真・天地無用!~縁~   作:鵜飼 ひよこ。

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あ、実は先週誕生日だったんですよ・・・いや、何でもねぇです、はい。


第87縁:なにゆえ彼等は、そこに立つに至ったか。

『綺麗・・・。』

 

 瞳を輝かせてうっとりと呟くアウラの方がよっぽど綺麗などという恥ずかしい台詞は、思ってても口から出せなかったが、一路の剣舞を見た彼女の感想は概ねそんなところだった。

大好評と言ってもいい。

一路としても、本来は誰かに(主に神仏なのだが)見せる事を前提とした舞い褒められるのは満更でもなかった。

 

(少しは成長してるのか、な?)

 

 自惚れるような事は決してないが、少しは身についてきている様で嬉しかった。

そんな事を暇で平和な当直の時間、先程あった出来事を回想する事で過ごしていたのだが・・・。

 

「檜山。」

 

 無表情のまま、ちょいちょいと自分を手招くコマチに回想を遮られる。

彼女はこの部屋の中心、一際高い椅子に座っているのだが、そこが艦長席という事らしい。

 

「何でしょうか?」

 

 艦の中で最上級の指揮権を持っている人物に呼ばれてしまっては、一路も無視する事は出来ない。

猫や犬でも呼ぶかのような仕草に仕方なく従ってコマチに近づく。

 

「そう緊張するな。何、ちょっとした雑談だ。」

 

「雑談って・・・。」

 

 それは最高責任者としてどうなのだろう?

 

「勿論、全く関係ない話じゃないぞ。」

 

「?」

 

「私はてっきりオマエが艦長希望だと思って、今回の指導教官を特別に引き受けたのだが・・・。」

 

 そう言葉を濁すコマチの言い分としては、"何故、操船系なのか?"という問いだ。

だが、逆に一路は首を傾げる。

"特別に"というフレーズもそうだったのだが、それ以上に疑問に思う事があったからだ。

 

「逆に何で艦長希望だと思ったんですか?」

 

「あ、コラ、疑問に疑問で返すな。今は私の方が上官なんだぞ?」

 

 上意下達、船の規律は常に守られねばならない。

確かにコマチの言葉に一理あるなぁと思って、果たして何と答えたらいいものかと思案する。

 

「・・・そうですね。僕は船が扱えればいいんです。確かに艦長でもそういう意味じゃそうなんでしょうけど・・・。」

 

「ん?」

 

 一路の言葉が一瞬だけ止まる。

不自然な間。

そして不自然な空気を自分で消すかのように口を開く。

 

「僕に、僕の目的の為だけについて来るような人はいないだろうから・・・なら、操船系の方がいいと思って・・・。」

 

 結局はそういう結論。

何もかも傷つけたく、振り回したくないから。

だから、一路はそう答える。

 

「ふむ・・・。まぁ、艦長というのも簡単な仕事とは違うからな。船の大小に関係なく。」

 

 当然だと思う。

船の中での最高責任者ともなれば、その判断で船員の安全を左右する。

その責任が常につきまとうのだ。

一路の言い分は、その責任を負いたくないというようにコマチには聞こえたらしい。

一路としても、近い意味で言ったのであながち間違いではない。

だが、コマチはすぐにそれはそれでいいではないかと考えを切り替える事にした。

無能な艦長を抱える船は不幸だ。

たとえそれが"運を呼ぶ船"でも・・・と。

 

「そうか。」

 

「どうしました?」

 

 何故、自分は目の前の少年が艦長希望と"決めつけて"しまったのかに気づく。

 

「その"()か・・・。」

 

「はぃ?」

 

 同じ目をした一路と同じ"地球人"がいたからだ。

 

「私の先入観というヤツだ、許せ。」

 

「先入観ですか?」

 

 はぁ。と何とも間の抜けた返事をする一路の顔を見て、笑みがこぼれる。

 

「成程、オマエは知らなかったのか。昔、山田 西南というオマエと同じッ!!」

 

 突然の衝撃。

艦を上下に揺さぶるその揺れに、一路とコマチが咄嗟に近く掴まり転倒しないように支える。

何が怒ったのか一路には全く解らなかったが、コマチには"ソレ"が何かを理解して声を上げる。

 

「全周囲シールド展開!何処からの攻撃だ!」

 




原作も第一部完結までのカウントダウンとなりました。
色々と凪耶関係や皇家の樹の関係も公開される予定なので、もしかしたらそれに合わせて少しお時間を頂く事になるかも知れないです。

では、また来週に。

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