真・天地無用!~縁~   作:鵜飼 ひよこ。

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第106縁:でぇとってなんだっけ?

「やっぱり天候調整があると外出の時に便利だね。」

 

 擬似的な青空を見上げながら一路は笑う。

ナノマシンを用いて、大気の調節は自動で行われる。

天候操作もちょちょいのちょいだ。

勿論、降雨も必要なので(場合と所によっては雪も)その場合は事前の告知がされる。

よって、天気予報という、地球では曖昧なものは存在しない。

 

「何で、私がこんな・・・。」

 

そんな一路の横で、シアがぶつぶつと呟く。

納得がいかないとばかりに不満を述べるシアだが、その割にはクリーム色のワンピースに翠色のネックレス、小さな肩掛けのポーチ、そしてワンピースとお揃いの編み込みが入った紐のサンダル。

普段着と違った、いわゆるバッチリお出かけ着だ。

 

「その服、似合ってるよ。可愛いね。」

 

「ばっ?!バッカじゃないバッカじゃないバッカじゃない!」

 

 一路のふいの褒め言葉にまたまた赤面する。

 

「だから、3回も言わないでよ。本当に馬鹿なんじゃないかってヘコむから。」

 

 と、ここまでは普段通りに近いやりとりだ。

 

「・・・それで?一体何処に行こうっていうのよ?」

 

 デートという言葉に大混乱したまま、今の時間と自分の中で出来うる限りのオシャレをして、一路と外出・・・まではいいが、何故こんな事になったのか、シア自身未だに理解出来ないでいた。

そもそも、一路が何故デートを自分としようと思ったのか、それすら解らない。

自分とデートだなんて、どう考えても面白くないに決まっている。

 

「・・・何処に行こうか?」

 

「はぁっ?!」

 

 デート言ったまでは良かったが、一路としてもほぼノープランだった。

昼食とか、お茶とかのお店をいくつか考えているくらいである。

 

「今、また僕を馬鹿なんじゃないかとか思ってる目だよね、ソレ。」

 

「解ってるじゃない。」

 

「・・・それは褒めてるの?それとも貶して・・・るんだよね、やっぱ。仕方ないじゃないか、僕だって女性とデートなんて初めてなんだから。」

 

 では何故、そんな無謀というべき初デートをノープランで行おうと至ったのか。

それは"時間が限られている"からに他ならない。

NBが言ったおよそ二週間。

それが一路に与えられたここでの生活の残り時間だ。

その後の予定は何一つ立っていない。

地球に戻るのか、一旦こちらに戻ってくるのか。

なるべくなら、最終的には地球に戻ってこようとは思うが、そのまま地球に直行となった場合、気にかかる事が幾つかある。

その最たるものが、シアとの約束だ。

いつかは、自分の故郷に行ってみようという。

 

「そんなの・・・こっちだって初めてよ・・・。」

 

 一路の初めてのデート相手が自分。

そんな事を聞いて、シアは申し訳なくなってくる。

気の利いた話題も振れない、引きこもり気味で、こんなちんちくりんで可愛気のない(自分にだってその自覚はある)自分と人生初のデートだなんて・・・。

 

「まだお昼まで時間あるし・・・あ、そこでお茶でもしようか。」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 俯きがちになるシアの手を強引に掴んで、色とりどりのパラソルが立つオープンカフェに突入する。

 

「何飲もうか?あ、僕、この前の研修の手当が出たからお金出すよ。」

 

「何って言われても・・・そっちと同じでいい。席取っておくから。」

 

 強引な一路に少々の驚きと呆れをもって、シアはすごすごと空いている席を探しに行く。

 

(色々と突っ込みどころが多過ぎるのよ。)

 

 全くもってその通りで。けれど何時になく無いパターンの外出が楽しいのは、気のせいではないだろう。

昼前という半端な時間なせいか、そんなに混雑してなく、程なく空席を見つけられたシアは、ため息と共に席につく。

 

「一体、これからどうなるってのよ・・・。」

 

 男女間で行うデートというものの定義は、知識として理解していても、その中身の詳細や流れはよく解らない。

出来ることならば、これ以上驚く事がないと良いなと思う。

それと余り自分を"必要以上に連れ回す"のも。

 

「あれ?確かいっちーといた・・・。」

 

「?」

 

 席についてしばらく、背後から声をかけられた。

知り合いという知り合いは、ほとんどいないシアだが、一路の名を出されれば反応せざるを得なかった。

 

「あ・・・。」

 

 恐る恐る声をかけられた方に振り向くと、2人の女性が立っている。

知り合いのいないシアだったが、2人の顔には見覚えがあった。

確か、一路が怪我をした時に見舞いに来ていた・・・名前は・・・思い出せない。

 

「あぁ、やっぱりそうだ。」

 

 髪の長いお嬢様然とした女性と、活発的な雰囲気のある女性。

 

「アナタもここでお茶?良かったら私達と一緒に・・・?」

 

 相手の言葉がそこでふいに途切れる。

 

「シアさんお待たせ。まさかここにもあると思わなかったよ、タピオカ・・・?」

 

 シアを挟んで向かい合った女性と一路が固まる。

 

「いっちー?」

 

「エマリーとあーちゃん?」

 

 

 


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