当然の事ながら、といえばいいのか、この状況は西南にとっては想定内だ。
鷲羽が柾木家にいる誰でもなく、自分を一路の迎えに選んだのは、勿論これを含めての選択であろう。
「海賊よ。」
いち早く現状を把握したのも、ずっと自分の存在に注意を払っていた少女だった。
「海賊って、GPの輸送航路でもないのに?!」
GPからの追手を警戒して(実際は西南がいるので来る事はないのだが)、一路はGP艦の常用する航路から外れた形で太陽系への突入を選んでいた。
広大な宇宙だ、海賊だって船の通る確率の低い宙域で待ち伏せするよりも、そちらの方へ行くはずだ。
ましてや、未開・未発達で接触禁止の太陽系に向かう船なんて、樹雷の補給船と駐在員の為の小さな小包くらいなものだ。
海賊といえど、小さな個人事業主とおなじ。
要するに何の採算も取れない、割に合わない仕事はしないのだ。
「事実はそうなの!」
「そんなのどうすれば・・・。」
二人の表情が逼迫したところで、西南は仕方なく口を挟む事にする。
「あー、いいかな?この船の艦長は君なんだ。君が判断しないと。」
自分が初めて艦長になったのも、海賊に襲われたのも、彼と同じ年齢くらいだったなぁと思いつつ、当時の自分も一人で判断を下すのは難しかった事を振るのだから、意地が悪いよなぁ、俺も、とほほ。
そう心の中で毒づく。
「僕が艦長・・・。」
「一国一城の主みたいなもんだよ、マイホームを持った、ね。」
(ウチの大黒柱はなんだかんだで霧恋さんだけどね。)
これまた当時の自分には出来なかった事を一路に振る。
「さぁ、どうする?」
流石にノーヒントでは可哀相だろうか?
しかし、鷲羽の思惑としては一応ノーヒント&ハードモードでいって欲しいはずなので、西南としてもそうペラペラと口を出せない。
「どうするもなにも・・・皆、席に着いて。きっと今のは威嚇だ。降伏勧告か白兵戦をしてくる前に逃げよう!」
そう言うとすぐさま艦長席である中央の一段高い席に座る。
(思い切りはいいし、判断も早い。今のが威嚇だってのも正解だ。)
ただ沈めたいだけならば、先程の不意打ちで一気に決めるはずだ。
一路が研修の時に一般的な海賊の作法(?)、行動指針を見ていた事が幸いしている。
「NB、ワープは出来そう?一気に突き放すよ?ワープ先を予想されないように一度目はランダムで!」
(ん?)
「任しとき!」
(んんっ?)
続く声に疑問符を浮かべたのは西南だ。
一路の艦長としての判断は概ね正しい。
マニュアルによる艦長の取るべき選択肢の一つに挙げられるくらに。
もし、西南が一路の教官なら及第点だ。
だが・・・。
「ワープするで!」 「あ。」
一路の判断を西南が訂正させる前にそれは行われてしまった。
一般の艦長としてなら上出来ではあるのだが、"一般の出来事"ではないのが今の状況なのだ。
「ごめん、それは悪い手だ。」
「・・・なんで・・・・・・。」
西南の落ち着いた声の後に、愕然とした声が聞えて、その陥った状況にそうなるよなぁと溜め息をつく。
「何でワープ先にも海賊がいるの?!」
(あ、なんか久しぶりに聞いたなぁ、そのフレーズ・・・。)
最近はお嫁さんズががいるのもさることながら、簾坐の奥ゆかしくも(?)誇りある(??)勇者の(???)決闘という戦闘方式が多かったせいか、艦長になった当初の頃に多かったこと展開が起きる事は少ない。
というか、流石に皆が慣れたというか、慣れなきゃやってられんという空気になっていた。
「もう一度ワープ!!」 「はっ?!」
などと懐古しているうちに二度目のワープが行われ、結果は火を見るより明らかな、海賊倍々ゲームが発生していた。
まさに確変突入。
(あの時はどうなったんだっけ・・・?)
自分の時の結末を西南は思い返す。
(確か、あの時はまだ福がいなくて・・・。)
危うく餓死しかけたという事を思い出した。
「餓死されても困るしなぁ・・・。えーと、檜山君、君の判断は凄く正しいし、よく解るんだけど、今回はそれ以外の方法で・・・例えば戦うとか、そんなカンジでなんとかならないかなぁ?」
どうやっても切り抜けられない無限ループの現象なので、これでは意味がないと思い西南は答えを切り出す。
「戦うって、どうやってですか!」
「え、あ、いや、多分、鷲羽ちゃんの事だから、この船きっとそういうの、あるよ?・・・多分。」
でなけりゃ、いきなり人を死地に追いやる悪魔の所業だ。
いや、鷲羽ならありえるか。
無理なら自分がなんとかするだろうくらいのノリで、今回の事を押し付けたのかも知れない。
(最悪、俺が船から"降りる"か・・・。)
嘘みたいな話だが、原因を取り除くという意味ではそれは一番の解決策だ。
西南が船を降りて、一路達が再びワープする。
それであっという間に解決だ。
だが、それが最良の正解だと一路に言ったところで、信じる事もその選択肢を取る事はしないだろう。
(やっぱり、俺が戦うしか・・・。あぁ、なんか今、瀬戸様のトリプルゼットを思い出した・・・。)
相当に手加減しないと辺り一帯が大参事になりかねないからか、瀬戸の乗る水鏡の撃滅宣言信号が頭を過る。
これって本末転倒なんじゃないかなぁと西南は、一路達にも降りかかった理不尽さを心の中で謝るのだった。