ハリー・ポッターと呪われし末裔   作:九空揺愛

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スリザリンの怪物

あの一件以降、俺たちの間に少し距離が出来た。それまでほとんど毎日会っていた俺たちはパッたりと会わなくなったのだ。元より俺にとってあの二人はただの同僚生。居なくなればそれだけ自分自身に時間を費やせるというスタンスだが、向こうはそうでもないらしい。教室でもちょろちょろ後ろから視線を感じるも、俺は何も言わない。

元より俺は復讐者だ。いつかは奴らとも手を切らないといけなかったし、少しタイミングが早かっただけだ。

そう自分の中で納得させているとクリスマスがやって来た。『継承者』騒ぎが起きているからか、去年に比べてクリスマスに帰る生徒の数が大分多い。

俺は大広間でクリスマスパーティーが行われたのだが、俺は目の前でクラップとゴイルの暴飲暴食を目の当たりにし、食欲を失い寮に戻った。

 

訳なのだが、

 

『そんな所で何をやっている?』

 

ビクッと震える3人。さっきまでドカ食いを決め込んでいたはずのクラップゴイル、そして、

 

「帰ったんじゃなかったのか?グリーングラス」

 

クラップとゴイルの後ろでビクッと跳ねるグリーングラス。おずおずと彼らの後ろから出てくるとぎこちない笑顔が帰ってきた。

 

「ちょっと……ね。うん……その……」

「は?」

「う、ううん!何でもないわ!それより、もう遅い時間だし寮に戻りましょ?ね!?」

 

グリーングラスは妙に煮えきれない口調に違和感を感じながらも、俺の肘を掴み談話室の中に入る。談話室のソファに俺を座らせ、正面にクラップ、グリーングラス、ゴイル、そして俺というかつてないほどの違和感な組み合わせのスペースが出来上がった。

 

「……お前、狭くないのか?」

「き、気にしないで……」

 

本人がそう言うならこれ以上は言わないが、もう片方のソファにデカブツ2人に挟まれるように座る彼女はどう見ても狭そうだ。

 

「それで……」

「え?」

「どういう風の吹き回しだ?」

 

顔を見合わせる3人。困惑、焦りが見て取れる。

 

「お前達の結論は、俺とは関わらないというものじゃなかったか?」

「あ、えーっと……や、やっぱりザックとは話したいかな〜……なんて」

 

妙によそよそしいグリーングラス。そんな中、ゴイルが話を切り込んできた。

 

「それよりザック。君は秘密の部屋について知らないか?」

「妙な事を聞くな?お前達は俺がその『秘密の部屋』を開いた『継承者』なんじゃないかと思ったから最近俺とは離れていたんじゃなかったか?」

 

さっきまでとは比じゃないぐらいの動揺が見える3人。どうやら間違いないな……。

 

「お前ら、ポッ────」

「なんだ戻って────っ!?……ラミレス」

 

出入口から現れたのはマルフォイだ。クラップとゴイルを探しに行っていたのか今戻って来たようだ。

 

「グリーングラス?なんでお前がここにいるんだ?それに、ラミレスの事は……」

「わ、私はザックを信じる事にしたの!ド、ドラコはど、どうするの?」

「……!」

 

グリーングラスの一言にマルフォイは気まずそうに後ずさるが、

 

「ぼ、僕はまだ結論は出てない。そ、そんな事よりお前らなんの話してるんだ?それにグリーングラス……狭くないのか?」

「き、気にしないで……」

 

マルフォイはいつもの調子に戻りながら俺たちの前まで来る。

 

「それで、何の話をしてたんだ?」

「そ、それは……」

 

ゴイルが言いかける寸前、グリーングラスが動いた。グリーングラスはクラップとゴイルの腕を掴むと、突然走り出した。

 

「ちょっ、おい!どこに行く!?」

 

マルフォイを無視し、3人は出入口から飛び出し、走り去って行く。残された俺とマルフォイはお互いに目を合わせた。

 

「……一体どうしたっていうんだ?」

「さぁな。漏らしそうになたんじゃないか?」

「いや、トイレならあそこにあるだろ」

 

マルフォイが寮のトイレを指差す。

 

「……はははっ」

「……ふっ」

 

そんな久々のやり取りに俺たちから笑みが零れた。マルフォイは目から出た笑い涙を拭うと、

 

「こんなやり取り久しぶりだな」

「……そうだな」

「結論が出た。ラミレスは『継承者』じゃない。そうなんだろ?」

「想像に任せるって言ったろ」

「なら『継承者』じゃない。僕はそういう事にするさ」

 

マルフォイはそういうと、出入口に行く。

 

「あのバカ達を探してくる。特にあの二人は僕が見ないとダメダメだからな」

 

そういうとマルフォイも飛び出していった。

 

 

 

 

 

クリスマス休暇が終わり、幾度かの月が巡った。

不思議な事にジャスティンが石になって以降、犠牲になる者はパッタリと止み、いつも通りの平和な日々が戻ってきたように見えた。その事に何人かの生徒は安堵し、何人かの生徒は今でも怯え、そしてまた何人かの生徒は今でもポッターを疑っていた。

ロックハートに至っては被害が収まったのは自分のおかげだと何の根拠もなく信じているようだ。

クリスマス休暇から戻ってきたグリーングラスは戻ってすぐ俺の元へやって来るなり謝ってきた。彼女曰く、家に帰ってから色々考えた上での結論らしい。全く……

そして、ジャスティンとほとんど首なしニックが襲われてから、すでに4ヶ月が経過していた。その間、新たに襲われた者はおらず、次第にホグワーツは活気を取り戻しつつあった。その間、俺たちは俺たちで秘密の部屋について調べることにし、図書館で借りた本を談話室で読んで調べる生活が続いた。最初は図書室で直接調べていたのだが、同じ要件で図書館に訪れるポッターとマルフォイが喧嘩しだす始末で図書館から離れる事になった。

 

「ザックは怪物の正体ってどんなのだと思う?」

 

図書室から借りた本を手分けして持ちながら問いかけてくるグリーングラス。

実際、俺にはある程度の憶測は付けていた。

 

「スリザリンの怪物、なんとなくスリザリンから連想されるのは蛇だが……あまりに考えが短絡的な気もするのが現状だな」

「そっか……、でも確かにいい線行ってるかも知れないし、調べて見るのも────あ、ごめんなさい!」

 

トンッと何かにぶつかるグリーングラス。大きな本を抱えているグリーングラスは何者かにぶつかり倒れてしまった事に気付くと、とっさに謝った。俺はぶつかった相手の方を見ると、そこにいたのは1人のグリフィンドールの少女だった。しかし、どこかで見たことがあるような……

 

「お前は確か……グリフィンドールの、ウィーズリーの妹だったな」

 

咄嗟に思い出したウィーズリー兄弟の末女だったはずだ。名前は知らないが。

ウィーズリーの妹は座り込み俯いたまま動かない。ぶつかった本人であるグリーングラスは持っていた本を急いで地面に置くと、ウィーズリーの妹に手を差し出す。

 

「ごめんなさい。良かったら……」

「……ふふ」

 

突然笑い出すウィーズリーの妹。俺たちはその反応に訝しむも、すぐにウィーズリーの妹がグリーングラスの手に自分の手を添え、立ち上がる。

 

「今はザックと話しがあるから、君は邪魔だね」

「え?」

 

突然固まるグリーングラス。そのまま死体のように後ろに倒れ込んだ。

俺は咄嗟の出来事に何が起きたのか理解が追いつかなかったが、さっとローブから杖を引き出し────

 

エクスペリアームス(武器よ去れ)

 

ウィーズリーの妹が咄嗟に唱えた呪文に俺の手から杖が弾き飛ばされる。飛んでいった杖は後ろに転がっていってしまい、恐らく取りに背中を向けた瞬間殺られる。

 

「ザック。僕は君と話がしたかったんだ。僕と話をするなら、彼女を解放しよう」

「お前は何者だ?ウィーズリーの妹じゃないな?」

「流石はザック、察しが早くて助かるよ。それじゃあ自己紹介と行こうか」

 

ウィーズリーの妹の中にいる何かは、コホンッと軽く咳払いすると

 

「僕の名前はトム・リドル。今はこの小娘の体を借りてるけど、本当の体がもうすぐ取り戻されるんだ」

「トム・リドル……」

「そうだザック。僕はトム・リドル。君をずっと探してたんだ」

 

長い間離れていた友と再会したかのような雰囲気。そんな安心感さえ与えてくるトム・リドルは俺に向かって歩いてくる。

 

「君はゴーント家の末裔であり、名前を言ってはいけないあの人と同じ血族。ヴォルデモート卿と同じ優秀な存在。偉大になれる存在。素晴らしいじゃないか」

「一体何が言いたい」

「おや?分からなかったかな?まぁいいや、教えてあげよう」

 

クスクス笑うトム・リドル。抵抗が出来ず、身動きが取りづらいのをいいことに、俺の耳元に顔を近づけて囁いた。

 

「この小娘の代わりに君がこれから僕となるんだ。アイザック・ラミレス」

「!!」

 

俺はトム・リドルを突き飛ばし、後ろで転がっている杖を急いで拾い上げ、

 

アクシオ(来い)グリーングラス!」

 

叫ぶように呪文を唱え、こちらに動かなくなっているグリーングラスを呼び寄せる。飛んできたグリーングラスを受け止めておぶり、走った。

 

「あはは!ザック!鬼ごっこかい?随分と子供らしい……でもこれはただの鬼ごっこじゃない。運命を決める鬼ごっこだ!逃げ切ることは出来ないよ!」

 

トム・リドルがそういうと、彼の後ろから巨大な大蛇が現れた。俺はそれが何物かすぐに分かった。

 

バジリスク

『毒蛇の王』の異名を持つ大蛇で、毒蛇の王の名の通りあらゆる毒蛇の毒を遥かに超える強力な毒を有していると言われている。

そして何よりその1番の特徴はバジリスクの目で、直接目を合わせると即死する厄介な物だ。

バジリスクはゆっくりと俺に向かって這ってくる。

くそ!グリーングラスを背負って走っている為、走りにくい。そんな中、角を曲がろうとすると誰かとぶつかった。俺もぶつかった誰かも倒れる。俺はすぐに立ち上がり、グリーングラスを背負い直すとぶつかった相手の方を見た。どうやらぶつかったのはレイブンクローの女子生徒のようだ。レイブンクローの女子生徒は俺を見るなり、

 

「あ、貴方は……アイザック・ラミ────」

「チッ!おい、逃げるぞ!」

 

俺は舌打ちしつつ手を差し出すと、女子生徒は訝しげな表情を浮かべる。そんな中、後ろからシューシューと言う声と這うような音がどんどん近づいて来るのが聞こえてくる。

俺は無理やりその女子生徒の手首を掴むと無理やり立たせて走りだした。

 

「ちょっと!何を────」

「後ろを見ろ!ただ目は絶対見るなよ!」

「えっ……?ヒッ……!」

 

女子生徒はバジリスクの姿をチラッと見ると、声にならない悲鳴をあげた。

そのまま俺とその女子生徒で逃げ続ける。でもこのままでは捕まるのも時間の問題だろう。

 

「おい!お前は目くらましの呪文は使えるか!?」

「え!?……目くらましじゃないけど、似たようなのなら……!」

「じゃあそれを後ろのあれに向かって打て!」

「そ、そんなの無理!怖くて出来ない!」

「早くしろ!俺は両手が塞がってる!今はお前しか頼れない!やるんだ!」

「……う、うう。えいっ!オブスキューロ(目隠し)!」

 

女子生徒が放った呪文がバジリスクに当たったのか、バジリスクは怯んだようだ。その間に俺たちは近くの教室に避難する。

壁際にグリーングラスを下ろし、俺と女子生徒も壁を背に座り込んだ。

 

「あれは……何?」

「バジリスクだ。今起きている『継承者』騒ぎの元凶だろうな」

「その……その子も……やられたの?」

「いや、こいつはおそらく石化の魔法を掛けられたんだ。だから、フィニート・インカンターテム(呪文よ終われ)

 

グリーングラスはドクンッと跳ねると意識を取り戻した。

 

「あ、あれ?ザック?それにここは……?」

「説明してる時間はない。あいつらに見られた以上、お前達も消される可能性がある。お前達は反対側の扉から逃げろ」

「そ、そんな!貴方はどうするの?」

「あいつの狙いは俺だ。俺が囮になる。お前達はこの事をダンブルドアに伝えろ」

 

女子生徒は困惑したように焦るも、グリーングラスが彼女を連れて出ていった。

よし、これで心置きなく戦える。

俺はそっと扉を開けて気配を探る。どうやらバジリスクは居ないようだ。辺りは嫌に静かで物音ひとつしない。これなら今のうちに────

 

「ダンブルドアの所に行ける。そんな甘い考えではないよね?」

 

背後から声が聞こえて来る。

ゾッとする悪寒に襲われ振り向くとウィーズリーの妹もといトム・リドルが立っていた。

 

「鬼ごっこは僕の勝ちだ」

 

次の瞬間俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダンブルドア先生!話を聞いてください!ダンブルドア先生!」

「出てきてください!ダンブルドア先生!」

 

私達は校長室の前まで来ると、叫ぶようにダンブルドア先生の名前を連呼した。校長室に入るには校長室へ入るための合言葉が必要だ。私達はどちらも校長室の合言葉を知らなかったため、現在に至る。

 

「何事ですか!?」

「マクゴナガル先生!」

 

ダンブルドア先生の名前を叫んでいると、マクゴナガル先生がやって来た。私達はマクゴナガル先生に状況を説明すると、ダンブルドアは魔法省に行っているとか何とか言われたが、副校長先生として慌てて先生達を集めた。

そのままあの教室の前まで行き、先生に調べてもらう。

 

「本当にここであっているのですか?ミス・グリーングラス」

「はい!間違いないです!」

 

私も先生方と一緒に探してみるも全く戦った後も、壊れたあともない。

 

「マクゴナガル先生、信じてください!本当にここで────」

「この件は引き続き私達で調べます。貴女たちは自分の寮に戻りなさい」

 

マクゴナガル先生にそう言い渡されると、それぞれの寮に戻ることになった。

 




ザックすごいな(ドン引き)
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