ミセリアは6年前に起きたことを話した。
ダンジョンワールドで起きたこと全てを
そして、地球ではダンジョンワールドのモンスターが一斉に運ばれ、ノボルのバディであるエルキホーテや、ちえりのバディのみろわーるもその被害にあっていた。
ここからは友牙達がダンジョンワールドから帰ったあとの話である。
ダンジョンワールドから帰った友牙とガルガは、大雨のなか傘を差して家に向かっていた。
傘が変形するくらいの風雨だったが、友牙はお構い無しに傘を前に広げて走っていた。
「ヤバい、今日雨だったのかー!」
「そういえば、今日の洗濯物当番は友牙だったな」
「怒られるー!ガルガ、元の姿に戻って背中に乗せるとかできないのか!」
「馬鹿者!これくらいの困難は友牙一人で乗り越えろ!それに背中に乗せたら、雨でびしょ濡れになるぞ」
「もうびしょ濡れだって」
「友牙、止まれ!」
友牙は橋を渡ろうとしたとき、ガルガの声で勢いを無理矢理殺して止まる。
橋の上には女の人が倒れていた。
服はボロボロで泥だらけになり、黒い髪はグシャグシャになっていた。
「とりあえず家まで運ぶぞ!」
ガルガは元の姿に戻ると、雨を防ぐように手のなかに女の人を包み込んで飛ぶ。
「おい、待てよー!・・・ん?」
友牙は落ちていたデッキケースに気づく。
「あの人のものかな?」
友牙はそれを拾うと、また傘を広げて走り始めた。
「ただいまー」
「おかえりー、ってどうしたの、ビショビショじゃん!」
晴はびしょ濡れになった友牙を見ると、すぐにタオルを持ってくる。
「ガルガと女の人は!」
「とりあえず、髪乾かしてそこにあった服を着させたけど、それでよかった?」
友牙の家にはサクラが来ていた。
「サクラ!?」
「お邪魔してます。実は友牙に用があって」
「俺に?」
「まぁそれよりも・・・今はその服を脱いでお風呂に入ってきた方がいいよ、風邪引いちゃうし」
サクラの言う通りに風呂に入ってきた友牙は、ソファで寝る女の人をチラッと見ると、テーブルを挟んでサクラの前にあるイスに座った。女の人は晴が畳んでおいたパル子の服を着ていた。
「で、話ってなんだ?」
「・・・父が帰ってきた。」
「!」
「なんだと!」
友牙も驚いたが、友牙よりもガルガの方が驚いていた。
「でも、意識は戻ってない。生きてることがありえないレベルの重症だって」
サクラはスマホを取り出すと、ある画像を見せた。
そこは焼け崩れた教会で、そこには数々のエンシェントワールドのカードが燃え、どこかで見たことのあるドラゴンの像が首のない状態で置かれていた。
「エンシェントワールドは壊滅寸前、話によると、角王のモンスターが見つかっていないらしい。・・・ごめんなさい、悲しい話をして」
「・・・俺たちこそ救うとか言っておいて、何もできなかった。」
「我が言い出したことだ・・・友牙は何も悪くない」
「ガルガは俺のバディだ、俺にも問題がある。」
「・・・」
三人は黙り込んでしまう。
「みんな!この人目、覚ましたよ!」
晴の声に三人は反応して、すぐにソファの方を見る。
女の人は目を覚ますと、ソファからすぐに起き上がった。
「ここは・・・!」
「橋の上で倒れてたんだ、ケガとかは大丈夫?」
「大丈夫・・・です。」
女の人はタオルを掴み、その手を見る。体は少し震え、まだ雨による寒さを感じている。
「なぜ、あんなところに倒れていたんだ?」
ガルガは歩み寄ると、全員が気になっていたことを聞く。
「・・・わかりません、記憶が曖昧で」
「そうか。」
「記憶喪失・・・ってこと?」
「いえ、そういうことでは・・・。」
「名前とかは?」
「私はノア。名字は・・・ごめんなさい、名前しか」
「ノアか・・・。ここらへんでは聞いたことない名前だな」
「そうだ、これ・・・」
友牙は玄関の下駄箱の上に置かれた、ノアの近くで拾ったデッキケースを見せる。
「これって君の?」
「たぶん・・・」
ノアは友牙の手からデッキケースを受け取る。しかし、
「・・・うぅ!」
ノアは頭を押さえ、デッキケースを下に落としてしまう。
デッキケースから出た色々なワールドのカードが床に散らばる。
「大丈夫!?」
「・・・ちょっと頭痛が」
「色々なワールドがあるな・・・。」
ガルガと晴はカードを一枚一枚集め始める。
「そういうことね。」
サクラは足元へ滑ってきたカードを取る。
フラッグカードの『楽園天国』だった。
「楽園天国か、戦ったことないなー。」
「特殊なフラッグでね、属性に天国が入ってればどんなワールドでも使うことができて、ゲージ1枚、ライフ12から始まるってフラッグ。」
「色々なワールドを使えるのか、面白そうだな」
ガルガと晴はデッキを集め終わると、まとめてデッキケースに入れて、今度はノアに渡す。
「はい、どうぞ!」
「ありがとう。」
「なぁ、俺とファイトしないか?」
「ファイト・・・?」
「あぁ、このデッキを使ってさ」
友牙はノアのデッキケースを掴む手に、自分の手を添えるように置く。
「えっと・・・ごめんなさい。ルールがわからなくて」
「・・・そもそもそのデッキってノアさんの物なの?ノアさんの近くに落ちてただけなんでしょ?」
「そうだけど。」
「他の誰かの落とし物かもしれないじゃない!」
「あの状況なら、ノアの物だと思うだろ!」
二人して少しずつ声が荒々しくなっていく。
「あ、あの・・・ファイトしてみたいです。」
その二人の間に入るようにノアがか細い声を出す。
「記憶は曖昧ですけど、このデッキはたぶん私の物だと思います」
「・・・わかった、やりましょ。その代わり」
サクラはデッキケースを取り出した。
「私が相手をします。」
「バディファイトあるところ、奈々菜 イオンあり!・・・ってここって友牙君の家だよね?」
「こ、この人は!?」
急にワープして現れた奈々菜イオンとタコ吉を見て、ノアは腰を抜かしてしまう。
「この人は奈々菜 イオン。バディファイトの実況をやってるんだ。」
「あのー、いいですか?・・・さぁ、やっていきましょう!今回のファイトはRanGaチャンネルで有名の未門 友牙君の自宅から放送してます!えーっと・・・」
「ノアです!」
「ファイト初挑戦のノア選手!対する相手は日本エンシェントワールド代表の娘、轟鬼 サクラ選手!」
私の刀は神をも裁く!ルミナイズ!神殺しの刀!
「え、えっと・・・」
「ルミナイズって言えばいいんだ」
ルミナイズ!
「オープン・ザ・フラッグ!」
「え?え?」
「フラッグカードを表にするんだ!」
「あ、そうか。オープン・ザ・フラッグ!」
「カタナワールド!」
「えっと、楽園天国!」
「バディは滅神の使者 阿修羅!」
「バディ・・・?これかな!」
ノアはバディゾーンに置かれたカードを表返す。
バディゾーンから現れたのは一人の騎士だった。
「希望の騎士 リゼ!」
一つ縛りの紫髪に金色を縁取った白銀の鎧を着けた女騎士のモンスターは、ノアに細い針のようなレイピアの先を向ける。
「私を呼んだのはあなたですか?」
「は、はい!」
「わかりました・・・。あなたに忠誠を尽くします!」
(やっぱりこの人のデッキじゃない気が・・・)
サクラは左手に持った手札を扇子のようにして口元を隠し、心の中でそう思う。
先攻のサクラのターン、「滅神の刀 神威」を装備し、そのままノアを攻撃し、ターン終了。
サクラのライフ10 ゲージ1 手札6
ノアのライフ9 ゲージ1 手札6
ノアのターン。
「眈々と進むサクラ選手のファイトに対して、今の一撃で心揺さぶられたノア選手!初めてのバディファイトに緊張しているのか!?」
「ノアー、まずはドローだ!」
「ドロー!」
「次は手札の今必要のないカードをゲージに置いて、またドローだ!」
「えーと、これを置いて、ドロー!」
「まずは準備だ!」
「え、準備?」
ノアは自分の手札をジッと見る。そして、
「えっと、装備、希望の杖 トゥルー・ホープ。」
希望の杖 トゥルー・ホープ アイテム
レジェンド
希望/杖/天国
0/1
コスト:ライフ1を払い、デッキの上から1枚をソウルにいれる。
・このカードは君の場に他の「希望」があるなら、効果で場を離れない。
・[起動]このカードをレストしてよい。そうした場合、デッキの上から1枚をゲージに置き、ドロップゾーンのカード1枚を、このカードのソウルに置く。
[対抗] [起動] 相手のアタックフェイズ中、このカードをソウルを捨ててよい。捨てたら、このターン、君が次に受けるダメージを0にする。
「希望・・・なんだこの属性は。」
初めて見る属性に困惑する友牙達。
そしてノアには、少しずつ忘れていた記憶が戻ろうとしていた。
今回は投稿遅れてしまい、すみませんでした。