真・天地無用!~縁~   作:鵜飼 ひよこ。

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第80縁:第一種遭遇。

(改まって見ると・・・怖いな。)

 

 アイリに勧められた通りに一路が功績記念館に向かった際、鷲羽の毛穴を見た感想である。

断崖絶壁。

それが湾になっている。

正直、直径50キロメートルという規模が大き過ぎて、最初から意味が解らない。

一体、東京ドーム何個分?

それくらいに大きい。

ちなみに隕石などのクレーターに換算すると・・・まぁ、地球では大気の関係があるが、恐竜を絶滅させたてあろう隕石の規模が10キロ前後で、形成されたクレーターが180キロ程・・・推して知るべし。

さて、そんな感嘆を以て一路を迎えた功績記念館は思っていたよりこじんまりしていたが、中は様々な説明文と画像で溢れていた。

その大半が、鷲羽や凪耶が学生時代から取得した権益の数々。

つまりは、特許の説明である。

その数、価値、どれを取っても銀河随一で、実は鷲羽の個人資産は天文学的値である事等、驚きの連続だ。

 

「・・・・・・想像してた以上に鷲羽さんて、凄い人だったんだ・・・。」

 

 普段の言動が多分に問題アリな鷲羽の姿は、都合の良い事に(そして一路にとっての不幸に)彼の記憶にはない。

優しくて、厳しい人という印象。

しかし、よく考えてみれば、身体を刺されて心肺停止の重症を負った自分をあっという間に蘇生させるくらいなのだから、凄いのは当たり前なのかも知れないと思う。

そんな人物を"母"と呼んでしまった事は、本当に恥ずかしくて痛恨の極みである。

 

 だが・・・。

 

その反面、肝心の朱螺 凪耶という人物の資料は驚く程に少なかった。

 

(ほとんどが鷲羽さんとの共同か、代理申請者としての名前しかない・・・ん?)

 

 特許の数が数だけに少ないとは言えないが、どうしても鷲羽の影に隠れがちのように見える。

ある一点を除いて。

 

「この人、異様に古代遺跡の発掘数が多い・・・。」

 

 講義の時に習った、今の人種がこの銀河にたどり着いて繁栄する以前にあったという文明。

その遺跡の調査分野において、朱螺 凪耶は、他の追随を許さない程の功績を上げている。

 

(・・・意外とロマンチストなのかな?)

 

 科学者(哲学士)なのにロマンチスト。

それを想像すると、意外と好きになれそうかもと思ってしまう。

心の中で、自分の名に新たに追加された部分に愛着が湧いてくる。

そんな事を考えながら歩いていると、ここに来たのは無駄などではなく、有意義に感じられた。

やがて、中央の広間、一枚の巨大な写真が一路の眼前に姿を現す。

 

「これ、鷲羽さんと・・・。」

 

 今と全く姿の変わらない鷲羽の姿と同じくらいの背丈の女性。

そして体格の良い大きな男性が3人で仲良く並んで写っている。

 

「恩師である皇立アカデミー夷隈教授と・・・か。きっと大切な人だったんだろうな。鷲羽さん、笑顔だもん。・・・でも、この朱螺って人・・・。」

 

 呆然と見上げる視線の先に、静かな微笑みをたたえて立っている人物。

白髪にも見える銀髪に目つきこそ鋭いが、彼女はきっと鷲羽と一緒の時間を過ごすのが楽しくて仕方がなかったのだろうな、と思えた。

何故だか解らないが、そう思えるのだ。

 

「そんなにその化石のような写真が気になるのかしら?」

 

「え?」

 

 漠然と写真を見上げていた自分の背後から突然声をかけられて一路は振り返ると、そこには一人の女性らしき人影が佇んていた。

 

「古い・・・確かに古いけれど、僕には縁のある写真なので・・・。」

 

 そこでふと、さっきまでここにこんな人いたかなと首を傾げる。

この時間帯に、人はいたがそう何人もすれ違ったわけじゃない。

気配も感じなかった。

 

「縁・・・じゃあ、"夷隈教授"の?」

 

 彼女のこの一言に、一路はきょとんとしてますます首を傾げる。

理由は明白だ。

 

「どうしてですか?」

 

 一路は確かにこの写真に縁があると言った。

だが、言っただけで、"写真の人物"だとは言ってはない。

下手をしたら、写真を撮った人物の方かも知れないではないか?

しかも、写真には"3人も"写っているのだ。

それなのに、何故?

 

「どうしてって?」

 

「だって、この写真3人いるのにどうしてその人だと思うんですか?」

 

 会話の流れ上、どう考えても不自然だ。

 

「では白眉 鷲羽の方かしら?」

 

 悪びれもなくその人物は一路に歩み寄りながら再度尋ね返してくる。

ここでようやくその人物が、紬姿の妙齢な女性であると判った。

 

「まぁ、そうなんですけれど、"今の僕"はどちらかというと朱螺 凪耶さんの方かな。」

 

「朱螺・・・凪耶の?」

 

 艶のあるルージュから吐き出される言葉。

少し気怠げなタレ目が一路を見つめる。

 

「僕、檜山・朱螺・一路って言います。貴女は?」

 

 何かとこの環境ではトラブルしか招かない曰く付きのある名をきちんと告げる。

しいてその理由を挙げるとすれば、ここが彼女のゆかりの地だという事もあろうか。

 

「私?私は・・・・・・そうね、"鏡"とでも呼んでちょうだい。」

 

 そう言ってその女性は、微笑みながら艶かしいその唇を閉じられたままの扇で隠した。

 

 

 




功績記念館内の描写は作者の妄想設定です、あしからず。
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