ダンバートンから鉱山街バンホールへ続く道。
そこに、重厚な鎧と大きな盾を持ったヒィが歩いていた。
「チャソおばさんに、らふてぃおずアーマーとカイトシールド買ってもらえたし、これならきっと大丈夫だよね!」
チャソおばさんとは、昔、ヒィが世話になった女魔法剣士のことだ。
冒険で色々稼いでいるらしく、時々、ヒィは色々なものを送ってもらって助かっている。
この鎧と盾も、チャソおばさんからもらったものだ。
今回、ヒィがバンホールにやってきたのは、そのチャソおばさんへのお礼も兼ねてのことだった。
チャソおばさんの知り合いに、チャスという女性巨人族(ジャイアント)がいる。
チャスもヒィと同じくらいにこの世界に転生してきたのだが、前世でものを作るのが好きだったからか、鍛冶屋を目指し、鍛冶の練習をはじめたのだ。
いつもは、チャソおばさんが、練習のために必要な鉱石を調達してきてあげたのだが、最近は他の仕事が忙しく、チャスも手持無沙汰な日が続いているという。
そんなことをチャソおばさんとの文通で知ったヒィは、鎧と盾を送ってくれたお礼にと、彼女の代わりにバンホールの鉱山洞くつ・バリダンジョンへと、鉱石掘りに来た、というわけだ。
「さーて、がんばるぞー!」
彼女は知らない。バリダンジョンは、現在の彼女には過酷すぎるほどの魔窟だということに。
* * *
祭壇の上に、以前、クモを倒して手に入れた札……魔符……を落とす。
一瞬の浮遊感のあと、周囲の景色が一変し、眼前に下へと続く階段が現れた。それを降りていく。
これまで、アルビダンジョンに通っていたヒィにとっては、慣れたことだ。
通路を歩いて部屋にたどり着いた。そして部屋の片隅に無造作に置かれた宝箱を開く。
そして出現したのは、膝までの大きさの小鬼だった。
「こ、これがおばさんが気を付けろと言っていたインプ……?」
そのヒィの声に反応したのか、出現したインプたち四人が、一斉に彼女のほうを向いた。
そして口々に何かを唱え始める。
「え、え……?」
そのとき。
「ライトニング!」
ビシィッ!!
「ひゃん!!」
体を熱く鋭いものが駆け抜けた感覚に襲われ、思わず後ずさる。
いや、それは錯覚などではなかった。実際にインプが放った稲妻の魔法、ライトニングボルトがヒィを直撃したのだ。雷とは違い、一撃で命を奪うほどの威力はないが、それでも相手の生命力を削るだけの力はある。
態勢を立て直すヒィ。だが、そこに別のインプが。
「ライトニング!」
ビシィ!!
「うひゃん!!」
再び電撃を受け、ヒィがまた態勢を崩してしまう。そこにインプが近づき……
「うわぁ~!!」
全力の一撃(スマッシュ)を受け、ヒィは振っ飛ばされた。
「こ、このぉ……!」
そのインプに突進し、インプを殴り倒す。倒すことはできなかったが、少なくはないダメージを与えることはできた。
しかし……
「ライトニング!」
「ライトニング!」
ビシィ!! バシィ!!
「ひぎゃっ!!」
今度は二匹から同時にライトニングボルトを受けた。これはかなり効いた。
* * *
「はぁ……ふぅ……」
それから数十分後。最後のインプが消滅するのを見て、ヒィはその場にへたり込んだ。
まさに泥仕合であった。
ライトニングボルト連打を受けたヒィは頭に血が上り、目をつけたインプを、電撃を受けながらおいかけ振っ飛ばし、倒したところで次のインプを……を繰り返した。ダメージが危険な状態になったと感じたらポーションを飲み、また追いかける。
弓で射る、という考えは完全に頭から消えていた。もっとも、それほど上手でない弓で射ても、一撃必殺とはならないだろうが。
そして今、ポーションがあと2、3本という状態で、やっとインプたちも全滅させた、というわけだ。
息を整えたヒィが前を見た。通路が伸びているのを見て、顔が我知らず青ざめる。
そう、まだまだ先は長い。確かチャソおばさんや、バンホールに来るまでに出会った他の冒険者から聞いた話によれば、鉱脈がある部屋には、まだ4、5つの部屋を通らなければならないという。
つまり、あの恐ろしいインプとの戦いが、少なくとも2、3回は続く、ということだ。
さすがにあの泥試合の激闘を続けるだけの実力も気力も体力も、今のヒィにはない。
「……もっと強くなってから来よう……。チャソおばさんには済まないけど……」
そう言って、ヒィは今来た道を引き返した。
チャソおばさんへの手紙に、なんて書こうかと考えながら。
To Be Continued
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