バンドリ! に非日常を組み込んでみたらどうなるの?   作:KAMITHUNI

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うむ。やらかした。


HERO

オレの前世は、そりゃあ荒れに荒れていた。

 

おっと、急になんだって顔をしたそこの君! そう君さ!

え? オマエは誰だって?

そういえば、自己紹介が遅れたな。オレの名前は【江見矢 獅楼】だ。よろしくな(^ω^)

 

歳は15だけど前世を合わせると────いや、悲しくなるから15歳って事にしておいてくれ(懇願)。

くそっ!! 歳なんてとりたくねぇな(中年の考え)!

ヤケ酒が欲しくならぁ!(未成年)

 

コホン……話が逸れたな(突然正気)

まぁ、話を無理矢理戻すけども、なんで唐突にこんな話をするかって言うとな? ぶっちゃけ、理由は無い。( ̄∇ ̄)

単なる気紛れだ! オレが、ふと思い至ったから勝手に語るだけだ。

謂わば、自己満足な!(自己中)

 

ふ、ウザいと思ったろ? うん、オレも自分でかなりウザいなって思ったよ!

ウザいし腹立つし、早く本編いかねぇかなぁ〜って思った諸君。

このままオレの過去を聞かずに始まると思ったか?(ドヤ顔)

 

ところがどっこいのゆうすけサンタマリア!!(しょうもない)

 

当然、過去の話はやるんだなぁ〜!!♪( ´θ`)ノ

どう? 腹立つ? 腹立つよね?! ごめんねぇ〜!? 腹立つヤツで───(読者を煽るな。消すぞ?)コホン、ホントよく話を脱線させるのが好きなオレで申し訳ない。今度こそ、ちゃんと説明するから……ゆるちて( ;∀;)

 

なんか、謎の力がオレを抹殺しようと圧力かけてみたいだから、本題にちゃんと入るわ(メタ&ガクブル)

 

ここから、冒頭に言った荒れに荒れてたって話に戻るわけだけど、この言葉の意味は全くもってそのまんまだ。

 

オレが、転生する前の世界は酷い具合に荒んでしまっていた。

先ず、世界各国で資源物資の困窮が始まり、そこから瞬く間に産業技術が衰退していき、それぞれの国々の科学文化が、日本で言うところの明治時代にまで退化し、人々は貧困に喘いだ。

 

当然、混迷に陥れば陥るほど、人の心とはいとも簡単に脆く崩れ去ってしまう。

その影響下は直ぐに表れた。

 

暴力、金、薬物、性欲……etc.

 

欲に塗れた愚者等が増加して、彼方此方で暴動騒ぎが勃発。

当然、国同士の諍いも苛烈を極め、戦争へ突入した数も少なくない。

 

それらが巻き起こったお陰で我欲に塗れた世界の出来上がってしまうのだ。

世界は混沌の渦に見舞われ、滅亡も遅くは無いと言われていたんだ。

 

だからこそ、綺麗な世界を望んで何もかもを取りこぼした男に救われたオレが、誰よりも『正義の味方』に憧れたのは当然の帰結といえた。

こんなクソッタレな世界を変えたいと言う【理想】が綺麗だったからこそ、憧れた。

 

たしかに、そこに自身の意思なんて無いのかもしれない。所詮は借り物で、救ってくれた人の背中に張り付いただけの叶わない願望なのかもしれない。

だから、オレは【理想】を追い続けることを止めない。

いつかきっと、叶う日が来るのを願いながら、万人を救う為に動くのだ。

 

……少し、湿っぽくなっちまったが、それがオレの前世の世界と俺の在り方。今も変わらない【理想】は変える必要もなければ、変えるつもりも無い。

だって、オレが憧れた『正義の味方』はそうだったから。

 

なんで転生したとか、どうやって死んだのかとか……色々聞きたいことはあるとは思うけど、今回はここまでだ。

どうやら、オレの身体が目覚める事を推奨しているようだ。

 

ここは、夢の中。オレの心の底に潜む心象世界。

広大な荒野に乱雑に配置された無限の剣を内包した世界。

赤い装束を切ると男と同じような世界だが、少し違う。

ま、説明は面倒いからまた今度な!

 

とりあえず、ここがオレの唯一の在り処であり、オレにはこれしか無いって覚えておいてくれたら幸いだな。

 

 

 

─────

 

ピピピッ!!

 

ガチャッ! (迫真)

 

……。

 

「……なんて夢見てんだよ」

 

身の上話をするオレって、めっちゃキモすぎん?(何を今更)

目覚まし時計を迫力満点で止めてから、体を起こした時点でオレの体力は既に疲れ切っていた。

 

─────

 

「────ふぁぁ……。ねみぃ……」

 

うん。単純に眠いね。

春先って花粉症の人は地獄を見るらしいけど、オレはそんな事ないから単に眠い気温だなって感じだ。

なんていうの? こう、気だるいって言うか、この気温の中ならいつでも昼寝できるよね的なアレだ。え? なんのこっちゃか分からない?

ま、オレもよくわかってないから大丈夫だろう(バカ)。

 

と、意味わからない事を言うぐらいには、まだ眠気が取れないので目をこすりながら欠伸をかみ殺す。

 

朝早く起きて日課のトレーニングをするのが当たり前になっている今日この頃。春先にやる早朝のランニングって気持ちいいんだけど、やっぱり起きるのが苦行になるよなぁ〜。ま、そんな理由で休んだ事はないんだけどさ。

 

因みに、今の時間は午前6時半。昼頃には活発な商店街も、今の時間帯では静まり返っていて、どこか独り占めした気分で愉悦感に浸る。

う〜ん!! これが王様気分って奴だな!! はっはっはー!! 我に恐れ戦け!!(誰もいないのに人の上に立っていると勘違いしている痛い厨二病の図)

 

おん? この匂いは……。

 

とても芳ばしくて良い匂いが、オレの鼻腔を刺激してきた。

パンだな(確信)。いつもこの朝早い時間帯で開店しているのは『やまぶきベーカリー』だけだからな。懇意にさせてもらってるわけだけど、今日はまた一段と美味しそうな匂いだ(*゚▽゚*)

 

おっと、いけねぇ。そういえば食パンが無くなってたのを忘れてたぜ。危ねぇあぶねぇ。仕方ねぇな! パンの買い忘れはオレのヘマだからなぁ〜! しゃーねぇから買っていくか!(白々しい)

 

ほんと、仕方なしだよ! 仕方なし!!

べ、別に腹が減って直ぐに食べたくなったとかじゃないんだからね! か、勘違いしないでよね!!

 

……男のツンデレって、誰得なんだよ(反吐)。

 

─────

 

カランカランッ……!

 

「そうだなぁ、腹がカランカランだわ。だから、パンくれパン」

 

「また朝から意味の分からないボケをかましてるの? 正直ちょっと気持ち悪いかな? いらっしゃい、エミヤ君」

 

パン屋の扉を開けて、中に入ると、外から感じていた以上にパンの香しい香りが鼻腔を撫でる。これだけでも、ヨダレものだ。(キモい)

 

そして、オレへ呆れながら戯けた口調で話しかけてくれた少女は、山吹沙綾。

このパン屋の店長さんの3人姉弟の長女だ。気さくな性格で、誰とも分け隔てなく楽しそうに話しかけてくれるので、商店街ではもっぱらの有名人である。

 

なんでも、最近では非公認のファンクラブさえ出来たとか……。

ま、モテてもおかしくない顔立ちしてるから納得っちゃ納得なんだけど、ちゃんと許諾は得たほうがいいぞ? 後で痛い目合う可能性が少なからずあるからね?(経験者は語る)

 

「おっす! 沙綾。今日も今日とて辛辣なツッコミありがとう」

 

「うわぁ……なんで気持ち悪いって言われて清々しく笑えるの? ちょっと、意味わからないかなー」

 

あらぁ……ガチ引きですかい。

まぁいいや(現実逃避)。別にマゾじゃ無いけどね! 誤解はすんなよ!(真剣)

せっかく整った顔してんだから、そんな顔を歪めんなって。君には笑顔が一番さっ!(キザったらしい)

 

「ま、それはさておき……」

 

「置いておくんだ……」

 

そりゃあ、この話をいつまでも引っ張るわけにはいかんでしょ?(唐突な真面目)

話がこれ以上滞ると、この物語自体が抹消されかねないからね!(メタ)

 

「じゃあ、今日は……お! チョココロネ残ってんじゃん! 珍しいなぁ」

 

そうなんだよ。なんでか、ここのパン屋にきたら大体チョココロネが無くなってる。マジでビビったわ! ここまで人気あんのかって衝撃を受けたけど、聞いた話だとチョココロネ好きの沙綾の友達が全部買っていくらしい。

 

……ここのパン屋が1日にどれだけのチョココロネを作るのかは知らないけど、普通一人で食べきれる量を簡単に変えてる事だけはわかるんだけど、どんな胃袋してんの? しかも、聞いた話だとそれを超える数を買い求めてやってくる常連客もあるとかいないとか……怖っ! 最近の女子高生って胃袋どうなってんの? 女体の神秘だわー(感心)。

 

と、チョココロネを一つ取って、あとは二つほど適当に見繕う事にした。

結果、お惣菜パンの定番中の定番である焼きそばパンと、みんな大好きなクリームパンを選択してから、レジで待ってくれていた沙綾の前に持っていき、会計してもらう。

 

全部で320円ちょっと……ふむ、コスパもまぁまぁ良いんだよなぁ〜。

やまぶきベーカリーは一人暮らしする学生全ての味方だ(羨望)。

 

てか、沙綾の接待だけで1日頑張れる。

あれは癒しだね! 慈愛の神様だぜ(真実)。

マジでモテる理由がわかる! オレもああいう嫁が欲しいです!(懇願)

 

え? じゃあ沙綾に告れって? 無理無理ッ!! オレごときが、みんなの慈愛なる女神である沙綾様に告白なんておこがましい!!(ヘタレ)

 

むしろ告白なんて成功するはずがねぇだろうがっ!? クソッタレェェエ!!(ヤケクソ)

 

「あ、そうだ。その後の調子はどうなんだ?」

 

「? 調子って?」

 

うん。首傾げる姿もかわゆす(病気)。

でも、本気でわかっていないんですか? ちょっと? 沙綾さん? ちゃんとこっち向きましょうか? はぐらかそうとしてるのバレバレだから!

 

「……バンドだよ。バンド。ドラムやってたろ? オマエ。確か、今はポッピンパーティー? とかいうグループに────」

 

「べ、別に、普通だよ? ……う、うん。ふ、普通……」

 

あ(察し)。

普通じゃないグループなんだね?(確信)

ま、沙綾は人一倍優しいし、人の感情に機敏だからなぁ。周りがアレなほど、彼女の負担もデカくなるんだろうな。彼女の心労は計り知れない。

 

しかも、それを周りには決して見せようとしないから余計にタチが悪い。

もっと周りに押し付けてもいいんだと思うだけどなぁ〜。

性格的にできなさそうだけど。

 

だから、敢えてオレは何も言わずに沙綾の頭へ手を乗せる。

 

「ふぇ? ///」

 

「……」

 

突然の行為に耳まで真っ赤にした沙綾。

可愛い(最高)。 プシューと、湯気が幻視出来るぐらいには羞恥に悶えている沙綾の姿を堪能しつつ、労いの言葉を告げる。

 

「ま、頑張るのはいい事だけど、あんま頑張りすぎて倒れんなよ? せっかく千紘さんの容態も良くなってきたんだ。もう少し周りに頼れよ」

 

「ぁぅ……/// で、でも……お母さんには、早く良くなって、もらい、たいし……///」

 

「ま、千紘さんや親父さんに頼りにくいのは分かるけど、オマエの周りには頼りになる仲間がいるだろ? 何も一人でやる必要なんてねぇんだ。沙綾はもっと周りに助けを求めていいんだよ」

 

「……う、ん///」

 

よしよし(慈愛)。

これで沙綾も無理な仕事量をこなすことはないだろう(建前)。可愛い姿も見れた事だし(本音)、さっさと戻って支度する事にしよう。

 

「…………る?」

 

「ん? なんか言った?」

 

照れすぎて声が出ないのか? ちょっとやりすぎたかもしれねぇ(今更)。

 

「ぇ、エミヤくんに助けてって言ったら、助けてくれるの///?」

 

服の端を掴む姿に萌死しそうになるも、真っ直ぐ見てくる瞳には真剣さが伝わってくる。

当然─────。

 

「あぁ。助けるよ」

 

「そ、即答なんだ……」

 

「そりゃあそうだろ? なんたってオレは──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────『正義の味方』になる男だからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────沙綾side─────

 

その男の子と出会ったのは、私が高校に入ったばかりのある日。

ちょうど、バンドをやめて若干の後悔をしていた頃だった。

 

カランカラン。

 

「カランカラン? 誰の財布がカランカランだぁ!?」

 

最初は変な人だって認識だったよ? そう思っても仕方ないと思うんだ。

だって、入ってきて最初の一言がそれだったんだよ? 寧ろ、変人じゃなかったらなんなんだろうってレベルだったよ。

 

店のベルに因縁を付ける紅短髪の少年。背丈は170後半ぐらいの見かけ普通の男の子だった。たしかに変人的な行動を真っ先に起こした彼だったけど、見かけだけなら別に変な人というわけではなかった。

 

「あのぉ〜。御客様、お店での大声は他の御客様のご迷惑になるので、お静かにしていただけますでしょうか?」

 

「あ、すみません……!」

 

 

あんまり変な人と話したくは無いけど、意を決して注意すると案外すぐに引き下がってくれて、別にそこまで変な人じゃ無いのかな? って思った。

寧ろ、私に話しかけられてちょっと縮こまっているのを見るに、本当は小心者なんだろうなっと感じた。

 

 

 

 

 

それからも、彼は何度かウチの店に来るようになってきて、同い年って事もあって会話もそれなりにするようになった。

 

特別な話をするわけではなかったけど、同年代の男子と喋る機会が少なかった私にはとても新鮮に感じられて、少し嬉しかったりした。

 

 

そんなある日の事。

香澄達がバンドグループに誘ってきた。当然、やりたいって思ってた。

けど、お父さん……さしては、身体の弱いお母さんに迷惑をかけるわけにはいかないって想いの方が強くて、香澄達の誘いは断った。

 

でも、やっぱり何処かに迷いって物はあって葛藤はしていた。

文化祭で待ってるって言われて、ちょっと嬉しかった。

またバンドが出来るのかもしれないっていう歓喜だった。やはり、私は音楽が大好きで、香澄達とバンドを組んでみたいって思った。

 

そんな時に、お母さんが倒れて病院に搬送された。この時、既に私はバンドを諦めていた。たしかに、音楽は大好きだけど、それでもやっぱりお母さんが大事だから。私は香澄達には何も告げずに病院に向かった。

 

その時はただの貧血だったけど、されど貧血だ。大事をとって2日ほど入院する事となった。

これがきっかけで、やっぱりバンドは出来ないなって勝手に決めつけていて、文化祭にももう間に合わないと諦めていた時……。

 

「ん? 沙綾じゃないか。どうしたんだ? こんなところで」

 

「え、ミヤ、くん?」

 

偶然にも病院でエミヤくんの顔を見ることとなった。

 

話を聞いたらところ、エミヤ君がここに来た理由は、お友達が少し大きな怪我をしたらしい。命に別状がないとは言っていたが、暫くの間は病院生活を強いられる友達に同情したエミヤ君はお見舞いの品を渡しに来たと言っていた。

 

「それで? 沙綾はなんでこんなところにいたんだ?」

 

「それは────」

 

話すかは迷った。正直、こんな話をされてもエミヤ君にとってはどうでもいい事だろうし、また他の人に迷惑をかけてしまうと言う恐怖心から心の内に留めようと考えていた。

 

けれど……。

 

気づけば話していた。 なんでかな? 君の真っ直ぐな目を見ていたら、はぐらかす事を憚られたんだ。

私の中にある蟠りを、ただ少し話をするだけの関係でしかなかった男の子に全て─────。勿論、抵抗はあった。だけど、君の真剣な表情を見ているとそんなものがチャチに思えた。

 

どうしようもない現実に当たるようにして、私は君にさらけ出した。

本当はバンドをしたい事。

でも、お母さん達に迷惑はかけられない事。

前のバンドメンバーに対して罪悪感がある事。

 

全部話し終えて、堪えられなかった涙。

君はその涙を見て、無言でハンカチを差し出してくれた。

そして、君は私の頭を撫でながら─────。

 

「────よし。わかった。後はオレに任せろ」

 

「え? きゃあっ!?」

 

そして、君は私を無理矢理抱きかかえた。

所謂、お姫様抱っこ。女子ならば誰もが憧れるシチュエーションが起こったことに私は不覚にもドキドキした。

見た目は細いのに、意外にもしっかりとした筋肉が付いていて、それが更に私の心を揺さぶってくる。

 

「じゃあ行くぞ?!」

 

「ちょっ─────!?」

 

私が何処に? と聞く前にダンッ!と地面を強く掴む音が鼓膜に届くと同時に、一気に加速した。

 

 

風を切る音だけが支配する世界で、君は全力で疾駆していた。

息も荒げずに、ただ前だけ向いて疾走する姿に私はドキドキしっぱなしだった。普段は戯けた様相しかみせないのに、こんな一面があると言うギャップにやられてしまう。

惚ける私だったが、ふと思い出す。

そうだ、君はどこに向かっているのかと。

 

だから、それを尋ねたら。

 

「あ? んなもん、花咲川女子学園に決まってんだろう!? バンド、したいんだろ!? なら、絶対に間に合わせてやるよ!!」

 

「無理だよ!? 車でもギリギリ間に合わないのに、人を抱えながら走ってだなんて……もう、無理なの……!!」

 

諦めていた。バンドも、友情も……。

けど、君は─────。

 

「大丈夫だ。車でギリギリなら、オレが走っていけば十分間に合う!! 信じろ! オレをっ!!」

 

「っ─────!!」

 

その諦めの悪さは筋金入りだと思った。

間に合うはずもないのに、車よりも速く走れるはずがないのに、君は絶対にやってやるって豪語するんだもん。あの時は困惑したなぁ。

 

それでも、あの時の君の目は真剣そのもので、私は強く君の身体にしがみ付いた。どうか間に合いますようにって願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無謀な願い。どうせ間に合わない。

心の中では分かりきった現実。

 

それでも、不可能を可能にする人がいる。

 

そんな人はいない、ただの妄言だと、この日までは本気で思ってたんだけどなぁ。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!! か、はっ……ぁ、どう、だ……ま、に合ったぞ……!」

 

「ウソ……ホントに、間に合ったの? 私……」

 

起き得ない奇跡。けど、実際には起きた奇跡。

それを引き起こしたのは、ただの少年。花咲川女子学園の校門前の路上で倒れ伏しながら息を絶え絶えにした男の子。

 

君は苦しいはずなのに、満面の笑みを浮かべて会場の方へと指を向けて行けと合図した。

病院からここまで休まずに全力で走ってきたのに、それでも君は笑みを崩さない。

 

だから、私は君の努力を無駄にしないようにして、全力で会場に向かった。

頑張ってくれた君に、最高の演奏を聴かせるために、そこからでもちゃんと聴こえるように全力で楽しむんだと意気込んで走った。

 

 

 

結果、文化祭は成功して、最高の形で演奏を終えることが出来た。

前まで組んでいたバンドメンバーにも謝罪をして、お母さんの体調も良好になり、私自身も香澄達のバンドメンバーとしてやっていくと決意した。

 

この事を真っ先に伝えたい。

私は急かす心を落ち着かせながら、彼が来る事を待ったが、暫くの間は来なかった。

 

何かあったのだろうか? もしかしたら、あの後に事故にでも巻き込まれたのかもしれないと本気で心配していた矢先に、君は店に来た。

しかし、いつもとは違って松葉杖をつきながらだったけど。

 

私がその足はどうしたのかと尋ねると、君は苦笑を浮かべて、

「単なる肉離れだよ。3日ぐらい大人しくしとけば、すぐ治る」

と言っていた。

 

肉離れってそんなすぐに治るものではなかったはずだが、そんな事よりも、その足にしてしまったのは私じゃ無いだろうか?

そんな思いを察してか、君はまた頭に手を置いて笑いかけてくれた。

 

「沙綾がやりたい事が出来るなら、肉離れぐらい大した事ねぇよ」と、言ってクシャクシャと頭を撫でられた。

 

同い年のはずなのに、私の方が年下のように感じられた。

あんなに大きな器の人って中々いない。どうしてそこまで他人に親身になれるのだろうか? どうしてそこまで他人に手を差し伸べられるのか?

 

私は知らず知らずのうちに尋ねていた。

 

すると、君は驚いた顔を一瞬浮かべた後、すぐに笑って─────。

 

「ははっ。 それはそうさ! なんたってオレは──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────『正義の味方』になる男だからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、それが『江見矢 獅楼』の根本を始めて知った時だった。

それと同時に理解した。

起きないはずの奇跡。けど、彼にとってはあの奇跡こそ当然のことだった。

『正義の味方』。そうだよね。そんな大きな『理想』を本気で掲げてる人にはさぞかし小さい難問だったのだろう。

 

 

誰にでも手を差し伸べる君。

 

 

言ってしまえば、別に私じゃなくても君は助けていたのだろう。

 

それでも、私は────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────そんな、貴方に恋をしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ね? やらかしたでしょ?
恋愛表現ってバカ難しいっすよね?!分かる人にはわかるはずダァ!!
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