやってるパンドラズ・アクターにも疑問だが、それよりもモモンガが気になるのは突然現れた二人の黒子であったが、それは大して重要ではないのでムラサキが気にする事は無いと彼を諭す。
そしてそれから数分後、思ってた以上に変身時間がかかったが、ようやく彼を隠し続けていたカーテンが地面に落ちた。
するとそこにいたのはパンドラズ・アクターではなく……
「これぞ究極にして最強……未知という名の存在に神秘を追い求め辿り着いた結果の成れの果て……」
「やぁやぁ諸君、私こそが全生物を超えしモノ……」
「”うーさー”だ」
「「「……」」」
長い耳を地面に垂らし、変身前とさほど変わらない顔付き、黄色い体毛
そしてウサギなのか犬なのかよくわからない珍妙な形をした不思議な小動物に変化していたのだ。
「控えおろぉ貴様等、うーさー様のMAXな威光にひれ伏せ」
「……なにコレ? ねぇモモンガさん、なにコレ?」
「ごめんなさい……私も全然なんなのかわかりません」
「……俺もう帰っていいか?」
うーさーと名乗るよくわからない生物だが、”声”は変わっていないのでパンドラズ・アクターが変身したというのはわかる。
しかしその見た目とは裏腹に無駄にイケメンボイスなおかげで、そのギャップのせいもあってモモンガ達の間に異様な雰囲気が立ち込める。
「で? こんな奴が一体何の役に立つというのだ?」
「私ならムカついた時に殴るサンドバッグにするかな」
「……サン〇オのポム〇ムプ〇ンじゃないよな?」
「おいそこのホネホネマン、私をあんなあざとい犬っころと一緒にするな、お前こそアンパン〇ンのホラー〇ンもどきであろう」
「ホネホネマン!?」
ダンジョーとムラサキがイマイチうーさーの使いどころに悩んでいると、ボソリと思った事をつい声に出してしまったモモンガに、突然うーさーが表情変えずにツッコミを入れると、聞いても無いのに勝手に自己紹介を始め出す。
「いいかお前達、もう一度言うぞ、私はうーさー、好きなものは肉、金、制服、そしてギャル……。それを日々求めながら欲望のままに彷徨う究極生物であり……」
「それで? お前の仲間はみんなこんな奴等なのか、モモンガ」
「まあ……確かにおかしいのもいますけど流石にここまでの奴は中々いない……かな?」
「好きなのは特にギャルだ、選り好みはせずに巨乳も貧乳も関係なく大好きだ、だが顔はやっぱり可愛い方が……」
「なるほど、ならば出来るだけ役に立てそうな奴を教えてはくれんか?」
「おいオッサン、どうしてそんな事を聞き出すんだよ」
「オッサン言うな、いやな、実はさっきから考えてる事があったのだ」
「そして何より、そのギャルを包み込む制服が重要だ、アニメや漫画とかで使われてる「え~コレあり得ないんじゃね?」という制服のデザインも捨てがたいが、やはりごくごく平凡な一般的な制服もたまらないのであって……」
一人で勝手に喋り続けるうーさーを無視してダンジョーはモモンガにふと彼の仲間の事を聞き始めた。
それに首を傾げるムラサキにダンジョーは一つ決心した様子で
「このモモンガとかいう者、もしかしたら俺達が探し求めていた、この世界を救う勇者の才能を秘めているのかもしれんとな」
「ええ、コイツが勇者!?」
「ええ、私が勇者!?」
「なりたいモノはとにかく権力が高い地位に就きたい、皇帝とかになってやりたい放題しまくって、肉とギャルをはべらして酒池肉林を築き上げたい、と1日に13回ぐらい妄想している」
ダンジョーの言葉にムラサキだけでなくモモンガ自身もビックリする。
一体何を根拠にそんな事を言い出すのだと……
「モモンガよ、実は俺達はこの世界に起こったという異変の原因を突き止めている、それは恐らくこの世界に来る前に現れた魔王という奴の仕業であろう、そして俺達はその魔王を倒す為に別の世界からやって来た勇者一行なのだ」
「そういえば私を最初に見つけた時に魔王がどうのこうの言ってた気が……え? それってマジな話ですか?」
「今の俺達はその魔王を倒す為に力になってくれる、勇者に匹敵する逸材を持つ仲間を探している所でな」
「誰でもいいから王位を献上してくれる親切な人とかいないかなー……」
ここで初めてダンジョーから、異変の原因はこの世界に振り立った魔王にあると聞かされてモモンガはショックを受ける。
魔王、それが自分達の力を一気にそぎ落とし、組織そのモノを崩壊の危機に陥れた元凶……
それに対して一切恐怖や後悔も見せずに立ち向かおうとするダンジョー達……
彼等の強い意志にモモンガは驚いていた。
「そしてこうして偶然出会ったお前にはその勇者、ヨシヒコと同じカリスマ性を感じたのだ、それと妙にしまらない部分とかもアイツに似ている、何よりお前のそのお前の目の底には、何か光るモノがあると俺の長年の勘が囁くのだ……」
「私、目、無いんですけど……いや買い被り過ぎですって! 私、今の今までずっと引き篭もりだったんですよ!!」
「今の今までの話であろう! 俺はこれから先、未来の話をしている!」
「未来……」
「てかもう、王位じゃなくてもいいから肉だけでも欲しい、大田原牛欲しい、十頭分」
勢いある迫力に押されながらモモンガは動揺してブンブンと首を横に振って無理だろうと言うも
それでもダンジョーはどうしても彼を仲間にしたいようで
「魔王が恐れたほどの強大な力を持っていたお前、そしてお前の仲間達であれば! 成長して力さえ取り戻せれば必ず魔王を打ち倒す事が出来る筈だ!!」
「いやいやいや……取り戻すって簡単に言わないでくださいよ……だって力だけでなくアイテムも失ってるんですよこっち、それも世界を変動させかねないワールドアイテムとか神器とか……それすらも消滅する事が出来る魔王なんてきっと半端ない強さ持ってるんですよ、私なんかじゃ勝てる訳ないですって……」
「戦わずして諦めてどうする! ならばお前はこのままおめおめとこんな所に隠れ続ける気なのか!! お前を慕う仲間達や、そして組織の長としての立場を取り戻そうとは思わんのか!」
「取り戻したいと思っているに決まっているだろう!!!」
「!?」
「ギブミー松坂牛ー!」
さっきまで弱腰だったモモンガが、ダンジョーの挑発を受けて豹変したかのようにガラリと変わる。
そう、彼だって好きでこんな所に引き篭もっていた訳ではないのだ
「勇者の仲間など知った事か! なにも知らないクセに勝手な事をほざくな!! アインズ・ウール・ゴウンは私の全てだぞ! 組織だけではない、ナザリックの者達も私にとっては何よりも大事な宝だ!!」
「ならば何故その宝を捨てて、こんな所にいるのだお前は……」
「簡単な事! 私こそがそのアインズ・ウール・ゴウンにとって最も不要なモノだからだ! 無能な長が玉座に座っていてもいずれ破滅するのは目に見えている!! 私が消えればきっと残った者達は自分達で考え、この世界でもやっていけると……!!」
「馬鹿者!!!」
「あはん!!」
怒りに身を任せて立ち上がり、ずっと抱えていた事を爆発させるかのように叫び出すモモンガ
そんな彼にダンジョーも立ち上がると漢の鉄拳を彼の頬骨に思いきりかます。
思いもよらぬ一撃にモモンガは後ろに倒れるも、すぐに殴られた箇所を手で押さえながらムクッと起き上がり
「お、おい! 今こっち死にかけてるんだぞ! いきなり殴るな!! 目の前真っ赤なんだってホント!」
「お前こそ仲間をなんだと思っているのだ! 仲間とは! 例えいかなる時でも支えあっていくモノ!! こんな時だからこそお前がその者達を導くべきだったのであろう!!」
「だからそんな事私が出来る訳……!」
「出来る訳ないと誰が決めた! 決めたのはお前自身!! 仲間ではない!!」
「!!」
ダンジョーの熱い言葉にモモンガは上体を起こしたままハッと気付かされる。
本来痛みを感じないスケルトンの体に、胸の奥から痛みを感じるのを覚える。
そんな彼を今度はダンジョーは憤怒の表情から一変して優しくフッと笑いかけ
「モモンガよ、お前は疲れているのだ、くだらん柵も忘れて一旦思い出してみるがいい、お前にとって最も満ち足りていた頃の一時を、楽しかったその頃を……」
「楽しかった頃……それはかつて一緒に組織を支え続けたギルドメンバーの皆と冒険の日々を送っていた……」
彼の言葉に従ってモモンガはふと一旦この状況を忘れてずっと昔の事を思い出す。
それはこんな事が起こる事さえも知らず、ただこの日々が毎日続くのだと思い込んで無邪気に楽しんでいた……
今は去ってしまった仲間達との遠い昔の思い出の記憶であった……
「……ねぇ、なにこの青春ドラマみたいな奴?」
「神戸牛も食べていいですかな!?」
「それでお前はさっきからホントうるせぇ」
「もし漫画の世界の食べ物を一つだけ食べれるとしたら、私は「トリコ」のジュエルミートが食べたい!」
「もうさっさと終わらねぇかな~」
そしてダンジョーとモモンガがなんか熱く語り合っているのをよそに
喚き散らすうーさーを両手で抱きかかえながら、ムラサキは対照的に冷めた表情でいつ終わるのかと眺めるのであった。
次回、かつていたモモンガの、ヨシヒコ一行に負けず劣らずの愉快な仲間達の冒険記憶