ハリー・ポッターと呪われし末裔   作:九空揺愛

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11月の投稿からエタっていた私ですが、お久しぶりです!
また連載復活しますので、よろしくお願いします( ´ ▽ ` )


マネ妖怪

 

3年生にもなると選択授業が始まる。

闇の魔術に対する防衛術等の必修科目もあるが、数多くの授業の中からどれを取るかを俺は考えていた。

 

「なぁラミレス。『魔法動物飼育学』を一緒に取らないか?あの野蛮人がやるんだ、まともじゃないだろうし馬鹿に出来るだろう?」

「……お前、そんなことしてたら単位取れないぞ?」

「何言ってんだ。あいつを陥れてクビにしてやるんだよ!そうすれば必然的に処置として単位が貰える、一石二鳥だろ?」

 

ニヤニヤ笑うマルフォイ。本当……くだらない事に関して頭の働きが早いなお前。

とはいえこの時間は他に受けておきたい授業もないし受けてみるのも悪くないかもしれない。

 

魔法動物飼育学は基本的に寮合同でやる授業のようで、こういう時はだいたい

 

「あ、ザックもこれ受けるんだね!」

「おいポッター!気安く僕の友達(・・)のラミレスに話しかけるなよ?」

「……別に、お前に話しかけてないだろマルフォイ」

 

そう、こういう時はグリフィンドールのやつらと一緒だ。俺一人の時はともかく、マルフォイと一緒にいる時にポッターと会うと喧嘩が始まって喧しいったらありゃしない。

更に言えばウィーズリーもいる今は取っ組み合いの喧嘩が勃発可能性も高い。

 

「ドラコやめなよ」

「ハリーもよ。気にしたら負け」

 

グリーングラスとグレンジャーの2人が二人の首根っこを掴んで引き離す。

あほらしいしさっさと行くか。

 

「まったく……あの野蛮人が教師というだけで憂鬱なのに。なんでよりにもよってグリフィンドールと合同なのよ!?」

 

今度はキーキーうるさい悲痛な叫び声がこだまする。バク犬のような顔のパンジー・パーキンソンだ。パーキンソンは俺の顔を見るとそろそろと俺の所にやってきた。

 

「あ!ザックじゃない?今一人かしら?」

 

気色の悪い猫なで声を出すパーキンソン。さっきまでの叫び声の主とは思えない豹変っぷりに俺は若干顔を引きつらせた。

 

「一人なら……私と一緒にサボらない?」

 

パーキンソンは俺の腕にしれっとしがみつくとそんな事をのたまった。

 

「悪いが、俺はサボるつもりは毛頭ない。それに離せ」

 

俺はパーキンソンがしがみついていた腕を払ってさっさと歩き出した。

去年までほとんど話したことも無かったパーキンソンの態度の変わりように少し戸惑いながらもさっさと集合地点に向かう。

 

「よっしゃ、みんな集まったな?そんじゃあ見せるぞ?第一回の授業に出てくる取っておきのやつだ!」

 

集合地点には新任で森番のハグリッドが手を叩いて集めていた。受講生が全員集まると、少し移動して小さな柵の前に着いた。そして、

 

「どうだ?美しいだろう?」

 

そこに居たのは頭がワシと体が馬の銀色の幻獣、

 

「『ヒッポグリフ』だ」

「そうだ。名前は『バックピーク』!今日はこいつについて解説していくぞ!」

 

ヒッポグリフはグリフィンと雌馬の間に産まれる子供だそうで、ハグリッドが毎日の手入れをしてあの銀色に輝く毛並みを保っているらしい。

 

「それじゃ、一番乗りしたいやつは……ん?おお、ハリーとアイザック・ラミレスか!こっちゃ来いや!」

 

は?

 

俺は振り向くと、俺とポッター以外の生徒がそそくさと後ろの方に下がっていた。残された俺とポッターは呆然としながらハグリッドの元に歩いて行く。

 

「いいか2人とも。ヒッポグリフは気高くて怒りっぽい。決して侮辱しちゃなんねぇかんな?」

 

注意事項を説明されると早速ヒッポグリフの前に行く。先ずはヒッポグリフの前でゆっくりお辞儀をし頭を垂れる。腰より低い角度まで下げないといけないらしく、仕方なく頭を下げた。

ヒッポグリフは警戒の色を見せ、前足を上げる。

 

「2人とも、少し下がれ……!」

 

ハグリッドが小声でそういうと、少し後ずさりする。どうやらあのヒッポグリフからしたら先程の位置すらパーソナルスペース内だったようだ。

そしてようやくヒッポグリフもお辞儀の距離と角度を認めたのか自分も頭を下げた。

 

「よし、向こうも頭を下げたら触っても良いって事だ。ゆっくり近づくんだぞ?」

 

俺たちはゆっくり手を伸ばして近づく。そしてヒッポグリフの頬に触れた。

 

「ようやったぞ二人共!ようやった!」

 

拍手を送るハグリッド。スリザリン生以外はわざわざポッターの名前呼びで拍手を送る。

だが俺たちはそれすら気にならない程に初めて触れた魔法動物の感触と達成感に酔いしれていた。

 

「ザック……!」

「ああ」

 

ポッターと俺は頷き合う。すると

 

「お前さん達を背中に乗せてくれると思うぞ?」

 

ノッシノッシやってきたハグリッドが俺たちをつまみ上げると、ヒッポグリフの背中に無理矢理乗せられた。

 

「羽根は引っこ抜かない様に、嫌がるからな」

「ちょっ!?ハグ────!」

 

そりゃ!っとハグリッドがヒッポグリフのお尻を叩くと、ヒッポグリフはヒヒーンと声を上げて走り出した。そして、

 

「「うわぁぁぁ!」」

 

ヒッポグリフが翼を広げて空高く飛び上がった。ヒッポグリフにしがみつく俺たちは必死に振り落とされない様に掴まる。スピードに慣れてくると、俺は目を開いた。

 

「おお……!」

 

目の前に広がるのは空高くから見下ろすホグワーツ城。禁じられた森、きらきら太陽の光で輝く湖。

そしてヒッポグリフが高度を落とし、湖に近づいて行く。

輝く水面を景色に猛スピードで滑空する気持ち良さはこれまでの悩みやらなんやらを消し飛ばすには十分だった。

 

再び生徒たちがいる地点に戻って来ると、ハグリッドが俺たちを下ろしてくれた。

 

「どうだった2人とも?」

「最高だよ!こんな体験は生まれて初めてだ!ね、ザック!」

 

ポッターが俺に問いかける。

……まぁ

 

「まぁまぁ……かな」

「ザックも楽しかったって!」

「そりゃあ良かった」

 

俺たちの無事帰還と反応を見て、生徒たちが押し寄せた。次々体験していく生徒たちの中、1人だけ反応が違う者がいた。

 

「ふん、ラミレスはともかくポッターにも出来るんだ。僕に出来ないはずがない。こんな危険でも何でもない奴を撫でることなんてな。そうだろう?醜いデカブツ君?」

 

ニヤニヤ笑うマルフォイはズンズンとヒッポグリフの元に歩いて行く。その瞬間だった。ヒッポグリフの目が光ると前脚を高く上げ、マルフォイに向かって振り下ろしたのだ。

 

「うわぁぁぁ!殺される!」

「いかん!」

 

ハグリッドが急いでマルフォイの前まで来るとヒッポグリフを宥める。

 

「殺された……僕、殺された……!僕死んだ……!」

「死にゃせん!ただの切り傷だ!ポピーならすぐ治してくれる!そ、そうだ、こいつを医務室に連れて行かにゃならん!お、お前さんらは動くんじゃねぇぞ!」

 

ハグリッドはマルフォイを抱え上げると城に向かって歩き出した。

そんな中、パーキンソンが泣きながら叫び声をあげた。

 

「あんな教師、すぐにクビにすべきよ!」

「マルフォイが悪いんだ!ハグリッドの話を聞いていなかったからだ!」

 

パーキンソンの言葉にうんうんと頷く大半のスリザリン生とその言葉にすぐさま反論するグリフィンドール生達。

俺もグリーングラスも溜め息を吐くと、パーキンソンが俺のところにやって来た。

 

「ザックもそう思うわよね!?」

 

凄い勢いで迫って来るパーキンソン。

正直今回はマルフォイを庇いきれそうにないんだが。

 

「ザック。ドラコの所にいこ?」

「……そうだな。もう授業どころじゃないしな」

 

俺とグリーングラスはパーキンソンを無視して城に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室に着くとマルフォイは口笛を吹きながらベッドに横たわっていた。

 

「ラミレスにグリーングラス!作戦は上手く行ったぞ!これであいつは────いてててて!」

「何が作戦成功なの!?危うく死んじゃう所だったんだよ!?」

 

グリーングラスがマルフォイの頬を抓り上げる。グリーングラスの目には涙が浮かんでおり、それを見たマルフォイは俯く。

 

「その……悪かった。心配かけて」

「こういう無茶な事はもうしないでね」

 

マルフォイは頷くと。マダム・ポンフリーがやってきて、俺たちは医務室から追い出された。

午後の授業を欠席し、夕食の時間には包帯姿のマルフォイがやって来た。

 

「お待たせ」

「包帯ってお前────」

「ああ……!可哀想なドラコ!まだ傷は痛む?」

 

突然マルフォイの隣に座り出したパーキンソンに俺もグリーングラスも当のマルフォイすらも驚く。パーキンソンはこれまたやたらと甲高い猫なで声でマルフォイの腕に触れる。

 

「パ、パンジー?どうしたの……?」

 

パーキンソンはグリーングラスを見るとニヤリと笑ってみせると、値踏みをするようにグリーングラスと俺を見ると、

 

「ダフネとザックって、もしかして付き合ってるのー?」

「は?」

「ちょ、ちょっと!いきなりなんてこと言い出すのよ!?そんな訳ないでしょ!」

 

グリーングラスはパーキンソンの言葉に激しく否定すると、パーキンソンは甲高い笑い声をあげると

 

「そっかー!私、てっきり2人は付き合ってるんだと思ってたわ〜。ねぇ、ドラコ?」

「……え、いや、僕は別に」

 

突然話を振られたマルフォイは少し驚いて言葉を濁した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の魔術に対する防衛術の時間。

教室にはすでに生徒達が集っており、授業の準備をしていた。

俺たちは窓際の席に腰掛けると、丁度いいタイミングでルーピンが入室して来る。

 

「やあ、皆。せっかく準備してくれていたのをすまないんだが、今日は実地訓練なんだ。だから教科書は必要ない。杖だけ持って私に着いておいで」

 

ルーピンはそう言うと生徒達を手招きし、教室の外へと出た。

教科書を用いない実地訓練など、今までの防衛術の授業ではやった事もない。

あえて言うなら去年ロックハートが行った決闘クラブやピクシー妖精の放流がそれに当たるが、今回はそれとも違う気がした。どちらにせよ面白そうだ。そう思い生徒達は杖だけを持ってルーピンの後に続いた。

彼の先導の下、入ったのは教員室だ。

 

「さあ、お入り」

 

ルーピンはドアを開け、皆を中に入るように指示する。

あらかじめ机と椅子を端に寄せていたのだろう。教員室の中は酷く殺風景であり、真ん中にポツンと大きな洋箪笥が置いてあるのみだった。

明らかに風景にそぐわない洋箪笥。取ってつけたように置かれたそれはよく見ると、ガタガタと動いているのが分かる。

 

「怖がらなくていい。中に真似妖怪『ボガート』が入っているだけだ」

 

ルーピンは何でも無いかのように言うが、これは結構怖い事だ。初の授業でいきなり妖怪と対峙するなど、今までの防衛術では有り得なかった事だからだ。すでにグリフィンドールが同じ授業を受けているとはいえ、それでも不安は尽きない。

そんな生徒達の不安を消すように、柔らかくルーピンが言う。

 

「ボガートは狭くて暗い所を好む。洋箪笥、ベッドの下の隙間、ロッカーの中。さて、最初の問題だ。真似妖怪ボガートとは一体何だと思う?」

「僕達が怖いと思った物に化けるんでしょう? 簡単な問題です」

 

ルーピンの問いに、得意気な顔でマルフォイが答える。

流石にグリフィンドールの後、と言う事でまね妖怪の事を知っている生徒はかなり多い。

 

「彼の言っていた通りだ。付け足すことがあるとすれば……こいつは僕らの一番怖いものに変身する性質故に、今僕らはこいつより遥かに有利な立場にあることだ。ザックはどういうことか分かるかい?」

 

柔和な笑みを浮かべるルーピン。俺は特に考えること無く、思った事を口にする。

 

「俺達の人数が多い為、何に化けたらいいか分からないからですね。いくら一番怖いものに変身できるといっても、この部屋の人間全てが恐れる物になることは不可能ですから」

「その通り! ボガートに対抗するには、まず複数人でいるのが一番有効だ。それだけでこいつは何に変身したらいいか分からなくなる。でもいつも複数人でいられるとは限らないのも事実だ。そんな時の呪文は、リディクラス(馬鹿馬鹿しい)。精神力も大切なことだが、こいつをやっつけるのは『笑い』なんだ。この呪文を唱えながら、君達が滑稽だと思えるものを思い浮かべる。そうすればこいつをやっつけることが出来る」

「では、化ける前のボガートはどんな姿をしているんですか?」

「それがね、ダフネ。実は誰にもわからないんだ。本当のボガートがどんな姿なのか、誰も見た者はいない。外に出すとたちまち私達が怖いと思う物に姿を変えてしまうからね」

 

グリーングラスの質問に答えると、他の生徒達の緊張をほぐすように、なるべく柔らかい声色で話しながらルーピンは説明を続ける。

 

「もう一度説明しよう。ボガートを倒す呪文は簡単だ。しかしこれは精神力がいる。こいつをやっつけるのは『笑い』だ。君達はボガートに、君達が滑稽だと思える姿を取らせる必要がある。さて、まずは杖なしで練習しようか。私の後に続いて言ってごらん。リディクラス(馬鹿馬鹿しい)!」

リディクラス(馬鹿馬鹿しい)!」

 

ルーピンに言われ、全員が一斉に唱える。

その合唱にルーピンが満足そうに微笑み、解説を進めた。

 

「うん、とても上手だ。でも呪文だけでは十分じゃない。そうだな……マリア、来てくれるかい?」

「は、はい!」

 

まずは実際にチュートリアルをしてみなければ生徒達もコツが掴めないだろう。その為の一番手としてルーピンが呼んだのは小柄な女子生徒のマリア・ ハワードだ。色々問題点の多いスリザリンの生徒の中では比較的常識人な部類に入る彼女は、この寮の良心と呼べる存在だったりする。というのも、彼女は完全な純血の家系という訳ではなく母親がマグルで父親が魔法使いの半純血という事を以前グリーングラスから教えて貰った事がある。純血主義の多いスリザリンで彼女が孤立していないのは彼女の人の良さも関係しているのだろう。

 

「君が一番怖いものは何だい?」

「ええと、バジリスクです」

 

バジリスク。その名を聞いて何人かの生徒がギクリとしたのは無理もない事だろう。

何せその怪物は今から1年前、学校全体を恐怖に陥れ、何人もの犠牲者を生み出したのだ。ハワードは言った通り完全な純血では無い事で自分もいつ襲われるか分からない恐ろしさが恐怖心として残って今も残っているようだ。

 

「ふむ、バジリスクか。確かに恐ろしいよね。ところでマリア、君は好きな動物はいるかい?」

「えっと……子ブタでしょうか」

「よし、ならこうしよう。まずあの箪笥を開けるとボガートが出て来てバジリスクになるね。君はそこで杖を上げて唱えるんだ。リディクラス(馬鹿馬鹿しい)ってね。その時、君は子ブタの可愛らしい姿に意識を集中させる。するとバジリスクの恐ろしい姿は子ブタの愛らしい姿に早変わりしてしまうはずだ。マリアが上手くやっつけたら、次は君達の所に真似妖怪が向かって行くだろう。

皆、考えてくれるかい。何が一番怖いのか、そしてどうしたらその姿を可笑しな姿に出来るのか」

 

その言葉に、部屋が静かになった。

恐らくはそれぞれ、最も恐れる物を考えているのだろう。俺もまた、他の生徒同様に考える。自分が最も恐れる物は一体何なのか、と。

だが、恐れる物も色々なベクトルの物がある為にいざこれと呼べるものが出てこなかった。

誰もが恐れるヴォルデモートも既に2回も対峙して、相手が弱っていたこともあり恐れる程のものでもない。

吸魂鬼(ディメンター)のような姿や特性が恐ろしい物も今の守護霊の呪文が使える俺には通じない。

 

ならば何が出てくる?

 

「次は、ザック!」

 

リズムのいい愉快な音楽を流しながらテンポよく進んでいき、俺の番になった。

俺はボガートの前に出ると、ボガートはその姿を変え、俺の中で最も恐ろしいと感じる物へと変化した。




次回もお楽しみに

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