自分の娘を召喚する(アインツベルンの場合)
聖杯戦争。一言で言えば魔術師達の盛大な殺し合い。
自分達が願いを叶えるためなら家族だろうが他人だろうが街だろうが巻き込む。そんな戦いだ。
そんな大勢を巻き込むほどの戦いを起こす理由だが、勝てばどんな願いでも叶える願望器があるからだろう。
「時間だ。始めよう」
そしてここにも1人、その聖杯戦争に身を投じようとする男がいた。その名を衛宮切嗣。魔術師殺しの異名を持つ魔術師らしくない魔術師。
そんな彼が此度聖杯戦争に参加するのは、聖杯戦争を始めるきっかけになった御三家のうちの一つアインツベルンのマスターに選ばれたからである。
「キリツグ、これが聖遺物よ」
「うん、ありがとうアイリ」
切嗣がアインツベルンのマスターになるにあたって、本来のマスターである予定だったアイリスフィールはその身を引くはずだった。しかし、少しでも夫の役に立ちたいとこうして聖杯戦争に参加する意志を見せるべく召喚の儀に馳せ参じていた。
妻からサーヴァントを召喚するための聖遺物の入った箱を受け取った切嗣はユーブスタクハイト──アインツベルンの当主の顔を見た。
「その中には最強のサーヴァントを呼び寄せるための聖遺物が入っている。君とそのサーヴァントの力が合わされば負けることはなかろう」
「感謝痛み入ります」
聖杯戦争に出るのは初めてで相手が御三家以外わからない状況で、アインツベルンの資金力で手に入れた聖遺物に自分というイレギュラー。これにより切嗣は多少なりとも聖杯戦争への勝ち筋を見出していた。だが、あくまで出だしで大きなアドバンテージを得てるに過ぎず、始まってみればどうなるかわからない。
(それでも僕は勝たなければならない)
彼は静かにメイド達と共に待つアイリスフィールとの間に出来た娘のことを思い浮かべた。この戦いに勝てば、自分の悲願が叶い、さらには自分の娘が迎えただろう悪夢を回避出来る。
愛娘を守るべく切嗣はサーヴァントを召喚する呪文を唱えた。
敷かれた魔法陣が光り、魔力の奔流が切嗣を包む。左手の甲が赤く光り切嗣が呪文を唱え終わると、魔法陣からは煙が立ちそこから人影が現れる。
「えっと、イリヤって言います。小学五年生です。一応……魔法少女、やってます、はい。うぅ、わたしなんかが役に立つのか分からないけど……でも精一杯、がんばります!」
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魔法陣から現れたのは聖杯戦争の舞台となる冬木市のとある小学校の制服に身を包んだのは白い糸のような髪をした女の子。
彼女は聖杯戦争のシステムにより呼び出されて、召喚サークル上に立つと目を閉じて誰かも分からぬマスターに向かって大きく頭を下げた。
そして、頭を下げられた彼女──イリヤスフィール・フォン・アインツベルンのマスターであり、彼女の父親にあたる衛宮切嗣の顔は破顔していた。
「い、イリヤ……?」
「嘘……」
それは生みの親であるアイリスフィールも同じで信じられないという顔で頭を下げたままの娘を見ていた。
「……あれ?パパとママの声がしたような……ってええええええええ!!!?」
聞き覚えのある声に顔を上げたイリヤは呆然と立ち尽くす両親を目にすると驚きのあまり叫んだ。
「ど、どういうこと!?なんでパパとママが!?」
「イリヤこそどうしてこんなところに!?」
普段クールぶっている切嗣もこれには素に戻り頭を抱えていた。その隅で、ユーブスタクハイトはこっそりと聖遺物の中身を確認する。彼の注文通りならかのアーサー王の聖剣の鞘が入ってるはずなのだが。
「なんだこれ」
箱に入っていたのは日本人の小さな女の子が好きそうなデザインをしたステッキだった。