ハリー・ポッターと呪われし末裔   作:九空揺愛

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継承者の真実

「今ここで話すんだよハリー」

 

トム・リドルがそういうとポッターの杖を自分のローブにしまい込んだ。

ポッターはトム・リドルのその行動に驚き、彼を見た。ポッターの中で、不信感がだんだんと大きくなっていく。

 

「ジニーはどうしてこんなふうになったの?」

 

ポッターはゆっくりと切り出した。

それについてトム・リドルは語る。一連の事件の犯人はジニー・ウィーズリーであったと。彼女はふとした事からトムの日記を手に入れ、そこに様々な事を書き込んだという。

学校で起こった事、兄達がからかう事、お下がりの用品で学校に行かなければならない事。

そして、有名で偉大なハリー・ポッターが自分を好きになってくれる事は決してないだろう、という淡い恋の悩みなどだ。

それに対しトムは親身になり、時に同情し、時に親切にしてやる事で彼女の信頼を得ていった。

だが彼女が日記に心を寄せれば寄せるほど、友情を感じれば感じるほどに彼女の魂は日記に注ぎ込まれ、トムは力を得ていった。それどころか遂には実体化出来るだけのエネルギーを手に入れ、今度は逆にジニーの中に己の魂を注ぎ込み始めたのだ。

 

「彼女は最初自分のやったことに気がついてはいなかった。でも、時間が経つにつれ自分自身のやったこと……僕がやらせていたことに気が付いた。日記を信用しなくなるまで随分時間がかかったよ。そしてジニーはあろうことか日記を捨てようとしたんだ。本当に馬鹿な小娘だよ。でも僕は最終的に君に拾われた」

「何故僕に?」

「ジニーから君のことをよく聞かされてたからね。君のことが知りたくなった」

 

額の傷を舐めまわすように見つめるトム・リドル。どんどんその表情が貪るように歪んでいく。

 

「君を知るために僕は君にハグリッドを退学に追い込んだ映像を見せた。そうだな。あの時からだったな……。ダンブルドアが僕を監視し始めたのは。そういう意味でも僕が在学中に秘密の部屋を開けるのは危険だった。だが、僕が探索で費やした5年間を無駄にするわけにはいかなかった。だから日記に16歳の自分を封印して、時が来た時に誰かに僕の足跡を追わせてサラザール・スリザリンの、崇高な仕事を成し遂げさせようとしたんだ」

「君はそれを成し遂げてないじゃないか」

 

ポッターは勝ち誇ったように言う。

 

「君のやったことはただ生徒の何人かを石にしただけだ!猫一匹だって殺せてやしない!それもマンドレイクが完成すれば元に戻る!ハグリッドのことだって、ダンブルドアは全部お見通しだったんだろう!?君は────」

「まだ言ってなかったかな?」

 

トム・リドルはポッターの言葉を遮り、静かに言った。

 

「僕の目的はもう『穢れた血』を殺すことじゃない。僕の狙いは……ずっと君だったのだよ。僕はずっと君に会うことだけを目的に動いていた。だから再びジニーが僕を取り戻した時は怒り狂ったよ。彼女は君に自分の秘密が漏れるとでも思っていたのだろうが、僕としてはいい迷惑だ。だから僕は、彼女の手に戻った瞬間最後の罠をしかけた。君の友人である『穢れた血』を殺し、ジニーにメッセージを書かせることで、君をここに誘導することにしたんだ。結果、君はここに来た。それだけで十分だ」

「そんなに僕と会いたかった理由はなんだい?」

 

もはや執着としか思えないトム・リドルの思いに理由を問うポッター。

トム・リドルは獰猛に笑うと、一言呟いた。

 

「君に聞くため」

「何を?」

「何の特別な魔力を持たない君が。それも赤ん坊の時にどうやって偉大な魔法使いを破ったのか?偉大なるヴォルデモート卿に狙われたというのに、君はどうやってその傷一つだけで逃げ延びれたんだい?」

 

トム・リドルはポッターの杖を出し彼の額の髪を退ける。出てきたのは稲妻模様の傷跡。

トム・リドルはそれを見ながら目を細める。

ポッターは一本前に出ると、

 

「何故そんなことを聞くんだい? ヴォルデモートは君よりずっと後の人間じゃないか?」

 

その質問を待っていたかのようにトム・リドルの顔は一気に喜び、歓喜するかのように顔が歪んだ。

トム・リドルは振り返りポッターから離れながら口を開いた。

 

「ヴォルデモート卿は……。僕の過去であり、現在であり……未来なのだ」

 

再び空中に杖をペンのように走らせ自分の名前を書いていく。それを手で払い、文字が変形していく。そして浮かび上がるヴォルデモートの文字を見るとポッターは驚いたように目を大きく見開いた。

 

「理解したかい?この名前は僕が在学中の頃から使っていたものだ。僕のような偉大な血筋を引く人間が、いつまでもマグルの父親の名前なんて使うと思うか?NOだ。僕は新しく名前を付けた。この名前こそが、いずれ全ての人間が口にすることも恐れるようなものになるのだと。ヴォルデモート卿である僕こそが、この世界で最も偉大な魔法使いになることを!」

「最も偉大な魔術師はアルバス・ダンブルドアだ!」

「やつは記憶にすぎない僕によって追放された!」

「いなくなりはしないよ!彼の意志を持つ者がいる限り!」

 

トム・リドルはポッターの言葉を聞きながら顔を歪めた。すると、何かの動物の鳴き声が聞こえてきた。トム・リドルにも聞こえたのか、凍り付いた表情で辺りを見回している。すると突然ドーム型の天井から、深紅の鳥が炎を纏って現れた。あれは確か……

 

「フォークス?」

 

孔雀の羽のように長い金色の尾羽を輝かせて飛ぶその鳥は、確か以前校長室で見た不死鳥だったはずだ。フォークスと呼んだポッターはダンブルドアから名前を教えてもらったのだろう。不死鳥はポッターに向かって何かを落とすとポッターはそれを拾い上げた。不死鳥は俺の拘束されている柱に止まる。

 

「ダンブルドアが君によこしたのは、その鳥と帽子だけかハリー!さぞ心強いだろう!実に安心できたのではないかい!なら、君の力を見せてもらおうか!君に聞きたいことは全て聞けたからね!」

 

トム・リドルは奥にある人間の顔が彫られた壁の前まで行くと、

 

封印されし怪物よ!今こそ姿を現せ!

 

そう唱えるトム・リドル。すると、彫られた壁の口の部分が開いて行く。

 

「最後に『生き残った男の子』である君と真に偉大なる魔法使いであるヴォルデモート卿とでお手合わせ願おうか!」

 

ポッターには分かっていた。あそこから出てくるのはこの一年間、恐怖と謎を振り撒き続けた存在『バジリスク』が出てくるのだと言うことが。

 

「ザック!」

 

ポッターは叫ぶ。確かにこのままでは俺が殺されてしまう。と思っていると、

 

「!?」

 

縛りつけられていたはずのロープが緩んだのだ。俺は解放され、ロープを確認するとロープの反対側が焦げたように黒くなっていたのだ。

 

「お前がやってくれたのか?」

「ピューイ!」

 

不死鳥は俺の言葉に答えるがごとく一鳴きすると飛び上がった。

俺もポッター同様バジリスクから距離をとるため走る。

 

「ザック!解放されたんだね!」

「ああ、あの不死鳥……フォークスのお陰だ。それより今はあれをどうするかだ!」

 

俺はバジリスクから逃げ惑いながら考える。

バジリスクは確か蛇語使い(パーセルマウス)の言うことに従うはず。やつ同様俺もポッターも蛇語(パーセルタング)が使えるなら、あのバジリスクに一か八か従わせられるかもしれない。

 

「ザック!お前の考えが見て取れるぞ?お前はバジリスクに蛇語(パーセルタング)を唱えるつもりみたいだが、無駄だ!このバジリスクは僕にだけ従う!」

「チッ!」

 

面倒な事になったな。バジリスクの目がある以上正面からの戦いは圧倒的に不利だ。そう思っていると、

 

「ピューイ!」

 

ドスッ!という音と凄まじい悲鳴が『秘密の部屋』に響き渡る。フォークスの嘴が、バジリスクの目に突き刺したのだ。どす黒い血を目から滴らせながら、バジリスクは苦痛にのたうち回っている。そのままフォークスはタイミングを見計らってもう片方の目も潰す。

 

「よし、目を失ったならこっちのもんだ!」

「おのれ……!」

 

俺は杖を出すと攻撃呪文を片っ端から唱えまくった。バジリスクは俺の連続攻撃に怯む。

 

「これで終わりだ────」

エクスペリアームス(武器よ去れ)!」

 

トドメに放とうとした時、俺の手から杖が弾き飛ばされた。

トム・リドルがポッターの杖で俺の手から杖を弾き飛ばしたのだ。

 

「これで攻撃手段は絶った!やれ!バジリスク!」

 

バジリスクが音と熱感知で俺に飛びかかってきた。俺とバジリスクの距離では躱しきれない……!俺は……ここで死ぬのか……?

 

「はああああ!!」

 

その咆哮と共に俺の目の前にポッターが現れた。その手には白銀の剣を持って。

ポッターは剣でバジリスクの攻撃を防ぐ。

 

「ザック、下がって!」

 

ポッターの言葉に思わず距離をとると、再び襲ってきたバジリスクの口蓋にポッターは持っている剣で深々と突き刺さした。

その瞬間バジリスクの悲鳴が再び響き渡る。口蓋を貫いたのだ。明らかに致命傷だ。

バジリスクは力尽きたように倒れる。

 

「やったのか?ポッター!」

 

俺はポッターの元に走っていき、バジリスクをまじまじと見る。バジリスクは痙攣しながらも動く気配なく死んでいるようだった。

 

「やったな……ポッター!」

「うっ……!」

 

ポッターは右腕を抑えて蹲る。俺はポッターの右腕を掴んで見てみると、バジリスクの歯が一本ポッターの右腕に突き刺さっていた。バジリスクの牙にはあらゆる毒を超える致死性と破壊力がある。このままではポッターは……。

 

「素晴らしいだろう?バジリスクの毒の威力は。ものの数秒で毒は全身に廻り、数分後には死に至るんだ。そしてちょうどあと数分でジニーも死に、僕は蘇る。あははっ!よかったねぇジニー!君は愛するポッターと共にあの世に行けるんだ!僕には感謝しかないだろう?」

 

トム・リドルは勝ち誇ったかのように言い放つ。

ポッターは腕に突き刺さっていたバジリスクの牙を抜き取る。

 

「さあ、あと少しだ。あと少しで闇の帝王が、ヴォルデモート卿が蘇る!生きてこの世に!あははは!ハリー、日記に殺される気分はどうだい?」

 

ポッターは答えない。答えないがワナワナと震えていた。これは死の恐怖からでも毒の影響からでもない、怒りだ。

彼は全ての元凶である日記に怒りを覚えているのだ。

ポッターは落ちているトム・リドルの日記を拾い上げてページをめくると、持っていたバジリスクの牙で日記に突き刺した。

 

「な、やめろ……!!ぐあああ!!」

 

轟くトム・リドルの絶叫。それと同時にトム・リドルの身体から光が放ち始める。ポッターはバジリスクの牙で日記を何度も突き刺す。

 

「やれポッター!あいつの弱点はその日記みたいだ!」

「ぐっこの……!」

 

トム・リドルはポッターに向かって飛びかかろうとするも、それ以上に日記への攻撃が痛いのか動きが止まる。ポッターは最後に日記を閉じて真上から牙を突き刺した。

 

「あああああ!!!」

 

トム・リドルはここ一番の悲鳴を上げた。ポッターの怒りを込めた突き刺しはまだ続く。

 

「いいぞポッター!もうすぐ奴はやられるはずだ!」

「こ、こうなったら……!」

 

トム・リドルは自分のローブから一本の杖を出した。その杖は白く、まるで人の骨で出来ているかのごとく独特で禍々しいオーラが漂っていた。

 

サーペンソーティア(ヘビよ出よ)!」

 

トム・リドルがそう唱えると、蛇が突然現れ、俺の左腕に噛み付いた。

 

「ぐあああ!!」

 

今度は俺が発狂した。噛み付かれた所は燃えるように熱く。苦しい。

 

「ザック!このっ!」

 

ポッターがバジリスクの牙で腕に飛びついていた蛇を突き刺すと、蛇は灰のように消えていった。

 

はは……まさか俺様の復活計画が失敗してしまうとはな。だが、まぁいい。去年とは違い今回は置き土産が出来た

 

消えかかっているトム・リドルは先程までの青年の声ではなく、去年聞いたあのおぞましい声に変わっていた。

それより、

 

「ぐっ……置き土産……だと?」

そうだ。お前の過去を見たと言っただろう?それはお前の欲するものだザック。運が悪ければ死ぬかもしれないが、運が良ければそれを上手く使えるだろう……

「何……?」

 

トム・リドルは苦しそうな表情を浮かべながらも獰猛に笑う。

 

お前は本当に綺麗な顔をしているなザック。アリシアによく似ている……

「アリシア……だと?」

 

聞いたことの無い名前が出てくる。

 

「……アリシアとは誰だ?」

……はは。愚かな男よザック。知らぬなら覚えておくがいい。いずれ分かるだろう……

「……!待て!」

 

そのままトム・リドルは光に包まれて消えていった。

 




新キャラ登場

次回もお楽しみに
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