ミセリアは過去の話を話し始めた。
6年前のダンジョンワールド
「ミセリア、お客様ですよ。」
僕は
本当に小さな喫茶店で、1日に両手で数えられる程度の人しかこなかった。
「いらっしゃいませー。」
そのとき、ある女の人に出会った。
「あ、あの!ここで働かせてください!」
彼女の名前はハート。
黒い髪の女の人で、優しい顔をした女の人だった。
「君は?」
「私はハートといいます。元々は冒険者だったのですが、以前受けたクエストで一文無しになってしまって・・・。雑用でもなんでもしますので、お願いします!」
「といってもなぁ、この店、あまり客来ないから暇だと思うぞ?」
「それでも構いません!お給料は少なくても大丈夫です!」
「・・・だってよ、キリ。どうする?」
ジョーカーは少し彼女の存在を嫌がってたけど、僕は彼女の真剣な目を見て、採用したんだ。
彼女を採用してから、喫茶店は繁盛して、一日に何十人と来る店になり、一気に忙しくなった。
そして半年で、赤字だったのが黒字になっていた。
そんなときだった。
「店長って、あの角王のミセリアなんですよね?」
彼女は僕のことを知った。
僕がミセリアだということは隠していたし、バレることはしなかった。
「たまに店を離れてどこかいってたのって、角王のミセリアとしてコールされてるんですよね!」
「な、なんでそれを!?」
「知ってますよ、私、あっちの人なので」
「!」
確かにハートという名前のモンスターはダンジョンワールドで聞いたことがなかったし、変だなとは思ってたけど、まさかモンスターではなく、人だとは思ってなかった。
「それでなんですけど・・・。このダンジョンワールドの世界の宝玉ってどこにあるんですか?」
「!・・・なんでそれを知ってるんだ!」
「本で読んだんです。綺麗な色の宝石で、人生で一度は見てみたいって」
僕は彼女の人柄やこれまでの頑張りから、心に彼女への信頼が生まれていた。
「・・・特別だよ」
僕は最悪の判断をしてしまった。
彼女は世界の宝玉を前にすると、目の色を変えた。
宝玉を掴み、台座から引き抜いた。
僕はあわてて止めようとしたけど、そのときには遅かった。
「ありがとう、ミセリアさん!おかげでこの世界を支配できそうだ・・・」
それからダンジョンワールドは闇に包まれ、戦争が始まった。
そのときダンジョンワールド一番だった光の属性の集団、†は戦争に駆り出され、多くの犠牲者が出た。
†のリーダーであった、シャイニング † エデンはその力でハートの封印した。
しかし、彼女の力はシャイニング † エデンの力を越え、支配してしまった。
僕は†属性のモンスターである、シャイニング † エンジェルをカード化して逃がすと、シャイニング † エデンを封印するために、自らの体を氷像に変えて封印した。
氷像のなかで僕はシャイニング † エデンの中からハートを引き剥がすことには成功したけど、ハート本体は氷像から逃げ、僕らの封印された氷像にあの赤い鎖の封印をつけた。
「僕のいなかった5年間はそういうことだ。この前の爆発で僕の封印は解除されたが、それと同時にシャイニング † エデンも解放されたはずだ」
「エデン様はまだ生きてる・・・ってことですか?」
エンジェルはダガーをしまい、ミセリアに問いかける。
ミセリアは静かに頷いた。
「エデン様の場所はわかりますか?」
「僕はあくまで封印していただけだからごめん。でも氷像が壊れたときにある人間が近くにいたのは覚えてる・・・」
「誰かわかりますか?」
「わからない・・・でも、その人のバディモンスターと思われるモンスターがいた」
「とある人と、バディモンスターか。」
「ダンジョンワールドに侵入者が現れたあの日、僕らはある人とモンスターに会いましたよね」
絢爛朱雀はタスクの前に立つと、頭に扇子の先を当てる。
「・・・!」
「思い出しましたか。あの日、この二人とは別で向かわせた一人と1体を」
「虎堂 ノボルと、エル・キホーテか」
・・・
「ったく、またアイツらダンジョンワールド行ったのか」
ノボルはテーブルにカードを並べ、テレビを観ていた。
「エルキは隣の部屋で昼寝してるしなぁ・・・」
デッキのカードとは別に置かれた十字架の書かれたカードが視界に入る。
ノボルは視界に入ったそれを取ると、目に焼き付けるくらいじっくりと見る。
「・・・アイツは知らないみたいだし、これ本当にバディファイトのカードなのか?」
「次のニュースです、ダンジョンワールドのとあるダンジョンで大きな爆発が起こりました。」
「ん?」
ノボルは十字架のカードをテーブルに置くと、テレビ画面を見る。
「以前から問題視されていたモンスターの大量衰弱死の事件と関係しているとのことで、今回の事件で大量のダンジョンワールドのモンスターが搬送されたとのことです。」
「ダンジョンワールド・・・だと・・・!」
ノボルはすぐに立ち上がると、隣の部屋にいるエル・キホーテのところへ急いで向かう。
「エルキホーテ!」
ノボルはエル・キホーテを抱えると、体を揺すり、頬を軽く叩く。
エル・キホーテは意識がないのか、いっさい反応しない。ロシナンテも同様に動けそうになかった。
「嘘・・・だろ・・・返事しろよ!おい!・・・畜生!」
ノボルは慌てて車にエル・キホーテとロシナンテを運ぶとエンジンをかける。
車は走り始めるが、
「待って!」
「な、なんだ!?」
一人の女の子の手によって止められる。
「こっちは急いでるんだ!そこをどいてくれ!」
「ち、ちえりの・・・ちえりのバディを助けて!」
そこにいたのはちえりと、剣を杖のようにして体を支えるみろわーるだった。
数十分後・・・。
「ご迷惑をお掛けしました。」
元気になったみろわーるは、ノボルに頭を下げる。
「いえいえ、俺こそ自分バディ優先で考えてた。・・・日本を誇るプロのバディファイターがこんなんじゃな」
「やっぱりですよね!サインください!・・・っていっても色紙とか」
ちえりはみろわーるの顔を見る。みろわーるは首を横に振った。
「色紙か・・・ん?」
ノボルはなぜかポケットに入っていた、テーブルの上に置いたきたはずの十字架のカードを取り出す。
「なんですか、それ?」
「あぁ、これはなんでもない、気にしないでくれ」
ノボルはポケットに戻そうとする。しかし、それを見ていたみろわーるは、
「ちょっと見せてもらえませんか!?」
と、ノボルの腕を掴む。
「みろわーる!」
「はっ・・・も、申し訳御座いません、ちえりお嬢様!」
ちえりの声を聞いて我に帰ったみろわーるは、ノボルの腕を離して頭を下げた。
「まぁ、好奇心ってのは大事だ。これからもバディは大切にしろよ」
ノボルは十字架のカードをデッキケースにしまって、病院をあとにした。
「あ、ありがとうございました!」
ちえりは頭を下げた。
「ちえりお嬢様、あのときはすみませんでした・・・」
みろわーるは何度も頭を下げる。
「いいよ。・・・でも、みろわーるがあんなことするなんて、どうしたの?やっぱりまだ・・・」
「体の方はもう大丈夫みたいです。でも、あのカード、何か危ないカードだと思って」
「そうなんだ、ちえりは何も思わなかったけど」
「モンスターだからこそ・・・てことなのかもしれません。」
ちえりとみろわーるは外に出る。
みろわーるはちえりに傘を差し出す。
「嫌な雨ですね・・・」
「何かありそうね・・・」
二人は傘の下から空を見る。
雨は少しずつ強くなり始めていた。