記憶を失った女、ノアの記憶を思い出させるために、ファイトしたが、サクラが本気を出したことにより、ノアに心の傷を負わせただけで終わった。
「今日はみんな家で食べていって!外、雨まだ降ってるし」
大人数で囲む食卓は、いつもより賑やかだった。
そんななか、友牙は頭にできた大きなこぶの痛みで、あまり笑うことはできなかった。
「帰ってきたら玄関はびちょびちょだし、脱いだ靴や服は散らかしっぱなしだし、部屋入ったら知らない女の子が泣いてるし・・・。賑やかなのは良いけど、ちょっとは治しなさい。もう6年生なのに・・・」
「ごめん、母さん。」
ノアが泣いているのは俺関係ないじゃん・・・と、友牙は心の中で思いながら、出された味噌汁を静かにすすっていた。
「ノアさんってここらへん?」
「いえ、私は・・・その」
「ノアは記憶喪失なんだ。」
「えっ・・・ご、ごめんなさい」
一通り食事が終わると、
「友牙、デザート買ってきなさい、お金はあとであげるから」
パル子は友牙にお使いを頼む。
「なんで俺が・・・」
パル子は友牙の方にだけ怖い顔で睨んだ。
「買ってきて?」
「わ、わかりました!」
友牙は久しぶりに見た母親の怖い顔に思わず、立ち上がって部屋から大急ぎで出ていった。もちろん、それを横で見ていたガルガも一緒に。
「母さんのあの顔、久しぶりに見た・・・」
夜の7時。辺りは雨が降っていて、夜というのもあってかとても暗く、街灯の明かりを頼りに二人は、近くのコンビニまで歩いていた。
「だな。・・・しかし、あの希望とかいう属性謎だ」
「あぁ、結構特殊な動きしてたというか、なんというか」
「違う。聞いたことのない属性なのでな、ここ最近生まれた属性なのだろうか」
「かもしれない・・・。ガルガは楽園天国ガルガとかにもなれるのか?」
「無論だ」
「じゃあいつか楽園天国も考えてみるかな」
「む。」
「どうしたガルガ?」
「さっきから後をつけられている。」
「え!?」
友牙はそれを聞いて、おもわず後ろを向く。
「誰もいないけど・・・」
ガルガは傘を閉じると、元の大きさに変化する。
「・・・友牙、上だ!」
ガルガの声に、友牙は上を向く。
「バレたか・・・仕方ない」
背中から龍のような羽を生やしたスーツ姿の男は、気付かれると地面に足をつけた。
「お前たち、ハート様を知らないか?」
「ハート・・・?まさか!」
「ほう?知っているのか・・・なら、」
「友牙!」
男は友牙の首を掴むと、後ろのコンクリート塀に叩きつけるようにして、友牙の身動きをとれなくする。
男の手は龍のような鱗と爪を持ち、友牙の右肩にできた傷からは血が出ていた。
「ッ!」
「答えろ、ハート様はどこにいる!」
「友牙を、離せぇーーーッ!」
ガルガは男に剣を振るう。
男は残像を作るほどの速さで友牙から離れると、空中へ飛んだ。
「モンスターが人間に戦闘外で攻撃するとは・・・。しかし、俺が相手がただの人間だと思うな?」
「友牙、大丈夫か?」
「あ、あぁ、少しケガしただけだ・・・。」
「この俺に立ち向かうか。良いだろう、お前らデッキは持っているか?」
男は友牙達にコアデッキケースを見せる。それは禍々しく、目のような装飾が特徴的だった。
「俺とファイトだ、神に歯向かいしものよ!」
「ん?この近くで始まった?」
「イオンちゃん、実況?」
「はい!友牙君には悪いですけど、今日はこの辺で、いくよ、タコ吉!」
イオンはタコ吉のUFOに乗ると、すぐにワープする。
「ワープ成功!・・・って友牙君!」
三つの目が空に浮かぶフィールドに、龍が口を開けたような入り口が4つ。
高低差のある2つのファイトテーブルの置かれたスペースの低い方には、上に羽織ったフードがボロボロになり、首に掛けたヘッドホンの片方が壊れて放電しそうな、傷だらけの友牙と、モードソニック状態のガルガの姿があった。
右肩を負傷したのか、右肩を左手で押さえ、剣を持つ友牙は満身創痍で今にも倒れそうになっている。
ライフは18対3で、センターに立つガルガもソウル0枚で立っているのがやっとの状態だった。
「こここ、これは!傷だらけの友牙選手と、あ、あれは、ドラゴン!?」
「ほう、実況か。誰が君を呼んだのかね?」
「ひぃ・・・っ」
友牙の前に飛んでいるそれは人間の形をしていながらも、肌は鱗になり、手には大きな爪、背中から竜のような羽を生やし、まさに竜のような姿だった。
「これはいったい・・・。」
「見ればわかるだろう、制裁を加えているのだ。神に抗ったこの偽物の神にな。我が名は、
竜神は羽を羽ばたかせ、一度上に飛ぶと、
「二回攻撃!」
と言い、センターに立つガルガを貫く。
「ガルガ!」
「ッ!・・・すまない、友牙・・・」
「止めだ、遊びの神よ!」
「クソッ・・・体が。」
「バディポリスだ!」
竜神の爪が友牙の体を貫こうとしたそのとき、ファイト空間の天井部分は粉々に砕け、バディポリスが一気に入ってくる。
「大丈夫か、友牙君!」
「タスク・・・さん」
「遊びの神よ、さらばだ」
竜神はコアデッキケースを空中へかざす。上には空間が歪んでいるかのような穴が生成され、竜神はその中に入る。
「待て!」
飛行するバディポリスに向かわせるが、穴は直前で消えてしまった。
「・・・友牙君とガルガは僕が家まで届ける。君はすぐに帰るように」
「はい。」
「それから、今日ここであったことは無闇に話さないように。」
「わ、わかりました!いくよ、タコ吉」
イオンはUFOに乗り込むとワープした。
「・・・この場所、懐かしいな。もしかしてヤツもこの事件に関係しているのか・・・?」
「友牙、あとは頼んだぞ・・・世界をその剣で守れ。」
「おい、嘘だろ・・・。ガルガ・・・」
「ガルガァーーーッ!」
友牙は自分の部屋で目が覚めた。汗で枕が濡れている。どうやら、悪い夢を見ていたようだ。
「夢か・・・。ガルガは!」
「う・・・うるさいではないか、何事だ」
「良かった・・・」
友牙は机の上のヘッドホンを見る。ヘッドホンの片方は壊れていた。
「あのファイトは夢じゃないのか」
「どうした、友牙よ。」
ガルガはあくびをしながら起き上がり、友牙を見る。
「俺たち、負けたんだな。」
「友牙よ・・・。確かにあの男の力は我らの実力を遥かに越えていた。特にあのアイテムは強力だった。」
「ガルガ・・・」
「しかし、勝ち目はある。次こそは勝とうではないか」
ガルガはそう言って立ち上がるとカーテンを開けた。
「さぁ、朝の特訓をしようじゃないか。」
「・・・あぁ!」
友牙はいつもの服に着替えると、立て掛けてあった棒を取り、ガルガと共に外へ出た。
暗い部屋。デスサイズは竜神の帰りを待っていた。
「おかえり。ハート様は見つからなかったのか?」
「あぁ、だが、面白いものは見つけた」
竜神は帰ってくるとすぐに、部屋の奥にある龍を象った玉座に深く座る。足を組み、腕置きに片腕を置き、もう片方は頬杖をつく。
デスサイズは竜神の側に立って話を聞いていた。
「面白いもの?なんだ?」
「遊びの神だ。」
「もしかして、未門 友牙のことか?」
「?・・・知ってるのか?」
「知ってるのも何も、神バディファイター決定戦優勝者で、YouTuberとしても有名な未門 友牙だぞ!・・・竜神もしかして」
「ふん、神バディファイターってのも貧弱なものだな。」
「竜神・・・まぁ、それはいいとしよう。で、まだ何か隠してるだろ?」
「・・・お前のロストデュアルカードだ、使え。」
竜神はデスサイズに黒いオーラを放つ一枚のカードを渡す。
「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」
デスサイズはコアデッキケースに差し込んだ。
「これでハート様でも捕まえてこい。俺は調査中のカタナワールドでも侵略してくる。」
「じゃ、ハート様でも探しにいくかな」
デスサイズは大きな鎌を肩に担ぐと、暗い部屋から出ていった。
「・・・支配の時は近い。モンスター達の力は全て、我々のものになる」