ポケットモンスター -Hello My Dream-   作:PrimeBlue

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9. クリスタルのイワーク ① ▼

 船に乗ってナツカン島を出立するナオト達をジムのある浜辺から見送るアツミとセンタ。

 

 あれからナオトは一時間ほどで体調を回復させた。少々心配ではあったが、ちゃんと回復するところは腐ってもトレーナーというところだろうか。

 今の時間から島を出れば日が落ちるまでには次の島に着けるということで、そのまま出発したのだった。

 

 水平線に沈んでいく船を見つめながら、アツミが呟く。

 

「私もコイキング育ててみようかしら……」

「ね、姉ちゃん!?」

 

 

 

◓ ◓ ◓ ◓ ◓ ◓

 

 

 

 ナツカン島から発ってオレンジ諸島随一の商業都市であるキンカン島で一泊。次の日にその先にあるポンカン島に辿り着いたナオト達。

 このポンカン島はガラス工芸品で有名な島だ。島の住人のほとんどはガラス工芸家の職人で、目に入る建物は揃って工房を兼用している。そのため、職人達が作る作品目当てに観光客が後を絶たないのだという。

 ナオト達は水などの物資を補給するために上陸したのだが、せっかくなので観光がてら買い物をすることにした。

 

「へえ。話には聞いてたけど、ホントにガラス工芸店ばっかりなのね」

「それにここまでガラス細工が並んでいると壮観だな」

「ミャア!」

 

 様々なガラス作品の並ぶ大通りを興味深そうに見て回るフルーラとタケシ、そして少女の姿のアイ。

 しかし──

 

「……でも、何か変よね」

「そうだな。なんか慌ただしいというか、落ち着きがないというか……」

 

 彼女ら以外の町を訪れている人達は皆ガラス作品には目もくれず、手当たり次第に店の人達から何やら聞き込みをしている様子だった。店側も軒並み困り果てており、中には怒鳴って追い返している店もある。

 異様な光景に戸惑いを隠せないフルーラ達。

 

「興味なさそうと言えば、私達の中にも一人いるわよね」

「ミャウ……」

 

 フルーラは目を細めて後ろを振り返る。アイが困り顔で笑った。

 そう、ナオトだ。彼はフルーラ達の後を付いていきながら、どうでもよさげな顔で並んでいる品々を見流している。ポケモン以外のことにはトコトン興味がないヤツである。

 

「ナオト。ポケモンを象った作品もあるみたいだぞ」

「ポケモンが見たいなら本物を見ればいいじゃないか」

「あんた風情の欠片もないわね。ガラスで出来てるからすごいんじゃない。職人技ってヤツよ」

「職人技、ねぇ」

 

 欠伸を噛み殺すナオトに溜息を吐いてお手上げのフルーラ。

 

「じゃあナオト。クリスタルのイワークには興味があるんじゃないか?」

「クリスタルのイワーク?」

「ああ。ガイドブックに書かれてたんだ」

 

 なんでも、このポンカン島にはクリスタルのイワークが生息しているという噂があるらしい。

 イワークはいわへびポケモンという名の通り、その身体は岩でできている。だが、そのクリスタルのイワークは岩ではなく水晶の身体を持った個体なのだという。

 

「へぇ、そんなイワークがいるのか……」

 

 さすがに興味を持ったのか、仏頂面だったナオトも目を輝かせ始める。

 

「でもホントにいるのかしら。岩がクリスタルになるなんて信じられないし」

「元々クリスタルの身体で生まれたのかもしれないたろ。なあ、せっかくだしそのイワークを探してみないか?」

「そうこなくちゃな。よし、まずは情報収集からだ!」

「ミャ!」

 

 急に元気になったナオトの提案により、一行はクリスタルのイワーク探しをすることになった。

 岩タイプ専門のジムリーダーをしていたタケシもナオトに負けないくらい興味があるらしく、気合いの入れ様はむしろ彼の方が大きい。

 

 

「ダメッ!!」

 

 

 だが、そんなナオト達に向けて静止の声がかかる。声のした方を振り向くと、桃色の髪をした少女が焦ったような目でナオト達を見ていた。

 

「えっと……君は?」

 

 タケシが首を傾げて尋ねると、少女は慌てて弁解し始める。

 

「ク、クリスタルのイワークなんているわけないわ! 探したって見つかりっこないんだから!」

「……そうなの?」

「そ、そう! だから絶対探さないでね! 絶対よ!」

 

 そう言い残して、少女はそそくさと路地の方へ走り去ってしまった。

 

「何だったのかしら? あの子。あれじゃホントにクリスタルのイワークがいるって言ってるようなもんよね」

「分からないが……何か事情があるのかもしれないな」

 

 首を傾げるフルーラとタケシ。

 その隣に立つナオトは、ただ黙って少女が走り去っていた後を見続けるのだった。

 

 

 

 

 先程の少女にああ言われたものの、真に受けて帰るわけにもいかない。ナオト達は町でクリスタルのイワークについて調べることにした。

 

 調べてみて分かったことだが、どうもナオト達以外の観光客の然程は噂を聞きつけてクリスタルのイワークをゲットしようと島を訪れたトレーナーばかりであったようなのだ。

 

 確かに、クリスタルのイワークなんて珍しい個体がいると知ったらゲットしたいと思うのが普通だ。だが、ナオト達は別にゲットしたいと思って探しているわけではない。一目見ればそれで十分なのである。

 他のトレーナーはあまりクリスタルのイワークの情報を得られていない様子。ナオト達もさらなる情報を求めて町中を歩き回った。

 

 その中で、一軒のお店が目に留まる。

 やたらガラの悪いトレーナーがその店の店主と思われる人の胸倉を掴んで無理やり話を聞き出そうとしていた。

 

「痛い目見たくなかったら、さっさと例の情報を教えな。テメェが情報を持ってることは知ってんだよ」

「……ぐっ」

「おいっ、何してるんだ! 乱暴はよせ!」

 

 さすがに目に余ると感じたタケシが駆け寄って止めに入る。フルーラとナオトも慌てて後を追いかけた。

 

「あ? テメェらもクリスタルのイワークをゲットしたくてこの島に来たんだろ? この店の店主はそのイワークがいる場所を知ってるんだぜ」

「だからって、そんな乱暴に聞き出していいわけ? さっさと離しなさいよ」

 

 男の言葉にフルーラが噛みつく。その後ろからナオトとアイもファイヤーの如く男をにらみつける。

 

「……ちっ」

 

 居心地が悪くなったのか防御力が低くなったのか、男は店主を放り出すと舌打ちを残してその場を去っていった。

 

「ゴホッゴホッ……あ、ありがとう。助かったよ」

 

 店主が咳き込みながらもナオト達に感謝する。

 

「いえ……それより、大丈夫ですか?」

「ああ。平気だよ。おーいマサミ! もう出てきていいぞ!」

 

 心配するタケシに笑って答え、店の奥に向かって声をかける店主。その声を聞いてか、店の奥から恐る恐るといった様子で少女が出てきた。

 

「君は、さっきの!?」

 

 ナオト達は少女を見て驚く。

 マサミと呼ばれたその少女は、先程ナオト達にクリスタルのイワークなんていないと言って走り去っていった、あの桃色の髪の少女だったのだ。

 

 

 

 

「さあどうぞ。自由に見ていってよ」

 

 マサミの兄、店の店主であるイサオに店の奥へ案内されるナオト達。助けてくれたお礼に工房を見せてもらえることになったのだ。

 

「おお、これは……」

「綺麗……」

「ミャア~……」

 

 その中で、机の上に飾られているイワークを象ったガラス作品を目にして感嘆の声を上げるタケシとフルーラ、そしてアイ。

 

「このイワークは、僕の祖父が作った作品なんだ。僕もこの作品と同じくらい──いや、この作品を超える物を作ることを目標に励んでいるところなんだよ」

「へぇ……」

 

 ガラス作品に興味を示さなかったナオトでさえ、その精巧さに目を奪われていた。まるで今にも動き出しそうだ。クリスタルのイワークが実在するとしたら、丁度こんな感じなのだろう。

 そこで、はたと気づく。

 

「って、ひょっとしてクリスタルのイワークはこのガラス作品のことだったってオチなんじゃ……」

「ははは! 違うよ。クリスタルのイワークはちゃんと実在するさ」

 

 ナオトの懸念を笑いながら否定したイサオ。

 クリスタルのイワークは実在する。その言葉にナオト達はもちろん、彼の妹であるマサミも驚きの表情で兄を見た。

 

「お、お兄ちゃん!」

「大丈夫だよマサミ。この人達は町にうろうろしてる連中とは違うみたいだ」

 

 話を聞いてみると、なんとイサオとマサミはほんのつい最近クリスタルのイワークと実際に会ったのだという。

 ところが、それを境にどこからかクリスタルのイワークを見たという噂が町中どころか島の外にまで広がっていった。もちろん、以前からクリスタルのイワークの噂は存在していたが、イサオがそのイワークに会ってからというものそれが急激に広がっていったのである。

 おかげで、オレンジ諸島の外から噂を聞きつけたトレーナーやハンター達がポンカン島へ集まってくるようになってしまったのだ。

 

「私、あのイワークを守りたいの!」

「マサミ。いい加減にしなさい」

「お兄ちゃんはイワークがゲットされちゃってもいいの!?」

「……僕らも、最初はクリスタルのイワークをゲットしようとしていたじゃないか。その必要がなくなったからゲットしなかっただけだ」

 

 マサミはクリスタルのイワークがゲットされることを防ぎたいみたいだが、対するイサオはそれに消極的だ。

 

「ゲットしようとしてた?」

「ああ。スランプに陥っててね。クリスタルのイワークをゲットすれば、インスピレーションが湧くと思ったんだ」

 

 そして、念願叶って出会うことができた。しかし、イワークを目前にしてゲットすることを止めたのだ。バトルの最中に目的のインスピレーションを得ることができたから。

 結局ゲットすることはなかったが、そういう経緯もあって他人があのイワークをゲットすることを止める権利は自分にはないと思っているようである。マサミのこともあって情報を渡すことはしていないようだが。

 

 しかし、マサミは兄の考えに首を横に振った。

 

「ダメだよ! あの人達、みんなお金儲けのためにイワークをゲットしようとしてるんだよ!」

「何だって……!?」

 

 なんでも、マサミは島に集まった者達がイワークをゲットしたら儲けた金は山分けしようという話を偶然聞いてしまったらしい。

 

「ゲットされたらきっとひどい目に合っちゃう!」

 

 マサミは必死に兄に訴える。彼女はクリスタルのイワークのことをとても大事に思っているようだ。一度イワークと出会ったことによって、あの神秘的な存在を守らなければならないという意識を持つようになったのかもしれない。

 

「……ミャウ」

「アイ?」

 

 話を聞いていたアイがナオトの服の裾を引っ張った。アイの意思を感じ取るナオト。

 

「……二人とも。僕──」

「クリスタルのイワークを助けたいって言いたいんでしょ? あんた一人じゃ心配だし、仕方ないから私も手伝ったげるわ」

 

 遮るようにして答えたフルーラの言葉に、ナオトはポカンと口を開ける。

 

「もちろん、俺も協力するぞ」

 

 タケシも頷いてくれた。元より、彼なら一人でもイワークを助けるために奮闘するだろう。フルーラは一言余計だが。

 それでも、二人が協力してくれることをナオトはとても嬉しく感じた。

 

「お姉ちゃん達、イワークを助けてくれるの!?」

「ええ。私達に任せなさい」

 

 顔を輝かせるマサミにフルーラがウィンクして答える。

 

「でも……助けると言っても、どうやって?」

 

 イサオの言葉に、腕を組んで考えるナオトとタケシ。

 

「……噂が島の外にまで広がってるんじゃ、今島にいるハンターをどうにかしてもイタチごっこだ。イワークに別の場所へ移住してもらうよう説得するしかない」

「ああ。それしかないだろうな」

 

 ナオトの提案にタケシも賛同する。

 

「説得するって、そんなことできるの?」

「俺達はポケモンの言葉を理解できないけど、ポケモンは人間の言葉をある程度理解してくれるんだ」

「そもそも、理解してなかったら技の指示なんかできないだろ?」

「あ、それもそうね」

 

 二人の説明を聞いて、フルーラは納得したように頷く。

 

「…………」

 

 そんな会話を、店の外から盗み聞きしている者がいたのだが、ナオト達がそれに気づくことはなかった。

 

 

 

◓ ◓ ◓ ◓ ◓ ◓

 

 

 

 マサミとイサオに頼んで、クリスタルのイワークと出会った場所に案内してもらうことになった。

 

 件のイワークとは、ポンタン島の離れ小島で出会ったのだという。離れ小島と言っても、大潮の時に潮が引けば道ができるのでその間だけポンタン島と地続きになるらしい。

 だが、今日は大潮の時期ではないため、一行はフルーラの操縦する船に乗ってその離れ小島に向かった。

 

 浜辺に船をビーチングさせて、小島に生い茂る森の中へ入る。森を進んでいくと、その先には崖の裂け目にできた洞窟があった。

 

「この洞窟の中でクリスタルのイワークを見つけたんだ。中は一本道のはずだから、迷うことはないよ」

「でも、都合良く同じ場所にいてくれるかしら?」

「それは入ってみなきゃ分からないさ」

「お姉ちゃん達、早く行こう!」

 

 迷っていても仕方がない。ナオト達はマサミに促されるまま、意を決して洞窟に入った。

 

 懐中電灯を持ったイサオとタケシを先頭に洞窟を進んでいく。響き渡るのは自分達の足音。そして、ポタポタと水滴の落ちる音。それらを聞きながら奥へ奥へと歩いていく。

 すると、視線の先で微かに明かりが漏れているのが見えてきた。自然と足早になった一行がその場所を通り抜け、目が一瞬眩む。

 

 視界が戻ると、そこは開けた空間であった。天井に空いた隙間から太陽の光が注いでいる。そして、目の前にはその光を反射して幻想的に青く煌めく地底湖が広がっていた。

 

「……綺麗」

「ああ。まさに秘境ってヤツだな」

「ミャウ……」

 

 壁や地面には天然の水晶が群生している。天井の隙間から差す日差しの光が地底湖の底に届いて乱反射を起こし、それらがさらに水晶を神秘的に煌めかせているのだ。

 

「こんな景色が見られるなんて、やっぱり旅に出てみるものね」

「でも、クリスタルのイワークの姿は見当たらないな」

「……あんたね、もうちょっと感動とかそういうのないわけ?」

「何言ってるんだ。僕達がここに来た目的はイワークを助けるためじゃないか」

「それはそうだけど……はぁ」

 

 相変わらずポケモンのこととなると情緒もへったくれもないナオトにフルーラは溜息を吐く。

 

「すまない。確かに僕らはここでクリスタルのイワークと出会ったんだけど……もしかしたら、湖の底に潜っているのかも」

 

 そう言ってイサオは湖を覗いてみる。が、透明度はあるものの底までは見えない。

 

「ちょっと待ってください! 湖の底に? イワークは水に弱いはずじゃ……」

 

 イサオの言葉に信じられないとばかりに声を上げるタケシ。

 イワークはじめんといわ、二つのタイプを合わせ持つポケモンだ。故に、弱点となる水を極度に恐れている。いわタイプのエキスパートでイワークをパートナーとしているタケシがその疑問を浮かべるのは至極当然のことだろう。

 

「クリスタルのイワークは通常のイワークとタイプが異なるみたいなんだ。みずタイプの技が通じなかったんだよ」

「なるほど……そういうことなら、俺に任せてください! 出てこい、ズバット!」

 

 そこで、タケシがモンスターボールを投げてズバットを繰り出した。

 こうもりポケモンのズバット。主に洞窟の中に生息しているこのポケモンは両目が退化している。その代わり、口から放つ超音波で周りの状況を把握するのだ。

 

「ズバット! 湖の中をちょうおんぱで調べるんだ!」

「──!」

 

 タケシの指示を受けたズバットは人間には聞こえない鳴き声を上げて答えた。そして、湖へ向けてちょうおんぱを放ち始める。

 

「……それにしても、タイプの異なるイワークか。いわゆるリージョンフォームってヤツだな」

「リージョンフォーム?」

「ポケモンが自分の住んでいる環境に適応した姿のことをそう呼ぶんだ」

 

 そんな話をナオトとフルーラがしていると、ズバットがちょうおんぱを止めてタケシの元へ戻ってきた。

 

「──!」

「ミャ、ミャウミャ」

 

 何か伝えようとしているので、アイが応対する。ズバットの話を聞いたアイが手頃な棒を拾って地面に絵を描いてみせた。

 

「ありがとう。ズバット、アイ。これは……湖の底に横穴があるみたいだな」

「じゃあ、イワークはその穴を使ってこの湖を出入りしてるってわけね」

 

 穴はどこかに繋がっているのだろうが、潜ってみるにしてもどのくらいの長さがあるのか分からない。

 

「よくやった、ズバット。なあナオト。コイキングに見てきてもらうのはどうだ?」

「コイキングに? それは……ちょっと難しいかもしれない」

 

 ズバットをモンスターボールに戻したタケシの提案に、ナオトは難色を示した。

 コイキングは他の魚型ポケモンと比べても視力が悪い。加えて、光の届かない穴の中では期待する成果は得られないだろう。

 

「じゃあ、私が一緒に潜るわ。それならいいでしょ?」

 

 ナオトがそれを説明すると、話を聞いていたフルーラが唐突に服を脱ぎ出し始めた。タケシやアイ達が驚く中、当然ナオトも顔を真っ赤にして慌てて顔を背ける。

 

「ちょっ、待て! お前何いきなり脱ぎ出してるんだよ!?」

「馬鹿ねあんた。ちゃんと見なさいよ」

「はあ!? 見ろって…………あれ?」

 

 恐る恐るチラリと目線を向けたナオトは目をパチクリとさせる。

 そこには、チューブトップ型のビキニを着たフルーラが立っていた。彼女は服の下に水着を着ていたのだ。

 

「顔真っ赤にしちゃって。あんた意外と可愛いトコあるじゃない」

「う、うるさいな! いきなり脱ぎ出したりなんかするからだろ!」

「まあまあ。それでフルーラ、どうするつもりなんだ?」

「懐中電灯持った私がコイキングの目になるのよ。任せといて、泳ぎには自信あるから。たまにお小遣い目当てで海女さんの手伝いとかもしてるし」

 

 そう自信たっぷりに言ってテキパキと準備体操を始めるフルーラ。ナオトは妙な緊張と気恥ずかしさから水着姿の彼女を直視できないでいる。

 

「……お、おい。本当に大丈夫なのか?」

「余計な心配してる暇あったら、さっさとボールからコイキング出しなさいよ。ほら早く」

「わ、分かったよ」

 

 催促されて渋々ナオトはモンスターボールを投げてコイキングを出す。光と共に湖に現れたコイキングは元気よく跳ねて洞窟内に水音を響かせた。

 

「よろしくね、コイキング。ナオト、あんたこれ持っててちょうだい」

「は? うわっ!?」

 

 フルーラはおもむろに脱いだ服をナオトへ放り投げて寄越す。そして、常備していた小型酸素ボンベを取り出して咥えると湖に飛び込んだ。

 ナオトが服を受け取ってあたふたと慌てる間に、彼女はコイキングと共にあっという間に湖の底へと消えていく。

 

「お姉ちゃん、大丈夫かな……」

「一応僕もパルシェンを連れてるから、出して追いかけさせた方が……」

「いえ、ナオトのコイキングは強いですから。心配いりませんよ」

 

 周りがフルーラのことを心配する中、ようやく落ち着いたナオトは腫れ物でも扱うかのように投げて寄越された服を摘まんだ。女の子特有のほのかに香る甘い匂いが鼻を擽る。

 

「……アイ、悪いけど持っててくれるか?」

「ミャア……」

 

 アイは困ったなぁという顔でフルーラの服を受け取るのであった。

 

 

 

 

 一方、水中のフルーラはズバットの言っていた穴を見つけ、コイキングと共にその中へ潜り込んだ。

 

 穴は直径六メートルほど。穴自体はずっと奥まで続いているが、数十メートル泳いでみると所々に大きな横穴が空いているのが目立ってくるようになる。

 フルーラはその横穴へ順に懐中電灯を向けて照らしてみたりしながら奥へと進んだ。

 

 ふと、フルーラと同じ方向を見ていたコイキングが気配を感じて背後を振り返る。

 

「コッ!?」

(どうしたの? コイキング)

 

 途端、焦ったように水中でじたばたし始めたコイキングに首を傾げ、背後を振り返るフルーラ。

 

(──!!)

 

 そこには、懐中電灯の光を反射して青く煌めく巨大な塊が蛇の如く蠢いていた。

 

 




オレンジ諸島編といえばクリスタルのイワークを思い出す人も多いのではないでしょうか?

……いや、それ以前にオレンジ諸島編を観たことがある人が果たしてハーメルンに何人くらいいるのだろうか?

■イサオ
ポンカン島で工房を営んでいるガラス職人。
パルシェンとリザードを連れており、リザードの炎を使ってガラス細工を作っている。
サトシ達の協力でクリスタルのイワークと出会うことができ、スランプを脱した。

■マサミ
イサオの妹。
なんだかみんなの物語のラルゴみたいになってしまった。髪の色も同じ桃色だし。




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