魔王ヨシヒコと勇者モモンガ   作:カイバーマン。

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カルネ村でまさかの魔王バラモスの手下である、四天王の一人、マッサルと交戦するヨシヒコ達

 

しかし彼のあまりにも桁違いな攻撃に苦戦してしまう事態に

 

そして村を護るゴブリン達や村娘のエンリに見られている中

 

ここに来てメレブがある逆転の一手を生み出した。

 

「新しい呪文を、覚えたよ」

 

「それさっき聞いたでありんす」

 

「大事な事だから2回言ったんだよ」

 

杖を構えながら得意のドヤ顔を浮かべてボソッと呟くメレブ、この戦いの中で新たな呪文を会得したらしい彼にヨシヒコはすぐに食いついて

 

「遂にこの世界で呪文を覚えたんですねメレブさん! 今度は一体どんな凄い呪文を覚えたんですか!」

 

「……知りたいヨシヒコ?」

 

「知りたいです! 凄く知りたいです! そして早く私に掛けて下さい!」

 

「ふふ、せっかちなお人ですこと、しかし焦るでないヨシヒコ、まずは俺の話を聞くのだ」

 

やたらと彼の呪文を掛けてもらいたがるヨシヒコのいつもの様子に、メレブは静かに笑みを浮かべながら窘めると

 

「おい! 俺いつになったら攻撃してええの!?」

 

さっきからずっと待ってくれている敵のマッサルに向かって

 

「あ、ごめんちょっとだけ待っててくれません? ちょっと俺今、超凄い呪文を覚えたんで、それを仲間に教えなきゃいけないんで」

 

「いつ終わんのそれ!?」

 

「んー5分? 5分ちょいで済ますんで」

 

「わかった! 待っとる!」

 

「あざーす」

 

ダメ元でお願いしたらすんなりと新しい呪文の説明の猶予を作ってくれたマッサルに感謝しつつ

 

メレブは三人に向かって杖を左右に振りながら

 

「皆さん、長らくお待たせしました、この偉大な魔法使いメレブが、いよいよ本気になる時が来たみたいです」

 

「偉大なのかどうかはこちらで判断させて頂きます」

 

喋れば喋るほど信用性が低下していくこの胡散臭い魔法使い、メレブ

 

そんな彼をここで生かす価値が本当にあるのかどうか

 

厳しく見定めようと睨みつけるセバスであった

 

「してメレブ、その呪文とやらは本当に役が立つモノで?」

 

「フ、愚問だな、この俺が覚える呪文に、役に立たない呪文など今まで一つたりとも存在、したことない!」

 

「あーもういいからさっさと言いなんし、回りくどいったりゃありゃしない……」

 

「いや言ってもいいんだけどー、大丈夫シャルティアちゃん?」

 

「あ?」

 

手を振ってさっさとやれと催促するシャルティアに、メレブは目をも開いてほくそ笑みながら

 

「俺のとんでもない呪文の効果を聞いてショックのあまり泣き出したりしない? 「うわーん、メレブ様が滅茶苦茶凄い呪文覚えたせいで、私の立場がますます無いでありんす~、え~んえ~ん」って」

 

「いいからとっとと言え! 殺すぞ!」

 

ニヤニヤしながら一向に茶番を挟みながら話を進めようとしない彼に彼女が怒鳴りつけていると

 

唯一彼が覚えた新呪文に興味深々なヨシヒコが身を乗り出した。

 

「メレブさん、今回は随分と勿体ぶりますね! 一体どんな呪文なのか早く教えて下さい!」

 

「ん~しょうがない、いいか諸君、よく聞け。今回俺が覚えた呪文は味方にしか掛けられない、その効果はなんと……」

 

サラサラな金髪ヘアーを何度も首を回してなびかせながらしっかり間を置いた後、メレブは彼等の方へ向き直り真顔で

 

 

 

 

 

「相手から受けたダメージを、そのまま相手に返す効果があるんだよ」

 

「受けたダメージを相手に!?」

 

「しかもね、攻撃であればなんでも返せる。物理とか魔法とか精神とか、もうこちらに対してなんからの害を与える攻撃であれば、絶対に相手に返す事が出来る」

 

「どんな攻撃でも跳ね返せるんですか!?」

 

「しかも今なら特別キャンペーンで……2倍にして返す」

 

「特別キャンペーン!?」

 

「ごめんヨシヒコ、反応するとこ間違ってる、2倍、2倍にして返すって方に驚いて」

 

ちょっとズレた驚き方をするヨシヒコにツッコミを混ぜつつも、メレブは超強烈なカウンター魔法を手に入れたという事を説明しながら最後に。

 

「そして私はこのとんでもない呪文に……」

 

 

 

 

 

「「ハンザワ」と名付けさせてもらったよ」

 

「す、凄い! こんな序盤でこんな恐ろしい呪文を覚えるなんて! もはや魔王など敵ではない!」

 

「フフフ、しかもこの呪文に掛かった者はもれなく……」

 

 

 

 

 

「相手の攻撃を倍返しした後、最終的に有無も許さず出向、じゃなくてどっか遠い所に飛ばされてしまうよ」

 

「なんだと! それからどうすれば元の場所に帰れるんですか!」

 

「ん~~~~~、そこは自力で頑張って帰って来るしかないよね?」

 

「無敵だ! 我々はメレブさんが覚えた新呪文のおかげで無敵になってしまった!」

 

「いやそれ思いきりダメでありんしょうが!!」

 

どうやらメレブが名付けた「ハンザワ」という呪文は一度は相手に強力なカウンターを仕掛けられるも、その後は掛けられた本人は何処か見知らぬ遠い場所にランダムに飛んで行ってしまうらしい。

 

つまり一度だけ相手の攻撃を倍返しにする代わりに、パーティーの内の誰かが長期的な戦況離脱しなければらないという事だ。

 

喜ぶヨシヒコをよそにシャルティアはすぐにその致命的な弱点を指摘する。

 

「そんな呪文私は絶対に掛けられたくないざんす!」

 

「私もです、一刻も早く魔王を倒し、アインズ様を探しに行かねばならないというのに、一人見知らぬ土地に飛ばされては無駄に時間を浪費してしまいます」

 

当然シャルティアとセバスはそんなデメリットが半端ない呪文など掛けられたくないと断固拒否

 

だがやはり……

 

「掛けて下さいメレブさん! 私にハンザワを掛けて下さい!」

 

「はぁぁぁぁぁ!? 正気かえヨシヒコ!?」

 

「流石は勇者ヨシヒコ、それじゃ遠慮なく……」

 

どんな呪文であろうと後の事は何も考えずに掛かりたがるのがこの勇者ヨシヒコ

 

強く呪文を懇願する彼にシャルティアが素っ頓狂な声を上げる中、メレブはヒョイと杖を彼に向けて

 

「ほい!」

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「掛かるの早くありませんかな?」

 

「まさかの無詠唱魔法……」

 

パパッと無駄なくヨシヒコに呪文を掛けると

 

その途端すぐに何やら力が滾ったかのように咆哮を上げるヨシヒコ

 

セバスとシャルティアがその姿と呪文の手早さにビックリしてる中、ヨシヒコは物凄い鬼気迫る表情でマッサルの方へ振り返り

 

「おお……! なんだか今! 物凄く強大な力に対して反抗してやりたい気がした! そしてどんな手段を持ちいてでも、相手を屈服させてやりたいという強い意志が私の中に生まれた!」

 

「うわ~ヨシヒコものっすごい邪悪な笑顔浮かべちゃってるよ」

 

「なんや? もう戦ってええんか?」

 

「あ、どうぞどうぞ、好きに攻撃して下さい」

 

敵以上に怖い気迫を放つヨシヒコにメレブは苦笑しつつ、様子見していたマッサルに攻撃していいと促す。

 

するとマッサルは馬鹿正直に「よーしやってるでー!」と手に持つモリに力を込めて

 

「実はさっきからずっと待っとる間力を溜めてたんや! この一撃でお前等全員沈めたるからなー!」

 

そう叫ぶとマッサルは全身全霊を込めた必殺の一撃を放たんと、思いきりモリを横に振り払う。

 

「どりゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うぐ!」

 

「これはまたさらに強力な……」

 

「死ぬー!」

 

「ええ!? 序盤のボスのクセに攻撃力半端ねぇ!」

 

全体に対して大ダメージを与えるマッサルの一撃にヨシヒコだけでなくパーティー一同が一気に瀕死の状態に

 

「……やくそうを食べさせて頂きます」

 

「ホイミ! ふぅ~こんなのが続いてたら身が保たんぞえ……」

 

そして急いでセバスはやくそうを再びムシャムシャ食べ始め、シャルティアが自分を回復させている中、メレブは倒れた状態でヨシヒコに向かって

 

「今だヨシヒコ! 奴から受けたダメージを跳ね返せ!」

 

「はい!」

 

「なんやて!?」

 

攻撃を跳ね返す事が出来るのかとマッサルが驚愕の表情を浮かべると、ヨシヒコはビシッと彼に指を突き出して

 

 

 

 

 

「やられたらやり返す! 倍返しだ!!」

 

「ほぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ヨシヒコが叫んだその瞬間、触れてすらいないのに謎の衝撃波によって後ろに吹っ飛ばされてしまう。

 

それは彼がヨシヒコに与えたダメージの倍の威力、力を溜めていたことが仇となり、絶大なカウンターとなってマッサルに襲い掛かったのだ。

 

「メレブさんやりましたよ! 私の倍返しで奴を見事に叩きのめしました!!」

 

「うむ、さすが勇者ヨシヒコ、見事俺のハンザワを使いこなした」

 

派手に倒されたマッサルを見て、すぐに後ろに振り返りガッツポーズを取るヨシヒコに、メレブがニコニコと満足げに笑っていると

 

「コレで我々は魔王に勝つ事も出来あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

『ヨシヒコはとおくへはねとばされた』

 

「ヨシヒコー!!」

 

両手を上げていたヨシヒコが突然彼の目の前で何処かへと飛ばされてしまう

 

ハンザワのもう一つの効果が発動してしまったのだ。彼がいた場所に残されたのは最後に叫んだ悲鳴のみ

 

そしてヨシヒコがいなくなった事に辺りがしんと静まり返った所で、飛ばした張本人であるメレブは

 

「いやー……飛んで行っちゃったね、ヨシヒコ」

 

居心地悪そうに左右をキョロキョロしていると

 

「まだやられてへんぞー!」

 

「ってうわ! まだ生きてたのコイツ!?」

 

「ギリギリやー! ギリギリHP1だけ残ったんやー!」

 

てっきりやっつけたと思っていたマッサルが突然モリを掲げながらボロボロの状態で立ち上がって見せた。

 

せっかく貴重な戦力であるヨシヒコを犠牲にしたというのに……これにはメレブもかなり焦り気味

 

「おいセバス! 早くアイツにトドメを刺せ! パンチしろパンチ!」

 

「むぐ……待って下さい、しかしこれはきっと酒に合うでしょうな、いやはやここに無いのが実に勿体ない」

 

「やくそうはもういいだろ! なにやくそうモグモグしながら呑気に感想呟いてんのこのジジィ!」

 

またしてもピンチが発生したというのにその場で正座しながらまだやくそうを食べているセバス。

 

するとメレブは今度はシャルティアの方へ振り返り

 

「おい! もうお前でいいから決めてこい! せっかくの活躍できるチャンスだぞ!」

 

「ホイミ! あ~まだ死にそう……まだ立ち上がる事も出来ない故私はパス……」

 

「やっぱ使えねぇなコイツ……自分を回復するだけで精一杯ってなんなのホント」

 

セバス以上にダメージを食らったのかまだ残り体力がヤバいままの様子で、倒れたまま何度も自分を回復させているシャルティアに、メレブは両手で頭を押さえながら大慌て

 

「俺一人じゃどうにもならないって~! ハンザワは一日一回しか使えないのに~!」

 

「よっしゃあ! なんとか生き延びた俺の勝ちやぁ!」

 

「はわわ~~!」

 

戦う術をすでに失ってしまっているメレブだけではマッサルを倒す事は出来ない。

 

このままではせっかく追い詰めたというのに全滅の危機、しかしそこへ……

 

「いて」

 

メレブに斬りかかろうとしたマッサルの頭に、突然コツンと小さな石が当たった。

 

その瞬間、残り体力が僅かでしかなかったマッサルはしばしの間を置くとそのまま前のめりに倒れて

 

「や、やられた~~~!」

 

「えぇぇぇ!?」

 

最期に声を上げるとガクッと力尽きるマッサル

 

目の前でいきなり倒れてしまった光景にメレブは驚きつつも、すぐに彼にトドメを刺した石が飛んで来た方向に振り返ると……

 

 

 

「いやぁ!! さっきからなんか頭の中でパララパッパ~♪って音が何度も繰り返されてるの! なんなのコレ!?」

 

「お、落ち着いて下せぇエンリの姐さん!」

 

「マイハニー!!」

 

思わずメレブは感激の声を上げてしまう

 

そこには両耳を押さえて混乱して悲鳴を上げているエンリの姿があったのだ。レベルが上がってるらしく何度も頭にお決まりの音が鳴り響いているらしい

 

そう、残り体力ぎりぎりのマッサルにトドメの一撃を浴びせたのは、他でもない咄嗟に石を投げつけた彼女だったのである。

 

勇者一行、村娘の力を借りて魔王四天王の一人・マッサルを倒す事に成功。

 

損害

 

複数のゴブリンと村人が負傷

 

勇者ヨシヒコ、何処へ去る

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして

 

消耗した体力を村に貯蔵されていた、村にとっての貴重な資金源となるやくそうを勝手に食べて(特にセバスが)回復したヨシヒコ除く三人は

 

半ば追い出されるような形でカルネ村を後にした。

 

「なんか、一応村を救ったのに村の者達は最後まで我々の事を警戒し続けていましたな」

 

「いやだってそれヨシヒコが彼女の家の中で暴れたりゴブリンに物騒な事言ったりしたからさ~……」

 

正直もっと長居したかったメレブは名残惜しそうに後ろの村を眺めつつ、他人ごとに呟くセバスに向かって

 

「あとお前な! 勝手に村に保管されてたやくそうを食べまくったお前も悪い!」

 

「失礼しました、所持していたやくそうのほとんどはヨシヒコさんが持って行ってしまったので」

 

「だからって村が持ってたやくそうを勝手に食べる!? 超ドン引きしてたからね村人!」

 

村から道に沿って歩きながら反省点を踏まえるセバスとメレブ。

 

異世界に来て初めての村とはいえ、つい自分勝手な行為に走ってしまった事に反省している様子。

 

「あなたも食べていたじゃないですか、メレブ」

 

「俺は隠れて食べたんです~! あんな人前で堂々と両手で鷲掴みにしてムシャムシャ食べるような真似はしてません~!」

 

セバスとメレブが不毛な言い争いを始め出すと、二人の後をついて来ていたシャルティアがジト目を向けながら

 

「いい加減にしなんし貴様等、そんな下らん論争をするより、今の私達はそれよりも重要な悩みを抱えているのを忘れたのかえ?」

 

「無論忘れてはおりませんよシャルティア、ヨシヒコさんが何処かへ飛んで行ってしまった事ですね、このメレブのせいで」

 

「待って、確かにヨシヒコがどっか行っちゃったのは俺のハンザワのせいではありますけど、そのハンザワのおかげで俺等魔王の手下をやっつけられたんだからね」

 

「魔王の手下を最終的に倒したのはあの村娘だった筈ですが?」

 

「いやアレも俺の計算の内だから、やっぱ最後は彼女に花持たせてあげたかったのよ、将来の夫として? うん」

 

「もういい加減にしなんし、下らん言い争いをしてる場合じゃないとついさっきわらわが言ったばかりであろうに……」

 

やはりヨシヒコ不在というのもあるのか、セバスとメレブも不安を表に出さない為に、いちいちつまらない事で言い争いを始める始末。

 

これには遂にシャルティアも呆れ果ててどうしたもんかと途方に暮れていると

 

 

 

ヨシヒコー! ヨシーヒコー!!

 

「ん? おんや……」

 

ふと彼女が空を眺めていると、突如雷鳴が鳴り響き、雲の隙間から光が差し込められた。

 

するとその光の中からパァーっと前に見たあのブツブツ頭……

 

「…………アレ? なんか見えないね?、若干一名見当たらないね?」

 

「……おいセバスや、それとクソ虫、仏が出て来たぞえ」

 

ヨシヒコがいないというのにここに来て更に面倒事を増やしそうな仏が現れたのだ。

 

シャルティアが二人に伝えると彼等もすぐに顔を上げる。

 

「あ、ホントだ」

 

「おや、こんな時にまたあなたですか」

 

「はい、こんな時にも仏ですよ、え、ちょっと、ちょっと待って……一回じっくり眺めさせて君等の事、疲れてんのかな私? ん~誰か一人? ん~それもとても大事な? ん~人が見えない気がする?」

 

2度目ともなれば仏の降臨すっかり慣れたシャルティアとセバス

 

しかし今回は仏の方が困惑している様子で、細い目を更に細めながらジーッと彼等を見渡し終えると……

 

「……やっぱヨシヒコいないよね? え? なんでさ!? なんで勇者がどこにもいないんさー!?」

 

「ああ、俺の呪文。それでヨシヒコどっか飛んで行っちゃった」

 

「おま! お前のせいかコノクソキノコヤロー! なに平然とヤベェ事報告してんだ、ええ!?」

 

導くべき人物である勇者がいなくなっている事に慌てる仏に、適当な事後報告を済ませるメレブ。

 

そしてセバスも何も知らなかった仏に対し首を傾げ

 

「おや? 前にあなたは我々の事をずっと見ているとかおっしゃっていた筈でしたが、もしやカルネ村での一件をご存じないのですか?」

 

「確かにそんな事言ったよ、私もね、ちょっとカッコ付けて言ったよ、けどぶっちゃけ、白状するけど、いくら仏でもね、四六時中ずっと見てる訳ないじゃない?」

 

「そうなんですか、最初は抜け目ない相手だと思ってましたが、抜け目結構あるんですね」

 

「まあ……男ってのは……ちょっとばかり隙がある方がモテるって言うからね、フ」

 

「聞いた事ありません」

 

フフッと笑いながら得意げに言ってのける仏を冷たく突き放すセバス、コレなら結構簡単に計画を進められるかもしれない……

 

そう考えていた彼をよそに、今度はシャルティアが仏の方へ口を開く。

 

「して仏、ヨシヒコがいない中、次に私達はどうすればいいのかえ?」

 

「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

「ん~が長い……はよ言いなんし」

 

「わかんないよね、仏もどうすればいいのかわかんないわ、ごめん」

 

「はぁ!?」

 

顎に手を当てしばらく考える仕草をしていたと思いきや、結局自分でも判断できないと答える仏にシャルティアは目を見開く。

 

「そこをはっきり答えて導くのはお前の仕事でありんしょうが!」

 

「だってぶっちゃけお前達さ、え? ヨシヒコがいない中で普通に冒険できる? そこら辺魔物だらけだぜ?」

 

「まあ、今の所まともに戦えるのはセバスだけでありんすしな……私は回復による補助のみ、そしてクソ虫はクソ虫……」

 

「だべ? 悪い事は言わない、ヨシヒコが戻ってくるまでしばらく先に進むのは止めておいた方がいいって」

 

彼女としては一刻も早く先へ進みたいのだが、戦う役目を担うヨシヒコがいないとなると、仏の言う通り確かにキツイ……

 

「いや~ちょっと悪いけどこっちも考えさせて、仏に時間をください、だって私も長いけどこんなの初めてだし、勇者が行方不明なのはちょっとマズいっしょ」

 

「はい、全て、メレブの責任です」

 

「おいやくそうジジィ、今は誰が一番悪いのか責任を押し付け合う時じゃないだろ? ヨシヒコがいなくなったのはみんなの責任、つまりみんなが悪い」

 

「いや悪いのあなた一人です、確実に」

 

「うん、お前が悪いキノコ頭」

 

「絶対お前のせいでありんす菌類」

 

「わお、チョー四面楚歌」

 

やんわりと責任逃れしようとするメレブにセバスだけでなく仏とシャルティアも非難すると

 

仏はしかめっ面をしながら「しゃないねぇ~」と困った様子で首を捻り

 

「わかった、じゃあ私がね? ヨシヒコの方探しておいてあげる、それまで君等はちょっと、そこの村でしばらく待機、以上!」

 

「え、それだけ!?」

 

そう言うと仏は「待っててヨシヒコー!」と元気一杯に叫びながらフッと消えて行くのであった。

 

本当に彼に任せて大丈夫なのだろうか……

 

そして残された一同は渋々といった感じで

 

「まあ仕方ありませんな、現状でその考えが最も妥当なのは確か……しかしこんな序盤で足止めを食らうハメになるとは……これではまたアインズ様との距離が遠のく事に……」

 

「でも俺等、ついさっきあの村から追い出されたんだぜ……また戻るの?」

 

「お前がヨシヒコを何処かへ飛ばさなければこうはならなかったざんす、責任取って村人を説得するなり土下座するなりして取り繕えクソ虫」

 

ヨシヒコが不在の間、彼が戻ってくるまでカルネ村で待っていろという仏のお告げに

 

各々どこか納得いかない表情浮かべながらもそれに従う事に

 

「あ、でもぶっちゃけ……しばらくあの村に厄介になるって事は、それと同時に彼女にお近づきになれるチャンスでもあるし……これもまたフラグ的なモノを立てる機会なのでは?」

 

「セバスや、ヨシヒコがいない今ならこの虫けらを殺してもなんら問題ないのでは?」

 

「いえ、村で騒ぎを起こしてはますます面倒な事態になります、まだ様子を見ましょう」

 

「そして俺の後ろで仲間二人がすんごい不穏な事言ってるー、ヨシヒコすぐ帰って来てー!」

 

後ろで普通のトーンで「メレブ暗殺計画」を相談しているセバスとシャルティアの話をバッチリ聞いたメレブは

 

己の命が消えゆく前に、一刻も早くヨシヒコが戻ってくる事を心の底から願うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそんな彼等を木の陰からコッソリと眺めている者が一人

 

「なんてこと、兄様がいなくなってしまわれました……!」

 

木の陰から姿を現したのはヨシヒコの妹であるヒサ。

 

兄が姿を消してしまった事に激しく動揺し、慌てている様子。

 

「今頃兄様は一人途方に暮れている筈……ならば兄様の妹として、このヒサがすぐにでも駆けつけてお助けせねば!」

 

「行カレルノカ……ヒサ殿……」

 

「は!」

 

しかしそこへ茂みの中から突然何者かが現れた。

 

「ナラバコノコキュートス……武人トシテヒサ殿ヲオ護リスル為……付キ従ウ許可ヲ頂キタイ……!」

 

「なんと! 誠でございまするか!?」

 

「二言ハナイ……コレハ我ノ意志、我ハナザリックノ守護者ノ名ニカケテ……ヒサ殿ヲ御守リシタイノダ……」

 

それはセバス、シャルティアと同じ組織に属する異形種、コキュートスであった。

 

ヒサとの間に何があったのかは知らないが、どうやら彼女に付き従うつもりらしい。

 

するとヒサは真剣な表情で彼に頷くと、巨体である彼の背中に乗っかって

 

「では行きましょう、兄様の下へ!」

 

「ソレガヒサ殿ノ望ミデアルナラバ……! イザ共ニ参ロウゾ……!」

 

ヨシヒコがどこにいるのか見当もついてないのに、彼女は本能の重く向か間に叫ぶとコキュートスはゆっくりと前進していく。

 

足元からキュルキュルと何かが転がっている様な音を出しながら

 

後ろから黒づくめの人が二人がかりでコキュートスを押しているのがうっすら見えながら

 

 

次回、外伝、墜ちた骸骨の旅立ち

 

 

 

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