ヒィのマビ日記   作:ひいちゃ

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6月第3章~『袋叩き』はいけない!

「うーん、久しぶりのダンジョンだなぁ」

「そうですね。前は、無駄だったキア下級でしたね」

「うぐぅ、もうその話はやめてって……」

 

 そう会話を交わしながら、ダンバートンの郊外にあるラビダンジョンを歩いていくヒィとそのメイドのメイナ。

 今回二人は、腕試しも兼ねて、このラビダンジョンにやってきたのだ。もちろん目標は、その奥に潜む女魔(サキュバス)を倒すことである。

 

「ボクたちも強くなってきたし、そろそろここもクリアできると思うんだ」

「そういえば、街はずれにいた研究者の方も、そろそろここがちょうどいい難易度だって言ってましたね」

「でしょでしょ? さっそく行くぞ~」

 

 そう言って二人は、ダンジョンの中に入っていった。

 

* * *

 

「それ~!」

 

 ヒィのメイスが骸骨狼に直撃! 振っ飛ばされた骸骨狼は、もうそれで動かなくなった。

 

「うん。ここら辺の階層であれば、楽勝みたいだね」

 

 ヒィの言う通り、このラビダンジョンの地下一階の敵は、今戦った骸骨狼、宝箱の化け物ミミック、コウモリやネズミばかりで、今のヒィの実力ならば、特に問題もなく倒せる奴らばかりだった。

 ……うっかりと変な動きをして、複数の敵に反応されるドジをしなければ、だが。

 

 だが、そう言うヒィとは裏腹に、メイナは何か気がかりなことがあるようだ。

 

「そうでございますね、ご主人様。ただ……」

「え?」

 

 ヒィが聞き返すと、メイナは心配そうな表情で、ヒィを指さした。

 

「その装備で……果たして最後まで保(も)ってくれるのでしょうか?」

「あ」

 

 ヒィが言われて自分の装備を見てみると、なるほど。

 持っているメイスは、目釘が外れかかって、打撃部分が今にもはずれそうになっていたし、防具もボロボロで留め金も外れかかっている状態だった。このまま進めば、いずれはボスまでたどり着く前に壊れてしまい、彼女は武器も防具もない状態でサキュバスと戦うことになるだろう。それは避けたかった。

 

「は、ははは……。一度出て、修理してからまた来ようか」

「そうですね。急がば回れ、とも言いますし」

「果報は寝て待て、とも言うよね」

「それはちょっと違うような……」

「あれ?」

 

 そんな会話を交わしながら、ヒィとメイナは今来た道を引き返し、ダンジョンを出ていくのであった。

 

* * *

 

 そしてその翌日。武器と防具を修理してもらった二人は、再びラビダンジョンへとやってきていた。

 

「とりゃー!」

 

 ばきぃ!!

 

 先日と同じく、ヒィの振り下ろしたメイスが骨狼に炸裂し、バラバラに粉砕した。

 

「ふぅ、これで最後だね」

「はい、お疲れ様でした」

 

 そう言って、メイナがヒィに、スタミナポーションのびんを手渡す。それを受け取ると、ヒィはそれを一気に、とてもおいしそうに飲み干す。

 

 先日のように、一階の敵は、いずれもヒィの敵にはなりえなかった。とはいえ、油断をすると痛い目に遭う……と、メイナに耳が痛いほど言われていたので、細心の注意を払いながら戦ってきたのだが。

 

 でも、そのかいあって、ヒィは特に問題なく、このラビダンジョン地下一階を攻略していた。

 

 そして。

 

「ふぅ、やっと階段か」

「いよいよここから本番ですよ。気を付けてくださいね」

「う、うん……」

 

 一階を突破した二人は、階段を下りて、地下二階に降りて行った。

 そこがまさに、修羅場だということも知らずに。

 

* * *

 

 そこまでの道のりは、特に問題はなかった。

 この階層は、スケルトンが出てくるが、今までは一種類しか出てこないので、案外楽に戦えたからだ。

 

 そんなこともあってか、ヒィはるんるん気分だった。その気分を戒めるべく、メイナが注意を促す。

 

「ご主人様。そんなに浮かれていると足元をすくわれますよ。もっと気を引き締めてくださいませ」

「大丈夫、大丈夫~。さぁ~、次に行くぞ~♪」

(本当に大丈夫なのでしょうか……?)

 

 大丈夫なわけがなかった。

 

 地下二階も後半に入り、もうそろそろボスかな?と思えるほど進んだ時。

 

 ぼわんっ。

 

「え、さ、三種類も……?」

 

 そう、宝箱を開けると、普通のスケルトン、赤い骨のレッドスケルトン、そして骨が金属でできたメタルスケルトンの三種類のスケルトン、合計10体が出現したのだ。

 

 これは気を付けないと、各種類から敵対反応を示され、三体の敵を相手にすることになりかねない。慎重な立ち回りを要求される。

 しかし、さっきまで浮かれていたヒィに、そんなことは無理なわけで……。

 

「えいっ!」

 

 ヒィの構えたクロスボウから矢が放たれ、スケルトンの左腕を破壊した。しかし……。

 

「!」

「!」

「!」

 

 今攻撃したスケルトンを含め、近くにいたレッドスケルトン、メタルスケルトンからも敵対反応を示された。

 

「ほえ?」

 

 ヒィがクロスボウからメイスに持ち変える前に、三体が襲ってきて……

 

 ドカッ

 バキッ

 ボコッ

 

「うわぁ~!」

 

 ヒィは三体のスケルトンにボコボコにされた。それを見て慌てるメイナ。

 

「ご、ご主人様っ!?」

「だ、大丈夫……。防具のおかげでかすり傷で済んだよ。おばさんのくれた防具様様だね……」

 

 とはいえ、これでピンチが過ぎたわけではなかった。

 メイスと盾に持ち替えたヒィにレッドスケルトンが襲い掛かってきた。それをヒィが攻撃しようとしたところに……。

 

 ドカッ

 

「きゃっ~!?」

 

 スケルトンのこん棒の一撃を受け、さらに……。

 

 ボコッ!

 

「ひぇ~!」

 

 今のレッドスケルトンの攻撃を受けて、またヒィは振っ飛ばされた。

 

 なんとか三体の連携が乱れたところで、各個撃破して、敵対反応を示した三体を倒すことができた。

 その後は、なんとかうまく立ち回り、スケルトンたちを全滅させることができた。

 

 防具のあちこちに打撃痕があるのは気のせいではないだろうが。

 

「ぜぇぜぇ……ひどい目にあった……」

「自業自得です。油断禁物ですよ、気を付けてくださいね、ご主人様」

「う、うん、わかったよ……」

 

 メイナの苦言が耳に痛い。

 

 その後、気を引き締めたヒィは、なんとか敵を倒しつつ進み、サキュバスを倒してラビダンジョンをクリアしたのだった。

 




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