「散々な目にあった...」
有栖と別れてAクラスから出た僕は嘆息する。まったくもって恐ろしい人間だ。僕をいたぶりつつも、常にこちらを品定めするように見ていた。神崎君といい、この学校には頭の切れる人しかいないのか。
まだ登校時間には余裕があったが、各クラスに数人はいるようだ。先程の一幕を誰かに見られなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
そんなことを考えつつ、再びDクラスのドアを開ける。すでに仲良くなったらしい数人が談笑していた。当たり障りのない挨拶をし、自分の席につく。
席の隣の人物は誰かと見てみるとやけに表情が変わらない少年と、綺麗な黒髪を伸ばした少女が話をしていた。何やら良い雰囲気を醸し出しているようであるが、出来れば関わりたくないなどという会話が聞こえた。何があったのだこの2人には。そんな不思議な二人がとなりの生徒なのかと思っていると、こちらの方に少年が振り返ってきたので、慌てて挨拶をする。
「や、おはよう。僕は片桐 徹だよ。よろしくね」
「おはよう。オレは綾小路 清隆だ。あまり人と話すのは得意ではないが、よろしく頼む」
無表情でもなかなかにイケメンな綾小路君は、笑顔の威力が凄そうだな... と変な感想を抱きつつ、黒髪の少女にも声をかける。
「君もよろしくね。名前を教えてもらってもいい?」
「私に答える義務はあるかしら?」
明らかに会話を拒むような返事が返ってきた。なるほど。そっちがそういう気なら意地でも名前を聞き出してみせようではないか。手順は簡単だ。
「君のような妹は、さぞかし自慢できるだろうな」
「あなた...どこで兄さんを?」
よし、これで会話の取っ掛かりができた。ほら、とても簡単だろう?
「へえ、お兄さんがいるのか」
「...カマをかけたわね?でもどうして妹だと?」
「何となく、ただの勘だよ」
まあ、この少女はおそらく他人にも自分にも厳しいタイプだ。兄や姉と比較され、周囲から期待されて育った人間に多い。とはいえ、それを言ってもややこしくなりそうなので黙っておく。
「それで、勘が当たった賞品をいただいても?」
「...堀北鈴音よ。嫌いなタイプはあなたのような人間よ」
何はともあれ、記念すべきDクラス初の知り合いができたのだった。
生徒が次々と登校し、騒がしくなっていく教室で綾小路と雑談しているうちに始業のチャイムがクラスに鳴り響き、教室前方のドアから黒いスーツを着た女性が教室へと入ってきた。
それを見た生徒が着席すると、女性は咳払いをして話し始めた。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐江だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布はしてあるがな」
先生はそう言って学校のシステムについて説明していたが、僕は資料を読んでいたためほとんどを聞き流していた。現金として使える10万ポイントが支給されることには多少驚いたが、先程神崎君と話した推論に照らせば妥当だと言えるだろう。生徒の質を見極めるための国からの投資だと思えば合点が行く。
周りの生徒は10万ポイントに興奮し、使い道を話し合っているが、戸惑っている生徒も少なくない。僕もなるべく節約するべきだと考えている。10万ポイントが毎月変わらず支給される可能性など、0に等しいからだ。生徒を監視して査定し、支給するポイントを決めるようなシステムであれば、なかなかに過酷だ。事によれば人間関係にも影響するだろうが、この不可思議な学校ならやりかねない。
警戒を怠らないように自分に言い聞かせ、ぼくは入学式に出るべく準備をした。
地の文が少し多めです。原作の部分はかなりカットしました。賛否両論あると思いますが、皆さんのご要望をなるべく満たしたいと思いますので、ご意見、感想などお気軽にお願いします。