真・天地無用!~縁~   作:鵜飼 ひよこ。

126 / 184
第126縁:馬に乗ってなくとも騎兵隊とはこれ如何に。

 互いのガーディアンを出しての再びの激突。

ナイフは2、3度打ち合っただけで折れた。

ガーディアンの防御力が相当なのだと容易に理解する。

今は再び最適化をして【拳】の文字が視界の隅に表示されている最中だ。

それに伴い、両腕・両足にエネルギー比率が重視され肥大化していた。

どれ程の時間が経過したかは一路には解らない。

だが、きっとそろそろだろうと思ってはいた。

 

『ぴんぽんぱんぽぇぇ~ん♪坊、お時間やでぇ~。聞こえってかぁ?撤退するで~。』

 

 

 なんとも間抜けなNBの声が艦内に響き渡る。

 

『あ、迷子になんなや~。』

 

「・・・そこまで子供じゃないってば。」

 

 これには苦笑せざるをえない。

 

「大胆だな。だが、わざわざ逃げると宣言されて、そう簡単に私が逃がすとでも?」

 

 アラドの言う通りだ。

そんな簡単に、はい、そうですかとはいかない。

ならば・・・。

 

「ケンオウキ・・・。」

 

 そう呟いただけで一路の意思を汲んで再び【堅】の防御態勢に切り替わる。

多少の悪手であろうと目を瞑って、ガーディアンの防御力を以てして強引にこの場を突破するしかない。

当然、アラドも一路のとろうとする行動の予想はついている。

蔑むような視線を寄越してきた。

 

『ほな、"3秒"で迎えが行くさかい、何かにしっかり掴まっときぃ~。』

 

「は?」

 

 今度は一路の間の抜けた声が漏れる。

3秒なんて今のNBのフレーズが言い終わるまでに過ぎてしまっているではないか。

つまり・・・。

 

 ドゴォォォォーンッ!

 

 金属がひしゃげる音と爆煙が二人の間に割って入る。

突然の、あまりに突然の事で・・・いや、予告はあったのだが、ほぼ過去形で言われた一路はよろめく。

 

「ども~おばんですぅ~。どちら様ですかぁ?檜山一路君の心の友と書いて心友の的田全と申しますぅ。あら、どうぞ。ほな、おおきに。ちゅーコトで助けに来たぜ、いっちー。」

 

 今日は何度驚かされただろう。

煙が晴れてそこに立っていたのは幻なんかではない。

正真正銘の・・・。

 

「全!」

 

 地球で別れたきりのクラスメイトだった。

 

「あーっ!こんなバッチくなって!誰だ、いっちーをこんなにしたヤツは!あ、アイツか!アイツだな?よぉーし、ブッ飛ばす!」

 

 ぐるぐると両腕をほぐすように振り回す全。

 

「全、何かキャラ変わってない?」

 

「あったりまえだろ?一人で何をコソコソやってるかと思えば、こんなトコまで来やがって。」

 

 ジロリと咎められるように睨まれれば縮こまってしまう。

 

「・・・ごめん、でも、僕は・・・。」

 

 一路にだって一路の、決して譲れない言い分がある。

 

「大体だなぁ、なんで仲間ハズレにすっかな。オレ様傷ついちゃったよ?んで、どりあえず助け、いるよな?」

 

 そう言われてしまっては一路も返す言葉がない。

勿論、嬉しくてだ。

思わず涙ぐみそうになりながら頷くだけ。

 

「よし、なら走れ。オレが乗ってきた船か、自分の船、どっちでもいいから乗り込め。オレの仲間にはいっちーの話をしてあっから。」

 

 それだけ言うと、あっちへ行けとでも言うようにひらひらと手を振る。

その仕草を見て一路は猛然と走り出した。

 

「さて、と。」

 

 一路の後ろ姿を視界の端におさめたまま、全は相手を見据える。

 

「すぐに飛びかかって来ないトコを見ると、なかなかに冷静だな、兄ちゃんよ。」

 

「あれだけ自分から牽制しておいてよく言う。」

 

「感動の対面にしたかったもんでね。だが!」

 

 ぱんっと手のひらを拳で打つ。

 

「いっちーをボコボコにした落とし前、つけさせてもらうぜ。大体、荒事にはこれっぽちも向いてないヤツなんだからな。全く無茶したもんだよ、ホント。」

 

 だからこそ全は一路を気に入っている。

無茶でも無謀でもここまでやって来た。

それをやってのけるだけの意志力を、純粋さを、優しさを。

 

「つーワケでこっからは"本職"の出番だぜ、"海賊"さん。」

 

 どばっちりだろうが八つ当たりだろうが、ブチのめさなきゃ気がすまないとばかりに言い放つ。

そう本来、こんな血なまぐさい事柄は、自分達の領分なのだ。

だから、全も一路と同じで自分のやるべき事をやるだけ。

心友としても、戦士としても。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。