そのため続編のUQ HOLDER! はまだ読めていません。
とりあえずさっくりと主人公と周りの人間の視点を書いて10話くらいで終わらせたいです。
夕方にはまだ早い時間帯、校庭には窮屈な教室から解放された学生たちが、今が楽しいという感情を隠す事無く振りまいているのが確認できる。
遠目に、更に窓越しにも関わらず目に映る眩しい存在につい作業の手を止めて顔を向けてしまう。今からは彼女たちの時間なのだな、とぼんやりと見続けていた。
姦しい様子の今どきの女子中学生と比べて、自分の時はどうだったかと考える。今から10年以上前といえばまだまだ現役で腕を振るっていた時代である。
「まぁ、遊んでる時間はなかったわなぁ。」
ボケっとしていると
今は放課後で指導の新田先生も今はいないし、ほかの先生方も見逃してくれるだろうと、軽く背筋を伸ばすようにしてから正面に向き直る。やらないといけない作業はまだあるのだ。
「何見てたんだい、アリシア?」
やる気を入れて作業に戻ろうとすると横から声がかかった。その手にはコーヒーを持っていることから小休憩のつもりなのだろう。…なんとなく張りつめた空気が取り切れていない。
「学校ではリー先生よ、高畑先生。」
「そうだったねリー先生。それで、何を見ていたのかな?」
出張帰りのくたびれたスーツ姿はすでに見飽きたものの、社会人として麻帆良に滞在している以上職場で雑な行動はとれないため作業の手は止めずにタカミチの方を見遣る。
昔と違っておっさんになってしまった友人の姿は、先ほどまでの考えと相まって自分の過ごしてきた歳月を思い出させて入れたはずのやる気が抜け落ちてしまうのを感じる。やっぱり作業は明日に回してしまっていいだろう。
「…昔は遊ぶ時間なんてなかったなって、思い出しただけ。」
「へぇ、君にもそんなノスタルジーに浸るときがあるんだね。」
ちらりと窓の外を見遣って桟に腰掛ける様からどうやらこちらの話に興味を持ったらしいことが察せられた。
ただ、全てを察したうえで他人をあおるような言葉が出る辺り、未だにこいつはデリカシーのないままなのだということを理解させられる。どうやらガトウさんに似てきたのは外見だけらしい。
「自由になったら成人してたわけだし、ね。ifの話と言わずとも子供時代の事を思い出したいって目的はまだ持ってる以上は…わかるでしょう?」
「あー、ん、軽薄だった。ごめんよ。」
「冗談、何を真に受けてんのよ。やっぱりまだまだガトウさんには程遠いわね。」
ははは、と乾いた笑いをこぼすタカミチを見て胸に居座っていた郷愁のようなものはすっかり吹き飛んでしまった。肩代わりしてやった書類仕事のメンタル面のお代としてはちょうどいいだろう。
その後も駄弁るようにタカミチと代わった仕事の内容を口頭報告をしていると少しずつ空が赤くなって行くのが目に入る。どうやら話し込みすぎたらしい。
ちらりと腕時計で時間を確認して荷物を仕舞った鞄を手に取る。
「今日の業務終わり。さ、飲みに行くわよタカミチ!」
「え?あぁ、もうそんな時間か…いいよ、僕がおごるとしよう今回の御礼だ。」
「当たり前でしょ、さくっとパトロールして今日はビールに焼き鳥よ。セルヒコ先生も行きましょ。今日は奢りよ、タカミチの。」
いいんですか!という喜色が滲んでいる同僚の声にタカミチがノーと言えないのはすでに学習済みである。残った肉体面の報酬は酒で流すとしよう。
それにタカミチだって今回もいつもの出張だっただろうし、愚痴の一つも零したいだろう。その点情報系の魔法に強く同性のセルヒコ君はもってこいだ。残念ながら私もタカミチも難しい魔法は使えないし、護符だって安いわけじゃない。本当セルヒコ様々である。
「ほら、さっさとコップ片付けてきなよ。私はセルヒコ先生とお店探しとくから。」
「なら僕行きたかったところがあるんですよ。巡回路から然程離れてませんし、どうですか?」
「なにぃ!よくやったセルヒコ君。」
思った以上に有能な情報系魔法使いに私のテンションは鰻上りである。
今からは大人の時間、子供はさっさと帰るがよろしい。花の金曜日に飲まないなんてありえない。
あ、そういえばセルヒコ君は今日明日はよる仕事はない?平気?なら『
ネギ坊主が麻帆良を引っ掻き回すようになるまでの間、私は自由を手に入れたのだ。
何をするにも周囲を気にする必要があったのはすでに過去の事、私は今何物にも縛られない!…まぁ、昔と違って世間体を気にする必要は出てきたのだけれど。
何にせよ原作が始まるまでの間、私はしっかりと羽を伸ばすのだ!!
全ては『原作を見届けるために』!!
sideタカミチ
麻帆良に来て、アリシアはよく笑うようになった。
そんなことを中ジョッキ片手に焼き鳥をほおばる彼女を見て考えてしまう。
「やっぱり日本人はビールにおつまみだねぇ!」
「リー先生は日本人じゃないでしょう?」
「私の心は日本人だからいーのいーの」
固い表情で杖と刀を握りしめていた姿を知っているだけに今の姿は…正直信じられない。見慣れたと言ってしまうには未だに違和感が消えそうにない。
おそらくクルトがこの姿を見たら絶句するのは間違いないだろう。それに今でこそ表立ったファンはあまり居ないものの、昔の彼女を慕っている人間は少なくない。あっちで仕事をした際、見かけた屋台で彼女のブロマイドが景品となっているのは、そういった事の裏返しだろう。
明日菜君といいアリシアといい、麻帆良にやってきたのは間違いではなかったらしい。
「僕も魔法世界出身者には愚問だと思うよ、セルヒコ先生。」
手元のビールを軽く呷って会話に混ざる。彼女の向こうで慌てるセルヒコ先生の姿につい笑みが漏れる。
こうして雑談に興じていると、仕事の間は張りつめていた緊張感がゆっくりと解けていくのを感じて、アリシアの考えを察する。
肩の力を抜いてコーヒーを飲んでもキチンとスイッチの切り替えができるわけではない。いつもなら煙草をくわえて二三日過ごすのだが、このあたりの彼女の気遣いには昔から敵わない。
魔法についての会話も気にしないといけない普段と違って、こういうのもセルヒコ先生の魔法があってこそできる話だ。
「やっぱり敵わないなぁ…」
聞こえない程度の声で呟いて焼き鳥に手を伸ばす。うん、美味しい。
「タカミチだって昔は私に突っかかってくるぐらい男の子してたんだから、大人っぽいとかガワだけなのよ。」
「高畑先生にもそんな時代があったんですねぇ」
どうにも自分の思考に気を取られすぎたらしい。話はあまりよくない方向に舵を切られていたようだ。
…それに若干アリシアの耳が赤い気がする。セルヒコ先生も真剣に聞いてないで止めてくれよ。
「はいはい、そこまでにしてくれないかい。それに追加のオーダーもしないとだろう?」
「む、ならハツとせせりと丸軟骨の塩!」
「僕はたれのつくねとねぎまで。」
「…じゃあキモとかわの塩で。」
かしこまりました!という店員さんの声に被せる様に聞こえてくる「おー、タカミチキモカワだぁ」という頭を使っていない発言に頭を抱えそうになる。
やっぱり、自分が飲みたかっただけで気遣いとか無かったんじゃなかろうか。
「あー、楽しいねぇタカミチ!」
それでも、この瞬間を楽しんでいるのは事実であるし、悩むほうが馬鹿らしいのだろう。
幼馴染というには共に血を見すぎた彼女と自分には、頭を悩ます時間よりもこういった馬鹿話をする時間の方が必要なのかもしれない。
「そうだなぁ、でも僕もやられっぱなしは楽しくないし、とっておきの話をしようか。」
とはいえ、全てを飲み込んで的にされるのは看過できない。
やばい、と顔に書いてある彼女を見なかったことにして思いを巡らせる。ラカンさんと初めて会った時の話か、それともクルトに負けてマジ泣きした話にするか。
どうやってこの戦友をからかってやろうかと、早くもやってきたリベンジの機会に口角が上がっていく。
セルヒコ先生には悪いが昔語りに付き合ってもらうとしよう。まぁ、アリシアのファンだという彼には迷惑よりも降って湧いた幸運なのかもしれないが。
そうして子供時代を持たない二人の大人の時間は過ぎていく。
とても久しぶりに筆を執ったためリハビリも兼ねて書きました。
まさか過去に戻れそう、という引きはあってもひとりぼっちENDになるとは…と。いまさらながらに憤りと閃きを得ましたので、ね?
何か変なところおかしな部分があればご指摘、何かありましたらご感想お待ちしています。