ジオウのカブト編、理解はできるのですが納得は難しい点があったので、本編のみの世界観で、あのシーンの後の矢車が影山の死をこう捉えていたらという自分の妄想とジオウカブト編、劇場版の主題歌をヒントにさらっと書いてみました

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ONE WORLD

『さよならだ…兄貴…』

 

俺達は永遠に一緒だと誓ったあの日から随分と時間が流れた。

 

相棒、俺は今でも地獄を彷徨っているよ。

お前をこの「脚」にかけてしまった痛みと苦しみと共に、ゴールのない、真っ暗闇を。

 

どこをどう歩いただろう?相棒を弔った後、行くあてもなく歩き続けてきた。

絶望の果てを踏みしめてきたブーツはすでにボロボロで、よく10年も持っているなと我ながら苦笑してしまうほどだ。

 

地図も方位磁針もない10年と少しの長旅で灼熱の砂漠や極寒の極地も渡り歩き、たどり着いた場所は故郷の日本…相棒を…影山を葬ったこの港…

夜明け前の暗闇があいつを蹴り殺した脚が疼かせる。

もう二度と踏むことはないかも知れないと思っていた故国の大地。

それが偶然にも10年の月日を経て、しかもこの場所にたどり着くなんて、地獄を彷徨う闇の住人には相応しいと苦笑が漏れてしまう。

俺は闇の色に染まった海面を見つめたまま、乾いた唇を開いた。

 

「相棒、帰ってきちまったよ。」

 

そんな自分を嘲笑うような声に、応える声があった。

 

「おかえりなさい、兄貴。」

 

俺は背後を振り返り、その姿にくたびれた瞳を大きく開いた。

そこには、俺が葬った相棒の…影山瞬の姿があった。

 

あの時よりは少し肉付きのいい外見のような錯覚はあるが、俺に向かって微笑むその笑顔は、俺の相棒そのものだ。

 

「相棒…!?」

「どうしたの兄貴?十数年ぶりなんだから、もっと喜んでよ。」

「…そうだな、心の底から嬉しいよ。」

 

影山は笑顔に、俺も自然と笑みがこぼれた。

心の底から笑うことができたのは本当に十数年ぶりだ。

 

「兄貴、ごめんね。こんなに長い間一人にしてさ。」

「…ああ、お前がいない間、ずっと地獄を彷徨ってきたよ。もう、涙すら流せないくらい、体も心もカラカラだ。」

「辛かったよね?苦しかったよね?俺も兄貴に会えなくて、ずっと寂しかった…再開を祝って、兄貴の作った麻婆豆腐…十数年ぶりに食べてみたい。」

「ああ、食わせてやる。お前が満足するくらい…これから、ずっとな。」

「うん、行こうよ兄貴。これからはずっと一緒だ。」

 

影山は眩しい笑顔のまま俺に歩み寄り、そして身を預けようとする。

俺と影山の体が触れ合おうとするその瞬間…俺は影山を思い切り蹴り飛ばした。

 

「ぐっ!?」

 

蹴り飛ばされ、コンクリートの地面に叩きつけられた影山の右手は、サナギワームの二本の巨大な爪が生えた異形の腕へと変化していた。

ワームの生き残り達…まだ世の中で暗躍しているのか。

もう種族としては文字通り虫の息なのに世の中にしつこく蔓延るその姿に、奴らは奴らなりの地獄を彷徨っているのかもしれないと一種の共感をしてしまう。

 

「兄貴…どうして!?俺と…俺と一緒に来てくれないっていうの!?俺達は永遠に一緒だって言ってくれたのは…兄貴だろう!?」

「…お前、俺の相棒を笑ってくれたな?」

 

あの日影山は…相棒はネイティブと化した絶望から救ってほしいと俺に願い、俺に殺され、永遠に相棒という存在を俺へと刻みつけた。

俺と相棒は今も永遠に一緒だ。

勘違いした虫ケラ共が下卑た笑いで踏み込む真似がどういうものか、身をもって教えなければならない。

 

「俺も笑ってみろ…変身…」

 

俺はホッパーゼクターを手にし、キックホッパーへと変身を遂げ、ため息とともに相棒の影を睨む。

 

「…チッ、変身!」

 

影山も舌打ちとともに腰のゼクトバックルを開き、ホッパーゼクターを手にパンチホッパーへと変身を遂げた。

俺は緑の仮面の下に隠れた瞳でパンチホッパーを…影山をにらみ、再び唇を開いた。

 

「行くぜ…相棒…!」

 

俺はゼクターレバーを操作し、ライダージャンプで夜の闇に赤い光とともに跳び上がる。

 

「兄貴ィ!!」

 

影山もまた真っ直ぐに俺に向けて突進しながらライダージャンプで緑の光とともに飛び上がり、俺へと立ち向かう。

 

俺達はそれぞれライダーキックとライダーパンチで空中で激突し、空には赤と緑の鮮やかな光が凄まじい勢いで迸った。

 

戦いを終え、変身を解いた俺は、血を流して地面に倒れこむ影山を冷めた瞳のまま見つめていた。

影山はまたあの時と同じ、俺に見捨てないでくれと頼む捨て犬のような目で俺を見上げ、すすり泣くように俺へとすがった。

 

「…兄貴…もう一度、俺を相棒って言っておくれよ。」

 

俺を惑わすための演技なのか、それとも人間の意思がワームの能力に打ち勝っているのか、それは俺にはわからない。

だが、俺の知っている相棒は、今も俺の心と足に刻み込まれ、俺を苦しめている一人だけだ。

その真実だけを、目の前の虚像に伝えた。

 

「お前は影山じゃない。俺はお前の…兄貴じゃない。」

 

それを聞いた影山は、ワームの姿へと戻り、緑の炎とともに崩れ落ちていった…

 

俺はコートのジッパー部分の両側を掴み、勢いよくはためかせると、軽いため息をついた。

 

「相棒、笑え…俺を、笑ってくれよ。」

 

俺は今も、歩き疲れたボロボロのブーツで、絶望の果てを踏みしめ、雨に打たれ、風に流されながら、真っ暗闇の無間地獄を彷徨い続けている。

あいつとの、相棒との約束の、俺達だけの光を掴むために。

やがて夜明けの太陽が昇り暗闇をゆっくりと照らし出す。

本編の後、どんな矢車が見たかった?

  • 真っ暗闇の無間地獄を彷徨う矢車
  • 闇の中の光を求め続ける矢車
  • 実は生きていて楽しく過ごす地獄兄弟

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