実装されてないので躊躇ったけど、やっぱり書きたいよねってことで。
自分がマスターで自分がサーヴァント(衛宮士郎の場合)
冬のある日の夜、俺は死に至った。
言葉通りに俺は、衛宮士郎は、理想を叶えられずに息絶える……はずだった。
魔法なのか奇跡なのか、あるいは夢だったのか。貫かれたはずの傷は塞がっていて、残るのはひどい頭痛だった。
「一体何が…」
これまでの事を整理しよう。いつもの様に一成の頼みを終えて、それから慎二の頼みを聞いて…そしたら外から変な音が聞こえた。
最近は通り魔やガス漏れ事故やらで物騒だからと放課後の部活動は禁じられていて学校に残っている人間なんているはずなんてなかった。
俺は金属が撃ち合うような、地面にクレーターが空くような衝撃音の出処を目指して誰も居ないはずのグラウンドに向かった。
しかし、そこにはナニカが居た。視認できた人影は3つで1つは遠くて見えなかったけど紅紫色の服を着ていた。そして、残りの2つは……殺しあっていた。
1人は紅く煌々と輝く禍々しい槍を。
1人はこんな真冬だってのに肩やお腹が丸見えの布の面積が少ない衣装で、あいつのような黒い髪を靡かせていた。
「なんで…」
どうして殺しあっていたのか。それは分からない。けど、アイツらが普通じゃないってのは分かる。遠くで見てるだけだった俺が後ずさってしまう。殺気を向けられたわけでも、敵意を剥き出しにされたわけじゃないのに。
「……?………ッ!?」
カランコロンと家の結界が鳴り響く。敵意を持った誰かがやってきたと俺に告げていた。
次の瞬間、俺が仰向けに倒れていた床は無くなっていた。結界の音と共に反応しなければ俺は今頃床の下で血塗れになっていたことは簡単に想起できた。
「チッ……」
あからさまな舌打ちで俺を睨みつけたのはさっきのバケモノ。こうして近くで見るとよりバケモノに見える。顔はフードのようなものに覆われていてよくは見えないが、隆起した筋肉に獣のような手足。さらには人間にあるはずのない尻尾がそいつの非人間性を顕にしていた。
「なんなんだお前!!」
俺はたまらず叫んだ。2度も命を奪われそうになったのだ。これくらい聞くのは当然だ。
しかし、そいつはくだらなさそうに鼻を鳴らすと手に持つ禍々しい朱槍を俺に向けた。
「これから死ぬやつに知る意味は無い…」
刹那、そいつの床が崩れる。眼前に朱槍が迫り、俺はあらかじめ強化していたポスターで槍をいなそうとした。
「ッッ!!!グハッ!!!」
それは叶わず、俺はたったの一突きで扉と窓をぶち破って外に放たれた。身体中が悲鳴を上げる。痛いともがくよりも早く、奴が来る。逃げなければとその場から跳躍すると今度は地面が砕けて砂埃があがる。
「うっ!!」
風圧で吹き飛ばされた俺の身体は土蔵の壁に打ち付けられた。口の中には鉄のような味が広がり、意識が朦朧として奴の顔がハッキリとは見えない。けれど、奴が俺の事を見下すように見ているのは分かる。
「理解に苦しむな。人思いに痛みもなく殺してやろうとしてるのに何故避ける」
奴は俺に問いを投げた。殺すことは変わらないが言葉を交わそうとした。理由は分からない。もしここで追撃されていたら俺は確実に終わっていた。
「…まぁいい。次で終わりだ」
奴が足に力を込める。今度こそ終わる。
嫌だ。嫌だ。
奴が存在している。つまりあれは夢じゃなかった。
俺はあそこで殺された。奇跡的に一命を取り留めていたのだとしても、俺が助かる可能性なんて1ミリもなかった。
けれど今こうして心臓を動かして血が巡って呼吸を吐き出せているのは何故だ。
「誰かが助けてくれたんだ…」
「あぁ?」
誰がはわからない。けど、死ぬはずだった俺の命を救ってくれた。
誰かに助けられるのは初めてじゃない。今度は俺の番だ。俺が誰かを救うんだと、今を、これからを生きるために努力してきた。
なのに、なのに……。
「助けられて、恩も返せないまま死ぬなんて──絶対に嫌だっ!!!」
「……そうか」
奴はそう呟くと、地を蹴った。俺との距離が少しという間もなく縮まる。俺に出来るのはただ叫ぶだけか。いや、それで助かるなら救いなんて必要ない。
「潔く散れ」
「嫌だっ!!!」
奴の槍が俺の胸元へと向けられたその時、蔵の扉を開いて俺は斜めに飛んだ。肩に槍が掠る。痛い。けれども、これくらいで済むなら安いものだと俺は意識が途切れないように力強く歯をかんだ。
「うおぉぉぉおおおっ!!!!」
蔵に一つだけある人を殺めることが可能で、あの槍とも渡り合えそうな武器。死んだ親父が街を仕切る組長から譲り受けた日本刀。それを俺は奴に向けた。
「くだらん」
「かはっ……!!」
しかし、刀は届くことなく俺の身体は宙に舞った。槍ではなく、奴の堅牢な豪脚によって俺は再び壁に打ち付けられた。身体の血液と酸素が吐き出される。それに、もう既に限界だった背中の骨が今ので確実に逝ってしまった。
「……少しでも期待した俺が愚かだったか」
奴は吐き捨てるように言うと逃げられない俺の目の前に立つと槍を突き立てた。
「死ね」
今度こそ終わった。そう思った。
槍が胸に突き刺さるビジョンが見えた。右手で握った日本刀でそれを弾くのは俺には無理なように見えた。
咄嗟に瞳を閉じた俺は死を覚悟した。でも、その死は訪れることなく、火花が散るような音と共に死の恐怖は去っていった。
「なんだ、テメェ……」
その言葉が誰に向けたのか理解するのには少し時間がかかった。瞳を開ければ奴が何故か俺から距離を取っていた。
「なぜ動ける……!」
奴の言葉に疑問を持った
「…まぁいい」
それでも、身体が動くのなら。理屈は分からないが、あいつを引かせた。死からは免れた。けれども、まだ終わってない。
それを
「
セイバー
マスター 衛宮士郎
サーヴァント 千子村正(擬似憑依)
死に直面した衛宮士郎に藤村家より譲り受けた日本刀を媒介として、とあるサーヴァントが衛宮士郎の中に憑依した状態。本来であれば彼の体内に埋め込まれた聖遺物が呼応しサーヴァントを召喚するはずだったが、『誰かに助けられるのではなく、自らの力で現状を打破したい』という士郎の願いが叶えられた。その結果、とある世界線で士郎の身体を依り代とした英霊が彼の力となった。
バーサーカー
マスター バゼット・フラガ・マクレミッツ
サーヴァント クーフーリン・オルタ
バゼットが召喚するのは戦士として名高く、気前よく強敵との戦闘をこよなく楽しむクーフーリンであった。しかし、召喚したのは歪で殺意の塊のようなクーフーリンだった。けれども、それを良しとしたバゼットは彼と共に聖杯戦争に挑む。
なお、ランサーとして召喚していれば自身が聖杯戦争に参加出来ずに死んでいたのが、バーサーカーとして召喚したおかげでそれを免れている。なお、騙し討ちを狙っていた男は控えていた金色のアーチャーのおかげで死に至ってはないが多少なりとも傷は負った模様。
次回に凛と桜とイリヤを書ければなと。