ヒィのマビ日記   作:ひいちゃ

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6月第5章~ご主人様……『ありがとうございます!』

「すいません、これくださーい」

「はい、これですね、どうぞ」

 

 そう会話を交わし、ヒィは、書店の店員であるアイラが一冊の本を受け取った。

 

「とても嬉しそうですね。そんなに自分で作った料理を食べるのが好きなんですか?」

「ま、まぁ……うん」

 

 微笑んでそう質問してくるメイドのメイナにそう返すヒィ。でも、この本……料理の本を買った本当の理由は違う。

 でも、それを彼女の前で言うことはできなかった。

 

(メイナがボクの手料理食べたいって言ってくれたし、これは作らなきゃだよね! それに作るなら、いきなりプレゼントして、びっくりさせてあげたいし)

 

「まぁ、料理を作るのはあとでもできるし、今はバリに行こうよ!」

「そうですね。メインストリームも進めないと」

 

 そう言って、二人はほうきに乗り、バリダンジョンのあるバンホールの町に飛んで行った。

 

* * * * *

 

「よーし、行くぞ。とりゃー!」

 

 ヒィがメイスの一撃でグレムリンを吹き飛ばす。しかしそこで!

 

「……!」

「し、しまった!」

 

 それを見た別のグレムリンが反応し、ヒィに一撃を食らわせようと襲い掛かってきた!

 絶対絶命! そこに。

 

「ご主人様、危ない! えーい!」

 

 メイナがそのグレムリンに剣で切り付けて、注意をひいてくれた。そのおかげでヒィは、目の前のグレムリンに、再び集中することができた。

 

「ありがとう、メイナ。えーい!」

 

……

 

「さっきはありがとう。おかげで助かったよ」

「いえ。ご主人様を助けられてよかったです」

 

 そう談笑しながら、バリダンジョンを走っていく二人。いくつかの部屋のモンスターを協力して倒していき、そして……。

 

「あそこにもグレムリンがたくさんいますね……」

「うん。幸い、奥への扉も空いてるし、気づかれてないみたいだし、ここはほうきに乗って、一気に部屋を走り抜けよう」

「かしこまりました」

 

 そう言葉を交わし、メイナが召喚したほうきにまたがる。

 

「ではいきますよ?」

「OK!」

 

 そして、部屋の中に突入する二人。コボルドは気づいた気配はない。

 しかし、もう少しで部屋を出よう、というとき。

 

「ち、ちょっとメイナ、ストップストップ!」

「はい?」

 

 そこでメイナがほうきを止めた。

 

「宝箱がある! きっとあのどれかの中に、別の部屋の鍵があるんだよ!」

「……仕方ありませんね。それじゃ、頑張ってこの部屋のグレムリンを片付けましょう」

 

 そう言葉を交わし、ヒィとメイナはほうきを降り、戦闘態勢を取るのだった。

 その彼女たちに、グレムリンが襲い掛かってくる……。

 

* * * * *

 

 そして、無事に褐色バリダンジョンをクリアし、ダンバートンに戻ってきた二人。

 その片隅にあるかまどの前で、ヒィは簡易テーブルの前の『物体』とにらみあっていた。

 

「うーん……」

「どうしましたか、ご主人様?」

 

 そう聞いてくるメイナに、ヒィはその『物体』を指さして答えた。

 

「チーズパンを作ってるんだけどね……。分量は間違ってないのに、どうしてこうなっちゃうんだろう?」

「どうしてでしょう……?」

 

 二人して、目の前の物体……生ゴミを見て悩む。そこに。

 

「おや、お前さんたち、知らなかったのかい? 今はチーズパンは作れなくなったんだよ」

「「ええ!?」」

 

 そう、このエリンではどういうわけか、作ることのできる料理は決まっている。法律とかではなく、世界の理でそうなっているのだ。

 それ以外の料理を作ろうとしても、なぜか完成せず生ゴミになってしまうのだ。

 そして今はどうやら、チーズパンが、その『作れる料理リスト』から外れてしまった、ということらしい。

 

「うーん、仕方ない。違う料理にしようか……」

 

 そうどこかがっかりした感じのヒィに、メイナが声をかける。

 

「あの、ご主人様。なんなら、私がお手伝いしましょうか?」

「いや、大丈夫だよ。メイナはそこらへんで休んでて」

「はい、そうおっしゃるなら……」

 

 そしてヒィは再び、簡易テーブルに向き直った。

 

……

 

 そして数刻。

 

「よし、できた!」

「本当ですか? うわぁ……」

 

 フライパンをのぞき込んだメイナが感嘆の声をあげる。そこには……。

 

 一流レストランのものとまではいかないながら、それでもきれいに仕上がったクロックムッシュがあった。当然、先ほどの生ゴミとは比べるべくもない。

 

「とってもおいしそうですね……。さすがご主人様です」

「ありがとう、とっても嬉しいよ、はい」

「え?」

 

 ヒィは、そのクロックムッシュを皿に載せて、メイナに差し出した。それを見てメイナは目を丸くしている。

 

「メイナ、この前、ボクの手料理食べたいと言ってたじゃない? それと、今までの感謝をこめて、だよ」

「ご主人様……ありがとうございます!!」

 

 メイナはそれを受け取ると、目に大粒の涙を浮かべ、何度もぺこぺことお辞儀をして礼を述べる。それを見て、ヒィは作ってよかった、と思うのであった。

 

* * * * *

 

 その後の狩りで、うっかりとヒィがおたまを装備したまま突撃し、メイナに白い眼を向けられたのは、また別の話だったりする。

 




今回も読んでくださり、ありがとうございました!
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