「目覚めたようじゃなザック」
俺は眩しい陽の光に浴びながら目を覚ました。ここは……秘密の部屋ではないみたいだな。
俺は起き上がって当たりを見ると、どうやらここは医務室のようだ。
隣には椅子に座るダンブルドアがこちらを見ている。
「俺をここまで運んだのはダンブルドア校長ですか?」
「いや、わしではない。ここまで君を運んでいたのはハリーじゃ」
「……」
確かあの時、俺はトム・リドルの放った蛇に左腕を咬まれて……そこからの記憶がない。
「お主は秘密の部屋でヴォルデモートによる攻撃で気絶してしまったのじゃ。そして全て終わった時に、ハリーがお主を担いで出てきたのじゃよ」
「ポッターが……ですか」
あの細身(俺も言えないが)で俺を担ぐ力があったとはな……。
俺は今もじんじんと熱く疼く左腕を見る。左腕には包帯が巻かれており、どうなっているのか分からない。
「そう言えばポッターは?あいつはバジリスクの毒に冒されているはずでは?」
「ハリーのその件に関しては問題はない。フォークスの『不死鳥の涙』であの子の身体から毒を浄化したからの。それより……」
ダンブルドアは俺の左腕をとり、包帯を解いていく。包帯が全て解き終わると、蛇に咬まれた所に妙な物があった。
「これは……髑髏?」
「そうじゃ。この髑髏はヴォルデモートの部下である
「という事は、これはただの毒ではないのですね」
「そうじゃ。毒なんて生易しいものではない。闇の魔術による呪印……闇の印じゃ」
闇の印……あまり詳しくはないが、ヴォルデモートの全盛期に
「闇の印は
俺はダンブルドアから腕の闇の印に目を移す。禍禍しいその見た目からは確かに強い力を感じた。
「良いかザック。決して闇に挫いてはならぬ。闇に手を染めれば最後、光の道には戻ることは出来なくなる……永遠にの」
「……」
ダンブルドアの真面目な表情は久しぶりに見たかもしれない。
去年こそダンブルドアに呼び出されポッターを守る等の事を言い渡されたりしたが、今年はこうやって面と向かって話をしていない。
すると、医務室の扉が開いた。
「ダンブルドア校長。例のものの調合が出来ました」
「うむ、ありがとうセブルス」
入ってきたのはスネイプだった。スネイプはグラスいっぱいに注がれた赤い液体を持って俺の所まで持ってくると、グラスを俺に渡した。
「それを飲み干したまえラミレス」
「これは?」
「わしがセブルスに作って貰うよう頼んだ闇の印を抑える魔法薬じゃ。これを飲めば永遠ではないが、闇の印による不意の暴走は無くなるじゃろう」
「それにお前の闇の印はまだ完全ではない。これを飲めば、この力を求めぬ限り抑えられるだろう」
俺はグラスの中身を覗き込み、グラスを回転させて中の薬を揺らす。
確かに俺には力が必要かもしれない。でも俺は俺の力で復讐をやり遂げなくはならない。
そう思った時俺はグラスを傾けて口の中に注ぎ込んだ。
数日後、
ダンブルドア曰く現在、継承者を倒し石化した生徒たちがマンドレイク薬で元に戻った事も祝した学年末パーティーを大広間で開催しているらしい。俺も医務室での入院生活も終わり、元の生活に戻ってきていた。
闇の魔術に対する防衛術の授業については、講師のギルデロイ・ロックハートが秘密の部屋に行く途中の道でウィーズリーの杖を奪ってポッター達に忘却術を使うも、折れていたその杖の影響で呪文が逆噴射し自分に忘却術が当たってしまったらしい。
何もかも忘れてしまったロックハートは直ぐに聖マンゴ魔法疾患障害病院に送られ、完治し次第生徒に忘却術を使った事でアズカバンに送られるそうだ。
「あ!ザックじゃない!」
「ん?ああ、グレンジャーか……どうやらマンドレイク薬で戻ったんだな」
大広間の入口でばったり会う俺とグレンジャー。彼女は笑顔で俺に右手を差し出した。
「握手。お互い無事にこの日を迎えられた事を称えて」
「フッ……いいだろう」
俺も右手を差し出し、グレンジャーの手を取る。
「ありがとう」
「……?何がだ?」
「貴方もハリーと一緒にバジリスクと継承者を倒したんでしょ?今回は私、去年みたいに戦えなかったし、石化しちゃってたから……」
グレンジャーの表情が曇る。少し俯くグレンジャーに対してどんな言葉を掛けてやればいいのか分からなかったので、俺の思う率直な感想を述べることにした。
「……お前は俺やグリーングラスより先にバジリスクの存在を調べあげた。現に俺も調べていたが、正体までは実物を見るまで分からなかったんだ。たとえお前が秘密の部屋で戦わなかったとしても、お前は敵の正体を突き止める大きな成果をあげたんだ。そんなに悲観することはない」
グレンジャーは驚いたように目を見開いて俺をまじまじと見る。
俺は視線を逸らすと、彼女は笑い出した。
「貴方がそんな事を言うなんてビックリしちゃったけど、そう言ってくれて嬉しいわ!ザックって実は優しいのね!」
「フン……別に慰めたわけじゃない。俺の感想を述べただけだ」
俺の返事も笑顔で聞くグレンジャー。言うんじゃなかったと軽く後悔し、手を離すと大広間の前に行き中に入った。
大広間に入るとグリーングラスが飛びついて来たり、マルフォイと握手したりする。俺は二人を席に戻すと、
「ポッター」
近くでグレンジャーとウィーズリーが一緒にいるポッターの所に行く。ポッターも驚いたように目を丸くしていた。
「……毒はもう大丈夫なのか?」
「うん……フォークスのおかげで綺麗さっぱり毒はなくなったみたい。それよりザックの左腕は?」
「大した問題は無い。魔法薬を飲んでるけどな」
そこで会話が止まる。数分間の沈黙から、
「あの、ザック────」
「……認めてやるよ」
俺の一言でポッターは何かを言いかけて止まる。恐る恐る俺に聞き返してきた。
「な、何を……?」
「お前の勇気という強さをな」
俺はそう言うと踵を返してスリザリンの席に戻った。
数秒間固まっていたポッターは思考が戻ってくると嬉しさが込み上げてきた。
「あいつ、何しにきたんだよ。偉そうに」
「ロン。あれがザックなりの感謝の言葉なのよ。多分ね」
ウィーズリーはグレンジャーの言葉を聞いても、よく分からないと言った表情を浮かべる。
三人もグリフィンドールの席に戻ると、学年末パーティーの続きを再開した。
学年末パーティーが終わり、1年が終わりを告げた。
今年の寮杯はスリザリンの継承者と怪物を倒したポッターとその仲間たちに得点が配布されグリフィンドールの独占状態となった。
また、今回の功績を評価してポッターとウィーズリーの2人には『ホグワーツ特別功労賞』が与えられる事となった。元々この報告は秘密の部屋から戻ってきた時に伝えていたらしいが、このパーティーでの授与式が行われたのだ。俺も去年この賞を授与してもらったのを思い出す。
そして学年末パーティーが終われば学年末テストの結果発表なのだが、今年は大量の未受験者が出たため始業式に持ち越しとなった。
孤児院に着き、俺は図書室から借りた本を並べた。
ヴォルデモートが出したアリシアという名前。全く覚えのない名前からして魔法史や呪文学や魔法論の学者の名前ではないだろう。俺はホグワーツに入学してから2年もの間、これらの本は読み尽くしていた。
俺は普段読むことのない占い学や魔法動物学の本などを隅々まで調べるが、一向に名前は見つからない。
「『アリシア』この名前は一体……」
ヴォルデモートの最後の言葉。その程度なら俺も気には止めなかっただろう。だがその名前を聞く度に俺の中の何かがぐるぐる渦巻くのを感じる。
この正体を知りたい。一刻も早く。
俺の中で渦巻く物の正体が知りたい。
「……!」
俺はふと思い付いた。疑問を解決してくれるであろう人物の事を。
「ダンブルドアだ。ダンブルドアならアリシアについて何か知っているかもしれない……」
俺は急いで羊皮紙を取り出すと、ダンブルドア宛に手紙を書いた。
「これで分かるはずだ。ダンブルドアなら……」
俺は外出の準備をすると、誰にもバレないように外に出る。外は既に暗くなってきており、街灯の光がキラキラと照らしていた。
「漏れ鍋まで距離があるな……」
俺は杖を持ってそれを上にあげる。すると、
「
「なるほど、本当に来るとはな」
以前現代魔法史の本で読んだのだが、向こうの世界では夜中にのみ存在する魔法使いのバスがあるのだ。
杖を持った手を挙げるとやって来るらしく、半信半疑だったが、本当に来るとは思って無かった。俺はバス内に乗り込むと、
「兄ちゃん何処まで行きてェんだ?」
「漏れ鍋まで」
「あいよ、アーニー!漏れ鍋までだとよ」
この後俺は二度と
作者から
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