突然だが、僕には日常的に心がけていることがある。すなわち、いつでも冷静であること。かの探偵に憧れた僕は、物事を俯瞰的に見て、適切な判断が出来るように日々努力している。
そう、例え遭遇した女の子がどんなにタイプであったとしても、至って冷静でなくてはならないのだ。気持ちを落ち着けて、理性的に、スマートに挨拶をしよう。
「ドアをくぐると、そこは美少女であった」
---理性が本能に敗北した瞬間であった。
あー。やらかした。美少女を前にして意味のわからない、そして主語のない台詞を言ってしまい、一拍遅れて僕は失態に気がついた。
目の前の少女は、幻想的で、儚げな印象であった。柔らかな銀髪の上の帽子がとても似合っている。これは理性を失っても仕方ない。僕は悪くない。そこまで考えて、少女が何か言おうとしていたので、思わず身を硬くする。
「ふふふ。面白い方ですね」
はい。案の定嫌われて...ん?なんて?
思ったより好意的な反応を受け取り、少しばかり戻ってきた理性を総動員して言葉を返す。
「いきなり変なことを言って申し訳ない。僕はDクラスの片桐 徹です」
「そんなにかしこまらなくても結構ですよ。私は坂柳 有栖と申します。片桐くん、ちなみにさっきの言葉は何かお聞きしても?」
全然よろしくないです。喉元まで出かかった言葉を飲み込み、観念して僕は言った。
「いや、坂柳さんがあまりにも可愛かったから、咄嗟に言葉が出てしまったんだよ」
「そ、そうですか...ありがとうございます?」
髪を指に巻き付け、頰を染めながら言う坂柳さん。何この可愛い生き物。僕は陶然することしかできない。そんな僕をよそに、坂柳さんは不意にこちらを向き---
「しかし、先程は上手く聞き取れませんでした。もう一度言っていただけませんか?」
と、獲物を見つけた肉食動物を彷彿とさせる笑顔で、そう言った。
拝啓、天国のおじいちゃん
幻想的な小動物風の美少女は、小悪魔的な肉食動物風の美少女でした。何なら僕が狩られる小動物でした。それでも僕は強く生きようと思うんだなぁ。
とおる
本格的に現実逃避を始めた思考の片隅で、僕は自分がパンドラの箱を開けてしまったことを実感していた。
「言ってくれないのですか?片桐くん、いえ、徹くんとお呼びしてもよろしいですね?私のことも有栖と呼んでくださいね」
「いや、いきなり名前は...」
「徹くん?」
「はい」
どうやら拒否権はないらしい。
「徹くん、連絡先を交換しましょう。ふふふ、今度一緒に遊びましょうね」
その遊びとは僕の想像する遊びで合っているのだろうか。僕は美少女の連絡先を知った喜びよりも数倍の恐怖を感じた。
さk..有栖さんとは長い付き合いになりそうな予感がした。そしておそらく彼女に振り回され、いじられ続けるだろうことも。そんな想像ことを想像し、そしてそれも案外悪くないと思ってしまう自分に心底呆れてしまう。
調子に乗って本日2回目の投稿です。おかしい...坂柳とのイチャイチャを書いてたはずなのにどうしてこうなった...
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