「さーて、今日は久しぶりに影ミッションに挑戦するとしようか~!」
ある日、ヒィは空を飛ぶメイナのほうきに乗ってそうはしゃいでいた。
「ご主人様。危ないですから、そんなにはしゃがないでください」
そうたしなめるメイナもいつもの光景である。
「てへへ……ごめん」
「それでご主人様、今日は何をする予定なのですか?」
そう聞いてくるメイナに、ヒィは元気そうな笑顔で答えた。
「うん。今日は、『ドレンの頼み』をやろうと思って!」
* * * * *
「結構きつかったね……」
「そうですね……」
影世界の中で、二人はそう言葉を交わしながら、息を整えていた。
意気揚々と影世界に突入したヒィとメイナ。
しかし、上級に出てくる敵はどれも固く、一体倒すのに二人はかなり苦労した。当然てこずってる間に、他の敵に襲われてピンチになることも多々。
「一度出て、中級でやり直そうか……」
「そうですね……」
そう言って立ち上がる二人に、ゴーレムの一撃がさく裂した。
* * * * *
「よし、ちょっと危なかったけど、どうにか集まったね」
「お疲れ様です、ご主人様♪」
改めて中級の『ドレンの頼み』に挑んだ二人。今度はほどよい強さだったこともあり、ちょっと苦戦することもあったが、どうにか素材を集めることができた。
そしてそれらを抱えてかまどに行く二人。この素材を錬成して結晶にして錬金術師ドレンに納品するのが、今回のミッションなのである。
「さーて、それじゃはじめるとするか」
そしてかまどに向かうヒィ。しかし。
「………」
「………」
「………」
「あの、どうしたのですか、ご主人様?」
かまどに向かったまま硬直のまま無言のヒィを訝し気に見つめていたメイナが彼女に問いかける。
ヒィはそのまま硬直していたが……。
「はは……えーと、錬成ってどうやってするんだっけ?」
「は?」
そう、ヒィは錬成のスキルを持っていないのであった。
「……」
「い、一度出て、錬成スキルを習得してからまた来ようか」
「そうですね」
三度目の正直となればいいけど。
そう思いながら、メイナは主と影世界を出て行ったのであった。
* * * * *
「でも、なんか疲れたね。今日は冒険はここまでして、のんびりしたことをして過ごしたいな~」
「そうですね。それでは、どうしましょうか?」
ほうきの上でメイナにそう問いかけられて、ヒィは考え込んだ。
考えることしばし。やがて、彼女の頭に、ある考えが浮かんだ。
「そうだ。ティルコネイルに行こうよ!」
「ティルコネイルに?」
「うん。あそこで農作業のバイトして過ごそうよ」
そう笑顔で言うヒィに、メイナも微笑んだ。
「それはいい考えですね。そうしましょう」
そして、ほうきはティルコネイルのほうに飛んで行った。
* * * * *
じょき……じょき……
ティルコネイル郊外の畑に、刈り取る音が響く。
その畑の一角、鎌をもって麦刈りに精を出していたヒィが立ち上がり、汗をふいた。
「ふぅ、こんなものかな?」
「はい。言われた分を作る分は、十分集まりました。お疲れ様です、ご主人様」
そう言って、メイナはヒィにタオルを差し出した。
ヒィはそれを受け取って顔の汗をぬぐう。笑顔が浮かぶ。いかにも、「やりきった!」という感じの、満足そうな笑顔だ。
「ありがとう。それじゃ、水車に持って行って粉を作るとしようか」
「そうですね。どうぞお乗りください」
メイナがほうきを取り出してまたがると、ヒィも収穫した麦を抱えて、その後ろにまたがった。そしてほうきは飛んでいく。
ヒィが引き受けたのは、小麦粉を作って納品する、というものだった。
畑で小麦を収穫し、して水車小屋で小麦粉にして、それを納品すれば完了。
それらの作業を、ヒィは無事こなして、依頼主である食料品店に納品したのだった。
* * * * *
そしてその次の日。
ヒィとメイナの姿は、再び影世界にあった。
「うわぁ!」
「ご主人様! 大丈夫ですか?」
「ち、ちょっと痛いけど、大丈夫……」
ブラックウィザードのファイアボルトで吹き飛ばされたヒィが、態勢を整えながら立ち上がる。
今度は中級の『ドレンの頼み』に挑んだ二人。しかし、やはり中級でもこの影ミッションはきつかった。
最初はゴーレム二匹から同時に狙われて袋叩きにされ(もちろん、態勢を立て直して返り討ちにした)、そして今はブラックマジシャンと、シャドウアルケミストに袋叩きにされている。
だが、戦いを続ければ慣れてくるもので……。
ガイン!
シャドウアルケミストの放ったパンチを、ヒィは盾で受け止めた。慣れたもので、少しぐらついただけで踏みとどまる。
「その手は二度とくわないよ!」
そしてメイスの一撃をふるって、アルケミストを吹き飛ばす。この一撃が奴へのとどめとなった。
ブラックマジシャンはあわててファイアボルトを詠唱し始めるが、それを黙ってゆるすヒィではない。
「とりゃー!」
突進して間合いを詰め、盾でマジシャンに打撃を与えて、詠唱を中止させる。そして。
「今までのお返しだよ!」
メイスでの強烈な一撃で、マジシャンにとどめを刺したのだった。
そして、息絶えたマジシャンの懐から、一つの丸い水晶が転がり落ちた。今回のミッションで使う、ヒィたちの目当てのものである。
「これで魔力の結晶も二つ目か。これでやっとそろったね」
「そうですね。スキルも手に入れたし、これで大丈夫でしょう」
「うん。それではさっそく作ろうか」
そして再びかまどに向かう二人。
ところが……。
「一個目……失敗」
表情を曇らせるヒィに、メイナがあわててフォローを入れる。
「だ、大丈夫ですよ、ご主人様っ。次はできますって」
「そ、そうだね。こ、今度こそ……っ」
そして二度目に挑戦……。
「……失敗。集め直すには時間が足りないし、今回は失敗かな……」
「そうですね。あ、ご主人様、気を落とさないでください。次に挑む時にはきっとできますよ」
「あはは……ありがと、メイナ」
苦虫をかみつぶしまくったあとに、無理やり笑ったような笑みを浮かべてメイナに礼をのべるヒィ。
と、そこで、メイナが何かに気付いた。
「あっ、そういえばご主人様。情報を確認してみてくださいっ。タイトルリストを」
「タイトルリストを……?」
怪訝そうな顔を浮かべながら、ヒィは自分の情報を確認する魔法を発動した。そして、空に映し出されたパネルをタッチして、タイトルリストを呼び出す。
すると。
「あっ……シールドマスター……」
そう、リストの中に白く浮かぶシールドマスターの文字。ヒィが前々から狙っていたタイトルだ。
「きっと、さっきアルケミストの攻撃を盾で受けた時に獲得したんでしょうね。おめでとうございます!」
「ありがとう。今回のミッションは失敗だったけど、こんな嬉しいこともあってよかったな」
そしてヒィも、やっと晴れやかな笑顔になった。まだどこか曇りが残っていたが。
「それじゃダンバートンに戻ろうか」
「はいっ。今晩は何にしましょうか?」
そんな会話を交わしながら、主従は影世界を出ていくのだった。彼らの生きる世界に戻るために。
第一部 完
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
とりあえずここまでで、第一部完とさせていただきます!
希望があれば、また第二部として始めさせていただこうと思っていますのでよろしくです!