万里花の惚れさせる宣言を聞いた後のデートについてだが、あまり長く続かなかった。
どういうわけかというと、宣言の
彼女の家の事情なので、詳しく内容は聞かなかった。
というのは建前で、正直に言うとタイミングが良かった。とも言う。
万里花の告白を受けて、その後のデートを滞りなく過ごせる自信が無かったからだ。
休日を1つ挟んで登校日。
何時ものようにコンビニで朝飯を買い、学校に向かっている途中で面倒な奴に見つかった。
「おうおう、蓮君よォ! 美少女とのデートはどうだった!?」
何と表現して良いのやら。
健二が見たこともない形相でこちらを睨んで来た。
「…………楽しかったよ」
変に誤魔化すと、余計な事まで聞かれそうなので、正直に答えた。
「普通に感想言ってんじゃねぇよ! 羨ましいぞ!」
強引に首に手を掛けながら、
……正直に言えばこうだし、誤魔化したら、何であんな美少女と遊びに行った感想がそれなんだよぉ! みたいな感じで絡まれる気がする。
どっちにしろ絡まれるのか……。
今まで登校時間が被ったことは2、3回しか無かったというのに、今日に限って鉢合わせするとは。
……まさか待っていたわけではあるまいな。
「どこまでした? やった? 何もなかった?」
……うぜぇ。
「……手は繋いだ」
「ほう。……感触は? 初めて異性と手を繋いだ感想は? 手汗かいたか?」
…………。
「……なぁ、そろそろぶん殴って良い?」
「おいおい、俺と蓮の仲だろ! これくらい聞いたくら、ぺふっ!?」
軽くぺち。と音が出る程度の勢いで裏拳を叩き込み、健二の拘束から逃れることに成功する。
そして少し距離を取った。
「おい! 鼻に当たってたら鼻血出るところだったぞ!」
「大丈夫出てない。当たったとしてもそんな勢いでは殴ってないわ!」
頬をちょっと叩いただけでうるさい男だ……。
……いや、もしかしたら顔に何か傷でもあったのだろうか……?
もしそうだったとしたら、少し悪いことした気分になる。
「俺は深く傷付いた。それによって謝罪代わりの恋愛話を所望する」
……うん。特に問題なさそうだ。
「桐崎さんレベルの拳喰らいたい?」
「大変申し訳ありませんでした」
健二は道端だというのに、膝を地面に着け、頭を下げようとした。
ので、俺は肩を押さえつけて頭を下げるのを阻止した。
「こんな衆人の目の中でやめなさい」
「……わ、悪かった。つい興奮してた」
……気持ち悪いッ!?
当事者よりもテンションを上げているのではないかこの男。
もしこいつに恋人が出来たら、相手をするのは大変そうだ……。
……いや、意外と聞きたがりなだけで、話すことはしないタイプかもしれないな。
「で、結局のところ付き合ったのか?」
やはり気になるのはそこか。
……健二にはここも誤魔化さないで話しておこう。
「保留にして貰った」
「……は?」
だよな……。
その反応は予想がつく物だった。
「どういう事だよ連」
「……彼女に告白して貰った。で、その返事に迷ってたら保留でも良いって提案してくれたんだよ……」
改めて口に出して言うと、どれだけ酷い事をしているのか……。
凄い罪悪感がわき出てて来る。
「はー……。蓮殿は優柔不断だったでござるか……」
「うっせ」
自覚はありますよー! だっ。
「告白されたなら付き合えば良いのに。橘さんのこと嫌いじゃないんだろ?」
「ああ。嫌いじゃない。だけどこれと言って好きって言えるような事が無かった」
というより、あの告白の返事が出来る程の好きが無かった。だろうか。
「何言ってんのお前。あんな美人で可愛くて性格も良さそうな子のどこが好きじゃないんだ!?」
「……健二。お前は美人なので好きです。って告白するか? 性格が良いところが好きです。で告白するのか?」
健二の憤りはわからないでもない。
でも俺の場合、付き合う
「いや、そうは言わないな。その場合なら単純に好きって言うか」
「そんな薄っぺらい返事は出来なかったんだよ。もっと、理由が欲しいというか……」
「へぇ……。それだけ橘さんの告白が凄かったってことか?」
……今日一番のニヤけ顔で、健二が尋ねて来た。
「………………教えない」
「なっ!? それはズルいぞ!」
再び覆い被さって来ようとする健二をかわし、小走りに移行する……!
こんな道端で
「あっ! 逃げる気だな!? もっとズルいぞ!!」
「ばーか! 逃げるに決まってるだろばーか! こんな所でお前の相手なんかしてられるかばーか!」
ばーか! ばーか!
「何ィ! 馬鹿って言ったな3回も! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!」
「言い訳は地獄で聞くぜぇ!」
道を歩いている人たちに、怪訝そうな表情で見られながら、俺と健二の追いかけっこは学校に着くまで続いた。
俺はこの後、朝飯を食べる時間も確保しなければいけないので、早く着いたのは良い事と言えば良いのだが……。
「おはようございます!」
「……おはよう」
「おはよう橘さん!」
朝のホームルームの前。
丁度朝飯を食べ終わった頃に、万里花がやって来て笑顔で挨拶をしてくれた。
……女の子に笑顔で挨拶されるだけで、胸の鼓動がうるさくなってしまうのは、相手が告白してくれた子だからだろうか?
流石に緊張で手足が震える程ではないが、緊張している事は間違いない。
緊張している事が顔に出ないように心掛ける。
……彼女には隠せてないような気もするが。
「橘さんは蓮に用事だよな? 俺少し離れてた方が良い系?」
気を利かせてくれているように聞こえるが、俺からしたら
「いえいえ。聞かれても大丈夫ですので、そのままでいらしてください」
万里花は健二にも笑顔で対応していた。
「……蓮! 女の子が普通に応対してくれてる! 感動!」
「……お前、普段どんな話し方してんの……?」
健二の容姿はとびきり優れている、という程ではないが見た目は良い方で、格好もだらしないわけではない。
であるため、初見で冷たい態度を取る女子はあまり居ないと思っていたのだが、違うのだろうか。
「誰かさんが広めてくれた噂のせいでな! このクラスは大丈夫だけど他クラスの女子だと悲鳴上げられたりするんだぞ! ぴぎゃあ! とかチョッケッピィ! とか!」
……コイツの中の女子は珍獣か何かか?
しかし健二の言う噂というのは、
「え? 噂ってゲーセンの格ゲーで10人抜きしたって奴? クラスの奴となら2回くらいしか話したことないんだが」
「ちょっと待って。元がそれ? それならどんだけ曲解されて伝わってるわけ――――」
「あ、あのー。申し訳ないのですがよろしいですか?」
困り顔の万里花が、おずおずといった感じで、話に割り込んできた。
……そうだった。馬鹿話してる場合じゃなかった……!
「ご、ごめん……」
「す、すみません橘さん! 俺ちょっと噂広めたやつ探してくる!」
ホームルームまであと5分もないのだが、健二は舞子集の元に走って行った。
噂と言えば情報通の舞子、ということなのだろう。
面白おかしく騒ぎ立てることが多い彼なので、意外と犯人は舞子かもしれない。
「……待たせたな万里花。何の用事だ?」
「はいっ。今日の放課後は何かご予定はございますか?」
……これはもしかして、万里花の父さんに会えるという事だろうか。
「……予定はないよ」
「そうですか! でしたら、少しお時間を頂いても良いですか?」
んー、万里花のこういう丁寧な口調は嫌いではないが、もうちょっと軽い感じで言ってくれた方が良いような。
「大丈夫だ。どこに行くんだ?」
「ちょっと屋上まで付き合って貰いたいのです」
「屋上まで……?」
父の件では無かったか……。
屋上に1人で行きたくないということだろうか?
……まぁ、一人で行くにはちょっと行き辛いかもしれないが、何で放課後なのだろう。
昼休みでは駄目な理由があるのだろうか。
「昼休みじゃ駄目なのか?」
「ちょっと、時間が欲しいもので。……忙しいですか?」
不安そうな顔をする万里花。
……良いって言ってるんだから、そんな不安そうな顔をしないで!
「そんなことないよ。放課後で大丈夫だ。…………あ。しまった、今日掃除当番だった。終わってからでも大丈夫か?」
何てタイミングの悪い当番だ。
「問題ありませんわ。先に行ってますので。では蓮様! また後程!」
微笑んでから万里花は席に戻って行った。
彼女が笑顔になると、ぱぁーっと光のエフェクトが見える気がする。
……絶対気のせいだけど。
さて、ホームルームまで後30秒も無いと思うが、……健二の姿がない。
「おーす。ホームルーム始めるぞー。……あれ、萩庭は休みか?」
「…………」
いや、さっきまでは居たんですけどね……?
「だぁ! くそ、逃げられた。……って、あれ?」
自分以外の生徒が席に着いていることに、健二が疑問の声を上げる。
と、そこで丁度学校の鐘が鳴った。
「はい、萩庭遅刻な。さっさと席に着け」
「ええええ!! キョーコ先生! 俺遅刻してない! 席から離れてただけじゃん!」
「はいはい。席に着いてないと遅刻よ。次からは気をつけなさい」
「そんな……。こんなのって無いよ……」
野太い声の男が言っても、ただ気持ち悪いだけである。
「……さっさと席に着けよ」
「んだと蓮コラァ!」
他のクラスまで噂の原因を調べに行っていた、哀れな健二は遅刻扱いにされてしまった。
彼は無遅刻無欠席というわけでもないので、今更1つ遅刻が増えたくらい、どうということは無いだろう。
「あるよ! 平常点下がるだろ!」
コイツにそんな概念があったとは……!!
「安心しろ。お前にそんなものは既にない」
「何で!? 差別!?」
「存在がマイナスだ」
「鬼ですかあんたは!」
「あー……。そこの2人静かにするように」
健二のせいで怒られてしまったので、会話を止めて黙る。
どうしてこう、この男と会話を始めると馬鹿みたいな会話になってしまうのか。
……奴が馬鹿だからか。
「蓮……。これが終わったら覚えてろよ……」
聞こえてるんだよなぁ……。
「覚悟ぉ……おおっ!?」
ホームルームが終わると、席に座ったまま勢い良く健二が振り向いた。
俺はそれと同時に、猫だましを炸裂させる!
……思った以上に音が出て、皆から注目されてしまった。恥ずかしい……。
「ふっ……。やるな、流石俺の積年のライバル……!」
「お前のそのすぐキャラが変わるの嫌いだけど好きじゃないよ」
「結局嫌いじゃねぇか!!」
うるさいばか。
話は変わるが、休み時間の万里花は意外と人気が高いようで、
「あれ、俺のことは無視ですか?」
女子とにこやかに談笑している姿が見える。
桐崎さんとの関係も悪くないようで、ここ数日の間に何度か普通に会話をしているのを目撃した。
「なぁ、お前の昼飯食って良い?」
「波動拳」
という名の、ただのパンチである。
「はふぅっ!?」
効果は抜群だっ!
「何しやがる!」
「昼飯取ろうとしてたから……」
「くそっ。否定できねぇ……!」
健二はそれで引き下がった。
それでいいのか……!
「んで? 愛しの橘さん見つめてどうしたんだ?」
み、見つめてないし!
「愛しのはやめろ。……ただ人気あるなーって思ってただけよ」
「そりゃあな。あの容姿であの性格だもん。それに転校生に加えてクラスに許婚がいるって話題性。人気にならない理由がねぇよ」
何だその、解説キャラみたいな言い方。
「…………改めて考えると、その相手が俺って――」
「ああ。橘さんが可哀想だ」
「可哀想!? どういう意味か予想つくけど言ってみろおらぁ!!」
「相手がお前で可哀想って意味だゴラァ!」
「ぶっ潰す!!」
拳と拳がぶつかり合う……!
「「……ッ!」」
地味に痛い……!
というか、何だこのノリは。
万里花が来る前から健二とふざけることはよくあったが、暴力に発展することはあまり無かったのに……。
…………そうだ!
きっと、俺に婚約者が出来て嫉妬してるんだ!
「分かってんじゃねぇかぁ!」
「ぎゃっふん!」
健二の打撃を受けて俺は机の上に沈んだ。
この借りはいつか倍にして返すぜぇ……(負け惜しみ)。
放課後。
俺は当番の掃除を終えて、屋上へと向かっていた。
放課後に屋上に行く生徒は少なく、屋上に向かうにつれて生徒の数が減っていく。
万里花は屋上で何の話をしたいのだろうか。
「――――」
「ん?」
屋上のドアを開けようとして、話し声が聞こえたので開けるのを途中で止めた。
珍しいことに先客がいたようで、ドアを少しだけ開けて屋上の様子を伺う。
放課後に屋上にいる生徒なんて、ほとんどが告白しているような物だから、鉢合わせになったら気まずい。
で、そうなると万里花はどこにいるんだ?
……まさか、万里花が誰かに告白されている!?
急いで扉を開けて屋上に踏み込む!
……が、告白の心配は杞憂に終わった。
屋上にいたのは万里花と、一条グループだったからだ。
『っ!』
「……驚かせたな。すまん……」
ドアの開閉音で、一斉に振り返られたので謝っておく。
何とも言えない表情をしている一条たちの顔を見ると、少しタイミングを間違えたように思える。
「……もうちょっと時間置いてから来た方が良かったか?」
「いえいえ! お掃除お疲れ様です蓮様!」
万里花の笑顔には、俺の
彼女の笑顔は何度見ても飽きない……。
「……で、俺は何で呼ばれたんだ? 昔話でもするのか?」
「っ!? 倉井も昔俺たちと会ってたのか!?」
一条が驚きながら聞き返してきた。
やはり話していたのは、昔に会っていた事だったらしい。
先日万里花と話した時は、昔話をするのを
「俺は一条たちには会ってない。……はずだ」
「はい。会ってませんね」
笑顔の万里花が首肯する。
「……何で呼んだの」
「一緒に、話を聞いて貰おうと思いまして」
……とりあえず、万里花の傍にいよう。
しかし、今まで一条たちとの関わりがほとんどなかったので、彼らと何を話して良いかわからない。
「どこまで話したんだ?」
「私たちが出会い、別れるまでですわ」
「全部じゃん!」
もう過去編終わってる!
え、鍵の事も話したの!?
「な、なぁ。橘は俺たちの鍵の約束の内容まで覚えてるのか?」
おずおずと、一条が尋ねた。
そこまでは話していなかったらしい。
「この鍵ですわね」
万里花がポケットから見慣れない鍵を取り出した。
その様子を見た桐崎さんと小野寺さんも鍵を取り出した。
……後は錠さえあれば、小野寺さんの鍵で開くんだけどなぁ(ネタバレ)。
「ええ。覚えていますわ。はっきりと。……一条さんは覚えておられないのですか?」
「あ、ああ。……その、覚えてるなら教えてくれないか? 俺たちの中で、誰がその約束の相手なのか」
万里花はその相手を言うのだろうか?
と、その前に一つ口を挟む。
「相手? あれ、約束って皆で再会しようって奴じゃないのか?」
『っ!?』
俺が万里花から聞いた話だと、全員の約束だったからな!
一条と何寺さんの鍵かは知らないが、一応突っ込みを入れておかないと、万里花に不審に思われるかもしれない。
万里花以外の3人は驚愕の表情でこちらを見ていた。
「という約束も含んでいます。が、もう1つ約束がありまして」
「約束好きだな」
「結婚の約束ですけどね」
「何か先日も聞いたことアルヨ!」
約束の内容言っちゃった!
あれ、一条は約束の内容は覚えているんだっけ?
このまま鍵の相手も教えちゃうのだろうか?
そうなると原作崩壊どころじゃないな。
……いや、俺が万里花の許婚の時点で崩壊してるけれども。
「……今は、まだ秘密です」
「えっ!? 何でだよ橘!」
「意地悪しないで教えてよ万里花!」
……桐崎さんが万里花のことを親しげに呼んでいる。
これも原作崩壊かぁ……。
仲が良さそうで良いと思いますよぉ!(テンション爆上げ)
「一条さんは鍵の相手が私だったらどうしますか? 千棘さんと別れて私と結婚しますか?」
「はぁっ!!?」
「え、ちょ、それ本当なの!」
一条と桐崎さんが悲鳴を上げる。
……俺も思わず心臓がキュッとなった。
「……どうでしょう。一条さんにとってはどちらが大切なのですか?
……ここで一条が答えを出すのは難しいだろう。
俺は原作の知識で一条と桐崎さんが偽の恋人だということを知っているが、向こうは俺が気付いていることに気が付いていない。
一条たちの事情もあるため、ここで昔の約束を優先するとは言えないだろう。
「俺は…………」
「一条さんの中で答えが決まったら、改めて私に尋ねて下さい。その時はお教えしますよ」
「…………わかった。その時は頼む」
葛藤の末、一条の出した答えは引き伸ばしだった。
俺も今の万里花との関係を引き伸ばしているようなものなので、少し親近感が沸いてしまった。
「……んで、これで昔話は終わりか? 帰って良い?」
「帰らないで下さいよ! 話はここからですよ!」
ふざけた事を言って、深刻な雰囲気を壊す。
俺の目的がわかっていたのか、万里花もすぐに切り返して来た。
しかし、ここからある話とは……?
『…………?』
一条たちも同様に疑問符が浮かび、全員で万里花の方を見つめる。
コホン、と万里花が一つ咳払いをしてから、
「えっと、ですね。……その、また一緒に仲良くなりたいのです。今度は蓮様も一緒に……」
『っ!?』
もじもじといった感じで、恥じらいの表情を浮かべながらそんな事を言った万里花の威力は凄まじいものがあった。
俺は今一人きりだったら、地面に頭を打ち付けていたことだろう。
一条は全力で顔を逸らしているが、赤面しているのは隠せていない。
かく言う俺も真っ赤なんですけどねっ!!
そんな男性陣とは違い、桐崎さんと小野寺さんは万里花に向かって駆け出し、
「勿論だよ万里花! ……初めまして、なんて言っちゃって本っ当にごめん!」
「私も……覚えてなくてごめんなさい。万里花ちゃん。……許してくれるなら、また友達になって欲しいな」
「……勿論ですわっ」
美少女3人が仲良さげに談笑する様を、俺と一条は外から眺めることしかできなかった。
あぁ~。仲良し
ん?
……ちょっと待って。
万里花は何て言った?
俺も一緒に、と言わなかったか?
…………冷静に考えてみよう。
まず、桐崎千棘。
金髪ハーフで実家がギャングのお嬢様。
容姿端麗、成績優秀、クラス人気ナンバー1の美少女。
小野寺小咲。
まず普通に可愛い。
天使のような優しさに加え、少し抜けてるところもあり親近感をわかせてくれるのもポイントが高い。
性格も控えめということもあり、惹かれる男子の数は多い。
橘万里花。
父が警視総監で実家は歴史のある武家の家系。
口調がイメージされたようなお嬢様そのもので、転校生でありクラスに許婚がいるという話題性。
人気が出ることは明白だろう。
一条楽。
凡矢理のヤクザ、集英組の一人息子にして桐崎さんの恋人(偽)でもある。
冴えない男子ランキング1位(非リア男子調べ)で、よく何でコイツにこんな美人の彼女がいるの? と聞かれる不憫な男子。
俺。
…………誰にも言えない回復チート持ち。
一人暮らし、どっちかっていうと貧乏。
そんなに容姿も優れてないと思う。
俺こんなグループに入るの?
「…………」
無言で一歩後ずさった。
……無理じゃない?
万里花のいう皆はここにいる4人のことだろうが、更にこの中に鶫清士郎、宮本るり、舞子集と言った面々が加わるのだ……!
美女集まり過ぎィ!!
こんなの俺は健二でも引っ張って来ないと間が持たなくて死ぬぅ……!
「…………? あんた何でそんなに下がってるの?」
「っ!!?」
桐崎さんに気付かれたっ。
ど、どう答えれば……!
「……気にしないでくれ。俺のことは道端の小石だとでも思ってくれれば……」
「いやいやいや、何でそんなに卑屈になってんだよ」
うわっ。一条まで参戦して来た!
「何でって、おま、一条? 一条! お前はあの会話の中に入っていけるのか!?」
「え? あー……そう言われると難しいけど」
俺たち男子には、あの美少女たちの輪に入っていける勇気などないのだっ。
「だろ! だから俺は道端の小石で良い。彼女たちの会話に入――――」
「蓮様?」
ふわり、と。
まるで当然と言わんばかりに、万里花が俺の隣に来て腕に抱きついていた。
「もしかして、放って置き過ぎて拗ねちゃいました?」
「拗ねてないし!」
「……今度、皆でどこかに出かけましょう」
仲を深めるためにもね、と万里花が目で語っていた。
「うぐっ……しかし」
「ね?」
「…………はい」
彼女の、まるで断られるとは思ってない眼差しに俺は屈し頭をたれた。
断れない自分がうらめしい――!
「完全に尻に敷かれてるわね」
「2人は付き合ってるのかな?」
「……聞いた話だと、まだ付き合ってないらしいぞ」
「ふーん。……何よその顔。もしかして羨ましいの?」
「はぁっ!? それどういう意味だよ――――」
みんな仲良し世界(*´ω`*)