互いのガーディアンを出しての再びの激突。
ナイフは2、3度打ち合っただけで折れた。
ガーディアンの防御力が相当なのだと容易に理解する。
今は再び最適化をして【拳】の文字が視界の隅に表示されている最中だ。
それに伴い、両腕・両足にエネルギー比率が重視され肥大化していた。
どれ程の時間が経過したかは一路には解らない。
だが、きっとそろそろだろうと思ってはいた。
『ぴんぽんぱんぽぇぇ~ん♪坊、お時間やでぇ~。聞こえってかぁ?撤退するで~。』
なんとも間抜けなNBの声が艦内に響き渡る。
『あ、迷子になんなや~。』
「・・・そこまで子供じゃないってば。」
これには苦笑せざるをえない。
「大胆だな。だが、わざわざ逃げると宣言されて、そう簡単に私が逃がすとでも?」
アラドの言う通りだ。
そんな簡単に、はい、そうですかとはいかない。
ならば・・・。
「ケンオウキ・・・。」
そう呟いただけで一路の意思を汲んで再び【堅】の防御態勢に切り替わる。
多少の悪手であろうと目を瞑って、ガーディアンの防御力を以てして強引にこの場を突破するしかない。
当然、アラドも一路のとろうとする行動の予想はついている。
蔑むような視線を寄越してきた。
『ほな、"3秒"で迎えが行くさかい、何かにしっかり掴まっときぃ~。』
「は?」
今度は一路の間の抜けた声が漏れる。
3秒なんて今のNBのフレーズが言い終わるまでに過ぎてしまっているではないか。
つまり・・・。
ドゴォォォォーンッ!
金属がひしゃげる音と爆煙が二人の間に割って入る。
突然の、あまりに突然の事で・・・いや、予告はあったのだが、ほぼ過去形で言われた一路はよろめく。
「ども~おばんですぅ~。どちら様ですかぁ?檜山一路君の心の友と書いて心友の的田全と申しますぅ。あら、どうぞ。ほな、おおきに。ちゅーコトで助けに来たぜ、いっちー。」
今日は何度驚かされただろう。
煙が晴れてそこに立っていたのは幻なんかではない。
正真正銘の・・・。
「全!」
地球で別れたきりのクラスメイトだった。
「あーっ!こんなバッチくなって!誰だ、いっちーをこんなにしたヤツは!あ、アイツか!アイツだな?よぉーし、ブッ飛ばす!」
ぐるぐると両腕をほぐすように振り回す全。
「全、何かキャラ変わってない?」
「あったりまえだろ?一人で何をコソコソやってるかと思えば、こんなトコまで来やがって。」
ジロリと咎められるように睨まれれば縮こまってしまう。
「・・・ごめん、でも、僕は・・・。」
一路にだって一路の、決して譲れない言い分がある。
「大体だなぁ、なんで仲間ハズレにすっかな。オレ様傷ついちゃったよ?んで、どりあえず助け、いるよな?」
そう言われてしまっては一路も返す言葉がない。
勿論、嬉しくてだ。
思わず涙ぐみそうになりながら頷くだけ。
「よし、なら走れ。オレが乗ってきた船か、自分の船、どっちでもいいから乗り込め。オレの仲間にはいっちーの話をしてあっから。」
それだけ言うと、あっちへ行けとでも言うようにひらひらと手を振る。
その仕草を見て一路は猛然と走り出した。
「さて、と。」
一路の後ろ姿を視界の端におさめたまま、全は相手を見据える。
「すぐに飛びかかって来ないトコを見ると、なかなかに冷静だな、兄ちゃんよ。」
「あれだけ自分から牽制しておいてよく言う。」
「感動の対面にしたかったもんでね。だが!」
ぱんっと手のひらを拳で打つ。
「いっちーをボコボコにした落とし前、つけさせてもらうぜ。大体、荒事にはこれっぽちも向いてないヤツなんだからな。全く無茶したもんだよ、ホント。」
だからこそ全は一路を気に入っている。
無茶でも無謀でもここまでやって来た。
それをやってのけるだけの意志力を、純粋さを、優しさを。
「つーワケでこっからは"本職"の出番だぜ、"海賊"さん。」
どばっちりだろうが八つ当たりだろうが、ブチのめさなきゃ気がすまないとばかりに言い放つ。
そう本来、こんな血なまぐさい事柄は、自分達の領分なのだ。
だから、全も一路と同じで自分のやるべき事をやるだけ。
心友としても、戦士としても。