All I need is your love 作:なぁのいも
スオミは使命を果たした。自分の名を残す、自分に課した重大な使命を。この世に戦術人形としてロールアウトされたときから抱えていた使命を。
それと同時に彼女は新たなる答えを見つけた。
自分の名を残すのは不特定多数の人間でなくてもいい。たった一人、自分のことを大切にしてくれる存在に、ずっと刻まれればいいのだと。自分を愛してくれる存在が覚え続けてくれればそれでいいのだと。
スオミに課された重大な使命が果たされた方法。
それは指揮官と誓約すること。
自分のことを大切にしてくれる存在、自分のことを愛してくれるヒト。その人にだけ、永遠に名前を刻まれること。
それが、彼女が使命を達成した方法であり、彼女が見つけた新たなる答えそのものであった。
彼女にも迷いはあった。自分の名を、彼女の祖国を冠したその名前をもっと世界へと知らしめるために奮戦するべきで無いかと。
確かに因縁の国の銃の名が金輪際上がらないような名機・名銃として名を残すべきなのでは無いかと。
それでも、彼女が自分の使命の終わりに彼を選んだのかは簡単なこと、スオミも指揮官を愛していたから。彼に自分の事を深く大切な存在として認められる事を望んだから。
愛していたからこそ、スオミは彼を自分の重要な使命の終わりと認めたのだ。
それからは、スオミは自分の重大な使命に縛られることなく、そして、功を焦ることもせず、指揮官から与えられる単純な仕事の命令という名の使命をこなす、日々を送っていた。
平穏な、使命というものに縛られない日々。スオミにとっての新たなる日々。指揮官と共に居るだけで幸福な日々。
与えられる使命こそ単調であったが、合間をみては指揮官と過ごす、という密かに自分へと下した使命を達成できる、穏やかな日々。その日々に、スオミは不満を感じては居ない――――と彼女自身思っていた。
しかし、突然彼女の中で何かが彼女に訴えかけたのだ。
『このままでいいの?』
と。
『この』に含まれている意味が何なのかはスオミ自身にもわからない。
重大な使命に答えを出してしまったことへの非難か、それとも指揮官に更に尽くしたいと言う自身の欲望から漏れ出た言葉なのか、それすらも彼女には判別がつかなかった。
自分の中の声が、段々と大きくなっていく日々。
それは、かつての敵対国の武器名を冠した人形を見たときのような、負の感情から出たものでない事はわかっていた――つもりだった。
だが、数日もしないうちにスオミは自分の推測が間違えであることに気がつく。
その声には大きくなる瞬間があったのだ。普段なら何処か遠くで聞こえる問いかけが、トンネルの中で出す大声のように曇った声が、澄み渡って聞き取れるようになる時が。
それは、他の戦術人形が任務をこなして指揮官に労われている時。
つまり――使命を果たした瞬間。
スオミは声が大きくなる瞬間に耳を傾けて、やっと気づいたのだ。
自分は深層で満足してなかったものはなにかを。自分が本当は望んでいたモノを。
スオミは望んでいた。指揮官から使命を与えられることを。
否それだけでは無い。それが全てでは無い。
スオミが一番に望んでいたのは――指揮官からの労いを、指揮官から与えられる報酬を全て自分のものとすることであった。
指揮官は甘すぎるのだ。
誓約を結んだという身なのに、他の人形にも誓約する前とは変わらない優しさを振りまいている。まだ同じように任務を与えている。スオミ一人でも出来るようなとるに足らないような任務も。
足りる。そう、スオミ一人でも足りる。
全て、全て、全てすべてスベテすべて全てスベテ全て全てすべて!!!!
スオミ一人で全てこなせる。
スオミ一人でも勝利を勝ち取る?
否だ。勝利を勝ち取るのも、後方支援も、使命をこなすのも、指揮官から使命を与えられるのも、その褒美を受け取るのも、全て、自分一人で十分なのだ。
スオミは自身の名を冠するKP-31を手に取ると、控えていたダミーを一斉に起動させる。
口端を大きく、亀裂が入りそうなくらいに持ち上げながら。
――ああ、指揮官
「あなたの使命を受けるのは私一人でいいですよね?」
小さな体躯に見合わない真っ白なコートを翻し、スオミはダミーを引き連れ、靴音の重奏を奏でながら戦術人形達が待機している宿舎へと向かうのだった。