この素晴らしい現代風カズめぐをリレー小説で!   作:勾玉

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この学舎(まなびや)で邂逅を!【執筆者:めむみん】

蜂の巣状雲によって朝日が見え隠れしているにも関わらず、涼しいと感じることはなく、日陰に入ろうとも気休め程度にしか暑さが変わらない。そんな温暖湿潤な日本の気候を改めて知覚し、帰ってきたことを再度噛み締めながら一人、登校する俺だったが、教室に入るなり嫌な現実に遭遇してしまった。

教室内はある話題で持ち切りだったのだ。

 

「ねえねえ、あの話聞いた?」

「聞いた聞いた。転校生の話でしょ?」

「楽しみよね」

「どんな子なんだろ?」

 

「なあ聞いたか?今度の転校生全員女子らしいぞ」

「嗚呼、しかも全員美人らしい。昨日部活の帰りに見たって奴がいたんだ」

「おお!マジか!その全員が同じクラスって俺達ついてるな」

「だよな。ホームルームが楽しみだぜ」

 

男女問わず皆、教室に増えた机を見ながら、新たな転校生に思いを馳せている。

そんな中、昨日までの昂りは消え、俺は独り憂鬱な気分だった。

 

「どうした和真?徹夜か?お前なら飛び付きそうな話なのに珍しいな」

「・・・何でもない。ちょっと心配事があるだけだ」

 

ちょっと所じゃないが、今言っても仕方ない。

俺の気持ちを汲み取ってくれたのか、みんな俺から少し離れた場所に移動してくれた。

自分で望んでおきながらどうなんだと言われるかもしれないが、あいつらと一緒に学校生活するのが不安になってきている。しかも同じクラスってのが一番の悩みどころ。ホームルームで知り合いの俺に注目が集まるのは目に見えてる。

だがしかし、クラスが別の方が何するか分からなくて怖いから、まだマシと思うしかない。

 

「みんな席に着けー、ちょっと早いがホームルーム始めるから他のクラスの奴は悪いが出てってくれ」

 

副担任が入って来ると同時に騒がしかった教室は静まり返り、視線が一点に集まる。

 

「ええー、全員知っていると思うが今日このクラスに転校生が来ることになった」

 

先生からの正式発表に教室だけに留まらず廊下までもが湧いていた。

そんな歓喜に溢れている中それを盛り上げるかの如くチャイムが鳴り響いた。

 

「いま担任と校長先生が対応しているから、もう少しで来るだろう。あと、廊下のお前らさっさと自分の教室に戻れ!さっきのチャイムは聞こえてただろ!」

 

先生から叱られて、蜘蛛の子を散らすように去って行く他クラスの奴らを見つつ、今から起こるイベントに皆焦がれていた。

一方、俺は如何にして自分へのダメージを減らせるかの考察を始めた。

 

「コホン。話を戻すが転校生は三人。三人共に女子で、みんな留学生だから文化の違いで笑ったりせず、普通に接してあげるんだぞ」

 

多分めぐみんのことだろう。

クラスのみんなは当たり前だと言った感じだが、断言出来る。みんな軽く引くなり嗤うと。

まあ、その時は先生がフォローするだろうけど。

 

「先生!その子達って日本語は話せるんですか?」

「それについては問題ない。全員流暢な日本語を話せるからな」

 

副担任が謎のドヤ顔で言った言葉で皆の期待が更に高まっていた。

この期待が裏切られた時の反応が楽しみだな。

おい、誰だゲスマとか言った奴!

 

「そろそろ三人が来るようだからみんな静かに待ってろよ」

 

副担任はそう言って教室を立ち去り、教室には静寂が訪れる。そして、数分後また扉が開かれ、担任とあの三人が入って来た。

 

「さっき説明があったと思うけど、この三人が転校して来た子達よ。今から自己紹介して貰うから、何を質問するか考えておいてね」

 

三人の登場にクラス全体がどよめいていた。皆、一様に可愛いだの、綺麗だの、モデルさんみたいだのと呟いている。それを目の当たりにした三人は俺の方をドヤ顔で見て来たが無視しておこう。と言うよりも皆が言うように制服姿が眩しくて見られないと言った方が正しいかもしれない。

 

「それじゃあアクアさんからお願いします」

 

よりによってアクアが一番手か。

五十音順だから仕方ないとは言え一番危険な奴だし最後にした方が・・・いや、めぐみんよりマシか。

・・・何か視線を感じる。まさかなと思いつつめぐみんを見るとこちらを軽く睨み付けていた。あいつ読心術って言うスキル持ってないだろうな?

 

「ご紹介に預けためが、アクアよ!これからよろしくね!よっ『花鳥風月』!」

 

早速ボロを出す駄女神。

そこは預かりましただろ。それにあいつ絶対女神って言おうとしたよな。でも言い切った方が良かったと思う。みんなメガ・アクアが名前だと思ってるし。とは言え宴会芸でみんな盛り上がってるから成功と言えるだろう。

 

「ええっと、私の名はダクネス。迷惑をかけるだろうがよろしく頼む」

 

比較的にマシと言うか普通だった。

さっきはちょっと笑いが起こってたけど、今はそれがない。

まあ、ダクネスだから普通なのが通常運転かもな。

何も無いのも味気ないから、ここでララティーナって叫んでみるのもありかもしれないが、周りから変な目で見られそうだから辞めておこう。

後はめぐみんだけだが、ちょっと変な空気にはなる位で問題はないだろう。

 

「我が名はめぐみん!」

 

予想通りの中二病全開の自己紹介に教室がざわつき始めた。

分かるよその気持ち。俺も初めは変なガキに絡まれたって思ってたし。

 

「紅魔族随一の天才にして、やがてカズマの妻となる者!」

 

俺の予想した通り紅魔族特有の名乗りに笑いが起ころうと・・・・・・え?

ちょっ、あいついきなり何言ってんの!?馬鹿なの?めっちゃ俺見られてんだけど!恥ずかしくて心臓破裂しそうなんですけど!

 

「皆さんよろしくお願いします。一応言っておきますがめぐみんは本名なので恵ではありません」

 

そんなことどうでもいいからこの状況なんとかしろよ!

なんでめぐみんはいつも予想の斜めを行くやらかしを俺を巻き込んでやるんだ!

アクアとダクネスも何か言ってくれればいいのに、アクアは腹抱えて笑ってるし、ダクネスはなんか俺の方を羨ましそうに見てるし何なんだよ。担任も面白そうに青春だなあって呟いてるだけだし、味方不在だ。

 

「あの、どうして私はこんなに見られているのでしょうか?恥ずかしいのですが」

 

無自覚!?

今ので余計に信憑性が増したのかさっきとは違い男子からは殺気立った、女子からは好奇の視線が一斉に向けられた。

めぐみんはと言うと未だに理解してないのか困惑して、隣にいたダクネスに質問している。

俺は急な展開に対応しきれず反射的に首を横に振ることしか出来なかった。

 

「今、和真って言ったよな」

「そうだけど偶然同じ名前なだけだって、カズマって名前は珍しくもないし、和真も首を振ってるからないだろ」

「だよな。睨み付けちまったけど、あの和真がロリコンな訳ないよな」

「「「ははははは!」」」

 

こいつら終わったな。

確かにタイプの女性像とはかけ離れてはいるけど、もうちょっと考えてくれ。

それにみんな釣られて笑ってるし、ダメだこれ。

頼むからこれ以上めぐみんを怒らすようなこと言うなよ。

 

「それに、和真なんかがこんな美少女と付き合ってるってだけでも有り得ない話だわ」

「それな。おい、和真も黙って無いでなんか言えよ」

 

俺の願いも虚しく、めぐみんの気に触ることを言いやがった。

めぐみんの前で俺を侮辱して、無事だった奴は少なくともあのろくでもない世界には居ない。

だから俺はもうこいつらを助けないと決めた。そしてこの件には一切関わらないと。

なぜなら俺に気を取られて気付いていないがめぐみんの沸点は既に超えている。

 

「おい、私が妻だとカズマがロリコン呼ばわりされる理由を聞こうじゃないか!」

 

急に声を荒らげためぐみんに全員が戦慄した。

恐怖からか振り返らずに、小刻みに震えていた。

 

「それにカズマなんかがとはなんですか!カズマは凄いんですよ!まおぐっ!?ちょっとダクネス何をするんですか!離してください!今から如何にカズマがカッコイイかを語ろうとしているのですよ!」

 

ナイスダクネス!もっとやれ、てかもうめぐみんを離すな。

あいつは危険だ。

今も魔王って言いかけてたし、公衆の面前で惚気け話しようとするしこっちの身が持たない。正直、魔王と戦ってた時の方がまだゆとりがあった気がする。

 

「カズマの気持ちも考えるんだ。ここは私を罵って耐えてくれ!」

「嫌です!私はやりますよ!言ってカズマの凄さを教えるんです!」

「仲間からの攻撃!あー、何て最高なシチュエーションなんだ!」

 

ダクネスを一瞬でも味方だと思ってしまった俺が馬鹿だった。

くっ、こうなったらアクアが最後のと・・・

 

「スースースー」

 

こいつ!

笑い転げたまま寝てやがる!

よくこの状況で寝ていられるな。逆に尊敬するわ。

 

「「「・・・・・え?」」」

 

ヤドン並に反応に遅れて、やっと声を発したみんなだった。

未だに繰り広げられるめぐみんとダクネスの攻防を見つつ、俺を一定周期で見ている。

 

「なあ、あの二人の言ってるカズマって和真のことじゃないよな?」

 

一人が確認したことで視線がまた俺一人に集まる。

 

「そうだと嬉しいんだがな」

 

自嘲気味に俺が笑いながら言うと同時にみんなから血の気が消えていった。

そしてみんなの視線が再び前へ移る。

するとさっきまで空気だった担任が二人を止めて、立っていた。

 

「えーと、みんな気になることはあると思うけど、それは休み時間か放課後に聴いてね。はい、今日は特に連絡事項はないのでショートは終わりです!」

 

担任はそれだけ告げると逃げるように教室から出て行き、ダクネスも寝ているアクアを連れて退出。教室は未だに怒りが鎮まっていないめぐみんとそれに恐怖を感じている俺達だけとなった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「か、和真。悪かった。さっきのは謝るから彼女を何とかしてくれって」

「嫌だ。まずあいつは彼女ではないから俺は動かないぞ」

 

めぐみんは彼女なんて言う程度の低い相手ではない。

強いて言うなら婚約者とかその辺だろう。でも言ったら後で茶化されるから黙っておこう。てか俺とめぐみんの今の関係ってどう説明するのが正解なんだろう?こっちじゃあまだ結婚出来る歳じゃないし。分からないな。

 

「そこをなんとか・・・」

 

隣の加藤が急に喋らなくなった。

加藤の顔は俺の後ろに鬼でもいるかのように青白くなっていった。

その変化が気になり振り向くとさっきまで教卓の隣にいたはずのめぐみんが後ろに居た。

 

「カズマ。・・・少し話があります。着いてきてください」

「わ、分かった」

 

いつも以上に穏やかな口調に恐怖を感じ、視線を集めながら大人しくめぐみんの後を追い廊下へ出た。

廊下までは数歩しかないと言うのに延々と感じられ、表情が見えないことで更に不安を高める。

俺が扉を閉めると同時に、涙を浮かべためぐみんが振り向いて言った。

 

「彼女じゃないって、カズマは私のことをどう思っているのですか?昨日の話やこれまでのはなんだったんですか!」

「いや、そう言う意味じゃなくて、めぐみんは許嫁って言うか婚約者みたいな関係だから彼女ではないってことだ」

 

確かに誤解を与える言い方だったかもしれないが、付き合ってないのは事実だから仕方ない。

でもこうなっためぐみんってあまり話を聞かないしどうすればいいんだ?

ふとめぐみんを見るとさっきまで辛そうな表情だったのに、赤面したまま動かなくなっているのに気付いた。

 

「どうした?顔真っ赤だぞ?大丈夫か?」

「・・・」

 

確認してみるもぼーっとしているだけで返答はない。めぐみんが惚け始めた理由が分からない。

一つだけ言えるのは今のめぐみんがすげえ可愛いって事なんだが、なんと言うか俺の危険センサーが凄く反応してる。

具体的に言うと聞かれちゃ不味い系の話を聞かれた時のあれだ。

俺さっきなに言ったっけ?

確かめぐみんが勘違いして怒ってたから訂正しようとし・・・

 

「い、今。婚約者って聞こえたよね?」

「ああ、許嫁とも言ってた」

 

そうそう、許嫁と婚約者だ。って俺はなに言ってんだ!めぐみんに馬鹿だろとか言ってたのに何してんだ俺!

やばい俺もめぐみん見たく耳まで赤くなってるのが分かる。

これあれだ。

このまま卒業した後もいじられるやつだわ。

二人して照れて動かなくなってるわけだし。

 

「か、カズマ!めぐみんもちょうど良かった。アクアが目を離した隙に居なくなって今探しているの、だ、が・・・何が、いや、なんでもない失礼した」

 

ダクネスが走って来た音にも気付かない程に俺らは動揺していたようだ。って冷静に振り返ってる場合じゃない。

 

「ダクネス待てって!アクアが居ないってどういうことだ?」

「・・・自己紹介のあと眠ったアクアを連れ残った手続きを済ませていたのだが、全てが終わり、アクアの寝ていたソファーを見ると既に居なくてな。今手の空いていた先生方と探している所なのだ」

「そうですか。私達も探しましょう。人数が多い方が早く見つかるでしょう」

 

いつの間にか復活していためぐみん。俺ならまだ止まったままだと思う。流石魔性のめぐみんと言った所か。

 

「うむ、向こう側はまだ誰も捜索していないだろうから二人は連絡階段の方を頼む」

「分かった」

「分かりました」

 

こうして学校生活初日の朝から波乱の幕開けとなった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

あれから十数分後、アクアは無事に見つかった。発見者は保健部の先生で、保健室に戻るとアクアの寝息が聞こえたらしい。

その後直ぐに叩き起され、一限目が終わる頃にはしっかり席に着いて勉強していた。

他の授業も滞りなく終わり夏休み前最後の登校日が終わろうとしており、朝の事件以外何も起こらずに帰れると思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「アーちゃんのメガってファミリーネームはアーちゃんの国では普通なの?」

「めが?私の名前はアクア。そう、ただのアクアよ」

 

ブルータス(アクア)お前もか!

また越えちゃいけない壁越えやがって。

次はダクネスがやったりしないよな?

 

「え?でも自己紹介の時めがって付けてたよね?」

「あ、あれは女神って言っちゃいそうになったよね」

 

流石駄女神。ありのまま言いやがった。

 

「あははは、なにそれウケる!」

「いつものくせなんちゃってテヘペロ」

「アクアちゃん面白すぎ」

 

あいつ妙に馴染んでるな。

年齢不詳の女神はJKと友達ってなんかラノベにありそう。

 

「ララティーナちゃんって貴族の出って本当なの?」

「どどうしてその名前を!?」

 

ララティーナが睨んでくるがお門違いだ。

話したのはアクア。俺は見てただけで何もしていない。

 

「いやまあ、そうなのだが。だからと言って気遣いはいらないのだが、その、ララティーナ呼びは出来ればしないで欲しい」

「OK!でもララティーナって可愛くていい名前だと思うよね」

「だよねー。私なら逆にララティーナって名乗りたいくらいだわ」

 

ダクネスが何故嫌がるのかに気付かず、傷口に塩を塗る行為を悪意なく行う女子たち。

さすがにダクネスが可哀想に思えてきた。とは言え止める気はないけど。

 

「ねえねえ、めぐちゃんって佐藤君の何処が好きなの?」

「まずは優しい所ですね。他にも私のことをよく理解してくれているとか色々ありますよ」

「その色々ってなんなの?」

「そうですね。料理が上手いとか、名前がカッコイイとか、頭の回転が・・・」

 

くっ、女子の打ち解けの早さが恨めしい。

めぐみんも何故堂々と語れるんだよ。俺が今どういう状況に立たされてるか理解してやってるよな?

あと、名前がカッコイイは褒められてる気がしない。

 

「おい、和真。俺らは悲しいぞ。こんな身近に、しかも重鎮に裏切り者が居たとはな」

 

俺を囲んでいる奴らのリーダーが言った。

いつものゲーム仲間集団なのだが、非リアの集まりでもあり、この状況は所謂、弾劾裁判的なあれだ。

一応ゲームの中じゃ幹部だし、他の奴らは俺の教え子でもあるから、こいつしか俺に物言えない面もある。とは言え完璧な上下関係がある訳でもなく、階級社会ではないことだけは事実だ。

 

「別に裏切ったつもりはないんだって。ただ言いづらかったと言うか」

「そこなんだよ!正直に言ってくれればそれはそれで良かったんだ」

 

え?言っても大丈夫だったの?いつもリア充爆発しろって言ってるくせに?

 

「俺達も祝ってやったって言うのに、如何してなんだ。それにいつも胸が一番とか言ってたお前が如何してなんだ」

 

こいつら。

なんていい奴らなんだ。

でも最後のはめぐみんに丸聞こえだから覚悟しといた方がいい。

てか今のでクラスの女子から蔑まれた目で見られてんだけど、どうしてくれんの?みんな黙っちゃって恥ずいんですけど!あとめぐみんが睨み付けてきて今にも爆裂しそうなんですけど!どう落とし前付けてくれようか?

 

「とまあ、私と言う者が有りながらあんなことを言ってるカスマですが、それでもああ言う馬鹿な所も含めて私はカズマが好きです」

 

ふう、大丈夫だった。じゃねえ!

何公衆の面前で告白みたいなことしてんのこいつ!

してやったり顔だなおい。

 

「ひゅーひゅー、アツアツのバカップルね!」

 

アクアめ!

あいつ帰ったら警察に未成年飲酒で突き出してやろうか。

 

「羨ましい限りだな。カズマその位置を代わってくれ」

 

こんな時に恥ずい思いをしてるのを羨ましがるなよ!百合的な方に勘違いされるぞ!

 

「駄目です!カズマは渡しませんよダクネス」

 

ここにもややこしいやつが!

今の話の何処から俺の取り合いに発展するんだ!恥ずかしいから辞めてくれ!

 

「そう言われて、食い下がる訳が無いだろう。さあ、来いめぐみん!」

「ええ、いいでしょう。どちらがカズマに相応しいか勝負です。我がライバルダクネス!」

 

おい、ゆんゆんが可哀想だろ。

はあ。

もうこいつらが何しようがどうでも良くなってきた。一周回って悟ってる感じで。

 

「このコップを見ててね。ここに種を入れて、念じると、ほら出来たわ!バカップルが!」

 

原理は分からないが種から出てきた芽が急成長して、俺とめぐみんぽい二人が出来た。

アクアの宴会芸って毎回思うけど、どうやってんだろ?流石宴会芸の女神って所か。

バカップルって言ったぶんは、帰ったら昨日あいつの買ったアイス貰っておこう。

 

「アーちゃん、アンコール!」

「アクアさん、アンコール!」

「アクア様!もう一度お願いします!」

 

今変なのが居た気がするが気の所為だよな?

 

「・・・和真。そのなんだ。お前の知り合いって賑やかだな。それとお前のかのじゃなくて婚約者すげえな」

「・・・・・・・・・なあ、一緒に帰ろうぜ」

「お、おう」

 

この場から去りたかった俺は最後までアクアの芸にもダクネスとめぐみんのバトルにも行かなかったリーダーと帰ることにした。

リーダーは察して何も聴かずに着いてきてくれる。

やっぱり持つべきは友だな。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

リーダーと別れ一人帰路につき、夕食を何にするか考えていると見覚えのある奴がいた。

 

「いつもありがとね。これちょっとしたお礼よ」

「いえ、これは仕事なのでお礼とかは頂けないですよ」

 

何とも真面目な配達員。

そして、それに動じないおばさん。

 

「いいのよ。これは気持ちだからね。気にしないの」

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 

おばさんにみかんを渡され流れで受け取ってしまう銀髪のハーフヒューマン。

そしてそれを録画する俺。

すると銀髪の配達員はこちらに気付き、慌ててみかんを返し、猛スピードで走ってきた。

反射的に逃げた俺の先には運悪く工事中の看板が立っていた。

逃げるのは諦め潜伏スキルで隠れた。

 

「おかしいな?ここに入っていったと思ったのに。こうなったら夜に忍び込んで、データを消すしか」

「クリス久しぶりだな。元気してたか」

 

あぶねえ。もし勝手にスマホ見られたら寝顔撮ってるのがバレる所だった。

 

「・・・ねえ、確認だけど見られると不味いものがその中にあるの?あとさっきの動画消しておいてね」

「いやだなあ、俺にそんなものある訳ないだろ。で何してんだ?配達員なんかして。動画についてはもうダクネスに送っちょっ!やめろ!俺のスマホ割っても送った事実は変わらな、やめ、やめろおおおおお!」

 

何でこんなに疲れなきゃいけないんだ。帰ったら補習という名の授業までの課題を済ませようとしていたのにやる気が失せた。と言うか夕飯も作る気なくしたしLINEしとこ。

 

「いきなり何すんだよ。冗談だって、無駄に疲れて気力無くなったわ」

「なっ!元はと言えばキミが動画撮ってたからだよね!」

 

何を言い出すかと思えば責任転嫁。アクアみたいだな。

クリスってこういう所があるから、あの事実を知った時のギャップが凄いんだよな。

 

「それを是が非でも消さなきゃならない状況をつくったのは誰なんだよ?」

「そ、それは・・・」

「まあ、そんなことはおいといて、如何して配達員なんかしてるんだ?」

 

良くぞ聞いてくれましたって顔をしているクリス。

なんかムカついて来たな。本当にダクネスにさっきの動画送ってやろうか。

 

「実はカズマくん達をこっちに送った時に、って自分から聴いたんだから最後まで聞きなよ!」

 

嫌な予感がした俺は瞬時に耳を塞いだ。

どうせまたあれさせられるのは目に見えてる。この法治国家日本で捕まったら普通の生活なんて出来なくなると言っても過言じゃない。

 

「嫌です。俺は日本人です。犯罪はしませんし、加担もしません。ではこれで」

「ちょっと待って別に頼み事はしないから待って!」

「ホントか?」

 

俺の嫌な予感が外れるのは珍しい。

引き留める為の嘘だったらダクネスにバラそう。

 

「大丈夫だよ。私がここに来た理由はキミたちの監視のようなものだから気にしないで。後は・・・」

「監視ってまさか俺らの家には盗聴器が」

「ち、違うよ!人聞きの悪い事言わないでさ。ただ魔法を使ってしまった時の後処理が必要だから派遣されてるだけだよ」

 

何となく読めた。

要はアクアかめぐみんが暴走した時の為の保険みたいなもんだろう。

 

「分かった。クリスの仕事が増えないようにあいつらにちゃんと注意しておくよ」

「・・・今のところキミが一番あたしを煩わせてるんだけどな」

「何言ってんだ?俺は何もしてないし、今のこれはお前の所為だろ」

 

こっちで魔法を使うのは家ぐらいだし、見られてないはずだ。文句を言われる筋合いはない。

 

「はぁ、じゃあ聞くけど、昨日の三限目、エアコンが故障した時何したか覚えてる?」

「何って暑くなってきたからフリーズで涼を取ってたけどそれがどうかしたか?」

 

特に問題行為もなかったはずだ。

クリスは何が言いたいんだ?

 

「それが問題なんだけど」

「・・・あっ、慣れ過ぎて魔法使ってる感覚なかった。悪い」

 

これは悪いことをしたな。まさかここまで魔法に慣れてしまっているとは自分でも驚きを隠せない。

向こうに戻ったらやらかした分だけ手伝おう。

 

「分かって貰えればそれで十分かな。まだ配達物もあるしもう行くね」

 

クリスはそう告げると返事も聞かずに去っていった。

さてと、俺も帰るか。

通知によると今日はカレーらしい。

辛いもの食べてからアイス食べるって通な食い方もありだな。そうだ、昨日食べられなかったチョコモナカジャンボとみんなのアイス買って帰るか。

 

この時の俺は今日以上の面倒事が起こるなど考えもしていなかった。

 

 




リレー小説のセカンドランナーを務めるめむみんです!
明らかにレベルダウンしていて申し訳ないです。前回よりはカズめぐが少し増えた感じになりましたかね?

何とか起承転結の承を作り終えましたが、あとのお二人に丸投げな終わり方になりすみません。

終わってから改めて思うのは私の場違い感が凄いって事ですかね笑
憧れの先輩方との共同作業程、緊張するものはないかなと思います。

読者の皆様方、三話以降も是非よろしくお願いします。

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