ハリー・ポッターと呪われし末裔   作:九空揺愛

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ちょっと詰め込みすぎた第4話ですが、どうぞ。


ハロウィーン

授業は寮ごとにやる物と合同でやる物に分けられている。合同でやる場合はハッフルパフとレイブンクロー、グリフィンドールとスリザリンでやるのだが、これがまたなんとも言えない。スリザリンとグリフィンドールは代々犬猿の仲でお互いに睨みをきかせあっていた。……ただ一人を除いて。

 

「ザック!」

 

明るい声でやってくる丸メガネの少年。言わずもがなハリー・ポッターである。

その隣には散りばめられたそばかすと赤毛の少年が一緒だった。笑顔のポッターとは反対に少年は警戒しているように顔を強ばらせている。

 

「魔法薬学は合同でしょ?ザックも一緒に─────」

「おやおや、僕の誘いを断ったハリー・ポッターが僕の友人(・・)に何か用かな?」

 

ポッターの言葉を遮りドラコ・マルフォイが俺の前に躍り出てきた。

 

「お前には関係ないし、話す気もないぞマルフォイ。僕はザックと話をしているんだ。そこをどけよ」

「嫌だね。彼はスリザリンだ。グリフィンドールの君たちなんかと授業を受けるわけないだろ」

「おい。待─────」

「やめなよハリー!奴らはスリザリンなんだよ。僕らと気が合うなんて思えないよ」

「でもロン!ザックはマルフォイ達とは違う!彼は本当は優しいんだ」

「僕にはそうは見えなかったけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法薬学はスリザリンの寮長でもあるセブルス・スネイプの授業なだけあり、教室は地下室にある。地下室に入ると黒板に座席表が書いてあり、どこに座るのか決まっているようだ。

俺は指定された席に行くと、隣には既に誰か来ていた。

 

「「あ……」」

 

隣の席に居たのは昨晩少し話をしたダフネ・.グリーングラスだった。グリーングラスは俺を見るなりまたムッとした表情を作ってそっぽを向く。

だからどうしたと俺は特に気にせずに隣に座ると、今日の授業の内容を確認していた。今日はおできを治す薬らしい。なんじゃそりゃと思いながらも、初回の授業などこんなものかとペラペラと他のページをめくった。

 

「この授業では箒に乗ったり杖を振り回すようなバカげたことはしない。魔法薬調剤における微妙な科学と、厳密なる芸術を授ける。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の内を這い回る液体が宿す繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。諸君らがこの見事さを真に理解出来るとは期待していない。ただし、諸君らが我輩の教えてきたこれまでのウスノロよりもマシであったのなら……、伝授してやろう。名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする。そういう業を……」

 

突然教室の扉が開いたかと思うと、1人の男性が入ってきた。顔は土気色で、大きな鉤鼻が目に付く。 髪は黒くねっとりとしており、肩まである真ん中分け。

瞳の色も黒で、重たげな漆黒のローブを纏っている。

そう、スネイプ先生だ。

スネイプは生徒達を見渡すと、突然止まった。そして「ポッター!」と突然叫び、ポッターに教鞭を突きつけた。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

突然指名されたポッターはその質問に答える事が出来ず目を白黒させる。その隣で女子生徒が勢いよく手を挙げていたが、スネイプは見えていないのか続ける。

 

「分からぬか。ではベゾアール石を見付けて来いと言われたらどこを探すかね?」

「……わかりません」

 

隣に座る女子生徒は再び勢いよく手を挙げる。今度は少し横に振ってアピールするもスネイプは完全に無視だ。

 

「愚かな……有名なだけではどうにもならんらしい。因みにこれの答えを知る者はいるかね?」

 

再び生徒達を見渡す。手が上がった例の女子生徒を完全にスルーすると、スネイプと俺の目が合う。

 

「ミスター・ラミレス。君は答えられるかね?それとも君もポッター同様名前だけなのか?」

 

試すように向けられた目。俺は溜め息を一つ吐くと

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを混ぜたならばそれは『生ける屍の水薬』と呼ばれる強力な眠り薬となります」

「正解だミスター・ラミレス。だが、まだ足りん。『生ける屍の水薬』には他にも必要な物があるが答えられるか?」

「はい。刻んだカノコソウの根、催眠豆の汁を加える必要があります」

「よろしい……。君はポッターとは違い、名前だけではないようだ。スリザリンに5点やろう」

 

早速得点を得た。スリザリン生達は嬉しそうに俺の方を見て、グリフィンドール生達は恨めしそうに俺を見ていた。

 

「では続けてミスター・ラミレス。ベゾアール石を見付けて来いと言われたらどこを探すかね?む、分かるのか?ミス・グリーングラス」

 

スネイプが言うと、俺は隣に座る女子生徒がスッと手を挙げている事に気付いた。

 

「はい先生。ベゾアール石は山羊の胃から取り出す物で石と言いつつ見た目は萎びた内臓のようであり、大抵の解毒剤の主成分となります」

「ふむ。君もしっかり予習をしてきているようだな。よろしい、スリザリンに更に5点やろう」

 

グリーングラスは席に座る時、フッとドヤ顔を俺にしてくる。

 

「ところで諸君、何故今のをノートに書き取らんのだ?」

 

その言葉で一斉に羽ペンと羊皮紙を取り出す音が響いた。

授業が始まると、これがまた酷いぐらいのスリザリン贔屓の授業だった。二人一組でおできを治す薬を作るのだが、評価はグリフィンドールには厳しめに、スリザリンは比較的甘めに評価を下していた。

俺とグリーングラスのペアに関しては満点を言い渡される程。そのグリーングラスだが、これが中々出来るやつらしく、最初のベゾアール石の解説もそうなのだが、かなり努力家のようで自分の教科書にスネイプの口頭でのポイントを書き込み、要点をメモにきっちり纏めていた。どうやらただの純血主義者なだけではないらしい。

そんな事を思ってると、スネイプの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日は僕が待ち続けていた飛行訓練の授業だよ。いやまあ、僕に訓練なんか必要かという疑問はあるんだがね。僕は幼い頃から箒に乗っていてね。よく近所の皆と一緒にクィディッチをしたものさ。勿論僕はいつでもエースでシーカーさ。スニッチを見付けるのはいつも僕が最初だったし、ブラッジャーに当たった事だって一度もない」

 

初回の授業から数日経ったある日の夕食の時間、マルフォイは得意げに俺に話しかけてくる。俺は適当に返事しつつ生ハムのシーザーサラダを食していた。

 

「────だから……、って君たち聞いているのか?」

「ん?ああ……」

「ドラコは凄いねー」

 

どうやら俺だけでなくグリーングラスも聞かされていたようだ。まぁ俺もだが彼女もしっかり聞いているわけではなさそうだったが。グリーングラスとは、初日の時ほど今は険悪な感じではない。時間が解決したのか、それともマルフォイの自慢話に辟易してる同士だからなのかは分からないが、とにかく今の俺と彼女は挨拶を交わす程度にはなっただろう。

明日は飛行訓練か……。俺はあの日の事を思い出す。

俺があの時さっさと箒に乗っていたら。

そんなもしもの事を思ってもあの時間は永遠に来ることは無いのにな。

 

「どうしたの?」

「いや……なんでもない」

 

グリーングラスが俺の雰囲気に気が付いたのか声を掛けてきた。こんなくだらない事を話す気にはならないし、話した所でどうしようもない。

 

「あれは去年の事だったかな。僕が箒に乗って空高く飛び上がるとそこに偶然マグルのヘリコプターが迫ってきたんだ。

マグルってのはあんなでかい鉄の箱を用意しないと空を飛べない不自由な生き物らしいね。僕はそのヘリコプターを咄嗟に避けた! まさにぶつかる寸前、ギリギリってやつさ。

ぶつかるかと思ったかだって?ははっ、まさか。動きが止まって見えたね!……ってどうした?」

「なんでもない。聞いてないが、どうぞ続けて」

「いや、聞いてないのかよ」

 

癖のある性格のマルフォイも、共に生活しているうちに今のような中々のツッコミを入れるようになったり、勉学が絶望的なクラップ、ゴイルがテストで追試にならないように根気よく勉強を教えていたりと、なんだかんだ仲間には情に厚いのだろう。(相性が悪いのかグリフィンドール達とは現在も揉め事を起こしている)

 

「とにかく!明日は僕の飛行技術を披露してあげるよ!」

「はいはいドラコは凄いねー」

「……」

「真面目に聞けよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルフォイの待ちに待った翌日。

午前中、ニンニク臭い座学中心の『闇の魔術に対する防衛術』を受け終え、昼食を食べると外に移動した。この飛行訓練の授業もグリフィンドールと合同のようで、グリフィンドール生達も集まっていた。そして、飛行訓練の担当であるマダム・フーチ先生がやってくる。

 

「何をボヤボヤしているんですか!みんな箒の傍に立って!さあ早く!!」

 

言われて、慌てて生徒達は箒の側にスタンバイした。

 

「右手を箒の上に突き出して、そして『上がれ』と言う!」

 

マダム・フーチの言葉に合わせて全員が「上がれ!」と叫びだした。俺は一言上がれと言うと、直ぐにすぽっと手に収まった。こんなもんかと周りを見渡すと、意外なことに出来てる生徒は少なかった。昨日あれだけ自慢話をしていたマルフォイは流石だが、ポッターも一発で手に納まっていた。一方グリーングラスやグリフィンドールの秀才、ハーマイオニー・グレンジャーは中々思うように行ってないようでたった。やはりいつだったかマルフォイの言うようにセンスや才能がものを言うのだろうか。

全員が何とか箒を手にした後マダム・フーチは箒の正しい乗り方をレクチャーし、生徒達の列を回って握り方のチェックをしていく。

 

「さあ私が笛を吹いたら地面を強く蹴ってください。箒はグラつかないように押さえ、2メートルくらい浮上してから少し前屈みになってすぐに降りて来て下さい。ではいきますよ。1、2の……」

「えっあ、あ、ああああっ!」

 

マダム・フーチが笛を吹く前に、物凄い速度で浮上するネビル・ロングボトムが見えた。恐らくは緊張感や皆に置いて行かれる恐怖やらでパニックを起こしてしまったのだろう。

 

「こらロングボトム!戻ってきなさいっ!」

 

マダム・フーチの制止の声も、ロングボトムは箒をどうコントロールすればいいか分からないのか青い顔をして箒に揺さぶられていた。10メートル程度だろうか飛び上がると、遂に箒を手放して真っ逆さまに落ちて行った。

 

「腕の骨が折れた……!」

「人間には215本の骨があるのよ、1本くらい何よ!」

 

なんとも言えない励まし方をするマダム・フーチ。そのままロングボトムを背負うと、こちらに言葉をかけた。

 

「私は念のためロングボトムを医務室に連れていきます!あなたたちは箒に乗らずに待機するように!さもないとクィディッチの「ク」の字を言う前に、ホグワーツから出て行ってもらいますからね!」

 

それを聞いて俺は溜め息を吐いた。すると、

 

「なるほど、ロングボトムのばあさんが送ってきた思い出し玉が赤くなっていたのは、箒の降り方を忘れてしまっていたからのようだな」

「おい返せよマルフォイ!」

 

ロングボトムの持っていた思い出し玉をマルフォイが拾い上げると、ポッターが食ってかかった。

 

「嫌だね、ロングボトム自身に見つけさせる」

 

マルフォイは箒に捕まるとユラユラと飛び上がる。思い出し玉を隠す場所をわざわざ口に出しながらポッターに、ここまで来るように煽る。煽られるままポッターは箒に乗るとマルフォイの所まで飛び上がった。そのまま一悶着あると、城の中からミネルバ・マクゴナガル先生がやって来た。そしてポッターを連れて城の中に戻って行く。

 

「見たかいラミレス!これでポッターはおしまいだね」

「……どうだろうな」

 

嬉しそうに話しかけてくるマルフォイに適当に返すとマダム・フーチが戻ってきた。グレンジャーがマダム・フーチに事情を説明すると、ポッターは一応公欠扱いで授業が再開された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く不愉快だ!あのポッターが1年生でクィディッチのシーカーだと!?しかもマクゴナガルの特別推薦だと!?あの時の僕のやり取りで退学どころか推薦の手助けしてしまったのかと思うと反吐が出るよ!」

 

後ろでマルフォイが悪態付きながら俺は大広間に向かっていた。あの初回の飛行訓練の授業から程なくしてポッターがクィディッチという魔法使いのスポーツのシーカーというポジションに抜擢されたという話が広まった。

そしてそんなこんなで今日は10月31日のハロウィーンだ。城中の装飾もジャック・

オー・ランタンがあちこちに飾られていたり、飲み物がかぼちゃジュースだったりとホグワーツは完全にハロウィーン一色だった。

 

「そう言えばダフネがいないね」

「ダフネだったら魔法薬学の授業で使った薬品を片付けてから来るって。先に食べよ」

 

グリーングラスのルームメイトのパーキンソンとブルストロードがわちゃわちゃそんな会話をしていた。そう言えばいつも隣に座っていたグリーングラスが居なかった事に今気づく。とはいえ、二人が言っていた通りなら、直ぐに戻ってくるだろうし特に気にしてなかっ────

 

「トロールが……!トロールが地下に……!お、お知らせしなくてはと思って」

 

突然大広間に飛び込んできたクィレルは息も絶え絶えに、ダンブルドアの席まで駆け寄ると、そう残して気絶してしまった。

それを見た大広間の生徒達は大混乱とパニックを起こして、絶叫や悲鳴を上げる。

 

「静まれぇーい!」

 

ダンブルドアの一喝により、我を取り戻した生徒達はパッと静かになった。

 

「監督生はすぐさま自分の寮の生徒を引率して帰すのじゃ」

 

ダンブルドアが監督生達に語りかけると、それぞれの寮の監督生達が立ち上がり1年生から順番に大広間から出る。

 

「そう言えばダフネが居いのちょっと不味いんじゃない?」

「でもどうすることも出来ないし……」

 

パーキンソンとブルストロードがこそこそとそんな話をしていた。俺は溜め息を一つ吐くと、前を歩いていたマルフォイの襟首を掴む。その瞬間マルフォイが「ぐえっ」っと声を上げるが俺は無視した。

 

「おい、グリーングラスを探しに行くぞ」

「は!?探すってどこに……?」

「地下室だ」

 

地下室という言葉を聞くと、マルフォイは震え上がった。

 

「あいつはこの事を知らない。何なら連れて寮に戻れば大丈夫だろう」

「ふ、ふざけんな……!なんで僕が……!」

「寮の仲間が死ぬのは嫌だろう?」

 

俺の言葉にマルフォイは喚くのをやめ、顔中恐怖を貼り付けていたがゆっくり頷いた。

 

「それじゃあ行くぞ」

「お、おお……」

 

俺とマルフォイはこっそりと列から出て地下室に走っていった。




ここのマルフォイ、何だかんだ良い奴かもしれない……
次回もお楽しみに!
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