太陽の軌跡   作:三年後

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入学式~不安と期待~

12:40 トールズ士官学院第II分校 正門前

 

「ここが、第II分校か。さすがに新校舎だけあって現代風のきれいな造りだなあ。」

 

 武器屋をでたレインはリーヴスの宿酒場【バーニーズ】でランチを食べ、正門前に着いていた。

 

「君も入学生だな...ってもしかしてレインか?」

 

「ん?」

 

 校舎の雰囲気を感じながら正門を抜けると、突然声をかけられた。それもどうやらレインのことを知っているらしい。

 

「クルトじゃないか!!久しぶりだな、3年前の共同稽古以来じゃないか!」

 

 そこにいたのは水色の髪をもつ、整った顔立ちを持つ男性だった。彼はクルト・ヴァンダール。アルゼイドと双璧を成す帝国の剣の流派【ヴァンダール流】の剣士だ。アルゼイド流とヴァンダール流は少し前までお互いの成長のために定期的に共同稽古を行っていた。ただ、2年前の内戦など帝国の情勢が安定していない今日において、だんだんその余裕もなくなってしまい、最近ではそれもなくなってしまっていた。

 その後、クルトとの久々の再会に話が弾んだ。話をしていると、どうやらリーヴスに早く着いてしまったクルトは街でたまたま教官を名乗る赤毛の男性に、入学式に来る学生の案内を頼まれたらしい。入学案内に正門でお出迎えと書いていたのに関わらず、どうやら教官陣の人手がたりなくなったらしい。

 

「入学早々災難だったな、クルト。」

 

「本当にこんな役回りばかりな気がするよ。まあ、これから同学になる人と先に挨拶しておけるからよかったと思うようにしたよ。」

 

 レインがいたわりの言葉をかけると、意外にもクルトから前向きな返答が返ってくる。そんな風に考えられることにクルトの真面目さと人のよさを感じ、実は自分も早くリーヴスにに着いて街の探索を堪能していたなんてとてもレインには言えなかった。

 

「そうか、これから2年は一緒だな。良い稽古相手が出来たと思うとうれしい限りだ。よろしくなクルト。」

 

「ああ。こちらこそよろしく頼む。」

 

 そうしてクルトと別れたレインは案内役のクルトに言われた通り、教室に荷物を置いた後入学式会場であるグラウンドに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

13:05 第II分校 グラウンド

 

 入学式は始まって早々驚くことの連続だった。まず、入学式会場にいる生徒が自分を含めて21名しかいないという、あれだけ大きな校舎とは不釣り合いな人数であったことだ。

 そしてそれとは比べられないほどの驚きは意外過ぎる教官陣にある。レインの姉ラウラ・S・アルゼイドのかつての級友で、今では帝国の英雄【灰色の騎士】となったリィン・シュバルツァー。導力器を発明したエプスタイン博士の三高弟の一人、G・シュミット博士。そして何より驚いたのは、分校長を務めるのがアルゼイド流とヴァンダール流2つの皆伝に至り、【黄金の羅殺】の異名を持つオーレリア・ルグィンであることだ。

 そして入学式早々不安も一つできてしまった。先程、教官というより軍人色の強い、黄色髪の教官が略式としての入学式やクラス分けなどを一通り話したのだが、レインの名前が呼ばれなかったのだ。まさか、手続きのミスで入学できないなんてことになっていたらどうしようと不安になるが、隣に並んでいるクルトもなんだか落ち着かない様子だし、多分さっきも名前を呼ばれていないと思う。呼ばれていないのはなにか理由があるのだと信じたい。

 

「薄々気づいている通り、この第II分校は"捨て石"だ。」

 

 黄色髪の教官が一通りの話を終えた後、分校長の話になったのだが、オーレリアの第一声は衝撃的なものだった。————捨て石ってなんだ!?————と、捨て石だなどと考えもしていなかったレインは周りの様子を伺うが、大体みんな気づいていたかのような落ち着きぶりである。クルトも先程より落ち着いて分校長の話を聞いているので、本当に気づいていなかったのはレインだけなのかもしれない。

 

「本年度から皇太子を迎え、徹底改革される【トールズ本校】。そこで受け入れられない厄介者や曰くつきをまとめて使いつぶすためのな...。そなたらも、そして私を含めた教官陣も同じであろう。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 続けられる分校長の話に生徒たちは真剣に耳を傾けている。正直、レインにはトールズにとって厄介者扱いされる覚えが全くなかったので、全然話が入ってこなかったのだが...。

 

「分校長!それはあまりに。。。」

 

 さっきまで話していた黄色髪の教官があまりに辛辣な分校長の言葉にたまらず反論しようとする。厄介者の自覚がないレインにとっては正直気分のいい話ではなかったので、————がんばれ、黄色髪の人!————と思ってしまった。

 しかし、その考えはそのあとに続けられるオーレリアの話によって考えを改めることになる。

 

「だが、常在戦場という言葉がある。平時で得難きその気風を学ぶには絶好の場所であるともいえるだろう...。自らを高める覚悟なき者は今、この場で去れ!!...教練中に気を緩ませ、女神のもとへ行きたくなければな。」

 

 最後の最後の分校長の厳しくも、生徒を鼓舞するその言葉にレインも今度は共感するところがあるらしく、これからの学院生活への決意を改めて固めていた。

 オーレリア・ルグィンは2年前の内戦では貴族連合の総司令として常勝無敗の戦果をあげ、その後の北方戦役でもノーザンブリアへ進攻し新たな帝国領とするなど、剣士としてだけでなく将軍としての器も人の域を超えていた。その名将たる由縁が彼女のこの人を鼓舞する力であり、彼女の部隊の兵士は普段以上の力を出すことが出来ていた。

 

「フフ。ならば、ようこそ。トールズ士官学院第II分校へ...。若者よ、世の礎たれ...。かのドライケルス帝の言葉をもって諸君らを歓迎させてもらおう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 分校長の話しが終わった後、入学式は間もなく閉式した。その後、生徒たちは先程あったクラス分けに従って移動を始めた。

 

————そういえば、クラス分けで名前がなかったんだった。————

 

 完全に分校長の話の勢いにもっていかれてそのことを忘れてしまっていた。どうやらどうすればよいか分からなくなっているのはレインとクルト、後ピンク髪の女子と銀髪の少女の4人だった。

 

「って。なんか気迫に飲み込まれちゃったけど...。」

 

「ああ...。結局のところ僕たちはどうすれば。」

 

 ピンク髪の女子もレインと同じように分校長の話に飲まれていたらしい。やっぱり、レイン以外の3人も何も聞いていないようだ。

 

「ここまで来て入学できないとかなったら相当困るんだが...。」

 

「はい...それは困ります。ですが、手続きは正式なモノが通ったのを確認済みなのでその心配はないかと...。ああして、リィンさんの配属も言われていませんし。」

 

 レインが相当不安を募らせていたが、意外にもどう見てもまだ子供という感じの銀髪の少女が、冷静に、そして的確に返答した。そして、彼女の言う通り、レインの不安は必要のないものだった。

 

「将軍...いえ、分校長。そろそろクラス分けの続きを発表してもらえませんか?」

 

 リィンのすべてわかってるというような言葉を聞いて、銀髪の少女以外の3人は少し安堵の表情を浮かべた。

 

「ふふ、よかろう。本分校の編成は、本校のIからVI組に続くVIIからIX組の3クラスとなる。そなたら4名の所属は【VII組 特務科】。担当教官はその者、リィン・シュバルツァーとなる。」

 

 そうして分校長が語るVII組の名と、姉のかつての級友であるリィンが教官と知り、レインはより一層学院生活への期待を膨らませた。




読んでいただきありがとうございます。

今回は基本的に原作ベースで会話を進めました。
始めの方はこの形が多くなるかもしれませんが、慣れてきたら自分で書きたい内容を増やしていきたいと思います。よろしくお願いします。
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